★完結 【R18】変態だらけの18禁乙女ゲーム世界に転生したから、死んで生まれ変わりたい

石原 ぴと

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48話

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「僕のアルちゃん……行こう」

 アリスは手を差し出した。手を載せようとした瞬間、風圧が顔にかかった。エバンの剣がアリスの手があった場所を目にも止まらず速さで通り過ぎたのだとあとからわかった。アリスは後ろに飛び、余裕がある笑みを浮かべて3の壁から飛び降りた。私は身を乗り出して手を伸ばしたが、エバンに肩を掴まれ転落を免れた。

「アリスは大丈夫です。あれくらいの壁から落ちてもどうにかなるようなやつじゃないんで。ここでじっとしていてください」

 エバンがアリスを追って壁外の地面飛び降りたと同時に詠唱し、魔法発動した。

「響け雷鳴、電光《ライトニング》」

 ピカリと強い閃光で目が眩む。剣と剣がぶつかる音がする。う゛っと呻く音が聞こえた。やっと目が慣れて見えるようになったら、アリスの腹部の服に血が滲んでいた。裂けた服からは傷一つない綺麗な肌が見える。多分、治癒魔法で治したのだろう。
 私は心配でハラハラしてしまい、思わず胸の前で手を組んだ。

「昔からほぼ不死身で化け物じみていた奴が、本物の化け物になりやがって……」
「人のこと言えるんですかねぇ、筋肉馬鹿が!!」
「お前みたいに性格ねじ曲がってるから、そんなもんに寄生させられるんだよ! マヌケが……」

 エバン大剣が一際強く風を切り、激しくアリスの剣とぶつかり合い、ゴリ押しでアリスの剣を弾いた。追撃しようとエバンが振りかぶった瞬間にアリスのキラリと光った拳がエバンの首を狙ったが、手首を掴んで阻まれた。アリスは短剣を手に持っていたのだ。

「十分、お前も化け物だよ」
電撃サンダーショック

 すでに剣を上部に投げ、拳に雷魔法を纏わせアリスの脇腹に叩き込む。アリスが吹っ飛んでいき、エバンは投げた剣をキャッチしていた。メキメキと体にめり込み嫌な音がした。吹っ飛ばされてアリスは動かなかったが、殴られた腹部が淡く発光した。私はその光で治癒したことがわかり、ホッと息を吐いた。然しアリスは感電したようで動けなかった。

 エバンがその隙きに一気に距離を詰め、大剣を振り下ろす。深い傷が肩から腰まで出来て、少なくない血が飛び散り、噴き出した。ひっ! っと思わず悲鳴をあげてしまった。致命傷になり得る傷だが、然し、それも治癒魔法でアリスは完治させてしまう。

 剣と剣との応酬が何度も何度も続いた。何度も致命傷をエバンが負わせるが、それをアリスが治していく。エバンの方が強いが、不死身とさえ思える回復力があり、息を切らして無いので更に回復する度―息を切らして無いので―体力まで回復しているようだ。これはもうエバン体力が尽きるか、アリスの魔力尽きるかの勝負である。

 エバンの息が上がっていた。数時間に渡る死闘。真上にあった太陽が陰っていた。だんだんと戦況はアリスに傾き、肩を刺突され、エバンが大剣を落とした。アリスはそれを好機とばかり追撃し、脇腹、太腿と深く斬りつけた。脇腹の傷が致命的でエバンは崩折れ、膝を着く。血が沢山服に滲んで、そして地面に滴り落ちた。アリスが構え、胸を一突きにしよう剣を振りかぶった。

―死んじゃう!

 私はその瞬間がスローモーションに見えた。手を伸ばし駆寄ろうとした。

「だめぇーーーーー!!!」

 足が空を蹴る。思わずエバン駆け寄ったが、自身が居たのは高い高い壁の上。地面に落ちていった。大地にぶん殴られたような衝撃、ぐしゃりと潰れる体に砕ける骨。痛かった、死ぬほど。でも、今は痛くない。もう考えるのも億劫だと思った瞬間、体が発光し、傷が全て癒えた。

「そんなにエバンのことが好きなの?」
「うん、とても大事に思っている」

 エバンは、初めて恋愛的なときめきくれた。そして私を命に変えて守ると約束してくれた。そんな人を好きにならないはずがない。

「でも、」

――アリスのことを愛しいている

 そう言おうと思った。でも言えなかった。赦さないと言ってアリスが首を締めたから。

――泣かないで、アリス。私の愛しい人……

 締められた首が軋んで苦しかったけど、アリスの涙を拭った。

 閃光が視界を覆った。
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