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53.レッツダンス
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屋敷の大広間に郡司の手拍子が響く。大広間の大理石の床の上で雫が正座している。まるで修行僧のように真剣な眼差しだ。その視線の先には木戸と美智がいた。二人はぴったりと体を付けて睨み合っていた。二人は大広間を大きく使いワルツをおどっていた。
「はい、良いでしょう。さすが運動神経がいいですね、二人とも」
郡司がにこやかに拍手を送る。すぐさま二人は握られていた手を離し距離を取る。木戸は照れ臭そうに顔を背けて頭を掻いた。
四人は舞踏会に向けてダンスの練習をしていた。身長の高い美智と鍛えられた体の木戸のカップルはダンスをしていてもスポーツのようでキレがあった。ワルツよりもサンバが似合いそうなペアだ。雫は踊り終わった二人に盛大な拍手を贈った。
「美智、カッコいいよ! 木戸さんも素敵だったー、最高!」
「そうか? 雫ちゃんに褒められたら調子乗っちゃうな……って何だよ! 俺のリブ狙うなよ! リブ!」
鼻の下が伸びきった顔が腹立たしくて美智は木戸の脇腹に肘鉄を喰らわせた。郡司は呑気な雫を見て溜息をこぼした。
「……雫さま……拍手を贈っている場合ではありません。雫さまはもう一度ステップから復習いたしましょう」
覚えの良い二人に置いていかれて雫は苦笑いを浮かべるしかない。案の定運動神経の悪い雫はダンスに苦戦していた。郡司から合格をもらった二人は大広間を後にした。雫は首から掛けたタオルを結び気合を入れた。郡司が雫の腰に手を回した。フワッと宙に浮いた感覚がする。
「さ……ワン、トゥー、スリー……雫さま、足元を見てはいけません。顔を上げてください」
「え、あ、はい!」
雫が顔を上げると郡司とばっちり目が合った。雫は瞬きを繰り返して呼吸を止める。郡司は優しく微笑みながら腰が引けた雫を抱き寄せた。特殊効果なのか郡司の体の周りに眩い星が見えた。銀縁眼鏡の奥に見える瞳に見惚れて郡司の足先を踏んでしまった。
「わ、すみません。えっと……もう一回お願いします」
「大丈夫です、さ……」
郡司は優しく微笑んだ。
本当、郡司さんって王子さまだよな……ってか、これって世の女子から見れば流血モンじゃない? かなりご褒美じゃない? ファンクラブの皆に刺されそうだな……うう、くわばらくわばら……。
二人きりの大広間でぎこちないワルツを踊った。郡司の手の温もりを感じ、触れられた部分の感覚が鋭くなる。盗み見た郡司の横顔はやはり美しかった。
郡司のスパルタの特訓の甲斐あってなんとか雫はワルツが踊れるようになった。ただ、背中を長時間反らしたせいか背中は痛むし首も回らなくなった。
「郡司さん、足をいっぱい踏んじゃってすみません……大丈夫ですか?」
「気にしないでください。こんなにも早く上達するとは思いませんでした……残念です」
「え?」
最後の方は雫の耳には届かなかった。郡司は嬉しそうに微笑んでいた。
「私と誠大さまは背格好も似ているので本番困らないはずです。誠大さまのお時間が取れれば本当は良かったのですが……」
「良いんです。お忙しそうですし……それに、郡司さんファンとしては幸せな時間でした。ハリウッドスターと踊ってるみたいでしたよ!」
「ファン、ですか……? ふふ、サインは必要ありませんか?」
二人は顔を見合わせ微笑みあった。
その頃誠大は練習を終えた木戸と共に視察先へと向かっていた。いつもとは違い大きなバンに乗っている。視察先である施設は様々な事情で両親と一緒に住むことのできない子供たちが暮らす施設だった。
