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49話
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――もしかして、死んだのかな
白く真っ白な世界に立っていた。私一人……では無かった。足元に大型の真っ白な被毛に包まれた4足歩行の動物がいた。
クリクリと愛らしい目で上目遣いに私を見て、尻尾を振っていた。そのパピヨンのような耳に見覚えがあった。
「もしかしてマケール?」
「きゅっきゅきゅん」
発光しているかの様に輝く毛並みを持つ白い獣はブンブンと嬉しそうに尻尾を激しく振り、私に飛びかかってきた。たたらを踏んで尻もちを着いたが、構わずのしかかり顔を舐めった。
「もー、マケールってば。こんなに大きくなったの?」
モフモフの毛を撫でれば更に激しく顔を舐められた。すると毛がはっきりと発光し、毛むくじゃらの生き物は耳と尻尾をを残して人型になった。彼を見て赤面してしまうのは裸だからではない。3、4歳年下の少年に例え元獣でも、顔をペロペロ舐められれば、どうしていいかわからなくなる。
「アル大好き。僕もう大人になったんだよ。契約しよう」
「へっ? 契約?」
「うん、僕らを引き裂く魔王を倒すんだよ」
魔王ってアリスのことかなとわかっているが、どうもごっこ遊びみたいな言い方で確認するために聞きなおした。
「うん、アリスがいっつもアルと僕の邪魔してくるからさぁー、アリスは意地悪するけど好きだけど、アルがとってもとってもこーんなおおきいぐらい大好きだから、いっぱい一緒にいたいんだ」
両手をいっぱい広げて、私への好きな気持ちの大きさを表すマケールはとっても可愛らしい。
「私も大好きだよ」
マケールの目線に合わせて屈むと、マケールがおでこを合わせてきた。肌が触れ合った時、青白く発光しピリッとした痛みが走る。契約完了と満足げにマケールは微笑んだ。額には先程同じ光を放って、魔法陣があった。マケールが抱きついてきて、私の口をペロペロとして来たので、人型では恥ずかしので手で押し返したがビクともしなかった。もがいているうちに、マケールの舌が唇を割って入ってきた。その拍子に転んでしまう。
「んっん゛ん゛!」
胸を叩いて抗議したが、舌までむしゃぶり尽くされ口内を蹂躙される。手で肩を抑えられ無謀な抵抗だった。押し倒されて、顔を舐めなれるなんて獣なら微笑ましい光景だが、男の子だからなんだか淫行でもしているような罪悪感が湧いてくる。されている私は悪いことしてないのにも関わらず。
諦めて目を閉じ、罪悪感を減らすためマケールの獣の姿を思い描きながらされるがままになった。
――随分、長かったな
やっと頬を赤らめながら、美味しかったと満足げに微笑んだ。私は微妙な心持ちだ。きっと変な顔をしているだろう。
「契約すると契約者の魔力が必要になるんだ。魔力は体液に宿るって知っているでしょ!?」
「じゃあ別にキスしなくても……血とかでもいいんじゃない?」
「アルに傷つけたら……」
マケールは体を震わせて、怖いと呟いた。私はそんなことで怒らないのに。
――ドンッ!
地響きのような音が聞こえた。
「これで大丈夫。魔王を浄化できるよ」
更にもう一度。白い世界にヒビが入った。
「浄化ってどうやって?」
「!!もうダメ、結界が壊れる……!」
白い世界がガラスの様に粉々に砕け散った。外は真っ黒の世界で、アリスが見た事の無いほど怖い顔をしていた。その目は無機物のように冷たく、宝石のように美しく、背筋に悪寒が走る。
確かに見知った顔なはずなのに、いつのも笑顔がないだけで知らない人みたいだった。
――私はアリスが笑って、「アルちゃん」って言うのが好きだったんだ……
「そんな目で見ないで……」
悲しくなるから。いつの間にか獣の姿になっていたマケールがアリスに噛み付いた。
「ガルル~…………ギャン!…………きゅぴーん…きゅーん……」
マケールはアリスに首を掴まれ、投げ飛ばされた。
「マケール!」
アリスの手のひらに黒い球体が浮かんだ。黒い魔力は破滅の力を宿す。魔王のみ扱えるもので、無から有を生み出す魔力とは反対の性質を持つ。反魔法とも言われ、分質を消し去ることができる他、魔力とぶつかると互いに消滅する。
「ねぇ、治してあげて」
「アルちゃんはおかしなこというね。だってもうすぐこの世界は終わりを迎えるんだから」
「なんで、世界を終わらせるの? ずっと今まで通りに一緒に暮らしていけないの?」
「さぁ?なぜ破壊するのかなんてわからない。でも歴史が証明している。大陸に点在する超古代文明の遺跡。なぜ滅んだか……わかるだろ?」
アリスが私に歩み寄る。背が伸びたみたいで少し上を見ながら見つめる。
「いつもみたいに笑ってよ……アリスのことが好きだから」
アリスは口の端を釣り上げ悪く笑って、顎を取りキスをした。
白く真っ白な世界に立っていた。私一人……では無かった。足元に大型の真っ白な被毛に包まれた4足歩行の動物がいた。
クリクリと愛らしい目で上目遣いに私を見て、尻尾を振っていた。そのパピヨンのような耳に見覚えがあった。
「もしかしてマケール?」
「きゅっきゅきゅん」
発光しているかの様に輝く毛並みを持つ白い獣はブンブンと嬉しそうに尻尾を激しく振り、私に飛びかかってきた。たたらを踏んで尻もちを着いたが、構わずのしかかり顔を舐めった。
「もー、マケールってば。こんなに大きくなったの?」
モフモフの毛を撫でれば更に激しく顔を舐められた。すると毛がはっきりと発光し、毛むくじゃらの生き物は耳と尻尾をを残して人型になった。彼を見て赤面してしまうのは裸だからではない。3、4歳年下の少年に例え元獣でも、顔をペロペロ舐められれば、どうしていいかわからなくなる。
「アル大好き。僕もう大人になったんだよ。契約しよう」
「へっ? 契約?」
「うん、僕らを引き裂く魔王を倒すんだよ」
魔王ってアリスのことかなとわかっているが、どうもごっこ遊びみたいな言い方で確認するために聞きなおした。
「うん、アリスがいっつもアルと僕の邪魔してくるからさぁー、アリスは意地悪するけど好きだけど、アルがとってもとってもこーんなおおきいぐらい大好きだから、いっぱい一緒にいたいんだ」
両手をいっぱい広げて、私への好きな気持ちの大きさを表すマケールはとっても可愛らしい。
「私も大好きだよ」
マケールの目線に合わせて屈むと、マケールがおでこを合わせてきた。肌が触れ合った時、青白く発光しピリッとした痛みが走る。契約完了と満足げにマケールは微笑んだ。額には先程同じ光を放って、魔法陣があった。マケールが抱きついてきて、私の口をペロペロとして来たので、人型では恥ずかしので手で押し返したがビクともしなかった。もがいているうちに、マケールの舌が唇を割って入ってきた。その拍子に転んでしまう。
「んっん゛ん゛!」
胸を叩いて抗議したが、舌までむしゃぶり尽くされ口内を蹂躙される。手で肩を抑えられ無謀な抵抗だった。押し倒されて、顔を舐めなれるなんて獣なら微笑ましい光景だが、男の子だからなんだか淫行でもしているような罪悪感が湧いてくる。されている私は悪いことしてないのにも関わらず。
諦めて目を閉じ、罪悪感を減らすためマケールの獣の姿を思い描きながらされるがままになった。
――随分、長かったな
やっと頬を赤らめながら、美味しかったと満足げに微笑んだ。私は微妙な心持ちだ。きっと変な顔をしているだろう。
「契約すると契約者の魔力が必要になるんだ。魔力は体液に宿るって知っているでしょ!?」
「じゃあ別にキスしなくても……血とかでもいいんじゃない?」
「アルに傷つけたら……」
マケールは体を震わせて、怖いと呟いた。私はそんなことで怒らないのに。
――ドンッ!
地響きのような音が聞こえた。
「これで大丈夫。魔王を浄化できるよ」
更にもう一度。白い世界にヒビが入った。
「浄化ってどうやって?」
「!!もうダメ、結界が壊れる……!」
白い世界がガラスの様に粉々に砕け散った。外は真っ黒の世界で、アリスが見た事の無いほど怖い顔をしていた。その目は無機物のように冷たく、宝石のように美しく、背筋に悪寒が走る。
確かに見知った顔なはずなのに、いつのも笑顔がないだけで知らない人みたいだった。
――私はアリスが笑って、「アルちゃん」って言うのが好きだったんだ……
「そんな目で見ないで……」
悲しくなるから。いつの間にか獣の姿になっていたマケールがアリスに噛み付いた。
「ガルル~…………ギャン!…………きゅぴーん…きゅーん……」
マケールはアリスに首を掴まれ、投げ飛ばされた。
「マケール!」
アリスの手のひらに黒い球体が浮かんだ。黒い魔力は破滅の力を宿す。魔王のみ扱えるもので、無から有を生み出す魔力とは反対の性質を持つ。反魔法とも言われ、分質を消し去ることができる他、魔力とぶつかると互いに消滅する。
「ねぇ、治してあげて」
「アルちゃんはおかしなこというね。だってもうすぐこの世界は終わりを迎えるんだから」
「なんで、世界を終わらせるの? ずっと今まで通りに一緒に暮らしていけないの?」
「さぁ?なぜ破壊するのかなんてわからない。でも歴史が証明している。大陸に点在する超古代文明の遺跡。なぜ滅んだか……わかるだろ?」
アリスが私に歩み寄る。背が伸びたみたいで少し上を見ながら見つめる。
「いつもみたいに笑ってよ……アリスのことが好きだから」
アリスは口の端を釣り上げ悪く笑って、顎を取りキスをした。
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