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女の悔恨はその地へと

第四十一話

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『私は、“鴉”と申す者です』

からす…?

『なんのもくてきでおれたちにせっしょくしてきた!』

五尾が声を荒らげる。

『……それでは、また何処かで』

女は狐の詰問には答えなかった。

何だったんだ、あの女は…終始人を馬鹿にしたかのような物言いをして…妙に癇に障る女だ

『~~!!むかつく~!』

狐達は馬鹿にされて余程悔しかったのか地団駄を踏みながら声を上げた。

瞬間、稗田の瞳が不自然に煌めいた。

結んでいた髪の毛は次々に解け始め、彼女の装いも変わり始めた。

巫女服の様なその装いと共に、眩い白き光を纏い、緑色の瞳を開く。

俺はその一瞬のようで長い変化の様を思わず見蕩れるように見つめながら、思った。

空気が…変わった。今までとは違う意味で。

重くて息がしづらかったはずなのに、俺達がいつも過ごしている、現世と同じ位に息をするのが楽になった。

『みか──』

何かを言いかけた四尾の口を五尾が慌てて塞ぐ。

みか…?

何だそれは。

四尾の言いかけた言葉を気にしていると、稗田が徐に手を上げた。

その白い手に控えめな鈴の音と共に新橋色ターコイズブルーを基調とした扇が顕れた。

如月先輩がやってのけた事と同じ…

俺は息を詰めてその様子を見ていると段々と稗田を纏っていた白い光が薄れていった。

同時に、彼女の瞳もまた隠れた。

白い光が完全に消え失せ、彼女は再び瞳を開く。

そこには、もう先程までの緑は無く、ごく普通の緑がかった黒い瞳があった。

「ひ…えだ?」

少しの間ぼんやりとしていた彼女だったが、段々と意識を取り戻していった。

「え…あれ?私…」

乗っ取られていた間の記憶は無いようで、彼女は困惑しているみたいだった。

『や、やちー!!よかったああ!!』

『もとにもどったああ!!』

言いながら心底安堵したような顔で稗田の頬に擦り寄って行った。

「え、何これ、本当に何があったの」

いまいち状況についていけていない彼女を見て、俺は狐達と同じように安堵して、目を細めた。
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