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22.葵の魅力
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数日後、俺は姉ちゃんのアパートの前にいた。直接例の彼氏に会いたいと思ったからだ。
健太は華子に直接聞くことはできなかった。
できることなら事情を聞き、そっと見守ってやりたいと思った。家族に絶倫のセックス依存症とバレることはなによりも耐え難いだろう。
華子はもう帰宅している。さりげなく葵が帰宅したかどうか確認するとまだらしいのできっと待っていれば会えるだろう……。
駅の方からゆっくりとした足取りでサラリーマンらしき人物がこちらに向かってくる。
茶色の髪に肌が白く顔もイケメンだ。白い肌に赤い唇が際立っている。
まさか……コイツじゃないだろうな……。
あの日は気が動転していて彼氏の顔をよく見ていなかった。
ぼうっと歩くその会社員が顔を上げ俺と目が合った。瞬きを繰り返し俺に近づく……。
ま、まさか、このイケメンが……?
「……もしかして、健太くん?」
ま、まじかよ!?こんなイケメン捕まえちゃったの?姉ちゃん!しかもこんなイケメンが絶倫のセックス依存って罪作りもいいとこじゃん!AV界のホープ間違いなしじゃん!
「姉ちゃんの、彼氏です、か?」
「はじめまして、時吉葵です」
葵はふわりと微笑み頷く。どうやらあの後華子に一緒に撮った写真を見せてもらったらしい。前髪を搔き上げるその動作ですら色気がある。
健太は怯みそうになるが、視線の先に喫茶店を見つけると指をさした。
「話が、あるんだ……あそこでちょっといい?」
純喫茶らしくアンティーク独特の赤茶色で統一された落ち着いた空間が広がっている。その窓側の席に二人は座る。葵は緊張しているのかさっきから出されたおしぼりを何度も握っている。
「あのさ……葵さん、その……病気があるんだろ?」
「あ、あぁ、お姉さんから聞いたの?」
葵は申し訳なさそうに微笑む。
本当だった……あの白髪の女性の言うことは本当だったんだ。
「ごめんな……普通の男じゃなくて……いつからかストレスでこんな体になっちゃって。お姉さんには毎日迷惑かけちゃうんだ……手間かけさせちゃって……」
「あ、いや、その──病気だし……。仕方ないけど……」
葵が頭を下げる。ちょうど注文したコーヒーが届く。葵は最初コーヒーを頼んでいたが、途中で何かに気づきウーロン茶に変えてもらっていた。
「コーヒーを飲むと、余計寝れなくなっちゃって華子さんに負担がかかるからこの時間は飲まないんだ」
「あーそうなんだ……色々大変だね……」
どんな負担のかけ方をしているのか聞きたいがショックを受けそうで聞けない。
「姉ちゃんの、どこが良かったの?……まさか寝れるからとかじゃ──」
「ほかほかで……ふわふわ」
「え?」
「ふわふわの髪の毛が可愛いって思ったんだ。コインランドリーで本を読む姿も魔女みたいで……あとは一緒にいて癒されて、愛おしい、俺の体の心配もしてくれて……なんていうか……温かくて、大好きなんだ……」
自分で言いながら葵は頰を赤らめた。
純粋な気持ちを彼女の弟に言える男がどこにいるんだろう。健太は葵が気に入ってしまった。こんなにも華子を大切に思ってくれる男はいないと思った。
ただ、セックス依存症なのが残念すぎる……。実に惜しい……。
「姉ちゃんの体のこと考えてヤってくれよ。姉ちゃんも強い方だって聞いたけど、それでもたまには休ませてやってくれ……」
「健太くん……」
葵は健太の腕を取る。その手は白いが力強かった。その手にドキッとする。健太は葵の瞳を見る。茶色の瞳に吸い込まれそうだ。
「最近は寝溜めもできるようになったんだ……。症状も落ち着いてきているし、大丈夫だと思う。お姉さんの負担を減らせるように帰ってすぐ寝られるようにするよ」
「寝溜め……普通は出来ないよね……あ、うん。良かったよ、何でも創意工夫だよね」
一体何発ヤってんだ?そして何発ヤれるんだ!?
このカップルの底知れぬ性欲の深さに健太は感服した。帰ってすぐにヤるって……おかえりの瞬間玄関で!? 嘘でしょ! 次姉ちゃんの部屋行ったら色々考えちゃうよ!
「華子さんが待ってるから、そろそろ行くね?」
「あ……姉ちゃんには俺に会ったことは──」
「分かってるよ。いい弟を持って華子さんは幸せだな」
葵は何度も頷いた。そのまま笑顔で健太の分の会計も支払うと店を出て行った。
か、かっけぇぇ!!
絶倫すらも魅力的に感じる……。なんなんだ?俺がおかしいのか?葵さんかっけぇぇ!
誤解されながらも葵は健太の心を鷲掴みすることに成功したようだ。
「良かったわね……味方がふえて」
そんな健太の後ろの席で一人コーヒーを飲んでいた白髪マダムは窓の外を眺めて微笑んでいた。
健太は華子に直接聞くことはできなかった。
できることなら事情を聞き、そっと見守ってやりたいと思った。家族に絶倫のセックス依存症とバレることはなによりも耐え難いだろう。
華子はもう帰宅している。さりげなく葵が帰宅したかどうか確認するとまだらしいのできっと待っていれば会えるだろう……。
駅の方からゆっくりとした足取りでサラリーマンらしき人物がこちらに向かってくる。
茶色の髪に肌が白く顔もイケメンだ。白い肌に赤い唇が際立っている。
まさか……コイツじゃないだろうな……。
あの日は気が動転していて彼氏の顔をよく見ていなかった。
ぼうっと歩くその会社員が顔を上げ俺と目が合った。瞬きを繰り返し俺に近づく……。
ま、まさか、このイケメンが……?
「……もしかして、健太くん?」
ま、まじかよ!?こんなイケメン捕まえちゃったの?姉ちゃん!しかもこんなイケメンが絶倫のセックス依存って罪作りもいいとこじゃん!AV界のホープ間違いなしじゃん!
「姉ちゃんの、彼氏です、か?」
「はじめまして、時吉葵です」
葵はふわりと微笑み頷く。どうやらあの後華子に一緒に撮った写真を見せてもらったらしい。前髪を搔き上げるその動作ですら色気がある。
健太は怯みそうになるが、視線の先に喫茶店を見つけると指をさした。
「話が、あるんだ……あそこでちょっといい?」
純喫茶らしくアンティーク独特の赤茶色で統一された落ち着いた空間が広がっている。その窓側の席に二人は座る。葵は緊張しているのかさっきから出されたおしぼりを何度も握っている。
「あのさ……葵さん、その……病気があるんだろ?」
「あ、あぁ、お姉さんから聞いたの?」
葵は申し訳なさそうに微笑む。
本当だった……あの白髪の女性の言うことは本当だったんだ。
「ごめんな……普通の男じゃなくて……いつからかストレスでこんな体になっちゃって。お姉さんには毎日迷惑かけちゃうんだ……手間かけさせちゃって……」
「あ、いや、その──病気だし……。仕方ないけど……」
葵が頭を下げる。ちょうど注文したコーヒーが届く。葵は最初コーヒーを頼んでいたが、途中で何かに気づきウーロン茶に変えてもらっていた。
「コーヒーを飲むと、余計寝れなくなっちゃって華子さんに負担がかかるからこの時間は飲まないんだ」
「あーそうなんだ……色々大変だね……」
どんな負担のかけ方をしているのか聞きたいがショックを受けそうで聞けない。
「姉ちゃんの、どこが良かったの?……まさか寝れるからとかじゃ──」
「ほかほかで……ふわふわ」
「え?」
「ふわふわの髪の毛が可愛いって思ったんだ。コインランドリーで本を読む姿も魔女みたいで……あとは一緒にいて癒されて、愛おしい、俺の体の心配もしてくれて……なんていうか……温かくて、大好きなんだ……」
自分で言いながら葵は頰を赤らめた。
純粋な気持ちを彼女の弟に言える男がどこにいるんだろう。健太は葵が気に入ってしまった。こんなにも華子を大切に思ってくれる男はいないと思った。
ただ、セックス依存症なのが残念すぎる……。実に惜しい……。
「姉ちゃんの体のこと考えてヤってくれよ。姉ちゃんも強い方だって聞いたけど、それでもたまには休ませてやってくれ……」
「健太くん……」
葵は健太の腕を取る。その手は白いが力強かった。その手にドキッとする。健太は葵の瞳を見る。茶色の瞳に吸い込まれそうだ。
「最近は寝溜めもできるようになったんだ……。症状も落ち着いてきているし、大丈夫だと思う。お姉さんの負担を減らせるように帰ってすぐ寝られるようにするよ」
「寝溜め……普通は出来ないよね……あ、うん。良かったよ、何でも創意工夫だよね」
一体何発ヤってんだ?そして何発ヤれるんだ!?
このカップルの底知れぬ性欲の深さに健太は感服した。帰ってすぐにヤるって……おかえりの瞬間玄関で!? 嘘でしょ! 次姉ちゃんの部屋行ったら色々考えちゃうよ!
「華子さんが待ってるから、そろそろ行くね?」
「あ……姉ちゃんには俺に会ったことは──」
「分かってるよ。いい弟を持って華子さんは幸せだな」
葵は何度も頷いた。そのまま笑顔で健太の分の会計も支払うと店を出て行った。
か、かっけぇぇ!!
絶倫すらも魅力的に感じる……。なんなんだ?俺がおかしいのか?葵さんかっけぇぇ!
誤解されながらも葵は健太の心を鷲掴みすることに成功したようだ。
「良かったわね……味方がふえて」
そんな健太の後ろの席で一人コーヒーを飲んでいた白髪マダムは窓の外を眺めて微笑んでいた。
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