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75.メガネ
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カタカタカタカタカタ──タタン
会議室にキーボードを叩く音が響く。俺は苦笑いしながらその姿を見つめる。
「先輩、休憩……しませんか?」
「だめよ、今いいところなの。先に休んでて」
俺の二個上の先輩の津村先輩は仕事の鬼だ。データ入力や処理にかけては社内で右に出るものはいない。パソコン画面を見つめるその目は虚ろできっとゾーンに入っているんだろう。
俺は入れてきたコーヒーを邪魔にならないところへ置く。
先輩は普段メガネをかけていない。パソコン画面や細かな数字を確認する時だけメガネかける。因みに黒縁メガネだ。メガネをかけると性格がきついように見えるが、これは先輩の戦闘服だ。
カタカタカタカタカタ
タタタ……タン──。
リズムが変わった。終わったようだ。
そのままメガネを取り先輩は目頭を手根で押す。そのままゆっくりと目を開けて俺の姿を捉えるとにっこりと微笑む。
「ありがとう、澤村くん」
「いえ」
この瞬間がたまらなくいい! 好きだ!
普段の先輩はほわんとマイナスイオンが出ている癒し系だ。さっきまでの尖った感じは消える。どちらの先輩も素敵だ。
コーヒーで癒されながらお菓子を食べる先輩も、データを正確に打ち込む時の凛々しい顔も──可愛い。
俺は会議室のドアの前に立つと先輩を見つめる。俺の意図に気付いた先輩は周りを確認すると顔を赤らめる。この位置は外から会議室の中の様子が見えない唯一の位置だ。
俺と先輩は付き合っている。
社内恋愛禁止のこの会社で気持ちが通じる日がくるとは思わなかった。それは一期一会だ。
あのチャンスを逃せばきっと、このすぐ赤らめる頰に触れることもなかった。ただ、凛としたその背中を見つめるだけだっただろう。
「先輩」
「澤村くん……」
俺たちは秘密のキスをする。
許されない関係だが、止められるような浅い思いではない。先輩が終わりの合図と言わんばかりにメガネを掛ける。さぁ、戦闘開始だ。
「続きは、また仕事が終わってからね」
「楽しみです」
俺たちは再びパソコンと書類に集中した。
会議室にキーボードを叩く音が響く。俺は苦笑いしながらその姿を見つめる。
「先輩、休憩……しませんか?」
「だめよ、今いいところなの。先に休んでて」
俺の二個上の先輩の津村先輩は仕事の鬼だ。データ入力や処理にかけては社内で右に出るものはいない。パソコン画面を見つめるその目は虚ろできっとゾーンに入っているんだろう。
俺は入れてきたコーヒーを邪魔にならないところへ置く。
先輩は普段メガネをかけていない。パソコン画面や細かな数字を確認する時だけメガネかける。因みに黒縁メガネだ。メガネをかけると性格がきついように見えるが、これは先輩の戦闘服だ。
カタカタカタカタカタ
タタタ……タン──。
リズムが変わった。終わったようだ。
そのままメガネを取り先輩は目頭を手根で押す。そのままゆっくりと目を開けて俺の姿を捉えるとにっこりと微笑む。
「ありがとう、澤村くん」
「いえ」
この瞬間がたまらなくいい! 好きだ!
普段の先輩はほわんとマイナスイオンが出ている癒し系だ。さっきまでの尖った感じは消える。どちらの先輩も素敵だ。
コーヒーで癒されながらお菓子を食べる先輩も、データを正確に打ち込む時の凛々しい顔も──可愛い。
俺は会議室のドアの前に立つと先輩を見つめる。俺の意図に気付いた先輩は周りを確認すると顔を赤らめる。この位置は外から会議室の中の様子が見えない唯一の位置だ。
俺と先輩は付き合っている。
社内恋愛禁止のこの会社で気持ちが通じる日がくるとは思わなかった。それは一期一会だ。
あのチャンスを逃せばきっと、このすぐ赤らめる頰に触れることもなかった。ただ、凛としたその背中を見つめるだけだっただろう。
「先輩」
「澤村くん……」
俺たちは秘密のキスをする。
許されない関係だが、止められるような浅い思いではない。先輩が終わりの合図と言わんばかりにメガネを掛ける。さぁ、戦闘開始だ。
「続きは、また仕事が終わってからね」
「楽しみです」
俺たちは再びパソコンと書類に集中した。
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