4 / 7
番外編
あれから
しおりを挟む
「そこのもやしのナムル取ってくんない?」
「ああ、ほれ」
どこぞの夫婦だっていうぐらい気の抜けたやりとりが続く。自分でもこれでいいのかと思うぐらいだ。十八年の付き合いが憎らしい。ビールを飲んだ哲太はごきげんなようで貴子の髪を手で搔き上げて耳元で囁く。
「貴子、練習台お願いしていい?」
……きた。
哲太の言葉に心臓が跳ねる。あの日以来哲太と恋人関係になったわけだが、とにかくこっぱずかしくて堪らない。急に甘え出すこともできない捻くれた私を哲太はどう思っているのだろう。好きの二文字すらとても言えそうにない。
「貴子……」
熱を帯びた哲太の声に全身の毛が逆立つ。哲太は私をゆっくりと寝かせるとゆっくりとキスを落とす。ふわりと触れ、角度を変えて深く繋がる。哲太は私に苦しい思いをさせまいと身体の重みは腕で支えているようだ。優しく甘いキスと、必要以上に大切にされている感覚でビリっと背筋に電気が走る。哲太から出る男の香りに目眩がしそうだ。
「どうだ?」
哲太のキスは優しく始まる。一旦離れて練習台の感想を求めてくるのは変わらない。
「御前様の、出番ね……」
「おいおい、登り詰めたな。おい」
いつのまにかお偉いさんになってしまった貴子に優しく微笑みかける。
……あぁもうダメだ。
仰向けに寝ていた貴子は哲太の腰を太腿で挟むとぐいっと一回転した。攻守交代だ──
貴子は仰向けにされた哲太に跨り上から哲太を見下ろしている。太腿越しに感じる哲太の腹筋にゾクリとする。
「っておおぃ! まだ俺のターン!」
焦ったように下でバタつく哲太の内腿を手の平で優しく撫でてやるとピタリと大人しくなる。本物のゴリラもこれぐらい従順だといいのだが。真っ赤な顔して抗議の目を向けてくる哲太はびっくりするほど可愛い。
「……期待してるの?」
いつものように指を絡めて人質に取ると哲太の喉仏は返事をするように動く。貴子はゆっくりと顔に近づくと「かわいい……」と言い早急に唇を奪う。かわいい発言に抗議をしているようで曇った声を出すがその声ごと貴子は捕食した。途中でもっと中まで犯したくなり哲太の顎を上に向けさせて食べる。
迎えに行くように舌を出し絡めとりわざと口角をなぞるようにしてやると哲太の身体が反る。ゆっくりと離れていくと口を軽くあけ真っ赤になったであろう舌を見せると哲太の表情が固まる。
「どう、かな?」
欲望のまま突っ走った後は、いつも哲太の顔を見てやり過ぎた、嫌われるかもしれないと怖くなる。私は哲太を失うことが何よりも怖い。
哲太は上半身を急に起こすとバランスを崩しそうになる貴子の腰を抱えた。
「び、びっくりした……!」
「……びっくりしたのはこっちだ」
哲太の声がかすれて渋みが増している。
「貴子、俺のマグナム、ショットガンになってるわ」
「勝手にカスタムしてんなよ」
自分のシャツを脱ぐのが面倒になったのか哲太はなぜかボタンに構わずシャツを左右に開く。え? 本場のゴリラじゃん、どっかのモンスターの変身シーンのような光景に唖然としていると興奮し過ぎて息が荒れた哲太は貴子の頰を掴み満面の笑みを浮かべる。
「女豹のお前が悪い、前回みたいに手加減しないからな」
……へ? 手加減しててあれなの? ってかもう人間の男じゃなくてオスの顔してるくない?
「ちょ、まっ──エロゴリラー!」
「ああ、ほれ」
どこぞの夫婦だっていうぐらい気の抜けたやりとりが続く。自分でもこれでいいのかと思うぐらいだ。十八年の付き合いが憎らしい。ビールを飲んだ哲太はごきげんなようで貴子の髪を手で搔き上げて耳元で囁く。
「貴子、練習台お願いしていい?」
……きた。
哲太の言葉に心臓が跳ねる。あの日以来哲太と恋人関係になったわけだが、とにかくこっぱずかしくて堪らない。急に甘え出すこともできない捻くれた私を哲太はどう思っているのだろう。好きの二文字すらとても言えそうにない。
「貴子……」
熱を帯びた哲太の声に全身の毛が逆立つ。哲太は私をゆっくりと寝かせるとゆっくりとキスを落とす。ふわりと触れ、角度を変えて深く繋がる。哲太は私に苦しい思いをさせまいと身体の重みは腕で支えているようだ。優しく甘いキスと、必要以上に大切にされている感覚でビリっと背筋に電気が走る。哲太から出る男の香りに目眩がしそうだ。
「どうだ?」
哲太のキスは優しく始まる。一旦離れて練習台の感想を求めてくるのは変わらない。
「御前様の、出番ね……」
「おいおい、登り詰めたな。おい」
いつのまにかお偉いさんになってしまった貴子に優しく微笑みかける。
……あぁもうダメだ。
仰向けに寝ていた貴子は哲太の腰を太腿で挟むとぐいっと一回転した。攻守交代だ──
貴子は仰向けにされた哲太に跨り上から哲太を見下ろしている。太腿越しに感じる哲太の腹筋にゾクリとする。
「っておおぃ! まだ俺のターン!」
焦ったように下でバタつく哲太の内腿を手の平で優しく撫でてやるとピタリと大人しくなる。本物のゴリラもこれぐらい従順だといいのだが。真っ赤な顔して抗議の目を向けてくる哲太はびっくりするほど可愛い。
「……期待してるの?」
いつものように指を絡めて人質に取ると哲太の喉仏は返事をするように動く。貴子はゆっくりと顔に近づくと「かわいい……」と言い早急に唇を奪う。かわいい発言に抗議をしているようで曇った声を出すがその声ごと貴子は捕食した。途中でもっと中まで犯したくなり哲太の顎を上に向けさせて食べる。
迎えに行くように舌を出し絡めとりわざと口角をなぞるようにしてやると哲太の身体が反る。ゆっくりと離れていくと口を軽くあけ真っ赤になったであろう舌を見せると哲太の表情が固まる。
「どう、かな?」
欲望のまま突っ走った後は、いつも哲太の顔を見てやり過ぎた、嫌われるかもしれないと怖くなる。私は哲太を失うことが何よりも怖い。
哲太は上半身を急に起こすとバランスを崩しそうになる貴子の腰を抱えた。
「び、びっくりした……!」
「……びっくりしたのはこっちだ」
哲太の声がかすれて渋みが増している。
「貴子、俺のマグナム、ショットガンになってるわ」
「勝手にカスタムしてんなよ」
自分のシャツを脱ぐのが面倒になったのか哲太はなぜかボタンに構わずシャツを左右に開く。え? 本場のゴリラじゃん、どっかのモンスターの変身シーンのような光景に唖然としていると興奮し過ぎて息が荒れた哲太は貴子の頰を掴み満面の笑みを浮かべる。
「女豹のお前が悪い、前回みたいに手加減しないからな」
……へ? 手加減しててあれなの? ってかもう人間の男じゃなくてオスの顔してるくない?
「ちょ、まっ──エロゴリラー!」
14
お気に入りに追加
80
あなたにおすすめの小説
【完結】私たち白い結婚だったので、離婚してください
楠結衣
恋愛
田舎の薬屋に生まれたエリサは、薬草が大好き。薬草を摘みに出掛けると、怪我をした一匹の子犬を助ける。子犬だと思っていたら、領主の息子の狼獣人ヒューゴだった。
ヒューゴとエリサは、一緒に薬草採取に出掛ける日々を送る。そんなある日、魔王復活の知らせが世界を駆け抜け、神託によりヒューゴが勇者に選ばれることに。
ヒューゴが出立の日、エリサは自身の恋心に気づいてヒューゴに告白したところ二人は即結婚することに……!
「エリサを泣かせるなんて、絶対許さない」
「エリサ、愛してる!」
ちょっぴり鈍感で薬草を愛するヒロインが、一途で愛が重たい変態風味な勇者に溺愛されるお話です。


