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27.情報屋、健太

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 日曜日の夜、そろそろ毎日恒例のネットゲームをしようと準備していると携帯電話が鳴った。
 この時間であればきっと姉ちゃんだろう……そう思い画面を見た。

 白い悪魔

 一瞬心臓が止まるかと思った。
 自分で名前を登録していたが忘れていた。あの後姉ちゃんに白髪頭の女性の話をすると「白髪マダムかしら……」と呟いた。もちろん絶倫の話はしていない。

 白髪マダム

 きっとこの女性のあだ名なのだろう。登録し直そう。

 初めて会った時に半ば無理やり連絡先を交換させられた。スマホを奪われ勝手に自分の携帯電話へと電話をかけた。

「何かあったら連絡するわ」

 冗談かと思いきやあれは本気だったらしい。

『こんばんは、ご機嫌いかが?くん』

 意味のわからない単語が聞こえた気がした。

「えっと、健康的な太い棒ってなんですか?」

『携帯電話の連絡帳の名前にそう登録されているのよ。よく分からないけどあなたの名前よね?』

「予測変換をそのまま入力して登録したんでしょうね。健太ですよ、健太!変更してください」

 冗談じゃない……だなんて。絶倫の姉がいるだけでもう十分だ。予測変換のせいで一気に自分の名前が嫌になる。

『変え方が分からないの。とりあえずこれでいいわ……ところで、最近お姉さんから悩みを聞いていない?私が聞いても普通としか答えないのよ』

 白髪マダムが艶かしい声で尋ねる。なぜここまで姉たちのために頑張ってくれるのかが分からない。

「最近だと、手首が痛いって言ってましたけどね、まぁ、パソコン業務が──」

『やはりね……体位の問題ね』

 ん?どうしたのかな?

「いや、姉ちゃんの仕事、データ入力が──」

『きっと、体位ね……盲点だったわ。精力ばかりにフォーカスしていたわ。関節にも優しいものを考えないといけないわね。グルコサミンかしら……持久力があるだけに体位の工夫が……チッ……不覚っ』

「聞いちゃいねーな、オイ」

 健太は頭が痛くなる。
 白髪マダムの情熱は尊敬するが、手首は関係ないと思う。

『これからちょこちょこ電話すると思うわ。その時に絶倫の生理現象とかその他の常識教えてちょうだいね』

「いや、俺、絶倫の姉を持つ弟なだけで。決して絶倫に詳しいわけでは……」

 もう誰にも白髪マダムを止められない。

『じゃあね、くん』

だ!!!」

 いつのまにか電話は切れていた。

 絶倫の世界は辛く険しい……だが、健太は大好きな姉のために絶倫について調べ始めた。

「姉ちゃんの幸せのためだ……えっと、絶倫とは──」

 健太は役に立たない知識を詰め込むことになった。

 ちょうどその頃姉の華子はコインランドリーで洗濯物を乾燥機に回しに来た。鼻歌を歌いながらご機嫌な華子は弟の苦悩を知らない──。
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