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2話 ガールズトーク
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二階堂家でかぁくん達と美味しい久美ちゃんの手料理をを食べて、後片付けを終えてからバイト先の居酒屋に向かった。
「おはようございます」
それに応えてバイト仲間の絵里から、挨拶が返ってきた。
「ねぇ知ってる? 津田高の女の子が複数の男にヤラれちゃって、抵抗して殴られて内臓破裂して山中で見つかったらしいよ。ちょー怖い」
津田高とは私の家の最寄り駅から5つしか離れていない高校だ。
「まじで? 今日帰る時怖いよ」
バイトが終わるのはいつも午後10時を過ぎる。普段ですら怖いのにこんな話を聞いたら帰れなくなる。私は一抹の不安を覚えた。
――――11時過ぎまで働いて上がると、1個上のバイトの先輩である板橋 拓海がタバコを吹かしながら居た。
「おっつー」と板橋さん。
「お疲れ様です」と返す私。
着替え終わっても、まだ板橋さんが居る。
「まだ帰らないんですか? 」
私はバイトの制服をロッカーに片付けながら尋ねた。
「途中まで一緒に帰ろうと思って」
夜道はやっぱり暗く怖いので、いつもを自転車で飛ばして帰る私に、その申し出は有難かったけど、内心、げっ! とも思っていた。何故なら彼は私に気があるのでは無いかと思うから。その気がない私はいつも彼といる時、応えられないという思いに居心地が悪くなる。しかしさっきの絵里の話が有るので一緒に帰る事にした。
帰り道、板橋さんと並んで歩きながら、映画の話で盛り上がった。
「『君の声は』すっごく良かったよ~」
「見に行こうと思っているんですけど、私、まだ見てないんですよ」
「じゃあ、一緒に見に行こうとよ。あれは何回見ても良いから」
「ごめんなさい、友達と行く約束してて……」
観たいと思ってたのは本当だけど、そんな約束を友達とはしていなかった。
大学デビューしたての私は、まさか自分が異性から好意を持たれるとは思わずに、気の合う異性の友達として気安く遊びに行っていた。男友達と思っていたのは私だけで、気を持たせて申し訳無いことしてしまってからは、無闇に男性と出かける事は無くなった。嘘をつくのは気が引けるが、一緒に行きたくないってはっきり言えないクズな私。
「そっか~、じゃあまた今度」
少し残念そうに笑う板橋さん。
大丈夫だと言うのに、遠回りして自宅まで送ってくれてお礼を言って別れた。板橋さんはとても良い人だと思う。バイト先でも面倒見が良い。でも、かぁくんが忘れられない私が彼の思いに応える事はない。
自宅の鍵を探していると声をかけられた。
「今の彼氏?」
そちらを見やるとりっくんがいた。スウェットにTシャツで手には、コンビニの袋を提げている。
「違うよ、バイト先輩」
「ふーん」
りっくんはそう言って、家へ戻った。
家に入ると今日はリビングが明るい。母がまだテレビを見ていた。家は父が単身赴任で母もたまにこの家に帰ってくるが、基本的は父と一緒に赴任先で暮らしていた。明日、父の元に帰る予定である。
私はシャワーを浴びて、パジャマに着替え、早々に眠りについた。
翌日、大学に行き講義を受けて昼休みになった。
食堂でいつもの友達と昼食を取るため、学食へ向かった。
「ごめん、トイレ行くから、先に行ってて」
そう言って別れてから、トイレの個室に入った。その直後に二人組が入ってきた。
「ねぇ、さっきのどうかと思うんだけど……」
「あぁ美玲? 」
「うん。二階堂くんが可哀想」
んん”!?二階堂に美玲って……
「彼氏に言わないで元彼と食事行くのすらどうかと思うけど、ヤッちゃうなんて最悪じゃない!?」
おいおい、どう言う事だよ!二階堂ってかぁくんの事じゃないだろうな。
私は息を潜めて、耳を澄ました。
「昨日、商社勤務の元彼がニューヨークから帰ってきててリッツでフレンチ食べたんだけど、料理は美味しいし景色は最高で極めつけはカルティエのネックレスをお土産で貰っちゃて、上に部屋取ってあるからって言うからつい……」
美玲、殺す!美玲そっくりに真似た声に殺意を覚える。
「似てる、美玲そっくり」
「男にだらしなく無ければいい子なのにね」
二人組は化粧を直して、トイレから出ていった。
彼女達が、出ていった後こっそりトイレの入り口から廊下を覗くと、その二人組はかぁくんの彼女の美玲の友達だった。
学食の友達の元へ急いで、入学以来の友達二人にさっきトイレで耳にした情報を話した。
「別に良いんじゃない!?」
芹那はどうでも良さそうに色素の薄い髪を弄りながら言った。芹那は、色白の見かけだけはお嬢様風で、今日はアプワイザーリッシェのレーススカートにオフショルを合わせていて緩く巻いた髪はとても清楚だ。しかし中身は3人と交際している猛者だ。
「良くない‼あの清楚ビッチ……」
「でもビッチのくせに清純ぶってるのはどうかと、芹那もどうかと思う~」
「それはパッケージ詐欺やね、男って外見にすぐ騙されるから」
あやねぇはストレートロングの髪をかきあげて言った。リブキャミからは谷間が見える。こう見えてあやねぇはお嬢様で、今日も靴はマノロでバックはCHANELのチェーンショルダーだ。羨ましい。
「あはっ、あやねぇそれ面白い」
「面白くなーい!誰も私の気持ちをわかってくれない……」
「私も浮気はどうかと思うよ。芹那みたいに同意の上で複数と付き合うならいいけど」
「だよね、浮気はダメだよね」
私はあやねぇこと彩音の豊潤なメロンサイズの胸に抱きついた。うぅ柔らかい、癒される。大阪出身のあやねぇはサバサバしている姐御肌で、一浪してるから1つ年上の頼れるお姉さんだ。派手な見た目に反して情に厚いんだよね。
「みくりは二階堂王子にいわへんの? 」
「言わない」
「なんでやん? 」
「かぁくんの事に口を出したら最後、自分の気持ちも全てぶち撒けちゃいそうだから」
「ぶち撒けちゃえばええやん」
「……嫌われたくない。多分幼馴染の地位に固執しているの」
「幼馴染なんて二階堂くんの人生に何にも関われないよ。そんなのに固執するなんてバカみたい」
芹那は嘘をつくのが嫌いで、私みたいにその場限りの言い訳や事実から目を逸らして相手の口当たりのいい言葉を言ったりしない。でもそのせいで高校時代にハブられたりした事がある様だった。でもだからこそ芹那の言う事はキツイけど、信頼できるんだ。
「でも前に『みぃはずっと幼馴染だよ』っていわれたの。怖くて告白なんて出来ないよ……」
「みくりはホント馬鹿。さっさと振られれば諦められるのに、中途半端な幼馴染なんてしてるから諦められないんだよ」
芹那は言葉とは裏腹に優しく肩を撫でてくれた。
「おはようございます」
それに応えてバイト仲間の絵里から、挨拶が返ってきた。
「ねぇ知ってる? 津田高の女の子が複数の男にヤラれちゃって、抵抗して殴られて内臓破裂して山中で見つかったらしいよ。ちょー怖い」
津田高とは私の家の最寄り駅から5つしか離れていない高校だ。
「まじで? 今日帰る時怖いよ」
バイトが終わるのはいつも午後10時を過ぎる。普段ですら怖いのにこんな話を聞いたら帰れなくなる。私は一抹の不安を覚えた。
――――11時過ぎまで働いて上がると、1個上のバイトの先輩である板橋 拓海がタバコを吹かしながら居た。
「おっつー」と板橋さん。
「お疲れ様です」と返す私。
着替え終わっても、まだ板橋さんが居る。
「まだ帰らないんですか? 」
私はバイトの制服をロッカーに片付けながら尋ねた。
「途中まで一緒に帰ろうと思って」
夜道はやっぱり暗く怖いので、いつもを自転車で飛ばして帰る私に、その申し出は有難かったけど、内心、げっ! とも思っていた。何故なら彼は私に気があるのでは無いかと思うから。その気がない私はいつも彼といる時、応えられないという思いに居心地が悪くなる。しかしさっきの絵里の話が有るので一緒に帰る事にした。
帰り道、板橋さんと並んで歩きながら、映画の話で盛り上がった。
「『君の声は』すっごく良かったよ~」
「見に行こうと思っているんですけど、私、まだ見てないんですよ」
「じゃあ、一緒に見に行こうとよ。あれは何回見ても良いから」
「ごめんなさい、友達と行く約束してて……」
観たいと思ってたのは本当だけど、そんな約束を友達とはしていなかった。
大学デビューしたての私は、まさか自分が異性から好意を持たれるとは思わずに、気の合う異性の友達として気安く遊びに行っていた。男友達と思っていたのは私だけで、気を持たせて申し訳無いことしてしまってからは、無闇に男性と出かける事は無くなった。嘘をつくのは気が引けるが、一緒に行きたくないってはっきり言えないクズな私。
「そっか~、じゃあまた今度」
少し残念そうに笑う板橋さん。
大丈夫だと言うのに、遠回りして自宅まで送ってくれてお礼を言って別れた。板橋さんはとても良い人だと思う。バイト先でも面倒見が良い。でも、かぁくんが忘れられない私が彼の思いに応える事はない。
自宅の鍵を探していると声をかけられた。
「今の彼氏?」
そちらを見やるとりっくんがいた。スウェットにTシャツで手には、コンビニの袋を提げている。
「違うよ、バイト先輩」
「ふーん」
りっくんはそう言って、家へ戻った。
家に入ると今日はリビングが明るい。母がまだテレビを見ていた。家は父が単身赴任で母もたまにこの家に帰ってくるが、基本的は父と一緒に赴任先で暮らしていた。明日、父の元に帰る予定である。
私はシャワーを浴びて、パジャマに着替え、早々に眠りについた。
翌日、大学に行き講義を受けて昼休みになった。
食堂でいつもの友達と昼食を取るため、学食へ向かった。
「ごめん、トイレ行くから、先に行ってて」
そう言って別れてから、トイレの個室に入った。その直後に二人組が入ってきた。
「ねぇ、さっきのどうかと思うんだけど……」
「あぁ美玲? 」
「うん。二階堂くんが可哀想」
んん”!?二階堂に美玲って……
「彼氏に言わないで元彼と食事行くのすらどうかと思うけど、ヤッちゃうなんて最悪じゃない!?」
おいおい、どう言う事だよ!二階堂ってかぁくんの事じゃないだろうな。
私は息を潜めて、耳を澄ました。
「昨日、商社勤務の元彼がニューヨークから帰ってきててリッツでフレンチ食べたんだけど、料理は美味しいし景色は最高で極めつけはカルティエのネックレスをお土産で貰っちゃて、上に部屋取ってあるからって言うからつい……」
美玲、殺す!美玲そっくりに真似た声に殺意を覚える。
「似てる、美玲そっくり」
「男にだらしなく無ければいい子なのにね」
二人組は化粧を直して、トイレから出ていった。
彼女達が、出ていった後こっそりトイレの入り口から廊下を覗くと、その二人組はかぁくんの彼女の美玲の友達だった。
学食の友達の元へ急いで、入学以来の友達二人にさっきトイレで耳にした情報を話した。
「別に良いんじゃない!?」
芹那はどうでも良さそうに色素の薄い髪を弄りながら言った。芹那は、色白の見かけだけはお嬢様風で、今日はアプワイザーリッシェのレーススカートにオフショルを合わせていて緩く巻いた髪はとても清楚だ。しかし中身は3人と交際している猛者だ。
「良くない‼あの清楚ビッチ……」
「でもビッチのくせに清純ぶってるのはどうかと、芹那もどうかと思う~」
「それはパッケージ詐欺やね、男って外見にすぐ騙されるから」
あやねぇはストレートロングの髪をかきあげて言った。リブキャミからは谷間が見える。こう見えてあやねぇはお嬢様で、今日も靴はマノロでバックはCHANELのチェーンショルダーだ。羨ましい。
「あはっ、あやねぇそれ面白い」
「面白くなーい!誰も私の気持ちをわかってくれない……」
「私も浮気はどうかと思うよ。芹那みたいに同意の上で複数と付き合うならいいけど」
「だよね、浮気はダメだよね」
私はあやねぇこと彩音の豊潤なメロンサイズの胸に抱きついた。うぅ柔らかい、癒される。大阪出身のあやねぇはサバサバしている姐御肌で、一浪してるから1つ年上の頼れるお姉さんだ。派手な見た目に反して情に厚いんだよね。
「みくりは二階堂王子にいわへんの? 」
「言わない」
「なんでやん? 」
「かぁくんの事に口を出したら最後、自分の気持ちも全てぶち撒けちゃいそうだから」
「ぶち撒けちゃえばええやん」
「……嫌われたくない。多分幼馴染の地位に固執しているの」
「幼馴染なんて二階堂くんの人生に何にも関われないよ。そんなのに固執するなんてバカみたい」
芹那は嘘をつくのが嫌いで、私みたいにその場限りの言い訳や事実から目を逸らして相手の口当たりのいい言葉を言ったりしない。でもそのせいで高校時代にハブられたりした事がある様だった。でもだからこそ芹那の言う事はキツイけど、信頼できるんだ。
「でも前に『みぃはずっと幼馴染だよ』っていわれたの。怖くて告白なんて出来ないよ……」
「みくりはホント馬鹿。さっさと振られれば諦められるのに、中途半端な幼馴染なんてしてるから諦められないんだよ」
芹那は言葉とは裏腹に優しく肩を撫でてくれた。
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