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9話 様子がおかしい
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放課後、またもや理事長室に行くが私の下僕は不在である。今日は必ず居るように申しておいたはずなのに、何かがおかしい。居ないものは仕方がないので、アンネと約束していた生徒会の仕事を手伝うことにする。正攻法で入るのは時間と労力のみ無駄なので、公爵家の威光を翳して攻略対象の生徒会長等に生徒会の手伝いの了承を得ている。彼はそういう権力にモノをいうやり方は嫌いだが、彼の攻略はアンネの担当なので構わなかった。
ドアをノックして了承を得てから入室し挨拶をした。
「今日からお世話になります。アルセナ・ベアテ・クリマスタでございます。どうぞよしなに。ぜひ気軽に用事をお申し付けくださいね」
アンネが笑顔で迎えてくれたが、生徒会長であるロバート・ジュアン・パトリックは私を見もしなかった。ほかのメンバーは恐縮しつつも挨拶をしてきた。まぁ、私に用事を言えるのは偉そうなロバートと気安いアンネぐらいだろう。
――おい、礼儀ぐらいちゃんとしろ! 何がジュアンだ!
こいつほど、慈悲深くないやつは攻略対象ではいない。媚薬を煽るほど飲ませ、狂ったところを放置による放置。くっそいかれ野郎だ。
アンネは原作と違って、少し阿呆っぽいし、仕事も遅いので彼女の手伝いをしてあげることにした。
しかし、帳簿と現金が6ピピン合わない。6ピピンは日本の6円程の価値だ。仕方がないので、帳簿の科目を一つづつ調べていく。……イラッとした。
「ちょっとこれどういう事?」
アンネの前の机にに帳簿と領収書を叩きつけた。
なんと字が汚くて6と0を間違えている。……お前は小学生!?
「あ~、ゴメンナサイ」
テヘッ! じゃねぇ! マジふざけんな!
更にイラッとしたので持っていた他の帳簿の角で彼女のつむじをそこそこ痛く刺すように、たんこぶができない程度に3度叩いた。
「イターイ!ひどいじですぅ……」
恨めしそうに私を見るが……知るか!? こういう謝り方の奴は信用できない。対して反省しておらず、また同じことを繰り返すに決まっている。前世の妹で学習済みである。
「おい! 何をしている?」
ロバートが私の帳簿を持っていた手首を捻り上げる。
「やり過ぎだ……」
ドスの効いたバリトンボイスで言われたが、手首を容赦なく掴まれ痛くてそれどころではない。
「彼女みたいな人は、大して反省もせず、また繰り返しやるに決まってます」
私は負けじと目を釣り上げて睨み返した。
「彼女を差別するのか?」
「いいえ。私はただ……」
――バチーンッ!
乾いた音がする。頬が突然熱を持つ。あとから痛みがやってきて、自分が叩かれた事を知った。
私は殺意を覚えた。
「言い訳するのか? それに決めつけている」
「申し訳ございません。……申し訳ございません」
私はロバートとアンネの二人に頭をさげた。何故なら彼の言うことは最もだと思ったからだ。それでも叩かれたのはやり過ぎだし、腹が立つ。いつか仕返しをしようと心に刻み込んだ。
顔を上げると鳩が豆っ鉄砲を食らったような、喫驚かつ呆けた顔をしていた。私だって間違ったと思ったら頭を下げる。
「アンネ、瘤になってないかしら?」
アンネの頭を優しく確認したが、どうやら大丈夫そうだった。
「そこまで痛くはなかったので平気です。今度からは丁寧に帳簿付けします」
重い空気が生徒会室に漂う。
「じゃあ休憩しましょう。私、お茶入れますね」
ヒロインらしいニコニコ笑顔である。少ししてワゴンにティセット載せたワゴンをアンネは持ってきた。こういう所はヒロインらしいと関心していたが、ちゃっかり私のティタイム用の茶菓子を持ってきた彼女に呆れてしまった。
登下校はアリスと、放課後は生徒会と過ごして1週間が経った。然し、理事長は一度も学園に来ていなかった。今日は理事長の自宅へ訪問することにした。病気の噂もないし、この一週間で1度は夜会に出席しているみたいなので、病気ではないと思う。
「ごめんなさい、アリス今日は用事があるから一人で帰るわ」
「大丈夫だよ、僕は待ってられるよ」
「申し訳ないから良いのよ。アリスも忙しいでしょう。それにいつも生徒会の仕事の時も待ってなくて良いのよ」
「だって、同じクラスでもずっと一緒に入れないでしょ。だか一緒に登下校ぐらい……もしかして迷惑だった?」
アリスが涙で潤んで、キラキラした目で私を見つめた。こんな哀愁漂うアリスを撥ね退けられる人間は殺人鬼ぐらいだと思う。
「そんなことないわ……ただ「じゃあ、毎日一緒に帰ろうね」
私が言い終わる前に、アリスが言葉を発した。その気迫に押され私は頷いてしまった。
「うん……でも今日だけは一緒に帰れないわ。ごめんなさい」
「わかった。いいよ。今日だけだよ。でもその代わり、今日の夕食は王宮で食べようね」
「……わかったわ」
不承不承ながらも承諾した。何故なら、王族の家=王宮でパーティーと晩餐会以外で呼ばれてディナーをするなんて、普通ならあり得ない事だからだ。
私は理事長邸を事前に調べて貰っていた地図を握りしめて馬車に乗り込んだ。
ドアをノックして了承を得てから入室し挨拶をした。
「今日からお世話になります。アルセナ・ベアテ・クリマスタでございます。どうぞよしなに。ぜひ気軽に用事をお申し付けくださいね」
アンネが笑顔で迎えてくれたが、生徒会長であるロバート・ジュアン・パトリックは私を見もしなかった。ほかのメンバーは恐縮しつつも挨拶をしてきた。まぁ、私に用事を言えるのは偉そうなロバートと気安いアンネぐらいだろう。
――おい、礼儀ぐらいちゃんとしろ! 何がジュアンだ!
こいつほど、慈悲深くないやつは攻略対象ではいない。媚薬を煽るほど飲ませ、狂ったところを放置による放置。くっそいかれ野郎だ。
アンネは原作と違って、少し阿呆っぽいし、仕事も遅いので彼女の手伝いをしてあげることにした。
しかし、帳簿と現金が6ピピン合わない。6ピピンは日本の6円程の価値だ。仕方がないので、帳簿の科目を一つづつ調べていく。……イラッとした。
「ちょっとこれどういう事?」
アンネの前の机にに帳簿と領収書を叩きつけた。
なんと字が汚くて6と0を間違えている。……お前は小学生!?
「あ~、ゴメンナサイ」
テヘッ! じゃねぇ! マジふざけんな!
更にイラッとしたので持っていた他の帳簿の角で彼女のつむじをそこそこ痛く刺すように、たんこぶができない程度に3度叩いた。
「イターイ!ひどいじですぅ……」
恨めしそうに私を見るが……知るか!? こういう謝り方の奴は信用できない。対して反省しておらず、また同じことを繰り返すに決まっている。前世の妹で学習済みである。
「おい! 何をしている?」
ロバートが私の帳簿を持っていた手首を捻り上げる。
「やり過ぎだ……」
ドスの効いたバリトンボイスで言われたが、手首を容赦なく掴まれ痛くてそれどころではない。
「彼女みたいな人は、大して反省もせず、また繰り返しやるに決まってます」
私は負けじと目を釣り上げて睨み返した。
「彼女を差別するのか?」
「いいえ。私はただ……」
――バチーンッ!
乾いた音がする。頬が突然熱を持つ。あとから痛みがやってきて、自分が叩かれた事を知った。
私は殺意を覚えた。
「言い訳するのか? それに決めつけている」
「申し訳ございません。……申し訳ございません」
私はロバートとアンネの二人に頭をさげた。何故なら彼の言うことは最もだと思ったからだ。それでも叩かれたのはやり過ぎだし、腹が立つ。いつか仕返しをしようと心に刻み込んだ。
顔を上げると鳩が豆っ鉄砲を食らったような、喫驚かつ呆けた顔をしていた。私だって間違ったと思ったら頭を下げる。
「アンネ、瘤になってないかしら?」
アンネの頭を優しく確認したが、どうやら大丈夫そうだった。
「そこまで痛くはなかったので平気です。今度からは丁寧に帳簿付けします」
重い空気が生徒会室に漂う。
「じゃあ休憩しましょう。私、お茶入れますね」
ヒロインらしいニコニコ笑顔である。少ししてワゴンにティセット載せたワゴンをアンネは持ってきた。こういう所はヒロインらしいと関心していたが、ちゃっかり私のティタイム用の茶菓子を持ってきた彼女に呆れてしまった。
登下校はアリスと、放課後は生徒会と過ごして1週間が経った。然し、理事長は一度も学園に来ていなかった。今日は理事長の自宅へ訪問することにした。病気の噂もないし、この一週間で1度は夜会に出席しているみたいなので、病気ではないと思う。
「ごめんなさい、アリス今日は用事があるから一人で帰るわ」
「大丈夫だよ、僕は待ってられるよ」
「申し訳ないから良いのよ。アリスも忙しいでしょう。それにいつも生徒会の仕事の時も待ってなくて良いのよ」
「だって、同じクラスでもずっと一緒に入れないでしょ。だか一緒に登下校ぐらい……もしかして迷惑だった?」
アリスが涙で潤んで、キラキラした目で私を見つめた。こんな哀愁漂うアリスを撥ね退けられる人間は殺人鬼ぐらいだと思う。
「そんなことないわ……ただ「じゃあ、毎日一緒に帰ろうね」
私が言い終わる前に、アリスが言葉を発した。その気迫に押され私は頷いてしまった。
「うん……でも今日だけは一緒に帰れないわ。ごめんなさい」
「わかった。いいよ。今日だけだよ。でもその代わり、今日の夕食は王宮で食べようね」
「……わかったわ」
不承不承ながらも承諾した。何故なら、王族の家=王宮でパーティーと晩餐会以外で呼ばれてディナーをするなんて、普通ならあり得ない事だからだ。
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