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第一部
6話 魔力提供【マジックサーバー】の制約
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私の【魔力提供】には、不思議で強力な制約が一つだけある。
というか魔法とは想いの形とも言われるので、不思議でもないのかもしれないが、その制約とは『この魔法の効力を口外してはならない』というもの。
私がこの魔法を覚える時に、精霊のテロメア様から教えられた強制制約だ。(そもそも話そうと思っても話す事自体できないし、紙などを媒体にして伝えようとする事すらできない)
私も自分が大した魔力などなく、上位魔法などひとつくらいしか覚えられない事はよくわかっていた。
本来なら女性であればそれを権威とするべく【宝石変換】あたりを取得するのが貴族の常識なのだが、私は宝石になど全く興味がなかったので、そんなものよりもいつか伴侶となる方を支援してあげられる魔法を選んで覚えた。
伴侶が見つかるまで、私はそれをお父様のフリックに掛けてあげ、お父様を支援したりしていた。
また、この魔法は対象者へのスキンシップの度合いで大きく効力が変わる。
ダリアス様とは常に大きく距離をとっていたので、毎日魔力を提供していてもあの程度だったが、シュバルツ様とは直接唇を重ねた事により、あんな短時間であってもあのような大きな効果をもたらしたのだ。
だがしかし、【魔力提供】は、対象者にそれを伝える事はおろか、誰にもこの魔法が扱える事を伝えられないので、私は一見、上位魔法が何も使えない能無しとなってしまったのである。
でも当時はアルカードの田舎で過ごすのに他の大層な魔法なんて必要なかったし、これで良いと思っていた。
そのおかげで儚くもダリアス様には夢を見させてあげられたし、今はこうしてシュバルツ様をお救いできたのだから。
●○●○●
「……ッ! ……ッ!」
顔が沸騰してしまうのではないかと思うほど、ずっと、ずっと、ずーっと熱いッ!
私リフィル・アルカードはただ今、馬車の中で一人、両手で頬を押さえております。
だって、だって、お顔がほんっとにあっついんだもの。
ちなみに馬車内で私が一人きりなのは、御者がいなくなってしまった馬車をシュバルツ様が代わりに引いてくださってるから。おかげでこんな真っ赤な顔を見られずに済みましたけれど。
あの場は緊急事態だったから仕方ないとはいえ、私ったら、突然彼の唇を奪ったり、いきなり好きだなんて言ってしまったり……。
ああぁぁ……どうしましょう、どうしましょう。
と、一人で馬車の中で足をバタバタさせて混乱していた。
キスだって、アレは私のファーストキスなのに、あんなムードもへったくれもないような場面で、儀式の為に行なったみたいな形になってしまったし、その勢いに任せて好きとかまで言っちゃって……私みたいなブスがそんな事をシュバルツ様に申し上げてしまうなんてッ!
「……」
馬車の中で一人、我に返る。
そうだ。
私は言われたじゃないか、ダリアス様に。
「キミは能無しな上、見るに耐えないそのブサイクな顔! 容姿ッ!」
その通りだった。
私は自分が可愛いなんて思った事はなかった。それでもアルカードのメイドたちが淑女の嗜みですからと言って彼女らからある程度のメイキングは教わっていたが、どうにも上手くならない。
容姿もファッションセンスなんてないし、特別スタイルが良いわけでもない。よく食べるからか、胸だけはそれなりに発育が良かったが、足も二の腕もぷにぷにと肉がついてしまって、自分ではぽっちゃりしていると思っている。
見た目で言えば、遥かにセシリアの方が可愛らしい。
そりゃダリアス様もすぐに私から乗り換えるわけだ。
そんなブスな私が……何を舞い上がっているのだろう。
私は確かにシュバルツ様の事が好きだ。
けれど、彼はそれに対して答えを返してくれたわけではない。
むしろ今だって黙々と馬車を引いているのは、その返答に困り果てているからなのではないだろうか。
「……はぁ」
どんどん心が重くなっていった。
私は何を一人で浮かれていたんだろう。
確かにシュバルツ様は私を命がけで助けてくれた。
今もこうして傷ついた体であるにも拘らず、御者のいなくなった馬車を代わりに引いてくれている。
だからといって、私の事が好きなわけではないのだ。
だって、彼はとてつもなく『良い人』なのだから。
だからこの行為は例え相手が私でなくとも、彼なら必ず実行する、ただの当たり前なのだ。
「……バカみたい、ですわ」
ようやく冷静さを取り戻し始める。
「リフィルさん」
「はぁうぁいッ!?!?」
不意に馬車の外のシュバルツ様に声を掛けられ、私ったら思わずヘンテコりんな返事をしてしまった……。
「あ……い、いや、その。特に用があって話しかけたわけではないのだが……その、お体や具合は問題ないかと気になってな」
「ふぁ、ふぁたくしは、ぜんじぇんへいきれすッ!!」
全然平気じゃない。
呂律が全然回ってないッ!
「ふむ、それならいいんだ。でも、貴女が無事で本当に良かった」
「……シュバルツ様」
トクンっ、と胸がまた高鳴った。
ああーもうだめー。
シュバルツ様が私に優しくしてくれればくれるほど、頭がぐるぐる回っちゃう。考えがまとまらなくなっちゃう。
もしかして、もしかしなくてもこれが初めての恋だと私は思ったのだった。
というか魔法とは想いの形とも言われるので、不思議でもないのかもしれないが、その制約とは『この魔法の効力を口外してはならない』というもの。
私がこの魔法を覚える時に、精霊のテロメア様から教えられた強制制約だ。(そもそも話そうと思っても話す事自体できないし、紙などを媒体にして伝えようとする事すらできない)
私も自分が大した魔力などなく、上位魔法などひとつくらいしか覚えられない事はよくわかっていた。
本来なら女性であればそれを権威とするべく【宝石変換】あたりを取得するのが貴族の常識なのだが、私は宝石になど全く興味がなかったので、そんなものよりもいつか伴侶となる方を支援してあげられる魔法を選んで覚えた。
伴侶が見つかるまで、私はそれをお父様のフリックに掛けてあげ、お父様を支援したりしていた。
また、この魔法は対象者へのスキンシップの度合いで大きく効力が変わる。
ダリアス様とは常に大きく距離をとっていたので、毎日魔力を提供していてもあの程度だったが、シュバルツ様とは直接唇を重ねた事により、あんな短時間であってもあのような大きな効果をもたらしたのだ。
だがしかし、【魔力提供】は、対象者にそれを伝える事はおろか、誰にもこの魔法が扱える事を伝えられないので、私は一見、上位魔法が何も使えない能無しとなってしまったのである。
でも当時はアルカードの田舎で過ごすのに他の大層な魔法なんて必要なかったし、これで良いと思っていた。
そのおかげで儚くもダリアス様には夢を見させてあげられたし、今はこうしてシュバルツ様をお救いできたのだから。
●○●○●
「……ッ! ……ッ!」
顔が沸騰してしまうのではないかと思うほど、ずっと、ずっと、ずーっと熱いッ!
私リフィル・アルカードはただ今、馬車の中で一人、両手で頬を押さえております。
だって、だって、お顔がほんっとにあっついんだもの。
ちなみに馬車内で私が一人きりなのは、御者がいなくなってしまった馬車をシュバルツ様が代わりに引いてくださってるから。おかげでこんな真っ赤な顔を見られずに済みましたけれど。
あの場は緊急事態だったから仕方ないとはいえ、私ったら、突然彼の唇を奪ったり、いきなり好きだなんて言ってしまったり……。
ああぁぁ……どうしましょう、どうしましょう。
と、一人で馬車の中で足をバタバタさせて混乱していた。
キスだって、アレは私のファーストキスなのに、あんなムードもへったくれもないような場面で、儀式の為に行なったみたいな形になってしまったし、その勢いに任せて好きとかまで言っちゃって……私みたいなブスがそんな事をシュバルツ様に申し上げてしまうなんてッ!
「……」
馬車の中で一人、我に返る。
そうだ。
私は言われたじゃないか、ダリアス様に。
「キミは能無しな上、見るに耐えないそのブサイクな顔! 容姿ッ!」
その通りだった。
私は自分が可愛いなんて思った事はなかった。それでもアルカードのメイドたちが淑女の嗜みですからと言って彼女らからある程度のメイキングは教わっていたが、どうにも上手くならない。
容姿もファッションセンスなんてないし、特別スタイルが良いわけでもない。よく食べるからか、胸だけはそれなりに発育が良かったが、足も二の腕もぷにぷにと肉がついてしまって、自分ではぽっちゃりしていると思っている。
見た目で言えば、遥かにセシリアの方が可愛らしい。
そりゃダリアス様もすぐに私から乗り換えるわけだ。
そんなブスな私が……何を舞い上がっているのだろう。
私は確かにシュバルツ様の事が好きだ。
けれど、彼はそれに対して答えを返してくれたわけではない。
むしろ今だって黙々と馬車を引いているのは、その返答に困り果てているからなのではないだろうか。
「……はぁ」
どんどん心が重くなっていった。
私は何を一人で浮かれていたんだろう。
確かにシュバルツ様は私を命がけで助けてくれた。
今もこうして傷ついた体であるにも拘らず、御者のいなくなった馬車を代わりに引いてくれている。
だからといって、私の事が好きなわけではないのだ。
だって、彼はとてつもなく『良い人』なのだから。
だからこの行為は例え相手が私でなくとも、彼なら必ず実行する、ただの当たり前なのだ。
「……バカみたい、ですわ」
ようやく冷静さを取り戻し始める。
「リフィルさん」
「はぁうぁいッ!?!?」
不意に馬車の外のシュバルツ様に声を掛けられ、私ったら思わずヘンテコりんな返事をしてしまった……。
「あ……い、いや、その。特に用があって話しかけたわけではないのだが……その、お体や具合は問題ないかと気になってな」
「ふぁ、ふぁたくしは、ぜんじぇんへいきれすッ!!」
全然平気じゃない。
呂律が全然回ってないッ!
「ふむ、それならいいんだ。でも、貴女が無事で本当に良かった」
「……シュバルツ様」
トクンっ、と胸がまた高鳴った。
ああーもうだめー。
シュバルツ様が私に優しくしてくれればくれるほど、頭がぐるぐる回っちゃう。考えがまとまらなくなっちゃう。
もしかして、もしかしなくてもこれが初めての恋だと私は思ったのだった。
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