貧乏男爵家の末っ子が眠り姫になるまでとその後
空月
恋愛
貧乏男爵家の末っ子・アルティアの婚約者は、何故か公爵家嫡男で非の打ち所のない男・キースである。
魔術学院の二年生に進学して少し経った頃、「君と俺とでは釣り合わないと思わないか」と言われる。
そのときは曖昧な笑みで流したアルティアだったが、その数日後、倒れて眠ったままの状態になってしまう。
すると、キースの態度が豹変して……?

終わりにできなかった恋
明日葉
恋愛
「なあ、結婚するか?」
男友達から不意にそう言われて。
「そうだね、しようか」
と。
恋を自覚する前にあまりに友達として大事になりすぎて。終わるかもしれない恋よりも、終わりのない友達をとっていただけ。ふとそう自覚したら、今を逃したら次はないと気づいたら、そう答えていた。

伯爵令嬢の苦悩
夕鈴
恋愛
伯爵令嬢ライラの婚約者の趣味は婚約破棄だった。
婚約破棄してほしいと願う婚約者を宥めることが面倒になった。10回目の申し出のときに了承することにした。ただ二人の中で婚約破棄の認識の違いがあった・・・。
わたしは夫のことを、愛していないのかもしれない
鈴宮(すずみや)
恋愛
孤児院出身のアルマは、一年前、幼馴染のヴェルナーと夫婦になった。明るくて優しいヴェルナーは、日々アルマに愛を囁き、彼女のことをとても大事にしている。
しかしアルマは、ある日を境に、ヴェルナーから甘ったるい香りが漂うことに気づく。
その香りは、彼女が勤める診療所の、とある患者と同じもので――――?


【完結】王太子殿下が幼馴染を溺愛するので、あえて応援することにしました。
かとるり
恋愛
王太子のオースティンが愛するのは婚約者のティファニーではなく、幼馴染のリアンだった。
ティファニーは何度も傷つき、一つの結論に達する。
二人が結ばれるよう、あえて応援する、と。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる