27 / 38
27.情報屋、健太
しおりを挟む
日曜日の夜、そろそろ毎日恒例のネットゲームをしようと準備していると携帯電話が鳴った。
この時間であればきっと姉ちゃんだろう……そう思い画面を見た。
白い悪魔
一瞬心臓が止まるかと思った。
自分で名前を登録していたが忘れていた。あの後姉ちゃんに白髪頭の女性の話をすると「白髪マダムかしら……」と呟いた。もちろん絶倫の話はしていない。
白髪マダム
きっとこの女性のあだ名なのだろう。登録し直そう。
初めて会った時に半ば無理やり連絡先を交換させられた。スマホを奪われ勝手に自分の携帯電話へと電話をかけた。
「何かあったら連絡するわ」
冗談かと思いきやあれは本気だったらしい。
『こんばんは、ご機嫌いかが?健康的な太い棒くん』
意味のわからない単語が聞こえた気がした。
「えっと、健康的な太い棒ってなんですか?」
『携帯電話の連絡帳の名前にそう登録されているのよ。よく分からないけどあなたの名前よね?』
「予測変換をそのまま入力して登録したんでしょうね。健太ですよ、健太!変更してください」
冗談じゃない……健康的な太い棒だなんて。絶倫の姉がいるだけでもう十分だ。予測変換のせいで一気に自分の名前が嫌になる。
『変え方が分からないの。とりあえずこれでいいわ……ところで、最近お姉さんから悩みを聞いていない?私が聞いても普通としか答えないのよ』
白髪マダムが艶かしい声で尋ねる。なぜここまで姉たちのために頑張ってくれるのかが分からない。
「最近だと、手首が痛いって言ってましたけどね、まぁ、パソコン業務が──」
『やはりね……体位の問題ね』
ん?どうしたのかな?
「いや、姉ちゃんの仕事、データ入力が──」
『きっと、あの体位ね……盲点だったわ。精力ばかりにフォーカスしていたわ。関節にも優しいものを考えないといけないわね。グルコサミンかしら……持久力があるだけに体位の工夫が……チッ……不覚っ』
「聞いちゃいねーな、オイ」
健太は頭が痛くなる。
白髪マダムの情熱は尊敬するが、手首は関係ないと思う。
『これからちょこちょこ電話すると思うわ。その時に絶倫の生理現象とかその他の常識教えてちょうだいね』
「いや、俺、絶倫の姉を持つ弟なだけで。決して絶倫に詳しいわけでは……」
もう誰にも白髪マダムを止められない。
『じゃあね、極太くん』
「健太だ!!!」
いつのまにか電話は切れていた。
絶倫の世界は辛く険しい……だが、健太は大好きな姉のために絶倫について調べ始めた。
「姉ちゃんの幸せのためだ……えっと、絶倫とは──」
健太は役に立たない知識を詰め込むことになった。
ちょうどその頃姉の華子はコインランドリーで洗濯物を乾燥機に回しに来た。鼻歌を歌いながらご機嫌な華子は弟の苦悩を知らない──。
この時間であればきっと姉ちゃんだろう……そう思い画面を見た。
白い悪魔
一瞬心臓が止まるかと思った。
自分で名前を登録していたが忘れていた。あの後姉ちゃんに白髪頭の女性の話をすると「白髪マダムかしら……」と呟いた。もちろん絶倫の話はしていない。
白髪マダム
きっとこの女性のあだ名なのだろう。登録し直そう。
初めて会った時に半ば無理やり連絡先を交換させられた。スマホを奪われ勝手に自分の携帯電話へと電話をかけた。
「何かあったら連絡するわ」
冗談かと思いきやあれは本気だったらしい。
『こんばんは、ご機嫌いかが?健康的な太い棒くん』
意味のわからない単語が聞こえた気がした。
「えっと、健康的な太い棒ってなんですか?」
『携帯電話の連絡帳の名前にそう登録されているのよ。よく分からないけどあなたの名前よね?』
「予測変換をそのまま入力して登録したんでしょうね。健太ですよ、健太!変更してください」
冗談じゃない……健康的な太い棒だなんて。絶倫の姉がいるだけでもう十分だ。予測変換のせいで一気に自分の名前が嫌になる。
『変え方が分からないの。とりあえずこれでいいわ……ところで、最近お姉さんから悩みを聞いていない?私が聞いても普通としか答えないのよ』
白髪マダムが艶かしい声で尋ねる。なぜここまで姉たちのために頑張ってくれるのかが分からない。
「最近だと、手首が痛いって言ってましたけどね、まぁ、パソコン業務が──」
『やはりね……体位の問題ね』
ん?どうしたのかな?
「いや、姉ちゃんの仕事、データ入力が──」
『きっと、あの体位ね……盲点だったわ。精力ばかりにフォーカスしていたわ。関節にも優しいものを考えないといけないわね。グルコサミンかしら……持久力があるだけに体位の工夫が……チッ……不覚っ』
「聞いちゃいねーな、オイ」
健太は頭が痛くなる。
白髪マダムの情熱は尊敬するが、手首は関係ないと思う。
『これからちょこちょこ電話すると思うわ。その時に絶倫の生理現象とかその他の常識教えてちょうだいね』
「いや、俺、絶倫の姉を持つ弟なだけで。決して絶倫に詳しいわけでは……」
もう誰にも白髪マダムを止められない。
『じゃあね、極太くん』
「健太だ!!!」
いつのまにか電話は切れていた。
絶倫の世界は辛く険しい……だが、健太は大好きな姉のために絶倫について調べ始めた。
「姉ちゃんの幸せのためだ……えっと、絶倫とは──」
健太は役に立たない知識を詰め込むことになった。
ちょうどその頃姉の華子はコインランドリーで洗濯物を乾燥機に回しに来た。鼻歌を歌いながらご機嫌な華子は弟の苦悩を知らない──。
1
お気に入りに追加
167
あなたにおすすめの小説
拾った仔猫の中身は、私に嘘の婚約破棄を言い渡した王太子さまでした。面倒なので放置したいのですが、仔猫が気になるので救出作戦を実行します。
石河 翠
恋愛
婚約者に婚約破棄をつきつけられた公爵令嬢のマーシャ。おバカな王子の相手をせずに済むと喜んだ彼女は、家に帰る途中なんとも不細工な猫を拾う。
助けを求めてくる猫を見捨てられず、家に連れて帰ることに。まるで言葉がわかるかのように賢い猫の相手をしていると、なんと猫の中身はあの王太子だと判明する。猫と王子の入れ替わりにびっくりする主人公。
バカは傀儡にされるくらいでちょうどいいが、可愛い猫が周囲に無理難題を言われるなんてあんまりだという理由で救出作戦を実行することになるが……。
もふもふを愛するヒロインと、かまってもらえないせいでいじけ気味の面倒くさいヒーローの恋物語。
ハッピーエンドです。
この作品は、他サイトにも投稿しております。
扉絵は写真ACより pp7さまの作品をお借りしております。
びびあんママ、何故かビルの屋上に行く。
来栖もよもよ&来栖もよりーぬ
大衆娯楽
※連作短編ですが、下記の基本情報を把握していればオールOKです。
●新宿二丁目でバー『メビウス』のママをやっているオネエ。四十代半ば。お人好し。恋人なし。
●バイトの子は椿ちゃん(22)。スレンダーな美女オネエ。
●常連客のラジオのディレクターからの頼みで、人気タレントの逮捕で、その人がやっていた深夜の人生相談番組を穴埋めでやらされるが、引きが強いのか巻き込まれやすいのか事件が起きて「何か持っている」と人気DJに。一回こっきりのハズが、未だに毎週金曜深夜に【びびあんママの人生相談れいでぃお】をやらされている。
●四谷三丁目の三LDKのマンションで暮らしている。ペットは文鳥のチコちゃん。時々自分のアフロなウイッグに特攻してくるのが悩み。
●露出狂のイケメン・仙波ちゃん(26)がハウスキーパーになる。
●そんなびびあんママの日常。
傲慢令嬢は、猫かぶりをやめてみた。お好きなように呼んでくださいませ。愛しいひとが私のことをわかってくださるなら、それで十分ですもの。
石河 翠
恋愛
高飛車で傲慢な令嬢として有名だった侯爵令嬢のダイアナは、婚約者から婚約を破棄される直前、階段から落ちて頭を打ち、記憶喪失になった上、体が不自由になってしまう。
そのまま修道院に身を寄せることになったダイアナだが、彼女はその暮らしを嬉々として受け入れる。妾の子であり、貴族暮らしに馴染めなかったダイアナには、修道院での暮らしこそ理想だったのだ。
新しい婚約者とうまくいかない元婚約者がダイアナに接触してくるが、彼女は突き放す。身勝手な言い分の元婚約者に対し、彼女は怒りを露にし……。
初恋のひとのために貴族教育を頑張っていたヒロインと、健気なヒロインを見守ってきたヒーローの恋物語。
ハッピーエンドです。
この作品は、別サイトにも投稿しております。
表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。
【完結】恋人との子を我が家の跡取りにする? 冗談も大概にして下さいませ
水月 潮
恋愛
侯爵家令嬢アイリーン・エヴァンスは遠縁の伯爵家令息のシリル・マイソンと婚約している。
ある日、シリルの恋人と名乗る女性・エイダ・バーク男爵家令嬢がエヴァンス侯爵邸を訪れた。
なんでも彼の子供が出来たから、シリルと別れてくれとのこと。
アイリーンはそれを承諾し、二人を追い返そうとするが、シリルとエイダはこの子を侯爵家の跡取りにして、アイリーンは侯爵家から出て行けというとんでもないことを主張する。
※設定は緩いので物語としてお楽しみ頂けたらと思います
☆HOTランキング20位(2021.6.21)
感謝です*.*
HOTランキング5位(2021.6.22)
婚約者とその幼なじみの距離感の近さに慣れてしまっていましたが、婚約解消することになって本当に良かったです
珠宮さくら
恋愛
アナスターシャは婚約者とその幼なじみの距離感に何か言う気も失せてしまっていた。そんな二人によってアナスターシャの婚約が解消されることになったのだが……。
※全4話。
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
白い結婚は無理でした(涙)
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。
明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。
白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。
小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。
どうぞよろしくお願いいたします。
会うたびに、貴方が嫌いになる
黒猫子猫(猫子猫)
恋愛
長身の王女レオーネは、侯爵家令息のアリエスに会うたびに惹かれた。だが、守り役に徹している彼が応えてくれたことはない。彼女が聖獣の力を持つために発情期を迎えた時も、身体を差し出して鎮めてくれこそしたが、その後も変わらず塩対応だ。悩むレオーネは、彼が自分とは正反対の可愛らしい令嬢と親しくしているのを目撃してしまう。優しく笑いかけ、「小さい方が良い」と褒めているのも聞いた。失恋という現実を受け入れるしかなかったレオーネは、二人の妨げになるまいと決意した。
アリエスは嫌そうに自分を遠ざけ始めたレオーネに、動揺を隠せなくなった。彼女が演技などではなく、本気でそう思っていると分かったからだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる