16 / 19
プチ番外編
1.たぬきは怒っております
しおりを挟む
私の彼氏はとにかくエロい。
付き合ってみるとより分かる。横顔が綺麗な分、流し目で私を見る瞳にゾクリとする。
特に欲望に燃えている時なんて手のつけようがない。色気が半端無い。最近はたぬき寝入りしていると決め込んで琴音の寝込みを襲う。途中で起きていることもあるが、やはり変な癖がつき俊の欲望のボルテージが上がるまで見ていたい。
こと、ね……限界か?
耳元で囁く声を思い出すとゾクゾクする。
もちろん私も仕返しを試みることもある。まぁ、そのあとは我慢できない俊くんの応酬を受けることになるのだが……。
以前額に肉と頰に魚っぽい絵を描かれた時がある。あれは疲れ果てて先に寝てしまったのだが、あの日以来少し酒を控えるようにした。全ては俊くんに仕返しをするためだ。いつか俊くんをギャフンと言わせたい。その野望はまだ諦めていない。
その日俊くんから連絡が入った。
近々、珍しい日本酒が手に入る。楽しみにしといてくれ
そのメールを見て最高に胸がときめいた。
嬉しくてつい仕事中にもかかわらず「やった……」と呟いてしまった。隣の席の同僚はちらりとこちらを見た気がしたが何も言わなかった。
琴音は上機嫌で仕事を終わらした。
あくる晩は定年退職する上司の送別会があった。いつものことながら会社の飲み会には十分注意している。
酒が好きだが酒に飲まれてしまっては意味がない。すっかりほろ酔いの上司に花束を渡し皆で記念写真を撮った。皆に「ありがとう」と言いながら握手を求めると退職する上司は帰っていった。
平日ということもあり随分と早いお開きになってしまったが琴音は嬉しかった。思い出話とともにゆっくりと酒を楽しんだ琴音は同僚とともに店を出た。駅に向かって歩いていると流石に繁華街ということもあり平日でもほろ酔いの会社員が多い。
ビュッフェの美味しいレストランの前を通りかかると女子会が行われていたらしいアフターファイブのキラキラしたお姉さんたちがたくさんいた。合コン帰りかもしれない。スーツ姿の男性の肩に触れ甘く甲高い笑い声を上げている。酔って足元に力の入らない男性の肩を支えるように立つ男の人に目が止まる。
ん?
気のせいか? いや? まさか──。
その横顔は私の彼氏の俊くんだった。
俊くんの肩や胸に触れている綺麗な女の人に思わず目がいく。
誰? ってかどうみてもこれ……合コン?
琴音はふつふつと怒りが湧いてきた。
悲しみではない。みるみる眉間にシワが寄るのが分かった。
隣にいた同僚が私に声をかけてきたが今はそれどころではない。
「おーい、生きてるかー」
「はーい、ギリで大丈夫です」
琴音は酔っ払いの口調に合わせて答える。そのまま慌ててその場を離れた。
琴音は怒っていた。
その日、俊は同僚の鈴木くんと飲むと言っていた。嘘だったのか?その横にいる綺麗な女の子たちとはどんな関係だろう……。
琴音は一気に酔いが覚めて脳がクリアになるのを感じた。
さて、どうしてくれようか──。
付き合ってみるとより分かる。横顔が綺麗な分、流し目で私を見る瞳にゾクリとする。
特に欲望に燃えている時なんて手のつけようがない。色気が半端無い。最近はたぬき寝入りしていると決め込んで琴音の寝込みを襲う。途中で起きていることもあるが、やはり変な癖がつき俊の欲望のボルテージが上がるまで見ていたい。
こと、ね……限界か?
耳元で囁く声を思い出すとゾクゾクする。
もちろん私も仕返しを試みることもある。まぁ、そのあとは我慢できない俊くんの応酬を受けることになるのだが……。
以前額に肉と頰に魚っぽい絵を描かれた時がある。あれは疲れ果てて先に寝てしまったのだが、あの日以来少し酒を控えるようにした。全ては俊くんに仕返しをするためだ。いつか俊くんをギャフンと言わせたい。その野望はまだ諦めていない。
その日俊くんから連絡が入った。
近々、珍しい日本酒が手に入る。楽しみにしといてくれ
そのメールを見て最高に胸がときめいた。
嬉しくてつい仕事中にもかかわらず「やった……」と呟いてしまった。隣の席の同僚はちらりとこちらを見た気がしたが何も言わなかった。
琴音は上機嫌で仕事を終わらした。
あくる晩は定年退職する上司の送別会があった。いつものことながら会社の飲み会には十分注意している。
酒が好きだが酒に飲まれてしまっては意味がない。すっかりほろ酔いの上司に花束を渡し皆で記念写真を撮った。皆に「ありがとう」と言いながら握手を求めると退職する上司は帰っていった。
平日ということもあり随分と早いお開きになってしまったが琴音は嬉しかった。思い出話とともにゆっくりと酒を楽しんだ琴音は同僚とともに店を出た。駅に向かって歩いていると流石に繁華街ということもあり平日でもほろ酔いの会社員が多い。
ビュッフェの美味しいレストランの前を通りかかると女子会が行われていたらしいアフターファイブのキラキラしたお姉さんたちがたくさんいた。合コン帰りかもしれない。スーツ姿の男性の肩に触れ甘く甲高い笑い声を上げている。酔って足元に力の入らない男性の肩を支えるように立つ男の人に目が止まる。
ん?
