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おまけ
二人の勝負
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二人は結婚後も何かの折に勝負を続けている。
今日も千紘は余裕の表情を崩さない。
「琢磨……TVゲームやらない?」
「いい、このまま将棋がいい」
琢磨は奇跡的なプロポーズの一戦以来千紘に勝てていない。千紘に手の内を読まれてしまい勝てない。今も次の手で悩み千紘が暇そうにテレビのニュースを見ている。
「琢磨、諦めたら? もう夜も遅いし……」
「ま、まてまて……もう少し……」
千紘はベッドに横になると空いたスペースを撫でた。円を描くように撫でると琢磨がその手の動きを凝視している。生唾を飲むのが見える。琢磨はいそいそと駒を箱へと直していく。慌てているようだ。何個か床に駒が落ちた音がする。千紘は極力見ないようにして笑いそうになるのを堪える。
琢磨が空いたスペースに横になると悔しそうに千紘の肩に触れる。
「ずるいぞ……そんなの……」
「どうせ勝てなかったよ。琢磨は将棋で私に勝てないよ……」
千紘を組み敷くと琢磨はキスの雨を降らす。額に、頬に、耳朶に、うなじに、最後に唇にキスが降りてきた。琢磨とのキスはむず痒くて心が疼く。
琢磨が不敵な笑みを浮かべて千紘の腰を撫でる。
「何だったら……勝てるかな?」
「にらめっこ……とか?」
「もっと圧勝なものがある……よな?」
琢磨は手慣れた様子で電気を消した。千紘の笑い声が暗闇に響いた。
今日も千紘は余裕の表情を崩さない。
「琢磨……TVゲームやらない?」
「いい、このまま将棋がいい」
琢磨は奇跡的なプロポーズの一戦以来千紘に勝てていない。千紘に手の内を読まれてしまい勝てない。今も次の手で悩み千紘が暇そうにテレビのニュースを見ている。
「琢磨、諦めたら? もう夜も遅いし……」
「ま、まてまて……もう少し……」
千紘はベッドに横になると空いたスペースを撫でた。円を描くように撫でると琢磨がその手の動きを凝視している。生唾を飲むのが見える。琢磨はいそいそと駒を箱へと直していく。慌てているようだ。何個か床に駒が落ちた音がする。千紘は極力見ないようにして笑いそうになるのを堪える。
琢磨が空いたスペースに横になると悔しそうに千紘の肩に触れる。
「ずるいぞ……そんなの……」
「どうせ勝てなかったよ。琢磨は将棋で私に勝てないよ……」
千紘を組み敷くと琢磨はキスの雨を降らす。額に、頬に、耳朶に、うなじに、最後に唇にキスが降りてきた。琢磨とのキスはむず痒くて心が疼く。
琢磨が不敵な笑みを浮かべて千紘の腰を撫でる。
「何だったら……勝てるかな?」
「にらめっこ……とか?」
「もっと圧勝なものがある……よな?」
琢磨は手慣れた様子で電気を消した。千紘の笑い声が暗闇に響いた。
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おめでとうございます㊗️
ほんまに、おめでとう🎊
良かった〜
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るりままさんコメント&応援ありがとうございました^^
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娘さんにもよろしくお伝えくださいね。本当にありがとうございました( ´∀`)
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