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31話
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「今日のところはもう帰ってください」
「いや、俺は貴方を守るため離れません」
なんとか玄関ホールまで連れてきた。
――もう、いいかげん帰ろうよ。
聞けば、家に帰らず真っ直ぐ私の家に来たらしい。ご家族に報告とか、凱旋式とかで戦後の処理が色々あると思うよ。いい大人なんだから、そっち処理してから来てよ。エバンは確か26歳ぐらいだったと思う。
結構前から帰れと言っていて帰らないから、ちょっとイライラとしてくる。周りに迷惑掛けないか心配だし、私に仕えるだかお姫様だかわからないけど、こういう押し問答は時間の無駄だから、はっきり言っていいよね。
「エバン様……いい加減にしてください。いいから私の言うことを聞いて帰りなさい!」
「俺はアルセナ姫様をあの腹黒から守るために……」
「黙りなさい。でないと蹴り飛ばすわよ」
「貴方が望むなら」
エバンはしょんぼりしつつも目だけは輝いていて……涙ぐんで……ない。もしかして喜んでいる? きっと気のせいだろう。
「返事は……?」
「はい!」
膝まづくエバンの顎を取って言えば、嬉々として帰っていった。
「きちんと戦後の処理を終えてから帰るのよ。それまで家の敷居は跨がせませんからね!」
「はい! 了解した」
エバンは振り返って、嬉しそうに手を振って、外門までのを駆けていった。その手がワンコの尻尾に見えるような気がするのは疲れたからだろうか?
翌日、生徒会の集まりがあり私とアンネは参加していた。
「いよいよ来月にミスコンが開催される。忙しくなるぞ」
生徒会長であるロバートが言った。ミスコンは女子のステータスになるので皆……特に高位貴族が気合い入れている。ミスコンの優勝者は良いところにお嫁に行けるし、社交界での地位も上がるので皆なりたがるのだ。
――あぁーあれねぇ~
隣のアンネを横目で見た。これをクリアしないとロバートは落とせない。平民のアンネは特に。
なぜならこの男、気位の高い女や地位や名誉ある女を従順に調教するのが好きだからだ。だからアンネが攻略する場合は難易度が跳ね上がる。しかも今のアンネにプライドはない。ゲームのアンネはもっとすきがなかった。攻略出来るか不安になり、溜息を吐いた。
私は昨年の予算を参考に予算を組んだ。
アンネは審査員の選定や競技を検討している。アンネは馬鹿なことを時々やらかすが、普段は仕事も勉強もできるし、社交的で容量もいいというか、ちゃっかりしている。
貴族メインの学校のコンテストだから、貴族のマナーとかお茶っ葉の種類に利き酒ならぬ利き茶、邸宅管理の知識など、出題範囲は多い。彼女に出来るのだろうか? 詰めの甘いところがあるから、不安しかない。
アンネがロバートの攻略担当だから、私はコンテストを不参加するつもりだ。
生徒会の仕事が終わったが、アリスは休みなので独り家路に着く。執事長に確認したがエバンは帰ったようだ。ほっと息を吐く。お父様は今日も帰宅できないそうだ。私だけでは判断出来ないので、エバン私に仕える事を希望していると手紙を書いた。
平民街の少し古びたアパートの前に豪華な馬車が停まった。周りの家に住む人が何事かと家から出て馬車の周りを遠巻きに囲んでいる。その馬車から不機嫌そうに一人の美しい少年呼ぶには大人びた、然し青年と言うには幼い男が降り、そのアパートの中に入っていった。男は平民には初めて見るような豪華な服を着ているが、腰には剣が刺さっている。気難しい人物だからか、それとも腕に自信があるのか護衛はいない。平民街にその姿は継いで剥いだ絵画のように不釣り合いだった。
「おい、ガーデンパーティで何があったの教えろ」
男が大金貨を1枚その家に住むアンネリースに向かって投げた。それを彼女はフリスビーを取る犬のように両手でジャンピングキャッチした。
「おねぇ……ひっ!!」
アンネリースは悲鳴を上げた。男から綺麗な顔から恐ろしく冷たい目を向けられたからだ。然し、それだけならば、こんなに怯えていないだろう。アンネリースはアルセナ以外のどうなろうと関係ないという無執着なこの男の性格熟知していたからだ。だからそれと同時にアルセナの友人である自身の身も安全も知っていた。
「アルちゃんは君のお姉ちゃんじゃないよね……」
「はい……」
アンネリースは赤べこのように何度も頷いた。
そしてガーデンパーティでのアルセナの様子をすべて話した。その場にいなかったことも、クラスメイトに聞いて調べておいたのだ。
「やっぱり……ブレンダは邪魔だな。金を奪っただけじゃ足りなかったか……もっと貶めないと」
アンネリースは心の中でブレンダ侯爵令嬢にご愁傷さまと手を組んだ。
男が帰った後、アンネリースは大金貨を片手に鼻歌を歌いながら、スキップしていた。
「今日のご飯は~♪ 何にしよっかなぁ~♫ お肉がいいですねぇ~♬」
「いや、俺は貴方を守るため離れません」
なんとか玄関ホールまで連れてきた。
――もう、いいかげん帰ろうよ。
聞けば、家に帰らず真っ直ぐ私の家に来たらしい。ご家族に報告とか、凱旋式とかで戦後の処理が色々あると思うよ。いい大人なんだから、そっち処理してから来てよ。エバンは確か26歳ぐらいだったと思う。
結構前から帰れと言っていて帰らないから、ちょっとイライラとしてくる。周りに迷惑掛けないか心配だし、私に仕えるだかお姫様だかわからないけど、こういう押し問答は時間の無駄だから、はっきり言っていいよね。
「エバン様……いい加減にしてください。いいから私の言うことを聞いて帰りなさい!」
「俺はアルセナ姫様をあの腹黒から守るために……」
「黙りなさい。でないと蹴り飛ばすわよ」
「貴方が望むなら」
エバンはしょんぼりしつつも目だけは輝いていて……涙ぐんで……ない。もしかして喜んでいる? きっと気のせいだろう。
「返事は……?」
「はい!」
膝まづくエバンの顎を取って言えば、嬉々として帰っていった。
「きちんと戦後の処理を終えてから帰るのよ。それまで家の敷居は跨がせませんからね!」
「はい! 了解した」
エバンは振り返って、嬉しそうに手を振って、外門までのを駆けていった。その手がワンコの尻尾に見えるような気がするのは疲れたからだろうか?
翌日、生徒会の集まりがあり私とアンネは参加していた。
「いよいよ来月にミスコンが開催される。忙しくなるぞ」
生徒会長であるロバートが言った。ミスコンは女子のステータスになるので皆……特に高位貴族が気合い入れている。ミスコンの優勝者は良いところにお嫁に行けるし、社交界での地位も上がるので皆なりたがるのだ。
――あぁーあれねぇ~
隣のアンネを横目で見た。これをクリアしないとロバートは落とせない。平民のアンネは特に。
なぜならこの男、気位の高い女や地位や名誉ある女を従順に調教するのが好きだからだ。だからアンネが攻略する場合は難易度が跳ね上がる。しかも今のアンネにプライドはない。ゲームのアンネはもっとすきがなかった。攻略出来るか不安になり、溜息を吐いた。
私は昨年の予算を参考に予算を組んだ。
アンネは審査員の選定や競技を検討している。アンネは馬鹿なことを時々やらかすが、普段は仕事も勉強もできるし、社交的で容量もいいというか、ちゃっかりしている。
貴族メインの学校のコンテストだから、貴族のマナーとかお茶っ葉の種類に利き酒ならぬ利き茶、邸宅管理の知識など、出題範囲は多い。彼女に出来るのだろうか? 詰めの甘いところがあるから、不安しかない。
アンネがロバートの攻略担当だから、私はコンテストを不参加するつもりだ。
生徒会の仕事が終わったが、アリスは休みなので独り家路に着く。執事長に確認したがエバンは帰ったようだ。ほっと息を吐く。お父様は今日も帰宅できないそうだ。私だけでは判断出来ないので、エバン私に仕える事を希望していると手紙を書いた。
平民街の少し古びたアパートの前に豪華な馬車が停まった。周りの家に住む人が何事かと家から出て馬車の周りを遠巻きに囲んでいる。その馬車から不機嫌そうに一人の美しい少年呼ぶには大人びた、然し青年と言うには幼い男が降り、そのアパートの中に入っていった。男は平民には初めて見るような豪華な服を着ているが、腰には剣が刺さっている。気難しい人物だからか、それとも腕に自信があるのか護衛はいない。平民街にその姿は継いで剥いだ絵画のように不釣り合いだった。
「おい、ガーデンパーティで何があったの教えろ」
男が大金貨を1枚その家に住むアンネリースに向かって投げた。それを彼女はフリスビーを取る犬のように両手でジャンピングキャッチした。
「おねぇ……ひっ!!」
アンネリースは悲鳴を上げた。男から綺麗な顔から恐ろしく冷たい目を向けられたからだ。然し、それだけならば、こんなに怯えていないだろう。アンネリースはアルセナ以外のどうなろうと関係ないという無執着なこの男の性格熟知していたからだ。だからそれと同時にアルセナの友人である自身の身も安全も知っていた。
「アルちゃんは君のお姉ちゃんじゃないよね……」
「はい……」
アンネリースは赤べこのように何度も頷いた。
そしてガーデンパーティでのアルセナの様子をすべて話した。その場にいなかったことも、クラスメイトに聞いて調べておいたのだ。
「やっぱり……ブレンダは邪魔だな。金を奪っただけじゃ足りなかったか……もっと貶めないと」
アンネリースは心の中でブレンダ侯爵令嬢にご愁傷さまと手を組んだ。
男が帰った後、アンネリースは大金貨を片手に鼻歌を歌いながら、スキップしていた。
「今日のご飯は~♪ 何にしよっかなぁ~♫ お肉がいいですねぇ~♬」
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