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女の悔恨はその地へと
第三十九話
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鬼女の妖気の方向へと向かっていくと奥に進むにつれ瘴気が濃くなって行った。
ある程度濃くなった瞬間、巫姿の如月先輩はその手に弓矢を顕現させた。
「どうやって…」
思わず呟いた俺の言葉に如月先輩は目を瞬かせた後、説明をしてくれた。
「ここは妖の結界の中で、私達が住んでいる世界とは層が違う。私達が何をしても向こうには見えない。現世とは全く違う世界で、隠世に近い状態なの。だから呪の影響も凄まじいし、思いの具現も可能。自分が本当に欲しいと思うものはある程度は具現化させられるの。具現化させられたものは紛い物なんかじゃなく、そのものが持つ力、いや、それ以上の力を発揮する」
妖の結界は都合のいい事も悪いこともどちらもあるという事か
「いつもなら柚木の結界術に頼るんだけど、今は居ないし、多少空気が悪くても仕方ない。」
多少…多少ね…
とんでもなく空気が悪い気がするのは俺の気の所為って事ですかね…
『相馬と柚木の事だ、どうせ気付かずに惰眠を貪っているのだろう』
佐々木先輩は呆れたように肩を竦ませて見せる。
酷い言われようだ…
思わず苦笑いする。
油断して、気が抜けたのがいけなかった。
俺が肩の力を抜いた瞬間、稗田が俺の手をするりと抜け出し、走り出した。
「なっ…」
先輩達も予想だにしていなかったのだろう、目を瞠ってぽかんとしている。
『あ、あおちゃん!やっちゃん追いかけて!』
いち早く正気を取り戻した佐々木先輩が必死の形相で声を上げる。
その声を引き金に、俺は弾かれたかのように走り出した。
その後を狐達が追ってくる。
なんで、なんでだ、なんで今になって逃げる!
暗闇の中なのに稗田の姿はここで最初にあった時のように淡く燐光を放っているため、その後ろ姿ははっきりと認める事が出来る。
『え、やちはやくない?』
五尾が目を丸くして言う。
長い髪が左右に揺れていつもの稗田とは思えない速さで走っている。
でもやはり彼女の体力的にも限界があるのか速すぎるということも無く、見失うなんて事は無かった。
段々と距離を縮めて行き、彼女の肩を掴んだ。
ある程度濃くなった瞬間、巫姿の如月先輩はその手に弓矢を顕現させた。
「どうやって…」
思わず呟いた俺の言葉に如月先輩は目を瞬かせた後、説明をしてくれた。
「ここは妖の結界の中で、私達が住んでいる世界とは層が違う。私達が何をしても向こうには見えない。現世とは全く違う世界で、隠世に近い状態なの。だから呪の影響も凄まじいし、思いの具現も可能。自分が本当に欲しいと思うものはある程度は具現化させられるの。具現化させられたものは紛い物なんかじゃなく、そのものが持つ力、いや、それ以上の力を発揮する」
妖の結界は都合のいい事も悪いこともどちらもあるという事か
「いつもなら柚木の結界術に頼るんだけど、今は居ないし、多少空気が悪くても仕方ない。」
多少…多少ね…
とんでもなく空気が悪い気がするのは俺の気の所為って事ですかね…
『相馬と柚木の事だ、どうせ気付かずに惰眠を貪っているのだろう』
佐々木先輩は呆れたように肩を竦ませて見せる。
酷い言われようだ…
思わず苦笑いする。
油断して、気が抜けたのがいけなかった。
俺が肩の力を抜いた瞬間、稗田が俺の手をするりと抜け出し、走り出した。
「なっ…」
先輩達も予想だにしていなかったのだろう、目を瞠ってぽかんとしている。
『あ、あおちゃん!やっちゃん追いかけて!』
いち早く正気を取り戻した佐々木先輩が必死の形相で声を上げる。
その声を引き金に、俺は弾かれたかのように走り出した。
その後を狐達が追ってくる。
なんで、なんでだ、なんで今になって逃げる!
暗闇の中なのに稗田の姿はここで最初にあった時のように淡く燐光を放っているため、その後ろ姿ははっきりと認める事が出来る。
『え、やちはやくない?』
五尾が目を丸くして言う。
長い髪が左右に揺れていつもの稗田とは思えない速さで走っている。
でもやはり彼女の体力的にも限界があるのか速すぎるということも無く、見失うなんて事は無かった。
段々と距離を縮めて行き、彼女の肩を掴んだ。
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