気のせいか? いや? まさか──。
その横顔は私の彼氏の俊くんだった。
俊くんの肩や胸に触れている綺麗な女の人に思わず目がいく。
誰? ってかどうみてもこれ……合コン?
琴音はふつふつと怒りが湧いてきた。
悲しみではない。みるみる眉間にシワが寄るのが分かった。
隣にいた同僚が私に声をかけてきたが今はそれどころではない。
「おーい、生きてるかー」
「はーい、ギリで大丈夫です」
琴音は酔っ払いの口調に合わせて答える。そのまま慌ててその場を離れた。
琴音は怒っていた。
その日、俊は同僚の鈴木くんと飲むと言っていた。嘘だったのか?その横にいる綺麗な女の子たちとはどんな関係だろう……。
琴音は一気に酔いが覚めて脳がクリアになるのを感じた。
さて、どうしてくれようか──。
1
お気に入りに追加
242
あなたにおすすめの小説
妹は奪わない
緑谷めい
恋愛
妹はいつも奪っていく。私のお気に入りのモノを……
私は伯爵家の長女パニーラ。2つ年下の妹アリスは、幼い頃から私のお気に入りのモノを必ず欲しがり、奪っていく――――――な~んてね!?
歪んだ欲望と、我慢した先の愛
下菊みこと
恋愛
主人公だいぶ歪んでます!ヤンデレとか病んでるとかじゃなくて性的な嗜好がぶっとんでます!でも多分誰にも迷惑…は…かけてない…と思う…。
主人公は夫の仕事仲間が、夫の寵愛を得たと言い振り回してるのがストレスでとうとうはっちゃける。良い妻として、夫を支え、子供を愛し、そしてたまに息抜きに実家に戻り…養老院へ、通った。
小説家になろう様でも投稿しています!
トリスタン
下菊みこと
恋愛
やべぇお話、ガチの閲覧注意。登場人物やべぇの揃ってます。なんでも許してくださる方だけどうぞ…。
彼は妻に別れを告げる決意をする。愛する人のお腹に、新しい命が宿っているから。一方妻は覚悟を決める。愛する我が子を取り戻す覚悟を。
小説家になろう様でも投稿しています。
王宮医務室にお休みはありません。~休日出勤に疲れていたら、結婚前提のお付き合いを希望していたらしい騎士さまとデートをすることになりました。~
石河 翠
恋愛
王宮の医務室に勤める主人公。彼女は、連続する遅番と休日出勤に疲れはてていた。そんなある日、彼女はひそかに片思いをしていた騎士ウィリアムから夕食に誘われる。
食事に向かう途中、彼女は憧れていたお菓子「マリトッツォ」をウィリアムと美味しく食べるのだった。
そして休日出勤の当日。なぜか、彼女は怒り心頭の男になぐりこまれる。なんと、彼女に仕事を押しつけている先輩は、父親には自分が仕事を押しつけられていると話していたらしい。
しかし、そんな先輩にも実は誰にも相談できない事情があったのだ。ピンチに陥る彼女を救ったのは、やはりウィリアム。ふたりの距離は急速に近づいて……。
何事にも真面目で一生懸命な主人公と、誠実な騎士との恋物語。
扉絵は管澤捻さまに描いていただきました。
小説家になろう及びエブリスタにも投稿しております。
ボロボロになった心
空宇海
恋愛
付き合ってそろそろ3年の彼氏が居る
彼氏は浮気して謝っての繰り返し
もう、私の心が限界だった。
心がボロボロで
もう、疲れたよ…
彼のためにって思ってやってきたのに…
それが、彼を苦しめてた。
だからさよなら…
私はまた、懲りずに新しい恋をした
※初めから書きなおしました。
私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。
石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。
自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。
そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。
好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。
この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。
人違いラブレターに慣れていたので今回の手紙もスルーしたら、片思いしていた男の子に告白されました。この手紙が、間違いじゃないって本当ですか?
石河 翠
恋愛
クラス内に「ワタナベ」がふたりいるため、「可愛いほうのワタナベさん」宛のラブレターをしょっちゅう受け取ってしまう「そうじゃないほうのワタナベさん」こと主人公の「わたし」。
ある日「わたし」は下駄箱で、万年筆で丁寧に宛名を書いたラブレターを見つける。またかとがっかりした「わたし」は、その手紙をもうひとりの「ワタナベ」の下駄箱へ入れる。
ところが、その話を聞いた隣のクラスのサイトウくんは、「わたし」が驚くほど動揺してしまう。 実はその手紙は本当に彼女宛だったことが判明する。そしてその手紙を書いた「地味なほうのサイトウくん」にも大きな秘密があって……。
「真面目」以外にとりえがないと思っている「わたし」と、そんな彼女を見守るサイトウくんの少女マンガのような恋のおはなし。
小説家になろう及びエブリスタにも投稿しています。
扉絵は汐の音さまに描いていただきました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる