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106.世界など変えてやる
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とある某テレビ局の一室で誠大はダークグレーのタキシードに身を包んでいた。スタッフの誘導で案内された部屋へと入る。そこは片側の壁が一面鏡張りの部屋だ。俗に言うメイク室だ。
「東郷誠大さんメイク入ります!」
メイク室に誠大が入ると部屋にいた女性たちが途端に色めき立った。皆プロフェッショナルだが誠大本人に会う機会など皆無だ。メディア嫌いの誠大なら尚更だろう。皆瞳を輝かせながら誠大を見つめる。まるで瞳に焼き付けるように瞬きすらしない女性までいる。メイクの椅子に座すように促されたが、鏡越しに女性たちと目が合うと誠大は困ったように視線を逸らした。そこへメイク室のドアを優しくノックし、郡司が現れた。
「お忙しいところ申し訳ありません。主人に用がありまして、少し失礼しても宜しいですか?」
「え? ええぇ! どうぞ!」
中にいた女性ADや番組スタッフが誠大までの道を開ける……まさしく海が割れるように人が郡司のための花道を作る。神話のような光景に誠大は呆れる。どの時代も美しさは強く、そして罪だ。
「失礼致します。木戸さんがスイーツゲットしたようです。そのまま殺虫剤を届けに行くと……」
「……そうか、よし」
木戸が真守から例のものを回収出来たようだ。そして興信所に悪どいコンピューターウイルスをばら撒きに向かっているらしい。元ハッカーの木戸にとって楽しい時間だろう。誠大は椅子にもたれ掛かると大きく息を吐いた。今の所順調に運んでいるようで安堵した。
鏡越しに郡司の鋭い視線を感じた。何か問題があるのかと訝しげに顔を上げた。すると突然郡司が誠大の首筋に手を当てると優しく頬を撫でた。なぜか郡司が慈しむような甘い表情で誠大を見つめる。その時背後の野次馬から黄色い歓声が上がった。誠大が鏡越しに背後を見ると女性だけではなく番組制作のプロデューサーも顔を赤らめたまま固まっていた。
郡司が色気漂う流し目で鏡を見た。随分と楽しそうだ。誠大が郡司に顔を寄せ、耳打ちする。
「……何のつもりだ?」
「少し虫除けをと思いまして」
何人かが鼻を押さえて天を仰ぐ。メイク室は大荒れだ。「推し……堪らん」と唸る腐女子まで現れた。
誠大は呆れ果てて席を立った。こんな茶番に付き合うほど出来た人間でもない。メイクも終わり髪のセットもほぼ完成していた。郡司に顎でしゃくるとメイク室を後にした。にこやかな郡司と対照的に尖った感じの冷たい誠大のコントラストに皆メロメロだった。美しい男たちが絡んでいるのを見ると想像力を掻き立てられるらしい……。
「アレは、完全にデキてるわね……」
「私BL興味ないけど、あの二人なら……ドラマ化してほしいわ」
「俺はドラマ班じゃないけど……オファーを勧めてみるか……」
二人が控え室に向かった後メイク室では二人のファンがあーでもない、こうでもないと話が盛り上がった。
誠大が出演する【オブザイヤー】の収録がスタートした。年内で最も音楽ダウンロード数が多かったミュージシャンのライブから始まった。アップテンポの最近の曲が流れると会場の熱気が一気に上がった。
【オブザイヤー】──この番組は芸能界の人間にとって一年を締め括る最高で最大のイベントだ。各部門別に多くの賞が授与される。それは癒し系俳優一位や最も旬な芸人など、その時々の旬の芸能人たちが集められて海外の映画祭のように華やかな授賞式が執り行われる。この番組に参加する事が芸能人にとって最も名誉な事であり、最大の目標だ。誠大は今まで縁がなかったのだが、まさかの花蓮との婚約の噂によりベストカップル賞にノミネートされてしまった。しかも……最優秀に選ばれてしまいそうなほど皆が注目するカップルになってしまった。誠大は非常に不愉快だった……しかし、出演を決めたのには訳があった。
観客席の前列にノミネートされた芸能人たちが座っている。その席の一角に誠大と花蓮が座っていた。花蓮はテレビ出演ということもあり黒のスリットが入ったドレスを着ていた。髪もまとめてシンプルに上げているだけだ。随分と地味な装いだが花蓮の美貌が際立っていた。その証拠に周りにいる芸能人ですら霞んで見えるほどのオーラが出ていた。隣に座る誠大と花蓮は共に美しく、番組が始まると高頻度でカメラに抜かれていた……。
【オブザイヤー】は生放送だ。SNSでも今年のベストカップル最優秀賞をどのカップルが取るのかと予想が始まっている。会場も、テレビの前の視聴者も、誰もがこの二人に注目していた。花蓮は会場にいる人間の羨望の眼差しを受けほくそ笑む。誠大の肩に触れて耳元で囁いた。
「ね? みんな私たちを見て羨ましそうでしょ……最高の気分じゃない?」
「悪趣味……寄るな、鬱陶しい」
誠大がまっすぐ前方に視線を留めたまま話す。花蓮はそれでも誠大の隣で嬉しそうに微笑んだ。舞台の上では今年最もブレイクした女優の涙のインタビューが始まっていた。誠大は冷めた視線を壇上へと送り続けていた。
「ベストカップルって良いわね。お父様もこの会場にいると思うわ……きっと大喜びでしょうね」
残念ながら花蓮は父親がいまどういう状況か知らないようだ。戦略に嵌り今頃今夜のイベントのことなど忘れて保身に走っているに違いない。誠大は溜息を吐くと花蓮を見つめた……突然見つめられて花蓮は真顔になるが、すぐに恥ずかしそうに顔を赤らめた。
ベストカップル賞ノミネートの紹介が映像で流れた。誠大たちを含めて四組がノミネートされている。俳優と監督のカップルや、芸人同士のカップルなど多くの業界から様々なカップルを呼び寄せている。会場の照明が落とされて観客席にスポットライトの光が円を描くように舞う。司会者の高らかな声が響き渡り、とうとう発表の時を迎えた。誠大は如何なる感情もなかった。花蓮もまた当然のように喟然とした態度で壇上を見つめていた。
「最優秀ベストカップル賞は……セレブカップル──東郷誠大さん、西園寺花蓮さんです! どうぞ壇上にお越し下さい!」
壇上の司会進行の男が興奮気味に叫んだ。その瞬間四方から集まるようにスポットライトが二人を照らした。拍手が巻き起こり隣に座っていた著名人たちの祝福を受けた。席の近くの芸能人たちから握手を求められ、誠大は反射的にそれを返した。誠大は花蓮に声を掛けるとゆっくりした足取りで歩き出した。不本意ではあるが誠大は花蓮の手を取り壇上へとエスコートする。
歓声とともに細かな煌く金紙が舞っている。誠大は【オブザイヤー】を見たことも無かったが随分と皆に愛されている番組なのだと思った。こういう状況でなければ少しぐらいは楽しめただろうが……残念だった。
二人が壇上に上がるとより一層歓声が起こった。司会進行の男が誠大と花蓮に握手を求めた。拍手が鳴り止まない中、花蓮にマイクが向けられた。
「西園寺さん、今のお気持ちはどうですか?」
「嬉しいです。こうして誠大さんと賞を取ることが出来て幸せです」
若干花蓮は涙ぐんでいた。本気で感動しているのかどうかは誠大には分からなかった。司会進行の男は準備していたかのように誠大にマイクを向け、にんまりと微笑んだ。どんな質問が来るか誠大は分かっていた。
「おめでとうございます。ベストカップルということですが……ズバリ、今後のご予定は? 夏に海外で挙式と噂されていますが」
「どうも。ここできちんとお伝えします。私と西園寺花蓮さんは──」
誠大はちらりと花蓮の方を見た。花蓮は誠大の告白を待ち切れないと言わんばかりに微笑んでいた。誠大は前を見据える──誠大の言葉の続きを会場にいる誰もが待っていた。
「私と彼女は──結婚しません。ただの噂です」
誠大は前を見据えて言い切った。花蓮から笑顔が消える……。聞き間違いかと疑うほど誠大の口調は明るかった。
「東郷誠大さんメイク入ります!」
メイク室に誠大が入ると部屋にいた女性たちが途端に色めき立った。皆プロフェッショナルだが誠大本人に会う機会など皆無だ。メディア嫌いの誠大なら尚更だろう。皆瞳を輝かせながら誠大を見つめる。まるで瞳に焼き付けるように瞬きすらしない女性までいる。メイクの椅子に座すように促されたが、鏡越しに女性たちと目が合うと誠大は困ったように視線を逸らした。そこへメイク室のドアを優しくノックし、郡司が現れた。
「お忙しいところ申し訳ありません。主人に用がありまして、少し失礼しても宜しいですか?」
「え? ええぇ! どうぞ!」
中にいた女性ADや番組スタッフが誠大までの道を開ける……まさしく海が割れるように人が郡司のための花道を作る。神話のような光景に誠大は呆れる。どの時代も美しさは強く、そして罪だ。
「失礼致します。木戸さんがスイーツゲットしたようです。そのまま殺虫剤を届けに行くと……」
「……そうか、よし」
木戸が真守から例のものを回収出来たようだ。そして興信所に悪どいコンピューターウイルスをばら撒きに向かっているらしい。元ハッカーの木戸にとって楽しい時間だろう。誠大は椅子にもたれ掛かると大きく息を吐いた。今の所順調に運んでいるようで安堵した。
鏡越しに郡司の鋭い視線を感じた。何か問題があるのかと訝しげに顔を上げた。すると突然郡司が誠大の首筋に手を当てると優しく頬を撫でた。なぜか郡司が慈しむような甘い表情で誠大を見つめる。その時背後の野次馬から黄色い歓声が上がった。誠大が鏡越しに背後を見ると女性だけではなく番組制作のプロデューサーも顔を赤らめたまま固まっていた。
郡司が色気漂う流し目で鏡を見た。随分と楽しそうだ。誠大が郡司に顔を寄せ、耳打ちする。
「……何のつもりだ?」
「少し虫除けをと思いまして」
何人かが鼻を押さえて天を仰ぐ。メイク室は大荒れだ。「推し……堪らん」と唸る腐女子まで現れた。
誠大は呆れ果てて席を立った。こんな茶番に付き合うほど出来た人間でもない。メイクも終わり髪のセットもほぼ完成していた。郡司に顎でしゃくるとメイク室を後にした。にこやかな郡司と対照的に尖った感じの冷たい誠大のコントラストに皆メロメロだった。美しい男たちが絡んでいるのを見ると想像力を掻き立てられるらしい……。
「アレは、完全にデキてるわね……」
「私BL興味ないけど、あの二人なら……ドラマ化してほしいわ」
「俺はドラマ班じゃないけど……オファーを勧めてみるか……」
二人が控え室に向かった後メイク室では二人のファンがあーでもない、こうでもないと話が盛り上がった。
誠大が出演する【オブザイヤー】の収録がスタートした。年内で最も音楽ダウンロード数が多かったミュージシャンのライブから始まった。アップテンポの最近の曲が流れると会場の熱気が一気に上がった。
【オブザイヤー】──この番組は芸能界の人間にとって一年を締め括る最高で最大のイベントだ。各部門別に多くの賞が授与される。それは癒し系俳優一位や最も旬な芸人など、その時々の旬の芸能人たちが集められて海外の映画祭のように華やかな授賞式が執り行われる。この番組に参加する事が芸能人にとって最も名誉な事であり、最大の目標だ。誠大は今まで縁がなかったのだが、まさかの花蓮との婚約の噂によりベストカップル賞にノミネートされてしまった。しかも……最優秀に選ばれてしまいそうなほど皆が注目するカップルになってしまった。誠大は非常に不愉快だった……しかし、出演を決めたのには訳があった。
観客席の前列にノミネートされた芸能人たちが座っている。その席の一角に誠大と花蓮が座っていた。花蓮はテレビ出演ということもあり黒のスリットが入ったドレスを着ていた。髪もまとめてシンプルに上げているだけだ。随分と地味な装いだが花蓮の美貌が際立っていた。その証拠に周りにいる芸能人ですら霞んで見えるほどのオーラが出ていた。隣に座る誠大と花蓮は共に美しく、番組が始まると高頻度でカメラに抜かれていた……。
【オブザイヤー】は生放送だ。SNSでも今年のベストカップル最優秀賞をどのカップルが取るのかと予想が始まっている。会場も、テレビの前の視聴者も、誰もがこの二人に注目していた。花蓮は会場にいる人間の羨望の眼差しを受けほくそ笑む。誠大の肩に触れて耳元で囁いた。
「ね? みんな私たちを見て羨ましそうでしょ……最高の気分じゃない?」
「悪趣味……寄るな、鬱陶しい」
誠大がまっすぐ前方に視線を留めたまま話す。花蓮はそれでも誠大の隣で嬉しそうに微笑んだ。舞台の上では今年最もブレイクした女優の涙のインタビューが始まっていた。誠大は冷めた視線を壇上へと送り続けていた。
「ベストカップルって良いわね。お父様もこの会場にいると思うわ……きっと大喜びでしょうね」
残念ながら花蓮は父親がいまどういう状況か知らないようだ。戦略に嵌り今頃今夜のイベントのことなど忘れて保身に走っているに違いない。誠大は溜息を吐くと花蓮を見つめた……突然見つめられて花蓮は真顔になるが、すぐに恥ずかしそうに顔を赤らめた。
ベストカップル賞ノミネートの紹介が映像で流れた。誠大たちを含めて四組がノミネートされている。俳優と監督のカップルや、芸人同士のカップルなど多くの業界から様々なカップルを呼び寄せている。会場の照明が落とされて観客席にスポットライトの光が円を描くように舞う。司会者の高らかな声が響き渡り、とうとう発表の時を迎えた。誠大は如何なる感情もなかった。花蓮もまた当然のように喟然とした態度で壇上を見つめていた。
「最優秀ベストカップル賞は……セレブカップル──東郷誠大さん、西園寺花蓮さんです! どうぞ壇上にお越し下さい!」
壇上の司会進行の男が興奮気味に叫んだ。その瞬間四方から集まるようにスポットライトが二人を照らした。拍手が巻き起こり隣に座っていた著名人たちの祝福を受けた。席の近くの芸能人たちから握手を求められ、誠大は反射的にそれを返した。誠大は花蓮に声を掛けるとゆっくりした足取りで歩き出した。不本意ではあるが誠大は花蓮の手を取り壇上へとエスコートする。
歓声とともに細かな煌く金紙が舞っている。誠大は【オブザイヤー】を見たことも無かったが随分と皆に愛されている番組なのだと思った。こういう状況でなければ少しぐらいは楽しめただろうが……残念だった。
二人が壇上に上がるとより一層歓声が起こった。司会進行の男が誠大と花蓮に握手を求めた。拍手が鳴り止まない中、花蓮にマイクが向けられた。
「西園寺さん、今のお気持ちはどうですか?」
「嬉しいです。こうして誠大さんと賞を取ることが出来て幸せです」
若干花蓮は涙ぐんでいた。本気で感動しているのかどうかは誠大には分からなかった。司会進行の男は準備していたかのように誠大にマイクを向け、にんまりと微笑んだ。どんな質問が来るか誠大は分かっていた。
「おめでとうございます。ベストカップルということですが……ズバリ、今後のご予定は? 夏に海外で挙式と噂されていますが」
「どうも。ここできちんとお伝えします。私と西園寺花蓮さんは──」
誠大はちらりと花蓮の方を見た。花蓮は誠大の告白を待ち切れないと言わんばかりに微笑んでいた。誠大は前を見据える──誠大の言葉の続きを会場にいる誰もが待っていた。
「私と彼女は──結婚しません。ただの噂です」
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