聖女は蝶と舞う

桜咲朔耶

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魔女と呼ばれた少女

異変

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見慣れないその景色に目を瞬かせる。

ここは一体…

立ち上がろうとした私は異変に気づいた。

何だか頭の右側が重い…物理的に

そっと手を触れてみると何だか金属のような冷たくかたい感触があった。

…髪飾り?

それは日本の簪に似た髪飾りで手で確認してみるに蝶のような形をしている事が分かった。

髪の上半分を右側に寄せ、そこで団子のように丸めてさしてあった。

抜けばそれが何なのか具体的に分かるのかもしれないが、私はそれをしなかった。

抜いてはいけない気がした。

私は髪飾りに触るのをやめ、周囲へと目を向けた。

ぐるりと視界を一周させていると遠く、向こうの方に建物が見えた。

…おかしい、私の目は視力がかなり低いはずなのに…

手元を見るのでさえ少し手間取る程の視力だったはずが、数百メートル先まで見えるようになっていた。

眼鏡のせいか視界が少し歪んで目が痛い。

眼鏡を外し、少し目を擦ってもう一度建物があった方向へと目を向ける。

私の瞳にはぼやけて見えた建物、いや、村がはっきりと映った。

何故だ

私の頭に疑問が浮かんで消えた。

こんな所で立ち止まっている暇はない。状況が悪くなった訳では無いようだから、今考えるのはやめよう。

自分の中でそう区切りをつけ、投げ捨てられていた鞄を手に取る。

中を確認するがそこには何も入っていなかった。

…鞄だけ現れたのは何故

私は一度息をつき、村の方へと歩き出す。

少しずつ子供の声が聞こえてくる。

子供の姿が私の視界を掠めた時、何かが私にぶつかった。

「いでぇっ!」

少し高い少年の声がした。

視線を下の方へ下げるとまだ六歳、七歳くらいの男の子が尻もちをついていた。

いててて…と尻をさする男の子に手を差し出す。

「…大丈夫?」

私の言葉にうん、大丈夫と言ってその手に手を乗せようとしたその時、男の子と目が合った。

男の子は大きな瞳を見開かせる。

自分の容姿を思い出して、しまったと思い、手を引っこめる。

男の子の視線に耐えきれず私はその場を走り出した。
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