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番外編
本番の女 哲太side
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あれから俺と貴子はめでたく付き合い始めた。なのに驚くほど変化がない。やる気スイッチが入った貴子はまるで女豹だ……。瞳の奥に欲望の炎とまるで俺を食べ尽くすような熱を持つ。ただなぜか付き合ったというのに女豹は普段どこかへと隠れてしまう。女豹の後に出てくる素直なうさぎは驚くほど可愛い。
好きな気持ちを前面に出すあいつを呼び出す方法は一つだけだ。
「貴子、練習台お願いしていい?」
◇
「「カンパーイッ」」
大きな声と共にビールジョッキがぶつかり合う音がする。今日は同僚の送別会で会社の仲間たちとともに赤提灯の似合う漁師居酒屋へやって来た。哲太と同様体育会系の男ばかりなので酒のピッチが早い。
「そういえば哲太、おまえ新しい彼女できたんだって?」
「まぁな」
貴子と付き合った後すぐにこのメンバーのうちの何人かで飲みに行った時に報告した。とにかく、可愛いと惚気ていたと後で暴露され社内でしばらくからかわれた。
「練習台になれって……お前そんな事よく言えたな」
「今は違う。練習台でもない、本番も本番、本気も本気……ってか今までのキスとあいつとするのは別だ! あいつのキスは心地いい……」
哲太は酔いが回り自分で何を言っているのか分からない。周りのみんなが「そいつはベタ惚れだ」と腹を抱えて笑っているのが面白くなくビールをグイッと飲み干した。
後ろの個室で練習台のきっかけとなった沙織がいるとも知らず……。
酔いが回った体に誰かが触れる。
──知り合いで……大丈夫……連絡……彼女と友達なんで……
じゃあ……お願い、かな。おい!哲太……また会…
女の声と同僚の声が聞こえた。哲太はゆっくり目を閉じた。
◇
走り去る貴子を追おうとすると俺のスーツの袖を沙織が掴む。この仕草が可愛いと思っていた俺はもういない。
「あいつに、何を言った……」
怒りで声が震える。身体中の毛が逆立つのが分かる。
「あなたは練習台で、私が本番よって言ったわ。私の為にあの女で練習しようとしたのよね?」
「違う。それがあいつへの恋心に気づくきっかけになっただけだ。貴子を、愛してる」
沙織の顔が苦々しく歪む。沙織がいくら求めても決して自分からは言わなかったあの言葉をいとも簡単に言い放つ哲太に身体中が震える。
沙織はずっと前から分かっていた。哲太の口から時折出る女の名前の存在が特別であることを。二人の仲を無茶苦茶にしなくては気が済まなかったが、やはり二人の絆は何よりも深く自分ごときが断ち切れるものではなかった……。
「……ごめんっ、行かなきゃ」
沙織の手を振り切ると哲太は駆け出した。
さっきの貴子の泣き顔を思い出しては胸が痛む。俺が練習台なんて言ってあいつはずっと傷付いていたのか? ずっとそんな思いで抱かれていたのか?
◇
部屋についてお互いの気持ちを伝え合ったのだが、思わぬ展開になった。まさかの貴子の女豹が目覚めてしまった。逃げる俺をドアまで追い詰めそのままガチャリと鍵を閉めた──。
その後のことは言いたくない。一つ言えることは、貴子は豹でオレはただのゴリラだったってこと、それだけ。
END
好きな気持ちを前面に出すあいつを呼び出す方法は一つだけだ。
「貴子、練習台お願いしていい?」
◇
「「カンパーイッ」」
大きな声と共にビールジョッキがぶつかり合う音がする。今日は同僚の送別会で会社の仲間たちとともに赤提灯の似合う漁師居酒屋へやって来た。哲太と同様体育会系の男ばかりなので酒のピッチが早い。
「そういえば哲太、おまえ新しい彼女できたんだって?」
「まぁな」
貴子と付き合った後すぐにこのメンバーのうちの何人かで飲みに行った時に報告した。とにかく、可愛いと惚気ていたと後で暴露され社内でしばらくからかわれた。
「練習台になれって……お前そんな事よく言えたな」
「今は違う。練習台でもない、本番も本番、本気も本気……ってか今までのキスとあいつとするのは別だ! あいつのキスは心地いい……」
哲太は酔いが回り自分で何を言っているのか分からない。周りのみんなが「そいつはベタ惚れだ」と腹を抱えて笑っているのが面白くなくビールをグイッと飲み干した。
後ろの個室で練習台のきっかけとなった沙織がいるとも知らず……。
酔いが回った体に誰かが触れる。
──知り合いで……大丈夫……連絡……彼女と友達なんで……
じゃあ……お願い、かな。おい!哲太……また会…
女の声と同僚の声が聞こえた。哲太はゆっくり目を閉じた。
◇
走り去る貴子を追おうとすると俺のスーツの袖を沙織が掴む。この仕草が可愛いと思っていた俺はもういない。
「あいつに、何を言った……」
怒りで声が震える。身体中の毛が逆立つのが分かる。
「あなたは練習台で、私が本番よって言ったわ。私の為にあの女で練習しようとしたのよね?」
「違う。それがあいつへの恋心に気づくきっかけになっただけだ。貴子を、愛してる」
沙織の顔が苦々しく歪む。沙織がいくら求めても決して自分からは言わなかったあの言葉をいとも簡単に言い放つ哲太に身体中が震える。
沙織はずっと前から分かっていた。哲太の口から時折出る女の名前の存在が特別であることを。二人の仲を無茶苦茶にしなくては気が済まなかったが、やはり二人の絆は何よりも深く自分ごときが断ち切れるものではなかった……。
「……ごめんっ、行かなきゃ」
沙織の手を振り切ると哲太は駆け出した。
さっきの貴子の泣き顔を思い出しては胸が痛む。俺が練習台なんて言ってあいつはずっと傷付いていたのか? ずっとそんな思いで抱かれていたのか?
◇
部屋についてお互いの気持ちを伝え合ったのだが、思わぬ展開になった。まさかの貴子の女豹が目覚めてしまった。逃げる俺をドアまで追い詰めそのままガチャリと鍵を閉めた──。
その後のことは言いたくない。一つ言えることは、貴子は豹でオレはただのゴリラだったってこと、それだけ。
END
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コメント失礼します
忙しい男からこちらを読ませていただいたので、涙腺ガバガバで、
こちらでもティッシュが活躍しました
(すでに目はパンパンです笑笑)
大人のキスの練習………!
また違ったテイストなのに、
すごく面白くて楽しませていただきました😊
きゃるぴすさん読んでいただいてありがとうございます^^
目の腫れ大変そう……笑
わたしかなり作品によってころころ変わっちゃってしまうんですよね!笑
かなり振り幅あるんで、それを含めて楽しんでいただけると嬉しいです、ふふ( ´∀`)