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欲情
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目が醒めるとそこは真っ暗だった。
一瞬自分がどこにいるのか分からなかった。直ぐに自分の胸の中で眠る小さな存在に気付くと俺に緊張が走る。
寺田が、いる。
なぜ? シャワーを借りたまでは覚えている。いや、まて、その後に薬を飲ましてくれたか?
温かくて柔らかい。
寝顔が見たい──。
うっすら見える枕元のライトに手を伸ばすと一気に自分の周りの視界が良好になる。
そこには俺の胸の中で眠る寺田がいた。いつものスーツ姿と違い、部屋着のラフな格好なので随分と幼い。髪を下ろしているので甘いシャンプーの香りが鼻腔をくすぐる。
自分の上半身が裸なのもあり、まるで情事の最中な気がして胸が高鳴り始める。
だめだろ、寺田は──社内恋愛しないって言っていた。
俺は入社してすぐ寺田に恋をした。
慣れないヒールに苦戦しながらちょこまかと動く姿が可愛かった。今では高めのヒールを履きこなし、クレーム対応に右に出るものはいない。そんなカッコいい女になった。
入社してしばらくして共通の友人に呆気なく俺の気持ちがバレた。遠藤という女だったが、そいつが寺田は彼氏がいて会社では面倒だから恋愛したくないと言っていると教えてくれた。その遠藤もいつのまにか寿退社して今はどこでなにしているか知らない。
本人に恋愛について聞くと「まぁ、ね」と誤魔化されそれから寺田にはそういう話は振らなくなった。
人伝てに彼氏がどうとか別れたとか、また付き合ったとかを耳にしていた。
俺も彼女が出来たりしたのでそれからよき同僚として付き合っていたが、寺田のことはいつも気になった。
髪の毛をくくり直す時……
笑って耳に髪をかける癖……
俺と目が合うと少し伏せ目になるところ……
そんな寺田が気になり相変わらず目で追う。あぁ、俺まだ寺田のことが好きなままなんだ──そう自覚するのに時間は掛からなかった。
それからは叶わない恋と諦めそれなりに女性と付き合ったが、結局毎日寺田と顔を合わせるので長続きはしなかった。虚しくなり最近は誰とも付き合っていない。
だけど、寺田は俺のことを同期としてしか見ない。こうして部屋に入れ、シャワーを浴びているのも同期だからと言っていた。
でも……それも限界だ。
胸の中にいる好きな女に手を出さないほど、俺もだめなやつじゃない。
そっと、寺田の肩に触れ、そのまま腕にかけてなぞる。こうして触れると細身の寺田の体が思ったより柔らかいことが分かる。ただそれだけの事で俺は鳥肌が立ちはじめた。
触れたい、もっと──。
そのまま頰に触れて指でその力の抜けた唇をなぞる。寺田の目が少し動いた。
瞼が開きそうになる瞬間、俺は耐えきれず寺田の唇を塞いだ。まるで食べるように唇を食べる。少し薄目を開けると目の前で大きな目を開けたまま食べられ続ける寺田の顔があった。
無理もない、起きてみれば同期の男に襲われているんだがら……でもなぜか寺田はそのままゆっくりと体の力を抜き目を閉じて、俺のキスに流れをまかせ始めた。
応えてくれている、俺のキスに──。
それだけで興奮して舌を伸ばして寺田の中を感じる。俺が熱があるからか寺田の中は冷たく感じて気持ちがいい。流れる唾液ですら冷たくて気持ちがいい。
「ふぁ……んん……」
寺田の合間に聞こえる息継ぎの声で俺はまた我を忘れる。脳が焦げそうだ。
口の中で俺たちの舌が蕩け合い馴染みのあった頃、俺は寺田を解放した。
寺田の顔は熱を持ち、視線はしっかりと俺を捉えていた。狙うようなそんな表情だ。
欲情している──そんな瞳をしていた。
「寺田……抱かせてくれるか」
俺の声は掠れて、思ったより低い声だった。同意を求めて断られてもそのまま抱いてしまいそうだ。もう、自分の全てを目の前の女にぶつけたかった。
やっぱり寺田が、好きだ──欲しい。
「……いいよ、私も、抱いて欲しい」
その返事を皮切りに俺は頭を何かで打たれたようにタガが外れたのがわかった。
直ぐに寺田を仰向けにしてその細い首にキスをする。耳を舌で舐めあげてやると一気に寺田の体が硬くなるのがわかった。もう一方の手で上のシャツをめくり上げるとブラのホックを外し、その膨らみを揉みしだく……。
「や、あぁ」
恥ずかしそうに顔を背けようとするがその顔を逃さまいとこちらに向けるとそのまま唇を奪う。さっき奪ったのにそこはまた冷たくて気持ちがいい。
「ああ、寺田はどこもかしこも……甘いな」
俺はうわ言のように甘い、甘いと言ってしまう。
だって本当に甘いんだ。
胸の頂の周りに舌を沿わせると、寺田はそれを見てまた一気に熱が上がったようだ。鳥肌が立ちみるみる肌がピンク色に染まる。その頂に口に含むとピクンと背中が反り上がり、細いウエストの後ろに腕が入る。
しばらく胸で遊んでやる。俺の手の中で自由な形に変わるその柔らかいものはこの時間俺だけのものになった。舌で舐め上げ吸い上げ続けて胸の周りや脇腹には俺のものという証拠の赤い花が咲いた。
それを上から見て満足げに微笑むと、寺田が何かを言いたげな顔をした。
「……どうした?」
「……エロ、い」
寺田の言葉に思わず笑ってしまう。それは寺田の方だろう。
俺は一気に上の服を脱がしてやるとベッドには組み敷かれた好きな女の姿がある。髪の毛は下ろし胸の周りには俺の痕を残し、欲情した目でこちらを見上げる。そのまま下着を残しズボンを抜き取る。
夢にまで見た寺田の姿に下腹部が脈を打つのが分かり今すぐ解放したくなる。
「好きだ」
俺は思わず口にしてしまった。
ずっと思っていた言葉を。一度言ってしまえば何度も言いたくなる。
好きといい胸を掴み上げ捏ねる。激しく舌を使い頂を押しつぶしてやるとため息交じりの声が聞こえる。
「私も、ずっと好き──好き……」
寺田の言葉に顔を上げるとそこには蕩けきった顔をして俺へと思いを伝える寺田がいた。
嬉しい
いいのだろうか
俺と同じ気持ちでいてくれている
細かい事はあとでいい──今は、欲しい
俺は再び寺田の口を塞ぐ。
「ん、んぁ……」
喘ぎ声すら飲み込みたくなる。
「くっ……菜月……呼んでくれるか?」
「んぁ、海都、海都、ん……」
首筋で舌をねっとりと絡ませて懇願すると体を震わせながら応えてくれる。かわいい人……。ゆっくりと下着に手を掛けるとそこはもう欲の海に浸かっていた……。
雨音が窓に当たる。横殴りの雨のようだ。
自分の鼓動がうるさくてそんなことにも気づかなかった。
雨音と舌が絡み合う音が混じり合いより心が昂ぶる。
あぁ、雨音が俺たちを包む──。
一瞬自分がどこにいるのか分からなかった。直ぐに自分の胸の中で眠る小さな存在に気付くと俺に緊張が走る。
寺田が、いる。
なぜ? シャワーを借りたまでは覚えている。いや、まて、その後に薬を飲ましてくれたか?
温かくて柔らかい。
寝顔が見たい──。
うっすら見える枕元のライトに手を伸ばすと一気に自分の周りの視界が良好になる。
そこには俺の胸の中で眠る寺田がいた。いつものスーツ姿と違い、部屋着のラフな格好なので随分と幼い。髪を下ろしているので甘いシャンプーの香りが鼻腔をくすぐる。
自分の上半身が裸なのもあり、まるで情事の最中な気がして胸が高鳴り始める。
だめだろ、寺田は──社内恋愛しないって言っていた。
俺は入社してすぐ寺田に恋をした。
慣れないヒールに苦戦しながらちょこまかと動く姿が可愛かった。今では高めのヒールを履きこなし、クレーム対応に右に出るものはいない。そんなカッコいい女になった。
入社してしばらくして共通の友人に呆気なく俺の気持ちがバレた。遠藤という女だったが、そいつが寺田は彼氏がいて会社では面倒だから恋愛したくないと言っていると教えてくれた。その遠藤もいつのまにか寿退社して今はどこでなにしているか知らない。
本人に恋愛について聞くと「まぁ、ね」と誤魔化されそれから寺田にはそういう話は振らなくなった。
人伝てに彼氏がどうとか別れたとか、また付き合ったとかを耳にしていた。
俺も彼女が出来たりしたのでそれからよき同僚として付き合っていたが、寺田のことはいつも気になった。
髪の毛をくくり直す時……
笑って耳に髪をかける癖……
俺と目が合うと少し伏せ目になるところ……
そんな寺田が気になり相変わらず目で追う。あぁ、俺まだ寺田のことが好きなままなんだ──そう自覚するのに時間は掛からなかった。
それからは叶わない恋と諦めそれなりに女性と付き合ったが、結局毎日寺田と顔を合わせるので長続きはしなかった。虚しくなり最近は誰とも付き合っていない。
だけど、寺田は俺のことを同期としてしか見ない。こうして部屋に入れ、シャワーを浴びているのも同期だからと言っていた。
でも……それも限界だ。
胸の中にいる好きな女に手を出さないほど、俺もだめなやつじゃない。
そっと、寺田の肩に触れ、そのまま腕にかけてなぞる。こうして触れると細身の寺田の体が思ったより柔らかいことが分かる。ただそれだけの事で俺は鳥肌が立ちはじめた。
触れたい、もっと──。
そのまま頰に触れて指でその力の抜けた唇をなぞる。寺田の目が少し動いた。
瞼が開きそうになる瞬間、俺は耐えきれず寺田の唇を塞いだ。まるで食べるように唇を食べる。少し薄目を開けると目の前で大きな目を開けたまま食べられ続ける寺田の顔があった。
無理もない、起きてみれば同期の男に襲われているんだがら……でもなぜか寺田はそのままゆっくりと体の力を抜き目を閉じて、俺のキスに流れをまかせ始めた。
応えてくれている、俺のキスに──。
それだけで興奮して舌を伸ばして寺田の中を感じる。俺が熱があるからか寺田の中は冷たく感じて気持ちがいい。流れる唾液ですら冷たくて気持ちがいい。
「ふぁ……んん……」
寺田の合間に聞こえる息継ぎの声で俺はまた我を忘れる。脳が焦げそうだ。
口の中で俺たちの舌が蕩け合い馴染みのあった頃、俺は寺田を解放した。
寺田の顔は熱を持ち、視線はしっかりと俺を捉えていた。狙うようなそんな表情だ。
欲情している──そんな瞳をしていた。
「寺田……抱かせてくれるか」
俺の声は掠れて、思ったより低い声だった。同意を求めて断られてもそのまま抱いてしまいそうだ。もう、自分の全てを目の前の女にぶつけたかった。
やっぱり寺田が、好きだ──欲しい。
「……いいよ、私も、抱いて欲しい」
その返事を皮切りに俺は頭を何かで打たれたようにタガが外れたのがわかった。
直ぐに寺田を仰向けにしてその細い首にキスをする。耳を舌で舐めあげてやると一気に寺田の体が硬くなるのがわかった。もう一方の手で上のシャツをめくり上げるとブラのホックを外し、その膨らみを揉みしだく……。
「や、あぁ」
恥ずかしそうに顔を背けようとするがその顔を逃さまいとこちらに向けるとそのまま唇を奪う。さっき奪ったのにそこはまた冷たくて気持ちがいい。
「ああ、寺田はどこもかしこも……甘いな」
俺はうわ言のように甘い、甘いと言ってしまう。
だって本当に甘いんだ。
胸の頂の周りに舌を沿わせると、寺田はそれを見てまた一気に熱が上がったようだ。鳥肌が立ちみるみる肌がピンク色に染まる。その頂に口に含むとピクンと背中が反り上がり、細いウエストの後ろに腕が入る。
しばらく胸で遊んでやる。俺の手の中で自由な形に変わるその柔らかいものはこの時間俺だけのものになった。舌で舐め上げ吸い上げ続けて胸の周りや脇腹には俺のものという証拠の赤い花が咲いた。
それを上から見て満足げに微笑むと、寺田が何かを言いたげな顔をした。
「……どうした?」
「……エロ、い」
寺田の言葉に思わず笑ってしまう。それは寺田の方だろう。
俺は一気に上の服を脱がしてやるとベッドには組み敷かれた好きな女の姿がある。髪の毛は下ろし胸の周りには俺の痕を残し、欲情した目でこちらを見上げる。そのまま下着を残しズボンを抜き取る。
夢にまで見た寺田の姿に下腹部が脈を打つのが分かり今すぐ解放したくなる。
「好きだ」
俺は思わず口にしてしまった。
ずっと思っていた言葉を。一度言ってしまえば何度も言いたくなる。
好きといい胸を掴み上げ捏ねる。激しく舌を使い頂を押しつぶしてやるとため息交じりの声が聞こえる。
「私も、ずっと好き──好き……」
寺田の言葉に顔を上げるとそこには蕩けきった顔をして俺へと思いを伝える寺田がいた。
嬉しい
いいのだろうか
俺と同じ気持ちでいてくれている
細かい事はあとでいい──今は、欲しい
俺は再び寺田の口を塞ぐ。
「ん、んぁ……」
喘ぎ声すら飲み込みたくなる。
「くっ……菜月……呼んでくれるか?」
「んぁ、海都、海都、ん……」
首筋で舌をねっとりと絡ませて懇願すると体を震わせながら応えてくれる。かわいい人……。ゆっくりと下着に手を掛けるとそこはもう欲の海に浸かっていた……。
雨音が窓に当たる。横殴りの雨のようだ。
自分の鼓動がうるさくてそんなことにも気づかなかった。
雨音と舌が絡み合う音が混じり合いより心が昂ぶる。
あぁ、雨音が俺たちを包む──。
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