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10.勇気
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ベッドの上にはあの日もらった紙ナプキンが置かれている。その番号を目にしていると本当にあの日のことが夢ではなく現実に起こった事だと実感する。
武人は一体どういうつもりでこれを渡したのだろうか……。
意を決して携帯電話に文字を打ち込む。
──元気?連絡が遅くなってごめんね
差し障りのない言葉を打ち込んでみるが本質的な事は何一つ言えない。まるで昔の友人にするメールの内容みたいで思わず笑えてくる。こんな風に元気かどうかなんて聞かなくてもいい仲だったというのに。
既読になるまでの間じっと画面を見つめていたが怖くなり風呂に行く。何かをしているほうがマシだ。シャワーを浴びている間に考えることは二つだけだ。
風呂から上がった後、返信が来ているのかそうでないか。それだけ。
濡れた髪をタオルで包み部屋に戻ってきて携帯電話を手に取る。真っ暗な画面に明かりがつく……。
あ、きてる──。
ドキドキする。久しぶりの感覚だ。
はやる気持ちとは裏腹にゆっくりと携帯画面を操作する。
──ありがとう、もしかしたら連絡くれないかもしれないと思ってた。嬉しいよ
──ごめんね。元気そうでよ
そこまで打ち込んで文字を消す。さっきから元気かどうかを聞く文章しか打ててない。
──ごめんね。また機会があったら飲みにでも行こうね
涼香は本当に友達のような事しか言えなかった。怖かった。またやり直せると期待すれば、傷つくのが目に見えている。
──また誘うよ。楽しみにしていて
武人の真意はメールからは分からない。それでもあの武人と繋がっていることが嬉しかった。たとえこんな繋がり方でも。
そのまま涼香は大輝に報告のメールをする。
──連絡したよ。返事きた。飲みに行く……かもしれない。わかんないけど。
すぐに大輝から返事がきた。
──頑張ったな。大きな進展じゃん! 楽しみだな。
大輝のメールには前向きな言葉が並ぶ。涼香を励まそうとしているのが分かる。半乾きのままだった髪に巻いたバスタオルを外す。あの日の大輝に触れられた時の温もりを思い出す。店で泣き出した私の頭を抱きしめて、涙ごと包み込んでくれた。
ドライヤーを取り出し髪を乾かしていく。すっかりサラサラに乾いた頃、携帯電話にメールが届いていた。大輝からのメールだった。
──話聞いてくれて、助かった。ありがと
その一文を見て涼香は口元が緩む。
少しは楽になったのだろうか。希さんの話をする大輝くんは本当に切なそうだった。少し私の胸の中で泣くことができたので、少しは前に進んだのかもしれない。
私も、大輝くんもほんのちょっぴりだけど、進んだ。
涼香はもう一人 報告しなくてはいけない人物を思い出した。メールするとすぐに電話がかかってきた。今夜は長くなりそうだ。
「もしもし……」
『ちょっと! 早く言いなさいよ!』
『なになに? どしたー?』
電話の後ろで洋介の間抜けな声が聞こえる。涼香は苦笑いを浮かべつつ、ベッドに横になって武人のことを話しはじめた。
武人は一体どういうつもりでこれを渡したのだろうか……。
意を決して携帯電話に文字を打ち込む。
──元気?連絡が遅くなってごめんね
差し障りのない言葉を打ち込んでみるが本質的な事は何一つ言えない。まるで昔の友人にするメールの内容みたいで思わず笑えてくる。こんな風に元気かどうかなんて聞かなくてもいい仲だったというのに。
既読になるまでの間じっと画面を見つめていたが怖くなり風呂に行く。何かをしているほうがマシだ。シャワーを浴びている間に考えることは二つだけだ。
風呂から上がった後、返信が来ているのかそうでないか。それだけ。
濡れた髪をタオルで包み部屋に戻ってきて携帯電話を手に取る。真っ暗な画面に明かりがつく……。
あ、きてる──。
ドキドキする。久しぶりの感覚だ。
はやる気持ちとは裏腹にゆっくりと携帯画面を操作する。
──ありがとう、もしかしたら連絡くれないかもしれないと思ってた。嬉しいよ
──ごめんね。元気そうでよ
そこまで打ち込んで文字を消す。さっきから元気かどうかを聞く文章しか打ててない。
──ごめんね。また機会があったら飲みにでも行こうね
涼香は本当に友達のような事しか言えなかった。怖かった。またやり直せると期待すれば、傷つくのが目に見えている。
──また誘うよ。楽しみにしていて
武人の真意はメールからは分からない。それでもあの武人と繋がっていることが嬉しかった。たとえこんな繋がり方でも。
そのまま涼香は大輝に報告のメールをする。
──連絡したよ。返事きた。飲みに行く……かもしれない。わかんないけど。
すぐに大輝から返事がきた。
──頑張ったな。大きな進展じゃん! 楽しみだな。
大輝のメールには前向きな言葉が並ぶ。涼香を励まそうとしているのが分かる。半乾きのままだった髪に巻いたバスタオルを外す。あの日の大輝に触れられた時の温もりを思い出す。店で泣き出した私の頭を抱きしめて、涙ごと包み込んでくれた。
ドライヤーを取り出し髪を乾かしていく。すっかりサラサラに乾いた頃、携帯電話にメールが届いていた。大輝からのメールだった。
──話聞いてくれて、助かった。ありがと
その一文を見て涼香は口元が緩む。
少しは楽になったのだろうか。希さんの話をする大輝くんは本当に切なそうだった。少し私の胸の中で泣くことができたので、少しは前に進んだのかもしれない。
私も、大輝くんもほんのちょっぴりだけど、進んだ。
涼香はもう一人 報告しなくてはいけない人物を思い出した。メールするとすぐに電話がかかってきた。今夜は長くなりそうだ。
「もしもし……」
『ちょっと! 早く言いなさいよ!』
『なになに? どしたー?』
電話の後ろで洋介の間抜けな声が聞こえる。涼香は苦笑いを浮かべつつ、ベッドに横になって武人のことを話しはじめた。
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