43 / 82
39話 ミスコン
しおりを挟む
ミスコン当日、今日は天気がいい。春よりも陽差しが強い日差しが、まだ色づいていない紫陽花の花弁を照らしている。
校舎前の広場には出店が並んでいて、肉を焼く炭火の匂いや、甘い菓子やフルーツの匂いが漂っている。会場は校庭に設置してあり、今は吹奏楽部が舞台で演奏している。ミスコンはトリある。その前に演劇部や合唱部の催し物がある。
「お姉ちゃん! どお?」
アンネはいつもはすっぴんだが、今日は薄く化粧をしている。
「あれ? そんなの持ってたっけ?」
アンネの胸元に黒地に虹色がかった宝石が輝いていた。とても平民には買えそうに見えない。
「彼に貰ったの」
嬉しそうに微笑んだアンネはとても可愛らしい。
「誰?」
「うひひっ、ひみつ~」
ニヤけるアンネはちょっとキモい。なんか、面倒ごとが舞い込んで来そうな気がするから、それ以上聞くのは止めた。
「早く行きなさい」
出場者アンネは控室へ向かった。私は生徒会執行部を設置した1階の空き教室へ向かった。
廊下を歩きながら、中庭を見やった。
心臓が脈打つ。嬉しくて切なくて泣きたくなった。アリスが目を閉じ、腕を組み中庭のベンチに座っているからだ。アリスと声をかけようと口を開けた瞬間、黒髪の同じ年瀬の女性がアリスの前に現れた。遠目からでも、整った感じのする美少女で黒いゴシック風ドレスが似合っている。
彼女がアリスにキスをしようと目を閉じ唇を近づけた。唇が触れ合う寸前、アリスは目を開け物凄い嫌そうな顔をして払いのけた。それをからかうように、美少女が笑っている。こんなに気安く話すアリスを私は知らない。いつも誰に対しても笑顔で、私対しては、嬉しそうに天使な笑顔をいつも見せてくれていたから。1番親しいつもりでいたから、なんかショックだった。
アリスが私に気づいて目が合った。けど、それはすぐに逸らされてしまった。
――ズキンッ!
痛い。心臓が怪我したみたい。私は、逃げるように早歩きで生徒会執行部に向かった。
「優勝おめでとう」
「いやー、私って可愛いし、魔法も勉強も出来るし、ミスコンで優勝までしちゃうなんてすごいでしょ!? いやはや天はニ物も三物も与えちゃうなんて……神を愛し、神に愛された女。アンネリース・フロリアン!」
アンネの頭上には、優勝者に送られる小さなクラウンが乗っている。
「そういう所嫌いじゃないけど、せっかくの可愛らしい容姿がもったいないと思うわよ」
どっかの大声で絶叫するピン芸人のセリフと仕草を真似て言うアンネはとても可愛らしい容姿の無駄遣いだ。でもだからアンネはクラスで誰とでも仲良くできるのだろう。
「まぁ、あまり完璧すぎるのもね。お姉ちゃんはもうちょっとスキがあったらとっつきやすくなるのに」
「え゛、あなたみたいに残念な人間になれと?」
「そうじゃないけど、いろいろあるでしょ?」
「例えば?」
「お姉ちゃんから、相手のドレスとか髪型とか褒めるとか……」
「恥ずかしいじゃない」
「お姉ちゃんに憧れてる子たくさんいるんだよ」
「そんなことないわよ。けっこう陰口叩かれてるわ」
「ホントなのにー」
アンネ唇を尖らせた。
「今日、アリスに会ったの」
「来てたんだ。どうだった?」
「まだ魔王にはなってなさそうで、実体はあったわ。……でも無視されちゃった」
「あの男がお姉ちゃんを無視って有り得なくない?
執着心の権化なのに?」
「それって愛する人だからでしょ? それに、ゲーム内のアリスとは性質は違うわよ。天使の笑顔はそのままだけど……」
「う゛うーん、見えてる部分だけじゃないからね」
「そうね、ゲームでもわからない所はあるもの」
「そういうことにしておく」
「美少女と一緒だったわ」
「へー」
「なんで嬉しそうなのよ……」
「いやー、面白くなってきたなって」
「ちょっとそんな場合じゃないでしょう」
私はジトッとした目で睨んだ。
学校から帰宅して、今はベット入って寝ようとしたけど昼間のアリスと美少女のこと思い出して寝れない。とても嫌な気持ちが湧き出てくる。アリスの隣は私の場所なのに! なんて傲慢なんだろうか。いつも当然のように思っていたアリスの隣は、当然じゃなかった。それが悲しく、腹立たしい。でもそれは自分への怒りだ。もっとアリスを大切にしていれば、まだアリス一緒に入れたのかもしれない。後悔してる。
「アリス……」
名を呼んだ声が夜に溶ける。その切ない響きに涙が滲む。
「会いたいな……」
――夢でもいいから……
そっと瞳閉じた。
校舎前の広場には出店が並んでいて、肉を焼く炭火の匂いや、甘い菓子やフルーツの匂いが漂っている。会場は校庭に設置してあり、今は吹奏楽部が舞台で演奏している。ミスコンはトリある。その前に演劇部や合唱部の催し物がある。
「お姉ちゃん! どお?」
アンネはいつもはすっぴんだが、今日は薄く化粧をしている。
「あれ? そんなの持ってたっけ?」
アンネの胸元に黒地に虹色がかった宝石が輝いていた。とても平民には買えそうに見えない。
「彼に貰ったの」
嬉しそうに微笑んだアンネはとても可愛らしい。
「誰?」
「うひひっ、ひみつ~」
ニヤけるアンネはちょっとキモい。なんか、面倒ごとが舞い込んで来そうな気がするから、それ以上聞くのは止めた。
「早く行きなさい」
出場者アンネは控室へ向かった。私は生徒会執行部を設置した1階の空き教室へ向かった。
廊下を歩きながら、中庭を見やった。
心臓が脈打つ。嬉しくて切なくて泣きたくなった。アリスが目を閉じ、腕を組み中庭のベンチに座っているからだ。アリスと声をかけようと口を開けた瞬間、黒髪の同じ年瀬の女性がアリスの前に現れた。遠目からでも、整った感じのする美少女で黒いゴシック風ドレスが似合っている。
彼女がアリスにキスをしようと目を閉じ唇を近づけた。唇が触れ合う寸前、アリスは目を開け物凄い嫌そうな顔をして払いのけた。それをからかうように、美少女が笑っている。こんなに気安く話すアリスを私は知らない。いつも誰に対しても笑顔で、私対しては、嬉しそうに天使な笑顔をいつも見せてくれていたから。1番親しいつもりでいたから、なんかショックだった。
アリスが私に気づいて目が合った。けど、それはすぐに逸らされてしまった。
――ズキンッ!
痛い。心臓が怪我したみたい。私は、逃げるように早歩きで生徒会執行部に向かった。
「優勝おめでとう」
「いやー、私って可愛いし、魔法も勉強も出来るし、ミスコンで優勝までしちゃうなんてすごいでしょ!? いやはや天はニ物も三物も与えちゃうなんて……神を愛し、神に愛された女。アンネリース・フロリアン!」
アンネの頭上には、優勝者に送られる小さなクラウンが乗っている。
「そういう所嫌いじゃないけど、せっかくの可愛らしい容姿がもったいないと思うわよ」
どっかの大声で絶叫するピン芸人のセリフと仕草を真似て言うアンネはとても可愛らしい容姿の無駄遣いだ。でもだからアンネはクラスで誰とでも仲良くできるのだろう。
「まぁ、あまり完璧すぎるのもね。お姉ちゃんはもうちょっとスキがあったらとっつきやすくなるのに」
「え゛、あなたみたいに残念な人間になれと?」
「そうじゃないけど、いろいろあるでしょ?」
「例えば?」
「お姉ちゃんから、相手のドレスとか髪型とか褒めるとか……」
「恥ずかしいじゃない」
「お姉ちゃんに憧れてる子たくさんいるんだよ」
「そんなことないわよ。けっこう陰口叩かれてるわ」
「ホントなのにー」
アンネ唇を尖らせた。
「今日、アリスに会ったの」
「来てたんだ。どうだった?」
「まだ魔王にはなってなさそうで、実体はあったわ。……でも無視されちゃった」
「あの男がお姉ちゃんを無視って有り得なくない?
執着心の権化なのに?」
「それって愛する人だからでしょ? それに、ゲーム内のアリスとは性質は違うわよ。天使の笑顔はそのままだけど……」
「う゛うーん、見えてる部分だけじゃないからね」
「そうね、ゲームでもわからない所はあるもの」
「そういうことにしておく」
「美少女と一緒だったわ」
「へー」
「なんで嬉しそうなのよ……」
「いやー、面白くなってきたなって」
「ちょっとそんな場合じゃないでしょう」
私はジトッとした目で睨んだ。
学校から帰宅して、今はベット入って寝ようとしたけど昼間のアリスと美少女のこと思い出して寝れない。とても嫌な気持ちが湧き出てくる。アリスの隣は私の場所なのに! なんて傲慢なんだろうか。いつも当然のように思っていたアリスの隣は、当然じゃなかった。それが悲しく、腹立たしい。でもそれは自分への怒りだ。もっとアリスを大切にしていれば、まだアリス一緒に入れたのかもしれない。後悔してる。
「アリス……」
名を呼んだ声が夜に溶ける。その切ない響きに涙が滲む。
「会いたいな……」
――夢でもいいから……
そっと瞳閉じた。
10
お気に入りに追加
786
あなたにおすすめの小説
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
公爵令嬢は嫁き遅れていらっしゃる
夏菜しの
恋愛
十七歳の時、生涯初めての恋をした。
燃え上がるような想いに胸を焦がされ、彼だけを見つめて、彼だけを追った。
しかし意中の相手は、別の女を選びわたしに振り向く事は無かった。
あれから六回目の夜会シーズンが始まろうとしている。
気になる男性も居ないまま、気づけば、崖っぷち。
コンコン。
今日もお父様がお見合い写真を手にやってくる。
さてと、どうしようかしら?
※姉妹作品の『攻略対象ですがルートに入ってきませんでした』の別の話になります。
【完結】アラサー喪女が転生したら悪役令嬢だった件。断罪からはじまる悪役令嬢は、回避不能なヤンデレ様に溺愛を確約されても困ります!
美杉。節約令嬢、書籍化進行中
恋愛
『ルド様……あなたが愛した人は私ですか? それともこの体のアーシエなのですか?』
そんな風に簡単に聞くことが出来たら、どれだけ良かっただろう。
目が覚めた瞬間、私は今置かれた現状に絶望した。
なにせ牢屋に繋がれた金髪縦ロールの令嬢になっていたのだから。
元々は社畜で喪女。挙句にオタクで、恋をすることもないままの死亡エンドだったようで、この世界に転生をしてきてしあったらしい。
ただまったく転生前のこの令嬢の記憶がなく、ただ状況から断罪シーンと私は推測した。
いきなり生き返って死亡エンドはないでしょう。さすがにこれは神様恨みますとばかりに、私はその場で断罪を行おうとする王太子ルドと対峙する。
なんとしても回避したい。そう思い行動をした私は、なぜか回避するどころか王太子であるルドとのヤンデレルートに突入してしまう。
このままヤンデレルートでの死亡エンドなんて絶対に嫌だ。なんとしても、ヤンデレルートを溺愛ルートへ移行させようと模索する。
悪役令嬢は誰なのか。私は誰なのか。
ルドの溺愛が加速するごとに、彼の愛する人が本当は誰なのかと、だんだん苦しくなっていく――
酸いも甘いも噛み分けて
篠原 皐月
恋愛
育った環境が微妙過ぎる為、恋愛方面には全く関心がない、自称他称《フリーズドライ女》の沙織。所属部署では紅一点という事も相まって、サクサクサバサバした仕事中心生活を満喫中。それに全く不満はなかったものの、最近の心のオアシスだったジョニーの来訪が遠ざかり、少々内心が荒んだ状態で飲みに行ったら思わぬ醜態を晒す事に。心の広いできた上司には笑って許して貰えたものの、何故かそれ以降、その上司に何かと構われる事になって、お互いのとんでもない秘密を暴露しあう羽目になる。
その上、社内の人間とは付き合わないと公言している彼との距離が、妙に近くなってきて……。
色々あって恋愛不感症気味の沙織と、妙な所で押しが弱い友之との紆余曲折ストーリーです。カクヨム、小説家になろうからの転載作品です。
琴姫の奏では紫雲を呼ぶ
山下真響
恋愛
仮想敵国の王子に恋する王女コトリは、望まぬ縁談を避けるために、身分を隠して楽師団へ入団。楽器演奏の力を武器に周囲を巻き込みながら、王の悪政でボロボロになった自国を一度潰してから立て直し、一途で両片思いな恋も実らせるお話です。
王家、社の神官、貴族、蜂起する村人、職人、楽師、隣国、様々な人物の思惑が絡み合う和風ファンタジー。
★作中の楽器シェンシャンは架空のものです。
★婚約破棄ものではありません。
★日本の奈良時代的な文化です。
★様々な立場や身分の人物達の思惑が交錯し、複雑な人間関係や、主人公カップル以外の恋愛もお楽しみいただけます。
★二つの国の革命にまつわるお話で、娘から父親への復讐も含まれる予定です。
神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!
カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。
前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。
全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!
獣人の世界に落ちたら最底辺の弱者で、生きるの大変だけど保護者がイケオジで最強っぽい。
真麻一花
恋愛
私は十歳の時、獣が支配する世界へと落ちてきた。
狼の群れに襲われたところに現れたのは、一頭の巨大な狼。そのとき私は、殺されるのを覚悟した。
私を拾ったのは、獣人らしくないのに町を支配する最強の獣人だった。
なんとか生きてる。
でも、この世界で、私は最低辺の弱者。
転生したらただの女子生徒Aでしたが、何故か攻略対象の王子様から溺愛されています
平山和人
恋愛
平凡なOLの私はある日、事故にあって死んでしまいました。目が覚めるとそこは知らない天井、どうやら私は転生したみたいです。
生前そういう小説を読みまくっていたので、悪役令嬢に転生したと思いましたが、実際はストーリーに関わらないただの女子生徒Aでした。
絶望した私は地味に生きることを決意しましたが、なぜか攻略対象の王子様や悪役令嬢、更にヒロインにまで溺愛される羽目に。
しかも、私が聖女であることも判明し、国を揺るがす一大事に。果たして、私はモブらしく地味に生きていけるのでしょうか!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる