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雨の中に潜むそれは

第十六話

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 気付いた時にはもう遅いと悟った。

「ありがとう…お姉ちゃん」

男の子の口が三日月のように笑った。

『やち!』

『だめ!!』

「稗田…!」

後ろにはいつの間にか立っていた雨女が眼球の無いその目で私を見下ろしていた。

「しまっ…」

その瞬間、私の視界からさっきの男の子と光が消えた。

ただそこには、深い深い闇があるだけだった。

「う…そ」

は、嵌められた…!

どうしよう…

何も見えない…

いや…

怖い…

バカだ、私…

何で何も考えずに突っ走っちゃったの…!

今更後悔しても遅い。

とにかくこの状況を何とかしなくちゃ

そう思い直して回りそうにない頭を使おうとした。

ああ、だめだ。私は何も持っていない…私には自分を守る術が何一つとしてない…

「でも…このまま死ぬのは絶対にいや…」

ふと、とある神様の話を思い出した。

天鈿女命あめのうずめのみこと…芸能の神。

彼女は神楽の根本となるものを作った。

それに神楽には浄化の力がある。

かなり賭けになるが、試してみようという気になった。

「あ…だめだ、扇がない…」

やっと見つけたたった一つの希望が薄れていく気がした。

諦める訳にはいかないと、ダメ元で自分の鞄を探る。

何か、何か使えそうなもの、扇の代わりになるものは…

「これは…どうだろう…」

私はそれを手に取った





「ああ、くそ!稗田が連れてかれた!」

八千が脱出を試みようと画策する中、彼、賀茂 あおいも攫われた彼女を取り戻そうとしていた。

大体、あいつがこんな所来るから…

そうだよ、これは稗田の自業自得だ…

ハッとして首を振る。

ああ、だめだ、思考があちら側寄りになってしまっている。

「どんな状況でも、人を助けるのが陰陽師の役目!」

「お前ら、もう二度とこんな所に一般人連れてくんじゃねえぞ!」

碧は声を大にして言う。

『え…ぼくたち?』

「お前ら以外に誰がいる」

碧には、八千の傍に居た狐達が見えていたのだ。
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