23 / 101
23.公園
しおりを挟む
『おい、いるんだろ? 出てこいよ』
「またか、いいよ。すぐ行く」
私はパーカーを羽織り携帯電話だけ持ち部屋を出る。台所にいる母親に声を掛けると玄関を飛び出した。こんな風に夜遅く出るのは珍しいことではない。
少し肌寒くなった夜風に肩をすくめる。歩いてしばらくすると幼い頃からよく遊んだ公園が見えてきた。この時間は所々ある電灯だけで少しさみしい雰囲気だ。日中がよく陽が当たるだけに余計にそう感じるのかもしれない。
電灯の下に置かれたベンチには電話の相手が既に到着していたようだ。
「おう、きたか」
「来たかじゃないわよ、今日はどうしたの?」
ベンチに座るヤスは高校の友達だ。日直当番になったのが縁で仲良くなった。ヤスの黒板消しの技術の高さに感銘を受けたのがきっかけで仲良くなった。ヤスは見た目は軽そうだが、実は真面目な一面がある。
それは恋愛だ。ヤスは恥ずかしがり屋でシャイなのだ。多くの人が寡黙で硬派だと勘違いしている。それが違うと知っている人間は少ない。ヤスには好きな人がいる。誰か教えて欲しいと言っても私に言うと上手くいかない気がするといって逃げられた。
少しでも力になればと思ったのだが……仕方がない。
「んで? 今日はなんの相談? デートコース?」
ふざけて付き合ってもいないのにそんなことを言う私を見て、ヤスは大きなため息をつく。
「理想の、告白ってなんだ?」
「はい?」
思わず吹き出しそうになる。何真面目な顔してウブな質問してくれているのかと慌ててしまう。可愛すぎる……!
ヤスの可愛さに悶絶しているとつられるようにヤスも真っ赤になっている。
「あー、ごめん。えっと……理想の告白? いやー、考えたことないな……」
「あぁ、理想のキスでもいい」
ふむ、理想のキス……理想のキス……あ、テレビでやってたやつ。
「こう、突然予期せぬ感じで、こう、急にされるキスとか」
「突然?」
「うん、なんかキューンってときめくんじゃない? そんなシュチュ絶対ないけどね! テレビの中──」
話しているとヤスの手が私の肩に伸びてきた。
え?
気がつくと私はヤスにキスされていた。髪の中に指を入れて引き寄せられ角度を変えて押し付けらる。本当に突然すぎて目も閉じられない。ヤスの顔が目の前にある。唇が触れている……抱きとめられているこの現状がどこか他人事のように感じられる。
ゆっくりとヤスが離れると私よりヤスの方が真っ赤になっている。
「なんとか言えよ」
「え、えっとあの結構なお手前で──」
「違うだろ」
「……よかった、と思う」
今の私はどんな顔をしているんだろう。ヤスは吹き出した。
「お前、ようやく俺のこと意識したな。どんだけ鈍感なんだよ」
「な、何よ鈍感って!」
「俺、ずっとお前が好きなんだけど」
ヤスが真剣な瞳でこちらを見る。
ヤスが私を好き? 恋愛相談していたヤスが?
ヤスが私との距離を詰める。私の腕を取り顎に手を当て再び口付けた。
「……わかった?」
「ワカリマシタ」
その日赤面したまま帰宅した私を見て「走って帰ってこなくてもいいのに」と言った。
私は「走りたかったの」と答えた。
「またか、いいよ。すぐ行く」
私はパーカーを羽織り携帯電話だけ持ち部屋を出る。台所にいる母親に声を掛けると玄関を飛び出した。こんな風に夜遅く出るのは珍しいことではない。
少し肌寒くなった夜風に肩をすくめる。歩いてしばらくすると幼い頃からよく遊んだ公園が見えてきた。この時間は所々ある電灯だけで少しさみしい雰囲気だ。日中がよく陽が当たるだけに余計にそう感じるのかもしれない。
電灯の下に置かれたベンチには電話の相手が既に到着していたようだ。
「おう、きたか」
「来たかじゃないわよ、今日はどうしたの?」
ベンチに座るヤスは高校の友達だ。日直当番になったのが縁で仲良くなった。ヤスの黒板消しの技術の高さに感銘を受けたのがきっかけで仲良くなった。ヤスは見た目は軽そうだが、実は真面目な一面がある。
それは恋愛だ。ヤスは恥ずかしがり屋でシャイなのだ。多くの人が寡黙で硬派だと勘違いしている。それが違うと知っている人間は少ない。ヤスには好きな人がいる。誰か教えて欲しいと言っても私に言うと上手くいかない気がするといって逃げられた。
少しでも力になればと思ったのだが……仕方がない。
「んで? 今日はなんの相談? デートコース?」
ふざけて付き合ってもいないのにそんなことを言う私を見て、ヤスは大きなため息をつく。
「理想の、告白ってなんだ?」
「はい?」
思わず吹き出しそうになる。何真面目な顔してウブな質問してくれているのかと慌ててしまう。可愛すぎる……!
ヤスの可愛さに悶絶しているとつられるようにヤスも真っ赤になっている。
「あー、ごめん。えっと……理想の告白? いやー、考えたことないな……」
「あぁ、理想のキスでもいい」
ふむ、理想のキス……理想のキス……あ、テレビでやってたやつ。
「こう、突然予期せぬ感じで、こう、急にされるキスとか」
「突然?」
「うん、なんかキューンってときめくんじゃない? そんなシュチュ絶対ないけどね! テレビの中──」
話しているとヤスの手が私の肩に伸びてきた。
え?
気がつくと私はヤスにキスされていた。髪の中に指を入れて引き寄せられ角度を変えて押し付けらる。本当に突然すぎて目も閉じられない。ヤスの顔が目の前にある。唇が触れている……抱きとめられているこの現状がどこか他人事のように感じられる。
ゆっくりとヤスが離れると私よりヤスの方が真っ赤になっている。
「なんとか言えよ」
「え、えっとあの結構なお手前で──」
「違うだろ」
「……よかった、と思う」
今の私はどんな顔をしているんだろう。ヤスは吹き出した。
「お前、ようやく俺のこと意識したな。どんだけ鈍感なんだよ」
「な、何よ鈍感って!」
「俺、ずっとお前が好きなんだけど」
ヤスが真剣な瞳でこちらを見る。
ヤスが私を好き? 恋愛相談していたヤスが?
ヤスが私との距離を詰める。私の腕を取り顎に手を当て再び口付けた。
「……わかった?」
「ワカリマシタ」
その日赤面したまま帰宅した私を見て「走って帰ってこなくてもいいのに」と言った。
私は「走りたかったの」と答えた。
1
お気に入りに追加
69
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
大人な軍人の許嫁に、抱き上げられています
真風月花
恋愛
大正浪漫の恋物語。婚約者に子ども扱いされてしまうわたしは、大人びた格好で彼との逢引きに出かけました。今日こそは、手を繋ぐのだと固い決意を胸に。
シチュボ(女性向け)
身喰らう白蛇
恋愛
自発さえしなければ好きに使用してください。
アドリブ、改変、なんでもOKです。
他人を害することだけはお止め下さい。
使用報告は無しで商用でも練習でもなんでもOKです。
Twitterやコメント欄等にリアクションあるとむせながら喜びます✌︎︎(´ °∀︎°`)✌︎︎ゲホゴホ
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
料理音痴
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
朝目覚めたら。
知らない、部屋だった。
……あー、これってやっちまったって奴ですか?
部屋の主はすでにベッドにいない。
着替えて寝室を出ると、同期の坂下が食事を作っていた。
……ここって、坂下の部屋?
てか、しゃべれ!!
坂下から朝食を勧められ……。
俺から離れるな〜ボディガードの情愛
ラヴ KAZU
恋愛
まりえは十年前襲われそうになったところを亮に救われる。しかしまりえは事件の記憶がない。亮はまりえに一目惚れをして二度とこんな目に合わせないとまりえのボディーガードになる。まりえは恋愛経験がない。亮との距離感にドキドキが止まらない。はじめてを亮に依頼する。影ながら見守り続けると決心したはずなのに独占欲が目覚めまりえの依頼を受ける。「俺の側にずっといろ、生涯お前を守る」二人の恋の行方はどうなるのか
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる