忘れられたら苦労しない

菅井群青

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32.愛を

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「お出ましか…蛇竜サラマンダー。」

 スッと自然な流れで構えをとった。そして改めてサラマンダーを観察する。

 デカイ……剥製にされていた子どものサラマンダーとは比べ物にならない。

 そして一番特徴的なのはだ。あの剥製には腕なんて生えていなかった。
 だとすれば成熟した大人のサラマンダーにしか生えていないものなのだろう。あれで掴まれたら握り潰されてしまうだろうな。

「さて、ラン…俺が何とか近接で相手をしてみるから、後ろから魔法で攻撃してくれ。アイツには普通の物理攻撃は効かないらしいからな。」

「わかったわ。」

「じゃあ頼んだぞッ!!」

 強く地面を蹴り、空中へと跳び上がる。サラマンダーの顔面を攻撃するためだ。

「シャアッ!!」

 サラマンダーは近付いてくる俺を丸呑みにしようと、大きな口を開けてこちらへ首を伸ばしてきた。

「フッ!!」

 空中で、体を捻り迫り来るサラマンダーの顎を蹴りあげた。
 衝撃で大きく仰け反ったサラマンダーをランの魔法が追撃する。

「フロストサイクロン!!」

 切れ味の鋭い無数の氷の結晶が、竜巻のように回転しサラマンダーに直撃する。
 それによって浅い傷ではあるがサラマンダーの体表に切り傷がつく。

 聞いていた通り、魔法が弱点のようだな。

 一度地面に着地し、再び距離を詰めようとしたが……。

「ッ!!」

 目の前にサラマンダーの酸がぶちまけられた。ジュウジュウと煙を上げて、目の前の地面が溶けていく。

 不味い、こっちは風下か。煙がこちらへと向かって流れてきている。
 風上へ向かって俺は即座に走り出した。俺を追ってサラマンダーは次々と酸を吐きかけてくる。

 飛んでくる酸を躱しながら、なんとか風上に着くと辺りは色んな場所が酸によって溶けジュウジュウと煙が立ち込めていた。
 風上とはいえ、なるべくあの煙は吸わないようにしないとな。

 改めてサラマンダーに向き直ると、サラマンダーは不気味な笑みを浮かべていた。
 その瞬間背筋をゾクゾクッと悪寒が襲う。

(なにかヤバイのが来るッ!! )

 警戒を強めているとサラマンダーは大きく口を開けてブレスの構えをとった。
 そして、先程辺りにばらまいていた酸に向かって炎のブレスを放ったのだ。
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