木戸は後方の座席に座る誠大を盗み見た。窓の外を眺めながらいつもよりも揺れる車の振動に耐えているようだった。
「誠大さま、郡司さんは来なくてよかったんですか?」
「ダンス習得の方が優先だ。それより天洋の取引材料は得たか?」
「弱点でしょ? んー、強いのがないんですよね。女好きだけどワーカホリックだし……ま、もう少し掘ってみます」
誠大はパーティに向けて天洋を大人しくさせるネタを探っていた。なかなか上手くいかず誠大は大きく息を吐いた。木戸は身を乗り出すと不思議に思っていたことを聞いてみた。
「どうして直接雫ちゃんにダンス教えてあげなかったんですか? 郡司さんより誠大さまの方が何倍も上手じゃありませんか。調教の時間を使って教えてあげれば……」
「いや、いいんだ郡司で。俺だとケンカになる」
「えー? もしかして、雫ちゃんが郡司さんの事を好きだから引目を感じて……せめてもの詫びのつもりですか? 雫ちゃんは本当に郡司さんの事が好き──イッテェ!」
誠大は履いていた靴の踵で木戸の頭を叩いた。革靴の硬いところで殴られた木戸はいそいそと自分の座席に座り直した。誠大は眉間に皺を寄せ、高速で通り過ぎる街路樹を見つめた。
沈黙のまま施設へと到着した。施設の建物の前で地元の新聞記者数人に向かって微笑む人間がいた。その人物に気付くと誠大は露骨に嫌な顔をした。施設長と笑顔で握手をしていたのはサンオン製薬の一人娘……西園寺花蓮だった。
誠大に気がつくと柔らかな笑みで会釈をした。誠大も笑みの仮面を被り花蓮に近付き軽く握手を交わした。サイオン製薬系列の人間がやって来ると聞いていたが、まさか花蓮が乗り込んでくるとは想像もしていなかった。誠大が寄付をする事を聞きつけたのだろう。
「ご無沙汰しております、お元気かしら……お付きの方も……お元気そうね」
「ここでお会いできるとは光栄です」
花蓮は誠大と後ろに立つ木戸を交互に見た。あのパーティ以来の再会だ。木戸は表情を変えぬよう気を配り花蓮に会釈をした。花蓮はあの日と同じように木戸の体を上から下まで舐めるように見た。
「さぁ、ご案内いたしますよ」
施設長が誠大と花蓮に声をかけて施設の中へと入って行く。花蓮はあの日と違って淡いクリーム色の清潔感のあるワンピースを着ていた。パーティの派手な装いとは全く違っていた。一見すると清潔感のあるお嬢様のようだ。花蓮の後を坊主頭の護衛役らしい男が付いていく。
「豹が猫の皮被ってますね……あっぱれです……見ました? 今俺、視姦されましたよ、ハハ」
「施設の訪問も、イメージアップだろう……終わったらすぐに戻るぞ。何か企んでいるかも知らん」
二人は施設の中に入った。清潔にしているがどこか寂しい廊下が続く。昭和の後半に建てられた建物は老朽化が進んでいるようだった。施設の歩みや卒業後の子供達の様子を聞いた。境遇は全く違うはずなのに孤独を感じる部分に関しては自分と似ている部分が多いと感じていた。そしてそう感じる事が罪のようにも思えた。花蓮はその話を聞きながら優しく頷き続けるがその様子にどこか胡散臭さを感じざるを得なかった。
寄付の話をして誠大は別の車に積んでいた物資を施設長に手渡した。東郷グループから毎年金銭的な援助と物資を送っている。花蓮も同様に物資の援助と何か封筒を手渡していた。父親から預かっていた寄付関連の資料だろう。
「ありがとうございます」
「いえ、子供たちのために使って下さると嬉しいです」
誠大と施設長が握手を交わし、いつものように写真撮影をした。最後に併設された座敷で子供達の歌が披露される事になっていた。多くの関係者が部屋から移動を始めた。皆が居なくなったのを確認すると誠大と木戸が席を立った。人混みに紛れた暴漢もいるため警戒を怠らない。
廊下を進むと壁にもたれ掛かるようにして花蓮が立っていた。誠大は視線を逸らして花蓮の前を通り過ぎる……その瞬間花蓮は誠大の腕を掴んだ。誠大と花蓮の間に木戸が割って入り鋭い視線を送る。木戸の無言の圧に花蓮が唇をきつく結び震わせた。
「ちょっと待って……その、話があるの」
「俺にはない。いそぐので失礼する」
誠大は花蓮を無視して歩き出す。背後から花蓮の声が聞こえた。
「ごめんなさい! その……この間の事、謝るわ」
「……どういうつもりだ」
花蓮は立ち止まった誠大に近づくと軽く俯いて悲しそうな顔をした。木戸が前に出ようとすると誠大は小さな声で「大丈夫だ」と言った。木戸が後ろに下がると誠大は冷徹な表情を崩さず花蓮の姿を見据えた。
「父親に頼まれたの。本心じゃ、なかった……の。本当にごめんなさい」
「そうか。謝罪は受け入れよう……失礼する」
花蓮が誠大の腕を掴んで引っ張った。
「ちょっと待って! あの……今度うちのグループの舞踏会に……来るって聞いたわ。ねぇ、お願い、私のパートナーになってくれない?」
「断る。別の相手を探すんだな」
誠大は振り返らずに歩き続けた。花蓮は誠大の姿が見えなくなると気怠そうに腕を組んだ。口元に冷笑を浮かべ爪のネイルが傷付いていないか確認する。猫の皮を脱ぎ捨てて女豹が現れた。
「ざーんねん、お父様に報告ね。幼気で、しおらしい女になってやろうと思ったのに……でも冷たくてもやっぱりいい男ね、東郷誠大……」
「……お嬢様、参りましょう」
「ねぇ、永徳、お前はこの服装どう思うの? もしかして……いつもより守ってあげたくなった?」
花蓮は後ろに立つ坊主頭の男を揶揄うように一瞥した。花蓮の悪ふざけに慣れているらしく、永徳は頭を下げたまま何も言わなかった。花蓮は鼻で笑うと玄関を抜けて座敷へと向かった。
「はい、良いでしょう。さすが運動神経がいいですね、二人とも」
郡司がにこやかに拍手を送る。すぐさま二人は握られていた手を離し距離を取る。木戸は照れ臭そうに顔を背けて頭を掻いた。
四人は舞踏会に向けてダンスの練習をしていた。身長の高い美智と鍛えられた体の木戸のカップルはダンスをしていてもスポーツのようでキレがあった。ワルツよりもサンバが似合いそうなペアだ。雫は踊り終わった二人に盛大な拍手を贈った。
「美智、カッコいいよ! 木戸さんも素敵だったー、最高!」
「そうか? 雫ちゃんに褒められたら調子乗っちゃうな……って何だよ! 俺のリブ狙うなよ! リブ!」
鼻の下が伸びきった顔が腹立たしくて美智は木戸の脇腹に肘鉄を喰らわせた。郡司は呑気な雫を見て溜息をこぼした。
「……雫さま……拍手を贈っている場合ではありません。雫さまはもう一度ステップから復習いたしましょう」
覚えの良い二人に置いていかれて雫は苦笑いを浮かべるしかない。案の定運動神経の悪い雫はダンスに苦戦していた。郡司から合格をもらった二人は大広間を後にした。雫は首から掛けたタオルを結び気合を入れた。郡司が雫の腰に手を回した。フワッと宙に浮いた感覚がする。
「さ……ワン、トゥー、スリー……雫さま、足元を見てはいけません。顔を上げてください」
「え、あ、はい!」
雫が顔を上げると郡司とばっちり目が合った。雫は瞬きを繰り返して呼吸を止める。郡司は優しく微笑みながら腰が引けた雫を抱き寄せた。特殊効果なのか郡司の体の周りに眩い星が見えた。銀縁眼鏡の奥に見える瞳に見惚れて郡司の足先を踏んでしまった。
