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第二部
57話 ルヴァイクの策略
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「んで、この書簡が届いて僅か数日後、本当にアルベスタからドレイアム卿が俺のところにやってきた」
ルーフェン曰く、やって来たのはアルベスタ領、領主であるドレイアム伯爵とその長子であるテリー御令息の二人で、彼らは書簡の通り私たちの最愛の妹であるルーラを嫁に欲しいと頼んできたのだという。
その理由は二つ。
一つは戦争の傷跡から立て直す為に隣領であるアルカード領と協力体制を取りたいと考え、互いの家族に縁を設けたいという政略的結婚だ。
そしてもう一つは。
「テリー御令息に近しいお歳の貴族令嬢が、近隣ではルーラしかいないからなんですのね……」
私もこれに戸惑った。
そう、テリー御令息は今現在10歳になったばかりなのである。
聞くところによるとアルベスタ領内の他の村や街にドレイアム伯爵以外の下位貴族はいるらしいが、そのどれもに若い子供はいないらしい。
ドレイアム卿はテリーに見合う貴族の娘がルーラしかいないと嗅ぎつけた。
「ドレイアム卿はエリシオン王国民となってついひと月ほど前に初めて、王都での社交界の場に姿を現した。その時にうちの8歳だというルーラの噂を聞きつけたと言っていた」
「でもルーラは……」
「そうだ。あんなでかい8歳はいねえ」
「そうですわ。それでルーフェン、あなたはなんて答えたの?」
「うちの妹はやれねえって言った。それでもしつこく食い下がってきたけどな。だが俺は断固許可しなかった。するとな、ドレイアム卿はこんな事を言い始めた」
『ルーフェン辺境伯がこの婚約を受けて頂かなければ、アルカードにとってあまり好ましくない事態になるでしょうな』
それを聞いた私は息を飲んだ。
まるで脅迫だと感じたからだ。
「だから俺も強く言い返したぞ。そんな脅迫じみた言葉で人の妹を奪い取ろうとする奴のところに大切な妹を預けられるわけがねえだろってな」
「それでこそルーフェンですわ!」
「うむ、さすがはルーフェン殿だ」
私とシュバルツ様が頷く。
「すると渋々、奴らは帰って行った。だが、最後にこんな台詞を残していった」
『近いうちにルヴァイクからエリシオンに大使が行くでしょう。その時、開かれる協議会にて私も参加します。その後に後悔する事になってももう遅いですぞ』
と。
「それはどういう……?」
私は怪訝な表情で尋ねる。
「俺も気になって調べてみた。で、わかった」
「わかった?」
「ああ。ドレイアムが言ってたのは精霊の森の独占だったんだ」
精霊の森はアルカード領とアルベスタ領の境界付近に広がる大きな森でマナスポットとも呼ばれる場所であり、そこには大精霊テロメア様が住まわれている。
ドレイアムはその森の所有権を独占する旨をエリシオン王国に進言するつもりなのだそうだ。
「何故、精霊の森を?」
「ここらで魔法を授かれる場所といえばあそこしかねえ。そんで戦える魔導師を増やしてアルベスタに在中させる為だそうだ。アルベスタをエリシオンの前線基地として活用し、エリシオン王国にとってアルベスタがルヴァイクを抑えつける壁となると申告するつもりらしい。その申告をするタイミングがルヴァイクからの大使が来る日なんだそうだ」
「……そうか。私も少し聞いていたが、ルヴァイクから来る予定の大使は和平目的と言っていたが、おそらくそんな平和的な話し合いにはならない」
シュバルツ様から私も聞いている。
ルヴァイクの大使がやってくる公然目的は和平協議だが、実際はこれまでと同じような脅迫だ。
ルヴァイクは過去に幾度となくエリシオンに対して物資や金を要求してきた。
その名目は国民が飢えで苦しんでいるからだという。
エリシオンはそれを受けても良いが国政を見直すか、エリシオン王国と合併せよと命じるも、ルヴァイクはそれに対し一切聞く耳を持たない。
ルヴァイクの恐ろしいところは物資や金銭の要求を飲まないならば、暴動を起こした民が何をするかわからない、などと脅してくるのである。
これまでも何度かその脅しを危惧してビスマルク陛下はルヴァイクにいくらかの物資などを提供してきたが、いつまでもそんな事を続けるわけにもいかず、前回のルヴァイクからの使者に対してやや強気に構え、その時は物資の要求を断固拒否したのだ。
結果、前回の英傑選にて悲劇が起きた。あの時の召喚師は、その見せしめなのだろうと噂されていた。
あの召喚師はアルベスタがエリシオンに侵攻され非道な陵辱をされた報復だと騒いでいたが、実のところエリシオンの兵士たちはそのような事をしていないらしい。
つまりアルベスタを嵌めたのはルヴァイクの手の者である可能性が大いに高い。
しかしそれを知らないドレイアム伯爵含むアルベスタ領民は、エリシオン兵士たちをいつまでも恨み続けているのである。
「その通りだシュバルツ兄様。おそらくルヴァイクはまたエリシオンを脅し、駄目ならまた何かをやらかすつもりだ。それにアルベスタをまた利用する可能性がある」
「まさか……アルベスタはエリシオンを裏切るつもりなのか?」
シュバルツ様が眉間にシワを寄せた。
「ああ、おそらくな。ルヴァイクはアルベスタを一見トカゲの尻尾切りのように見せかけエリシオンに忠誠を捧げさせるフリをして、精霊の森に結界を張るつもりだ」
「結界を、ですの?」
「姉様、魔法に疎いからな。簡単に説明するが、魔法結界を張るとその術者が認可した者以外、その中に入れなくなるんだ。アルベスタは精霊の森に結界を張るつもりなんだよ」
「それは……どうしてなんですの?」
「俺たちエリシオン国民に少しでも魔法を覚えさせない為だ。そうする事で将来的に戦力差を設けるつもりなんだろう」
「どうしてこれまではそうしてこなかったんですの?」
「精霊の森は場所的にも中立な立ち位置にあった。エリシオン王国もルヴァイク共和国も数少ないそのマナスポットを独占しようとしなかったのは、それが火種になってしまう事を懸念したんだ。もしどちらかがマナスポットを奪ってしまえば、それを理由にまた戦争を起こす。中立な場所にあるマナスポットを独占し結界を張る行為は国交条約にも抵触するからな。そんな事をすればルヴァイク以外の他国からも非難を浴びかねない」
確かにこの世界の魔法道の教えの基礎は『魔法は全ての人々に平等であれ』だ。結界を張る行為は許されるはずもない。
そのくらいは私でもわかる。
「でも今回はそれをしようと? そんな事をしてもいいんですの?」
「おそらくアルベスタは、今度ルヴァイクの大使が来る時に開かれる協議会にてこう提唱するつもりだ。精霊の森をエリシオンで独占してしまい、ルヴァイク北部にて新たな魔導師が生まれぬよう結界を張るべきだ、と」
ルヴァイクの北部はアルカードとアルベスタの境界にある精霊の森以外にマナスポットは存在せず、ルヴァイクの約過半数の民もアルカードの民たち同様に精霊の森のテロメア様から魔法を授かっている。
精霊の森がエリシオンの支配下となれば、当然ルヴァイク北部の情勢は弱体化するのは必須だ。
「で、でもそれはやってはいけない事なのでしょう?」
「いや、以前まではルヴァイクとの境界部にあったからだ。今は表面上アルベスタはエリシオン王国になっている。国内にあるマナスポットに結界を張るにも色々な理由は必要だろうが、以前とは話が大きく違う」
「うむ。国内にあるマナスポットなら結界を張るのにも国交的に問題はさほどない」
シュバルツ様もそう言って頷く。
「だからといってアルカード領民が精霊の森の使用を禁じられればすぐに問題になるのでは?」
「そうだ。だからしばらくはそうしないだろうな」
「では結界を張った後はどうするつもりなんですの?」
「こいつぁ俺の勘だが、認知型の結界を張るつもりなんじゃねえかと睨んでんだ」
「認知型とはなんですの?」
「誰が結界内部に入ったかを術者に伝えるようにする結界だ。そうする事で誰が出入りしているのかが術者にはすぐわかる」
「それがわかるとなんなんですの?」
「戦況把握だ。おそらく結界を張る術者はアルベスタ領のドレイアムが行なうつもりだ。そうしてドレイアムは誰がいつ結界に出入りしたかを記録し、戦力を調査するんだろう」
「うーん……。ビスマルク陛下は元ルヴァイクの民であるドレイアム卿に結界を張るのを任せてしまうんですの? いくらなんでもそのくらいは危惧して王宮の宮廷魔導師を任命するのでは?」
「結界ってのは一度張ったらおしまいじゃない。毎日結界魔力の更新が必要だ。つまり、アルベスタに常駐してなくちゃならねえ。だったらアルベスタの領主がそれをやった方が効率がいい。アルベスタがこの一年大人しくしていたのもビスマルク陛下に忠義を見せる為だったんだろうな。そうやって信用を得てから結界を張る役目を任せてもらう為にな」
そしてアルベスタが結界を管理し、出入りする者の名簿を記録。
後々、ルヴァイクとの戦争が再び激化した際にはそれを活用する、という事だろうか。
「それとドレイアム卿がルーフェンに提案してきたルーラとの婚約にはどう言った意図があるのかしら……」
「これも勘だが、おそらくうちと関係を深めたらアルカードを引き抜くつもりだったのかもしれねえ」
「アルカードをルヴァイク側に、という事?」
「ああ。アルカードは開発が進んでいない場所が多いが領土は無駄に広い。そんでもって王都エリシオンへの玄関口にもなる。アルカードをもしルヴァイク側に引き込めればエリシオンを落とすのに相当有利になるしな」
つまりは戦争の道具としてアルカードを……いえ、ルーラを利用したがったのね。
許せない。
「そんなのは断じて許せませんわ! 私たちの可愛いルーラを、そんな非道な者たちに渡すなんて!」
ルーラは見た目は18歳だけど、精神年齢はまだ幼い。
ルーフェンは元々頭の賢い子だったけど、ルーラはまだまだ子供だ。
そんな無垢な彼女を戦争の道具になんて絶対許さない。
ルーフェン曰く、やって来たのはアルベスタ領、領主であるドレイアム伯爵とその長子であるテリー御令息の二人で、彼らは書簡の通り私たちの最愛の妹であるルーラを嫁に欲しいと頼んできたのだという。
その理由は二つ。
一つは戦争の傷跡から立て直す為に隣領であるアルカード領と協力体制を取りたいと考え、互いの家族に縁を設けたいという政略的結婚だ。
そしてもう一つは。
「テリー御令息に近しいお歳の貴族令嬢が、近隣ではルーラしかいないからなんですのね……」
私もこれに戸惑った。
そう、テリー御令息は今現在10歳になったばかりなのである。
聞くところによるとアルベスタ領内の他の村や街にドレイアム伯爵以外の下位貴族はいるらしいが、そのどれもに若い子供はいないらしい。
ドレイアム卿はテリーに見合う貴族の娘がルーラしかいないと嗅ぎつけた。
「ドレイアム卿はエリシオン王国民となってついひと月ほど前に初めて、王都での社交界の場に姿を現した。その時にうちの8歳だというルーラの噂を聞きつけたと言っていた」
「でもルーラは……」
「そうだ。あんなでかい8歳はいねえ」
「そうですわ。それでルーフェン、あなたはなんて答えたの?」
「うちの妹はやれねえって言った。それでもしつこく食い下がってきたけどな。だが俺は断固許可しなかった。するとな、ドレイアム卿はこんな事を言い始めた」
『ルーフェン辺境伯がこの婚約を受けて頂かなければ、アルカードにとってあまり好ましくない事態になるでしょうな』
それを聞いた私は息を飲んだ。
まるで脅迫だと感じたからだ。
「だから俺も強く言い返したぞ。そんな脅迫じみた言葉で人の妹を奪い取ろうとする奴のところに大切な妹を預けられるわけがねえだろってな」
「それでこそルーフェンですわ!」
「うむ、さすがはルーフェン殿だ」
私とシュバルツ様が頷く。
「すると渋々、奴らは帰って行った。だが、最後にこんな台詞を残していった」
『近いうちにルヴァイクからエリシオンに大使が行くでしょう。その時、開かれる協議会にて私も参加します。その後に後悔する事になってももう遅いですぞ』
と。
「それはどういう……?」
私は怪訝な表情で尋ねる。
「俺も気になって調べてみた。で、わかった」
「わかった?」
「ああ。ドレイアムが言ってたのは精霊の森の独占だったんだ」
精霊の森はアルカード領とアルベスタ領の境界付近に広がる大きな森でマナスポットとも呼ばれる場所であり、そこには大精霊テロメア様が住まわれている。
ドレイアムはその森の所有権を独占する旨をエリシオン王国に進言するつもりなのだそうだ。
「何故、精霊の森を?」
「ここらで魔法を授かれる場所といえばあそこしかねえ。そんで戦える魔導師を増やしてアルベスタに在中させる為だそうだ。アルベスタをエリシオンの前線基地として活用し、エリシオン王国にとってアルベスタがルヴァイクを抑えつける壁となると申告するつもりらしい。その申告をするタイミングがルヴァイクからの大使が来る日なんだそうだ」
「……そうか。私も少し聞いていたが、ルヴァイクから来る予定の大使は和平目的と言っていたが、おそらくそんな平和的な話し合いにはならない」
シュバルツ様から私も聞いている。
ルヴァイクの大使がやってくる公然目的は和平協議だが、実際はこれまでと同じような脅迫だ。
ルヴァイクは過去に幾度となくエリシオンに対して物資や金を要求してきた。
その名目は国民が飢えで苦しんでいるからだという。
エリシオンはそれを受けても良いが国政を見直すか、エリシオン王国と合併せよと命じるも、ルヴァイクはそれに対し一切聞く耳を持たない。
ルヴァイクの恐ろしいところは物資や金銭の要求を飲まないならば、暴動を起こした民が何をするかわからない、などと脅してくるのである。
これまでも何度かその脅しを危惧してビスマルク陛下はルヴァイクにいくらかの物資などを提供してきたが、いつまでもそんな事を続けるわけにもいかず、前回のルヴァイクからの使者に対してやや強気に構え、その時は物資の要求を断固拒否したのだ。
結果、前回の英傑選にて悲劇が起きた。あの時の召喚師は、その見せしめなのだろうと噂されていた。
あの召喚師はアルベスタがエリシオンに侵攻され非道な陵辱をされた報復だと騒いでいたが、実のところエリシオンの兵士たちはそのような事をしていないらしい。
つまりアルベスタを嵌めたのはルヴァイクの手の者である可能性が大いに高い。
しかしそれを知らないドレイアム伯爵含むアルベスタ領民は、エリシオン兵士たちをいつまでも恨み続けているのである。
「その通りだシュバルツ兄様。おそらくルヴァイクはまたエリシオンを脅し、駄目ならまた何かをやらかすつもりだ。それにアルベスタをまた利用する可能性がある」
「まさか……アルベスタはエリシオンを裏切るつもりなのか?」
シュバルツ様が眉間にシワを寄せた。
「ああ、おそらくな。ルヴァイクはアルベスタを一見トカゲの尻尾切りのように見せかけエリシオンに忠誠を捧げさせるフリをして、精霊の森に結界を張るつもりだ」
「結界を、ですの?」
「姉様、魔法に疎いからな。簡単に説明するが、魔法結界を張るとその術者が認可した者以外、その中に入れなくなるんだ。アルベスタは精霊の森に結界を張るつもりなんだよ」
「それは……どうしてなんですの?」
「俺たちエリシオン国民に少しでも魔法を覚えさせない為だ。そうする事で将来的に戦力差を設けるつもりなんだろう」
「どうしてこれまではそうしてこなかったんですの?」
「精霊の森は場所的にも中立な立ち位置にあった。エリシオン王国もルヴァイク共和国も数少ないそのマナスポットを独占しようとしなかったのは、それが火種になってしまう事を懸念したんだ。もしどちらかがマナスポットを奪ってしまえば、それを理由にまた戦争を起こす。中立な場所にあるマナスポットを独占し結界を張る行為は国交条約にも抵触するからな。そんな事をすればルヴァイク以外の他国からも非難を浴びかねない」
確かにこの世界の魔法道の教えの基礎は『魔法は全ての人々に平等であれ』だ。結界を張る行為は許されるはずもない。
そのくらいは私でもわかる。
「でも今回はそれをしようと? そんな事をしてもいいんですの?」
「おそらくアルベスタは、今度ルヴァイクの大使が来る時に開かれる協議会にてこう提唱するつもりだ。精霊の森をエリシオンで独占してしまい、ルヴァイク北部にて新たな魔導師が生まれぬよう結界を張るべきだ、と」
ルヴァイクの北部はアルカードとアルベスタの境界にある精霊の森以外にマナスポットは存在せず、ルヴァイクの約過半数の民もアルカードの民たち同様に精霊の森のテロメア様から魔法を授かっている。
精霊の森がエリシオンの支配下となれば、当然ルヴァイク北部の情勢は弱体化するのは必須だ。
「で、でもそれはやってはいけない事なのでしょう?」
「いや、以前まではルヴァイクとの境界部にあったからだ。今は表面上アルベスタはエリシオン王国になっている。国内にあるマナスポットに結界を張るにも色々な理由は必要だろうが、以前とは話が大きく違う」
「うむ。国内にあるマナスポットなら結界を張るのにも国交的に問題はさほどない」
シュバルツ様もそう言って頷く。
「だからといってアルカード領民が精霊の森の使用を禁じられればすぐに問題になるのでは?」
「そうだ。だからしばらくはそうしないだろうな」
「では結界を張った後はどうするつもりなんですの?」
「こいつぁ俺の勘だが、認知型の結界を張るつもりなんじゃねえかと睨んでんだ」
「認知型とはなんですの?」
「誰が結界内部に入ったかを術者に伝えるようにする結界だ。そうする事で誰が出入りしているのかが術者にはすぐわかる」
「それがわかるとなんなんですの?」
「戦況把握だ。おそらく結界を張る術者はアルベスタ領のドレイアムが行なうつもりだ。そうしてドレイアムは誰がいつ結界に出入りしたかを記録し、戦力を調査するんだろう」
「うーん……。ビスマルク陛下は元ルヴァイクの民であるドレイアム卿に結界を張るのを任せてしまうんですの? いくらなんでもそのくらいは危惧して王宮の宮廷魔導師を任命するのでは?」
「結界ってのは一度張ったらおしまいじゃない。毎日結界魔力の更新が必要だ。つまり、アルベスタに常駐してなくちゃならねえ。だったらアルベスタの領主がそれをやった方が効率がいい。アルベスタがこの一年大人しくしていたのもビスマルク陛下に忠義を見せる為だったんだろうな。そうやって信用を得てから結界を張る役目を任せてもらう為にな」
そしてアルベスタが結界を管理し、出入りする者の名簿を記録。
後々、ルヴァイクとの戦争が再び激化した際にはそれを活用する、という事だろうか。
「それとドレイアム卿がルーフェンに提案してきたルーラとの婚約にはどう言った意図があるのかしら……」
「これも勘だが、おそらくうちと関係を深めたらアルカードを引き抜くつもりだったのかもしれねえ」
「アルカードをルヴァイク側に、という事?」
「ああ。アルカードは開発が進んでいない場所が多いが領土は無駄に広い。そんでもって王都エリシオンへの玄関口にもなる。アルカードをもしルヴァイク側に引き込めればエリシオンを落とすのに相当有利になるしな」
つまりは戦争の道具としてアルカードを……いえ、ルーラを利用したがったのね。
許せない。
「そんなのは断じて許せませんわ! 私たちの可愛いルーラを、そんな非道な者たちに渡すなんて!」
ルーラは見た目は18歳だけど、精神年齢はまだ幼い。
ルーフェンは元々頭の賢い子だったけど、ルーラはまだまだ子供だ。
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