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17.遠藤夫婦の晩御飯
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「よし、んじゃ食べようぜ」
洋介が赤と白の水玉模様のエプロンを外す。フリルがついたこのエプロンは元々洋介が弘子に付けて欲しいと購入したのだが、いつのまにか自分が料理する時の必需品になっている。
今晩のメニューは洋介お手製のカレーピラフだ。ダイニングテーブルに座ると手を合わせる。
「いただきます」
「はい、いただきます」
スパイスが効いていて食欲が進む。最近イラついていたので余計に辛いものが美味しく感じる。
「ねぇ、洋介……涼香、変わったと思わない?」
「んー、涼香ちゃんだけじゃないと思うけどね。大輝もなんか、柔らかくなったよ」
弘子にしか分からない部分、洋介にしか分からない部分がある。弘子はスプーンでわかめスープを掬って啜る。
「あの二人、惹かれ合ってない?」
「んー、そう見えるけど」
洋介の言葉に弘子が顔を上げる。その目はキラキラしていた。弘子の表情に洋介は苦笑いをする。
「いや、待て待て。そう簡単じゃない。心に他の人がいるんだから」
洋介が銀のスプーンを弘子の顔の前に差し出すようにビシッと構える。
なんとテーブルマナーの悪いことだろう。
「一人は、その相手に再会して、もう一人は……忘れられないだろ……さすがにそう簡単には──」
「なんで、人間って気持ちを切り替えていけないんだろうねぇ……はぁ……」
弘子はもどかしいのかカレーピラフを豪快に救って口に入れる。
「傷ついた分、それは残るよ。強烈に……フッた方よりフラれた方が残るだろ。人間は成就できなかった思いのほうが記憶に残るように出来てるんだって。それが、生きていく力になるときも、あるから……」
洋介の言葉に弘子が瞬きを繰り返す。珍しい……洋介が真面目だ。
「どうすれば、忘れるんだろう……忘れたほうが幸せなのにね、二人とも」
「あの二人は少しずつ進んでる。見守るしかないねぇ、出会って二ヶ月ぐらいか?……随分変わったんだから、まだまだ変わるでしょ」
「あーもどかしい!……でも、二年も変わらなかった涼香が変わったのは嬉しいかな。変えたのが私じゃないのは……悔しいけど」
弘子は大きい口を開けてサラダを頬張る。バリバリとレタスのいい音が響く。
「それは、俺だってそうだ。でも、あの二人を引き合わせたの俺たちの手柄だろ。上手くいったら美味いもんでも奢ってもらわないとな」
洋介はニヤリと悪そうな顔をしている。弘子もつられて同じように笑う。本当に似た者夫婦だ。
「思いはひとつだ。幸せにさえなってくれればいい、そうだろ?」
洋介が付け加えた一言に弘子が同意するように置いてあったウーロン茶のグラスを傾ける。洋介も同じくそれを手に取ると傾けた。カチンといい音鳴らし乾杯すると遠藤夫婦はそれをぐいっと飲んだ。
洋介が赤と白の水玉模様のエプロンを外す。フリルがついたこのエプロンは元々洋介が弘子に付けて欲しいと購入したのだが、いつのまにか自分が料理する時の必需品になっている。
今晩のメニューは洋介お手製のカレーピラフだ。ダイニングテーブルに座ると手を合わせる。
「いただきます」
「はい、いただきます」
スパイスが効いていて食欲が進む。最近イラついていたので余計に辛いものが美味しく感じる。
「ねぇ、洋介……涼香、変わったと思わない?」
「んー、涼香ちゃんだけじゃないと思うけどね。大輝もなんか、柔らかくなったよ」
弘子にしか分からない部分、洋介にしか分からない部分がある。弘子はスプーンでわかめスープを掬って啜る。
「あの二人、惹かれ合ってない?」
「んー、そう見えるけど」
洋介の言葉に弘子が顔を上げる。その目はキラキラしていた。弘子の表情に洋介は苦笑いをする。
「いや、待て待て。そう簡単じゃない。心に他の人がいるんだから」
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なんとテーブルマナーの悪いことだろう。
「一人は、その相手に再会して、もう一人は……忘れられないだろ……さすがにそう簡単には──」
「なんで、人間って気持ちを切り替えていけないんだろうねぇ……はぁ……」
弘子はもどかしいのかカレーピラフを豪快に救って口に入れる。
「傷ついた分、それは残るよ。強烈に……フッた方よりフラれた方が残るだろ。人間は成就できなかった思いのほうが記憶に残るように出来てるんだって。それが、生きていく力になるときも、あるから……」
洋介の言葉に弘子が瞬きを繰り返す。珍しい……洋介が真面目だ。
「どうすれば、忘れるんだろう……忘れたほうが幸せなのにね、二人とも」
「あの二人は少しずつ進んでる。見守るしかないねぇ、出会って二ヶ月ぐらいか?……随分変わったんだから、まだまだ変わるでしょ」
「あーもどかしい!……でも、二年も変わらなかった涼香が変わったのは嬉しいかな。変えたのが私じゃないのは……悔しいけど」
弘子は大きい口を開けてサラダを頬張る。バリバリとレタスのいい音が響く。
「それは、俺だってそうだ。でも、あの二人を引き合わせたの俺たちの手柄だろ。上手くいったら美味いもんでも奢ってもらわないとな」
洋介はニヤリと悪そうな顔をしている。弘子もつられて同じように笑う。本当に似た者夫婦だ。
「思いはひとつだ。幸せにさえなってくれればいい、そうだろ?」
洋介が付け加えた一言に弘子が同意するように置いてあったウーロン茶のグラスを傾ける。洋介も同じくそれを手に取ると傾けた。カチンといい音鳴らし乾杯すると遠藤夫婦はそれをぐいっと飲んだ。
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