「わ、すみません。えっと……もう一回お願いします」
「大丈夫です、さ……」
郡司は優しく微笑んだ。
本当、郡司さんって王子さまだよな……ってか、これって世の女子から見れば流血モンじゃない? かなりご褒美じゃない? ファンクラブの皆に刺されそうだな……うう、くわばらくわばら……。
二人きりの大広間でぎこちないワルツを踊った。郡司の手の温もりを感じ、触れられた部分の感覚が鋭くなる。盗み見た郡司の横顔はやはり美しかった。
郡司のスパルタの特訓の甲斐あってなんとか雫はワルツが踊れるようになった。ただ、背中を長時間反らしたせいか背中は痛むし首も回らなくなった。
「郡司さん、足をいっぱい踏んじゃってすみません……大丈夫ですか?」
「気にしないでください。こんなにも早く上達するとは思いませんでした……残念です」
「え?」
最後の方は雫の耳には届かなかった。郡司は嬉しそうに微笑んでいた。
「私と誠大さまは背格好も似ているので本番困らないはずです。誠大さまのお時間が取れれば本当は良かったのですが……」
「良いんです。お忙しそうですし……それに、郡司さんファンとしては幸せな時間でした。ハリウッドスターと踊ってるみたいでしたよ!」
「ファン、ですか……? ふふ、サインは必要ありませんか?」
二人は顔を見合わせ微笑みあった。
その頃誠大は練習を終えた木戸と共に視察先へと向かっていた。いつもとは違い大きなバンに乗っている。視察先である施設は様々な事情で両親と一緒に住むことのできない子供たちが暮らす施設だった。
木戸は後方の座席に座る誠大を盗み見た。窓の外を眺めながらいつもよりも揺れる車の振動に耐えているようだった。
「誠大さま、郡司さんは来なくてよかったんですか?」
「ダンス習得の方が優先だ。それより天洋の取引材料は得たか?」
「弱点でしょ? んー、強いのがないんですよね。女好きだけどワーカホリックだし……ま、もう少し掘ってみます」
誠大はパーティに向けて天洋を大人しくさせるネタを探っていた。なかなか上手くいかず誠大は大きく息を吐いた。木戸は身を乗り出すと不思議に思っていたことを聞いてみた。
「どうして直接雫ちゃんにダンス教えてあげなかったんですか? 郡司さんより誠大さまの方が何倍も上手じゃありませんか。調教の時間を使って教えてあげれば……」
「いや、いいんだ郡司で。俺だとケンカになる」
「えー? もしかして、雫ちゃんが郡司さんの事を好きだから引目を感じて……せめてもの詫びのつもりですか? 雫ちゃんは本当に郡司さんの事が好き──イッテェ!」
誠大は履いていた靴の踵で木戸の頭を叩いた。革靴の硬いところで殴られた木戸はいそいそと自分の座席に座り直した。誠大は眉間に皺を寄せ、高速で通り過ぎる街路樹を見つめた。
沈黙のまま施設へと到着した。施設の建物の前で地元の新聞記者数人に向かって微笑む人間がいた。その人物に気付くと誠大は露骨に嫌な顔をした。施設長と笑顔で握手をしていたのはサンオン製薬の一人娘……西園寺花蓮だった。
誠大に気がつくと柔らかな笑みで会釈をした。誠大も笑みの仮面を被り花蓮に近付き軽く握手を交わした。サイオン製薬系列の人間がやって来ると聞いていたが、まさか花蓮が乗り込んでくるとは想像もしていなかった。誠大が寄付をする事を聞きつけたのだろう。
「ご無沙汰しております、お元気かしら……お付きの方も……お元気そうね」
「ここでお会いできるとは光栄です」
花蓮は誠大と後ろに立つ木戸を交互に見た。あのパーティ以来の再会だ。木戸は表情を変えぬよう気を配り花蓮に会釈をした。花蓮はあの日と同じように木戸の体を上から下まで舐めるように見た。
「さぁ、ご案内いたしますよ」
施設長が誠大と花蓮に声をかけて施設の中へと入って行く。花蓮はあの日と違って淡いクリーム色の清潔感のあるワンピースを着ていた。パーティの派手な装いとは全く違っていた。一見すると清潔感のあるお嬢様のようだ。花蓮の後を坊主頭の護衛役らしい男が付いていく。
「豹が猫の皮被ってますね……あっぱれです……見ました? 今俺、視姦されましたよ、ハハ」
「施設の訪問も、イメージアップだろう……終わったらすぐに戻るぞ。何か企んでいるかも知らん」
二人は施設の中に入った。清潔にしているがどこか寂しい廊下が続く。昭和の後半に建てられた建物は老朽化が進んでいるようだった。施設の歩みや卒業後の子供達の様子を聞いた。境遇は全く違うはずなのに孤独を感じる部分に関しては自分と似ている部分が多いと感じていた。そしてそう感じる事が罪のようにも思えた。花蓮はその話を聞きながら優しく頷き続けるがその様子にどこか胡散臭さを感じざるを得なかった。
寄付の話をして誠大は別の車に積んでいた物資を施設長に手渡した。東郷グループから毎年金銭的な援助と物資を送っている。花蓮も同様に物資の援助と何か封筒を手渡していた。父親から預かっていた寄付関連の資料だろう。
「ありがとうございます」
「いえ、子供たちのために使って下さると嬉しいです」
誠大と施設長が握手を交わし、いつものように写真撮影をした。最後に併設された座敷で子供達の歌が披露される事になっていた。多くの関係者が部屋から移動を始めた。皆が居なくなったのを確認すると誠大と木戸が席を立った。人混みに紛れた暴漢もいるため警戒を怠らない。
廊下を進むと壁にもたれ掛かるようにして花蓮が立っていた。誠大は視線を逸らして花蓮の前を通り過ぎる……その瞬間花蓮は誠大の腕を掴んだ。誠大と花蓮の間に木戸が割って入り鋭い視線を送る。木戸の無言の圧に花蓮が唇をきつく結び震わせた。
「ちょっと待って……その、話があるの」
「俺にはない。いそぐので失礼する」
誠大は花蓮を無視して歩き出す。背後から花蓮の声が聞こえた。
「ごめんなさい! その……この間の事、謝るわ」
「……どういうつもりだ」
花蓮は立ち止まった誠大に近づくと軽く俯いて悲しそうな顔をした。木戸が前に出ようとすると誠大は小さな声で「大丈夫だ」と言った。木戸が後ろに下がると誠大は冷徹な表情を崩さず花蓮の姿を見据えた。
「父親に頼まれたの。本心じゃ、なかった……の。本当にごめんなさい」
「そうか。謝罪は受け入れよう……失礼する」
花蓮が誠大の腕を掴んで引っ張った。
「ちょっと待って! あの……今度うちのグループの舞踏会に……来るって聞いたわ。ねぇ、お願い、私のパートナーになってくれない?」
「断る。別の相手を探すんだな」
誠大は振り返らずに歩き続けた。花蓮は誠大の姿が見えなくなると気怠そうに腕を組んだ。口元に冷笑を浮かべ爪のネイルが傷付いていないか確認する。猫の皮を脱ぎ捨てて女豹が現れた。
「ざーんねん、お父様に報告ね。幼気で、しおらしい女になってやろうと思ったのに……でも冷たくてもやっぱりいい男ね、東郷誠大……」
「……お嬢様、参りましょう」
「ねぇ、永徳、お前はこの服装どう思うの? もしかして……いつもより守ってあげたくなった?」
花蓮は後ろに立つ坊主頭の男を揶揄うように一瞥した。花蓮の悪ふざけに慣れているらしく、永徳は頭を下げたまま何も言わなかった。花蓮は鼻で笑うと玄関を抜けて座敷へと向かった。
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