6 / 101
6.放課後
しおりを挟む
その日も開け放たれた教室の窓から外を見ていた。野球部員が運動場を走っている姿が見える。
教室の揺れるカーテンに、制服に、部活動……青春ワード盛り沢山だ。
私は教室で残り、勉強することが多い。別に教室に用事があるわけでもない、ただ下の弟がうるさくて勉強できないだけだ。だからといって図書館も静かすぎて居心地が悪い。普段からいるこの場所で勉強するのが一番だ。
「あれ? 加藤……まだいたんだ」
教室のドアが開くと学ラン姿の爽やかな少年が現れる。学級委員長の山崎君だ。たしか今日は委員長会議だったことを思い出す。
頭も良くて責任感のある彼は教師からも生徒からも人気だ。
「うん、勉強してんの」
机に置かれた参考書に視線を戻すと横髪を耳に掻き上げる。山崎君は窓際の私の席にやってくると、「どれどれ」と言い私の計算式を見始める。
山崎君は今からバスケの練習があるだろうに私の苦手な数学を教えてくれた。やはり彼はすごい、さっきまで到底無理だと思っていた答えを引き出してくれた。
「すごい、山崎君……ありがとう」
嬉しい。頰を赤らめ興奮しつつもお礼を言うと山崎は眩しそうな顔をした。
窓から風が吹きカーテンがふわりと浮いた。窓側の席はたまにこうして淡いピンクのカーテンに包まれる。
山崎君とカーテンにくるまって見えるこの状況に私は思わず固まってしまった。まるで一気に二人っきりだという事を私たちに教えてくれた。動悸がひどく息苦しい。なのになぜか私たちは視線を合わせたまま動けない。
「……ごめん」
そういうとふわりと羽のような口付けが落とされた。一瞬のことなのにいつまでも残る唇の感触に顔が赤くなる、まるでもっとしていたいと体が訴えているようだ。山崎は真剣な目でこちらの顔を覗き込む。
「好き、だ」
みるみる山崎の顔が赤くなる。私は室内競技で焼けてもいない白い肌がみるみる赤くなるのを見ていた。信じられないが、こんな顔をさせているのは自分だと思うと嬉しくなる。叶うはずがないと思っていた淡い恋心が激しく動き出した。
「わたし、も、山崎君が好き」
窓際のカーテンが再びふわりと浮く。
風とカーテンのせいで私の髪の毛が乱れるとそれを戻すように山崎が髪に触れ耳にかけてやる。恥ずかしそうにはにかんだ笑いを浮かべると二人はまたゆっくりと近づき瞳を閉じた──。
教室の揺れるカーテンに、制服に、部活動……青春ワード盛り沢山だ。
私は教室で残り、勉強することが多い。別に教室に用事があるわけでもない、ただ下の弟がうるさくて勉強できないだけだ。だからといって図書館も静かすぎて居心地が悪い。普段からいるこの場所で勉強するのが一番だ。
「あれ? 加藤……まだいたんだ」
教室のドアが開くと学ラン姿の爽やかな少年が現れる。学級委員長の山崎君だ。たしか今日は委員長会議だったことを思い出す。
頭も良くて責任感のある彼は教師からも生徒からも人気だ。
「うん、勉強してんの」
机に置かれた参考書に視線を戻すと横髪を耳に掻き上げる。山崎君は窓際の私の席にやってくると、「どれどれ」と言い私の計算式を見始める。
山崎君は今からバスケの練習があるだろうに私の苦手な数学を教えてくれた。やはり彼はすごい、さっきまで到底無理だと思っていた答えを引き出してくれた。
「すごい、山崎君……ありがとう」
嬉しい。頰を赤らめ興奮しつつもお礼を言うと山崎は眩しそうな顔をした。
窓から風が吹きカーテンがふわりと浮いた。窓側の席はたまにこうして淡いピンクのカーテンに包まれる。
山崎君とカーテンにくるまって見えるこの状況に私は思わず固まってしまった。まるで一気に二人っきりだという事を私たちに教えてくれた。動悸がひどく息苦しい。なのになぜか私たちは視線を合わせたまま動けない。
「……ごめん」
そういうとふわりと羽のような口付けが落とされた。一瞬のことなのにいつまでも残る唇の感触に顔が赤くなる、まるでもっとしていたいと体が訴えているようだ。山崎は真剣な目でこちらの顔を覗き込む。
「好き、だ」
みるみる山崎の顔が赤くなる。私は室内競技で焼けてもいない白い肌がみるみる赤くなるのを見ていた。信じられないが、こんな顔をさせているのは自分だと思うと嬉しくなる。叶うはずがないと思っていた淡い恋心が激しく動き出した。
「わたし、も、山崎君が好き」
窓際のカーテンが再びふわりと浮く。
風とカーテンのせいで私の髪の毛が乱れるとそれを戻すように山崎が髪に触れ耳にかけてやる。恥ずかしそうにはにかんだ笑いを浮かべると二人はまたゆっくりと近づき瞳を閉じた──。
1
お気に入りに追加
69
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
大人な軍人の許嫁に、抱き上げられています
真風月花
恋愛
大正浪漫の恋物語。婚約者に子ども扱いされてしまうわたしは、大人びた格好で彼との逢引きに出かけました。今日こそは、手を繋ぐのだと固い決意を胸に。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
シチュボ(女性向け)
身喰らう白蛇
恋愛
自発さえしなければ好きに使用してください。
アドリブ、改変、なんでもOKです。
他人を害することだけはお止め下さい。
使用報告は無しで商用でも練習でもなんでもOKです。
Twitterやコメント欄等にリアクションあるとむせながら喜びます✌︎︎(´ °∀︎°`)✌︎︎ゲホゴホ
俺から離れるな〜ボディガードの情愛
ラヴ KAZU
恋愛
まりえは十年前襲われそうになったところを亮に救われる。しかしまりえは事件の記憶がない。亮はまりえに一目惚れをして二度とこんな目に合わせないとまりえのボディーガードになる。まりえは恋愛経験がない。亮との距離感にドキドキが止まらない。はじめてを亮に依頼する。影ながら見守り続けると決心したはずなのに独占欲が目覚めまりえの依頼を受ける。「俺の側にずっといろ、生涯お前を守る」二人の恋の行方はどうなるのか
料理音痴
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
朝目覚めたら。
知らない、部屋だった。
……あー、これってやっちまったって奴ですか?
部屋の主はすでにベッドにいない。
着替えて寝室を出ると、同期の坂下が食事を作っていた。
……ここって、坂下の部屋?
てか、しゃべれ!!
坂下から朝食を勧められ……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる