35 / 82
31話
しおりを挟む
「今日のところはもう帰ってください」
「いや、俺は貴方を守るため離れません」
なんとか玄関ホールまで連れてきた。
――もう、いいかげん帰ろうよ。
聞けば、家に帰らず真っ直ぐ私の家に来たらしい。ご家族に報告とか、凱旋式とかで戦後の処理が色々あると思うよ。いい大人なんだから、そっち処理してから来てよ。エバンは確か26歳ぐらいだったと思う。
結構前から帰れと言っていて帰らないから、ちょっとイライラとしてくる。周りに迷惑掛けないか心配だし、私に仕えるだかお姫様だかわからないけど、こういう押し問答は時間の無駄だから、はっきり言っていいよね。
「エバン様……いい加減にしてください。いいから私の言うことを聞いて帰りなさい!」
「俺はアルセナ姫様をあの腹黒から守るために……」
「黙りなさい。でないと蹴り飛ばすわよ」
「貴方が望むなら」
エバンはしょんぼりしつつも目だけは輝いていて……涙ぐんで……ない。もしかして喜んでいる? きっと気のせいだろう。
「返事は……?」
「はい!」
膝まづくエバンの顎を取って言えば、嬉々として帰っていった。
「きちんと戦後の処理を終えてから帰るのよ。それまで家の敷居は跨がせませんからね!」
「はい! 了解した」
エバンは振り返って、嬉しそうに手を振って、外門までのを駆けていった。その手がワンコの尻尾に見えるような気がするのは疲れたからだろうか?
翌日、生徒会の集まりがあり私とアンネは参加していた。
「いよいよ来月にミスコンが開催される。忙しくなるぞ」
生徒会長であるロバートが言った。ミスコンは女子のステータスになるので皆……特に高位貴族が気合い入れている。ミスコンの優勝者は良いところにお嫁に行けるし、社交界での地位も上がるので皆なりたがるのだ。
――あぁーあれねぇ~
隣のアンネを横目で見た。これをクリアしないとロバートは落とせない。平民のアンネは特に。
なぜならこの男、気位の高い女や地位や名誉ある女を従順に調教するのが好きだからだ。だからアンネが攻略する場合は難易度が跳ね上がる。しかも今のアンネにプライドはない。ゲームのアンネはもっとすきがなかった。攻略出来るか不安になり、溜息を吐いた。
私は昨年の予算を参考に予算を組んだ。
アンネは審査員の選定や競技を検討している。アンネは馬鹿なことを時々やらかすが、普段は仕事も勉強もできるし、社交的で容量もいいというか、ちゃっかりしている。
貴族メインの学校のコンテストだから、貴族のマナーとかお茶っ葉の種類に利き酒ならぬ利き茶、邸宅管理の知識など、出題範囲は多い。彼女に出来るのだろうか? 詰めの甘いところがあるから、不安しかない。
アンネがロバートの攻略担当だから、私はコンテストを不参加するつもりだ。
生徒会の仕事が終わったが、アリスは休みなので独り家路に着く。執事長に確認したがエバンは帰ったようだ。ほっと息を吐く。お父様は今日も帰宅できないそうだ。私だけでは判断出来ないので、エバン私に仕える事を希望していると手紙を書いた。
平民街の少し古びたアパートの前に豪華な馬車が停まった。周りの家に住む人が何事かと家から出て馬車の周りを遠巻きに囲んでいる。その馬車から不機嫌そうに一人の美しい少年呼ぶには大人びた、然し青年と言うには幼い男が降り、そのアパートの中に入っていった。男は平民には初めて見るような豪華な服を着ているが、腰には剣が刺さっている。気難しい人物だからか、それとも腕に自信があるのか護衛はいない。平民街にその姿は継いで剥いだ絵画のように不釣り合いだった。
「おい、ガーデンパーティで何があったの教えろ」
男が大金貨を1枚その家に住むアンネリースに向かって投げた。それを彼女はフリスビーを取る犬のように両手でジャンピングキャッチした。
「おねぇ……ひっ!!」
アンネリースは悲鳴を上げた。男から綺麗な顔から恐ろしく冷たい目を向けられたからだ。然し、それだけならば、こんなに怯えていないだろう。アンネリースはアルセナ以外のどうなろうと関係ないという無執着なこの男の性格熟知していたからだ。だからそれと同時にアルセナの友人である自身の身も安全も知っていた。
「アルちゃんは君のお姉ちゃんじゃないよね……」
「はい……」
アンネリースは赤べこのように何度も頷いた。
そしてガーデンパーティでのアルセナの様子をすべて話した。その場にいなかったことも、クラスメイトに聞いて調べておいたのだ。
「やっぱり……ブレンダは邪魔だな。金を奪っただけじゃ足りなかったか……もっと貶めないと」
アンネリースは心の中でブレンダ侯爵令嬢にご愁傷さまと手を組んだ。
男が帰った後、アンネリースは大金貨を片手に鼻歌を歌いながら、スキップしていた。
「今日のご飯は~♪ 何にしよっかなぁ~♫ お肉がいいですねぇ~♬」
「いや、俺は貴方を守るため離れません」
なんとか玄関ホールまで連れてきた。
――もう、いいかげん帰ろうよ。
聞けば、家に帰らず真っ直ぐ私の家に来たらしい。ご家族に報告とか、凱旋式とかで戦後の処理が色々あると思うよ。いい大人なんだから、そっち処理してから来てよ。エバンは確か26歳ぐらいだったと思う。
結構前から帰れと言っていて帰らないから、ちょっとイライラとしてくる。周りに迷惑掛けないか心配だし、私に仕えるだかお姫様だかわからないけど、こういう押し問答は時間の無駄だから、はっきり言っていいよね。
「エバン様……いい加減にしてください。いいから私の言うことを聞いて帰りなさい!」
「俺はアルセナ姫様をあの腹黒から守るために……」
「黙りなさい。でないと蹴り飛ばすわよ」
「貴方が望むなら」
エバンはしょんぼりしつつも目だけは輝いていて……涙ぐんで……ない。もしかして喜んでいる? きっと気のせいだろう。
「返事は……?」
「はい!」
膝まづくエバンの顎を取って言えば、嬉々として帰っていった。
「きちんと戦後の処理を終えてから帰るのよ。それまで家の敷居は跨がせませんからね!」
「はい! 了解した」
エバンは振り返って、嬉しそうに手を振って、外門までのを駆けていった。その手がワンコの尻尾に見えるような気がするのは疲れたからだろうか?
翌日、生徒会の集まりがあり私とアンネは参加していた。
「いよいよ来月にミスコンが開催される。忙しくなるぞ」
生徒会長であるロバートが言った。ミスコンは女子のステータスになるので皆……特に高位貴族が気合い入れている。ミスコンの優勝者は良いところにお嫁に行けるし、社交界での地位も上がるので皆なりたがるのだ。
――あぁーあれねぇ~
隣のアンネを横目で見た。これをクリアしないとロバートは落とせない。平民のアンネは特に。
なぜならこの男、気位の高い女や地位や名誉ある女を従順に調教するのが好きだからだ。だからアンネが攻略する場合は難易度が跳ね上がる。しかも今のアンネにプライドはない。ゲームのアンネはもっとすきがなかった。攻略出来るか不安になり、溜息を吐いた。
私は昨年の予算を参考に予算を組んだ。
アンネは審査員の選定や競技を検討している。アンネは馬鹿なことを時々やらかすが、普段は仕事も勉強もできるし、社交的で容量もいいというか、ちゃっかりしている。
貴族メインの学校のコンテストだから、貴族のマナーとかお茶っ葉の種類に利き酒ならぬ利き茶、邸宅管理の知識など、出題範囲は多い。彼女に出来るのだろうか? 詰めの甘いところがあるから、不安しかない。
アンネがロバートの攻略担当だから、私はコンテストを不参加するつもりだ。
生徒会の仕事が終わったが、アリスは休みなので独り家路に着く。執事長に確認したがエバンは帰ったようだ。ほっと息を吐く。お父様は今日も帰宅できないそうだ。私だけでは判断出来ないので、エバン私に仕える事を希望していると手紙を書いた。
平民街の少し古びたアパートの前に豪華な馬車が停まった。周りの家に住む人が何事かと家から出て馬車の周りを遠巻きに囲んでいる。その馬車から不機嫌そうに一人の美しい少年呼ぶには大人びた、然し青年と言うには幼い男が降り、そのアパートの中に入っていった。男は平民には初めて見るような豪華な服を着ているが、腰には剣が刺さっている。気難しい人物だからか、それとも腕に自信があるのか護衛はいない。平民街にその姿は継いで剥いだ絵画のように不釣り合いだった。
「おい、ガーデンパーティで何があったの教えろ」
男が大金貨を1枚その家に住むアンネリースに向かって投げた。それを彼女はフリスビーを取る犬のように両手でジャンピングキャッチした。
「おねぇ……ひっ!!」
アンネリースは悲鳴を上げた。男から綺麗な顔から恐ろしく冷たい目を向けられたからだ。然し、それだけならば、こんなに怯えていないだろう。アンネリースはアルセナ以外のどうなろうと関係ないという無執着なこの男の性格熟知していたからだ。だからそれと同時にアルセナの友人である自身の身も安全も知っていた。
「アルちゃんは君のお姉ちゃんじゃないよね……」
「はい……」
アンネリースは赤べこのように何度も頷いた。
そしてガーデンパーティでのアルセナの様子をすべて話した。その場にいなかったことも、クラスメイトに聞いて調べておいたのだ。
「やっぱり……ブレンダは邪魔だな。金を奪っただけじゃ足りなかったか……もっと貶めないと」
アンネリースは心の中でブレンダ侯爵令嬢にご愁傷さまと手を組んだ。
男が帰った後、アンネリースは大金貨を片手に鼻歌を歌いながら、スキップしていた。
「今日のご飯は~♪ 何にしよっかなぁ~♫ お肉がいいですねぇ~♬」
20
お気に入りに追加
787
あなたにおすすめの小説

悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない
陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」
デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。
そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。
いつの間にかパトロンが大量発生していた。
ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる
ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。
幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。
幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。
関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?
こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。
「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」
そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。
【毒を検知しました】
「え?」
私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。
※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。
記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした
結城芙由奈@コミカライズ発売中
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。

キャンプに行ったら異世界転移しましたが、最速で保護されました。
新条 カイ
恋愛
週末の休みを利用してキャンプ場に来た。一歩振り返ったら、周りの環境がガラッと変わって山の中に。車もキャンプ場の施設もないってなに!?クマ出現するし!?と、どうなることかと思いきや、最速でイケメンに保護されました、

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

殿下、今日こそ帰ります!
黒猫子猫(猫子猫)
恋愛
彼女はある日、別人になって異世界で生きている事に気づいた。しかも、エミリアなどという名前で、養女ながらも男爵家令嬢などという御身分だ。迷惑極まりない。自分には仕事がある。早く帰らなければならないと焦る中、よりにもよって第一王子に見初められてしまった。彼にはすでに正妃になる女性が定まっていたが、妾をご所望だという。別に自分でなくても良いだろうと思ったが、言動を面白がられて、どんどん気に入られてしまう。「殿下、今日こそ帰ります!」と意気込む転生令嬢と、「そうか。分かったから……可愛がらせろ?」と、彼女への溺愛が止まらない王子の恋のお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる