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第二部
53話 【閑話】兄の想い【sideルーフェン】
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「……殿下、申し訳ないですが私もそれでは反対させてもらいたいです」
俺の反対意見に賛同したのはフリックお父様だ。
おそらくその気持ちは同じだ。
「私たち家族は特に愛情深い絆で結ばれております。ルーラはこんなおてんばな娘ですが、それでも私たちにとって大切な家族なのです」
「被せる様で申し訳ねえっすけど、俺もフリックお父様と同意見っす。殿下は多くの婚約者がいるかもしれねえけど、ルーラにとっちゃパートナーは大事な大事なひとりしかいない。ルーラが寂しい時、頼りたい時に殿下が他の女のところでうつつを抜かしているような事があると考えるだけで俺は、ハラワタ煮えくり返りそうなんすよ」
王家にとって、女性は何人でもいた方が良いに決まっているかもしれない。
けれどそれによってルーラが辛い思いをするのだけは許せない。
その気持ちは俺もお父様も同じだった。
「……とはいえ殿下はエリシオン王国の王太子です。ルーラを側室として将来妃に迎える事を強制すると言われてしまえば俺たちには逆らいようがありません」
「ルーフェン殿……」
「だから気持ち的には殿下とルーラの結婚は認めたくないです。これだけははっきり言っときます」
俺はあくまで自分の気持ちを殿下に伝えたかった。
ルーラには……いや、ルーラにもリフィル姉様みたいな世界でたったひとりの素晴らしいパートナーを持って欲しかったんだ。
「ルーラは本当に素晴らしいご家族に恵まれているんだね」
レオガルド殿下は優しく微笑む。
「安心して欲しい。私はルーラ以外の婚約者との関係は断ち切る事に決めたんだ」
「「え!?」」
俺とフリックお父様が同時に声をあげた。
「私はルーフェン殿やフリック殿と同じく、真に愛すべきパートナーはひとりだけで十分だと考えている。これまで、私は心から他者を愛した事はなかった。だから父上や母上の決めたレールに従って生きればそれで良いと思っていた。今、私と婚約関係にある5名の婚約者たちは私の意思とは別に作られた、政治の為だけの政略結婚だ。私はそれらを全て断ち切ろうと思う」
「そ、そんな事をしたら大変なんじゃないですか?」
「大変かもしれない。けれど、私もやはり愛のない結婚などしたくはないんだ。昨年の英傑シュバルツ殿とリフィル嬢の関係を見て、特に強くそう思わされたんだ」
殿下にここまで言わせるなんて……。
「だからねルーラ」
レオガルド殿下は隣にいるルーラの方を向き直し、
「私はルーラ・アルカード。キミを、キミだけを私の婚約者としたいんだ」
真剣な眼差しでルーラへとそう告げた。
「ルーラだけを? ルーラだけでいいんです?」
「ああ。以前私はキミに、私の婚約者は他にもいるけど、キミにもそのひとりになってもらえないかと頼んだ。その時、キミは頷いてくれたよね」
「はい! レオガルド様、優しいし、仲良くしたいと思ったからです!」
「今思うとまるで誠意がなかったと猛省している。今日、アルカード家に連れてこられて、そしてキミのご家族の話しを聞いてようやく決心がついたよ。私はルーラ、キミだけを私の妃にしたいと思う」
「レオガルド様いいんですか? だって他のこんやくしゃさんは他国のお金持ちの人とか、えらい人なんですよねー?」
「いいんだよルーラ。私はそんな付随したものよりもルーラだけを、ルーラというひとりの女性だけを一途に愛したいと思い直したんだ」
「そうなんですか。ルーラは別にレオガルド様に何人こんやくしゃさんがいてもいいと思いましたですけど、レオガルド様がそう言うのなら、それで全然構わないです!」
「……というわけで、ルーフェン殿、フリック殿、リアナ殿。私たちの交際、婚約を認めてくださるだろうか」
殿下は屈託の無い笑顔をそのまま俺たちの方へと向けて来た。
うーん……。
なんか俺たちの意見はおいてけぼりにされてる感が否めないが。
いや、その前にルーラに再確認だ。
「なあ、ルーラ。お前昨日、俺とお父様が持って来たお見合いの話、一回は受けるって言ったよな。それって、殿下と婚約関係でありながら、他の奴とも婚約関係になって、んで殿下の事はほっといて他の奴が金持ちだったらそいつと結婚する気だったって事か……?」
「そうです!」
あれ……。
なんかこうなると、誠意がないのはうちの妹のような気がする……。
と言うかうちの妹の方が失礼な気がするぞ……?
「実は私が今日、覚悟を持ってここには来たのはそれが原因なんだ」
と、再び殿下が語り出す。
「ルーラが早朝から宮殿に来てね。他の人と婚約してもいいか、他の人と試しに結婚してみてもいいか、などと言い出すものだから私はびっくりしてしまって」
なんてこった。
ルーラは昨日の話しをそのまま殿下に伝えたのか。
しかも試しにって……。
「私の正妃には政治的観点から東の隣国ソリドフォンの姫君が予定されていた。そしてルーラの事はルーフェン殿の言う通り側妃とする予定で考えていたんだ。しかしいざルーラが私と同じような事をすると考えたら、どうしようもない気持ちにかられてしまってね。それで今日、考え直してみたんだ。相手の立場になってよくよく考え直してみたら、とても嫌な気分になった……。自分の愛する者が他の男といると考えると……どうしようもない気持ちになった。それを私は今日、ルーラに教えられたんだよ」
俺は今心の底から安堵で胸を撫で下ろしている。そして感謝した。レオガルド殿下が……このお方が実に寛大で寛容な人格者である事に。
何故ならこれ、場合によっちゃルーラは超絶不敬によって処罰されてもおかしくなかったからだ。
王族は国の決まり上、妃を何人迎えても良い事になっているが国民には一夫一妻制が基本として定められ、不貞行為が認められた場合は裁判沙汰になる。
つまりルーラは殿下と婚約しているのだから他の男と付き合うなど当然許されない事で、試しに一回結婚してみるなどもっての他だ。
その婚約が例え、俺たち家族には何も知らされていない口約束であろうともだ。
「だから私はもうルーラ以外の女性と交際するつもりも結婚するつもりもない。父上と母上にも、これから帰って私の婚約者たちについて正式に協議するつもりだ」
なんてありがたい話なんだ。
うちの妹がエリシオン王国の正妃になるなんて、まるで夢のようだ。
しかしそれでもまだ解せない。
一体こいつの……。
俺の反対意見に賛同したのはフリックお父様だ。
おそらくその気持ちは同じだ。
「私たち家族は特に愛情深い絆で結ばれております。ルーラはこんなおてんばな娘ですが、それでも私たちにとって大切な家族なのです」
「被せる様で申し訳ねえっすけど、俺もフリックお父様と同意見っす。殿下は多くの婚約者がいるかもしれねえけど、ルーラにとっちゃパートナーは大事な大事なひとりしかいない。ルーラが寂しい時、頼りたい時に殿下が他の女のところでうつつを抜かしているような事があると考えるだけで俺は、ハラワタ煮えくり返りそうなんすよ」
王家にとって、女性は何人でもいた方が良いに決まっているかもしれない。
けれどそれによってルーラが辛い思いをするのだけは許せない。
その気持ちは俺もお父様も同じだった。
「……とはいえ殿下はエリシオン王国の王太子です。ルーラを側室として将来妃に迎える事を強制すると言われてしまえば俺たちには逆らいようがありません」
「ルーフェン殿……」
「だから気持ち的には殿下とルーラの結婚は認めたくないです。これだけははっきり言っときます」
俺はあくまで自分の気持ちを殿下に伝えたかった。
ルーラには……いや、ルーラにもリフィル姉様みたいな世界でたったひとりの素晴らしいパートナーを持って欲しかったんだ。
「ルーラは本当に素晴らしいご家族に恵まれているんだね」
レオガルド殿下は優しく微笑む。
「安心して欲しい。私はルーラ以外の婚約者との関係は断ち切る事に決めたんだ」
「「え!?」」
俺とフリックお父様が同時に声をあげた。
「私はルーフェン殿やフリック殿と同じく、真に愛すべきパートナーはひとりだけで十分だと考えている。これまで、私は心から他者を愛した事はなかった。だから父上や母上の決めたレールに従って生きればそれで良いと思っていた。今、私と婚約関係にある5名の婚約者たちは私の意思とは別に作られた、政治の為だけの政略結婚だ。私はそれらを全て断ち切ろうと思う」
「そ、そんな事をしたら大変なんじゃないですか?」
「大変かもしれない。けれど、私もやはり愛のない結婚などしたくはないんだ。昨年の英傑シュバルツ殿とリフィル嬢の関係を見て、特に強くそう思わされたんだ」
殿下にここまで言わせるなんて……。
「だからねルーラ」
レオガルド殿下は隣にいるルーラの方を向き直し、
「私はルーラ・アルカード。キミを、キミだけを私の婚約者としたいんだ」
真剣な眼差しでルーラへとそう告げた。
「ルーラだけを? ルーラだけでいいんです?」
「ああ。以前私はキミに、私の婚約者は他にもいるけど、キミにもそのひとりになってもらえないかと頼んだ。その時、キミは頷いてくれたよね」
「はい! レオガルド様、優しいし、仲良くしたいと思ったからです!」
「今思うとまるで誠意がなかったと猛省している。今日、アルカード家に連れてこられて、そしてキミのご家族の話しを聞いてようやく決心がついたよ。私はルーラ、キミだけを私の妃にしたいと思う」
「レオガルド様いいんですか? だって他のこんやくしゃさんは他国のお金持ちの人とか、えらい人なんですよねー?」
「いいんだよルーラ。私はそんな付随したものよりもルーラだけを、ルーラというひとりの女性だけを一途に愛したいと思い直したんだ」
「そうなんですか。ルーラは別にレオガルド様に何人こんやくしゃさんがいてもいいと思いましたですけど、レオガルド様がそう言うのなら、それで全然構わないです!」
「……というわけで、ルーフェン殿、フリック殿、リアナ殿。私たちの交際、婚約を認めてくださるだろうか」
殿下は屈託の無い笑顔をそのまま俺たちの方へと向けて来た。
うーん……。
なんか俺たちの意見はおいてけぼりにされてる感が否めないが。
いや、その前にルーラに再確認だ。
「なあ、ルーラ。お前昨日、俺とお父様が持って来たお見合いの話、一回は受けるって言ったよな。それって、殿下と婚約関係でありながら、他の奴とも婚約関係になって、んで殿下の事はほっといて他の奴が金持ちだったらそいつと結婚する気だったって事か……?」
「そうです!」
あれ……。
なんかこうなると、誠意がないのはうちの妹のような気がする……。
と言うかうちの妹の方が失礼な気がするぞ……?
「実は私が今日、覚悟を持ってここには来たのはそれが原因なんだ」
と、再び殿下が語り出す。
「ルーラが早朝から宮殿に来てね。他の人と婚約してもいいか、他の人と試しに結婚してみてもいいか、などと言い出すものだから私はびっくりしてしまって」
なんてこった。
ルーラは昨日の話しをそのまま殿下に伝えたのか。
しかも試しにって……。
「私の正妃には政治的観点から東の隣国ソリドフォンの姫君が予定されていた。そしてルーラの事はルーフェン殿の言う通り側妃とする予定で考えていたんだ。しかしいざルーラが私と同じような事をすると考えたら、どうしようもない気持ちにかられてしまってね。それで今日、考え直してみたんだ。相手の立場になってよくよく考え直してみたら、とても嫌な気分になった……。自分の愛する者が他の男といると考えると……どうしようもない気持ちになった。それを私は今日、ルーラに教えられたんだよ」
俺は今心の底から安堵で胸を撫で下ろしている。そして感謝した。レオガルド殿下が……このお方が実に寛大で寛容な人格者である事に。
何故ならこれ、場合によっちゃルーラは超絶不敬によって処罰されてもおかしくなかったからだ。
王族は国の決まり上、妃を何人迎えても良い事になっているが国民には一夫一妻制が基本として定められ、不貞行為が認められた場合は裁判沙汰になる。
つまりルーラは殿下と婚約しているのだから他の男と付き合うなど当然許されない事で、試しに一回結婚してみるなどもっての他だ。
その婚約が例え、俺たち家族には何も知らされていない口約束であろうともだ。
「だから私はもうルーラ以外の女性と交際するつもりも結婚するつもりもない。父上と母上にも、これから帰って私の婚約者たちについて正式に協議するつもりだ」
なんてありがたい話なんだ。
うちの妹がエリシオン王国の正妃になるなんて、まるで夢のようだ。
しかしそれでもまだ解せない。
一体こいつの……。
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