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8.挑発 貴弘side
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貴弘の言葉に風香は首を横に振る。
「いやいや、証明なんてしなくなっていいから。下手なわけないじゃん!」
「キスしたやつに下手とか言う男がいるか? 俺は正直だから言ったんだ。まさか、いい年して恋人以外とキス出来ない、とか言う訳ないよな……」
風香は明らかに動揺したようでぐっと言葉を堪えていた。もちろん、嘘だ。風香のキスは下手ではない。甘くて、心地がいい。貴弘は嘘をついた。覚えてないという風香に腹が立った。自分だけがあの時間を覚えているのが許せなかった。半ばヤケクソで風香に吹っ掛けた。
「わ、分かったわよ! やればいいんでしょう、やれば!」
風香はベッドから出ると立ち上がり手首を振り、首を回し準備運動を開始した。その様子に貴弘は口元が緩んでしまいそうだったが、必死で堪えた。貴弘はキスしやすいようにベッド端に座り風香を見上げていた。風香は貴弘の姿を捉えると再度背伸びをした……随分と用意周到だ。
「……いつまで掛かってんの? 緊張してんのか?」
「馬鹿言わないで、下手じゃないし、緊張もしてないし」
風香は貴弘へ近づくと上から見下ろした。貴弘は黙って風香を見上げたままだ。風香は大きく息を吐き覚悟を決めた……。
「め、目を瞑ってて。やりにくい」
貴弘が目を閉じると昔見た寝顔を思い出した。同時に幼い淡い恋心も……。
風香の小さな手が貴弘の頬に触れる。ゆっくりと近づくと貴弘の淡いピンクの唇に自分のそれを重ねた。互いの唇が重なるとその柔らかさに心臓が跳ねた。頰に貴弘の鼻の先が触れて冷たく感じる。甘い香りとミントの香りがする。風香は何となく薄目を開けて貴弘の唇を見ようとした……薄目のはずが予想外の事が起きて風香は目を大きく開けてしまった。
「ん……?!」
貴弘の大きな瞳が風香を捉えていた。
抗議の声は貴弘の口の中に消えた。
至近距離で目が合うと風香の腕を取り手前に引き寄せた。風香は勢い余って貴弘の太腿の上に座らされ、まるで抱き合うような形になる。離れようともがくのに全く歯が立たなかった。貴弘は顔を横に傾けると風香の頭を固定して深くキスをした。もがく風香の歯列を舌でこじ開けると一気に風香の舌を見つけて逃がさない……。
風香の瞳に混乱の色が見えたが貴弘は自分が何をしているのか分からなかった。止められない、もっと味わいたかった。
腹が立つ、何もかもが──。
風香に刻み付けたかった。記憶に残るじゃダメだ。忘れたくても忘れられないほど、寝られないほど刻み付けたかった。貴弘はあのキスの後眠れなかった。寝返りを打てば風香の艶かしい顔や柔らかい唇や体の感触が脳裏をよぎった……。眠りにつけば風香が夢に出てきて貴弘は睡眠不足だった。
「んー……、んーん! ん」
風香が苦しそうに貴弘の肩を叩くとようやく風香は解放された。風香は飛び跳ねるように貴弘から離れると口元を押さえてその場に崩れ落ちた。その様子に貴弘は満足気に微笑んだ。
「まぁまぁ、だったな」
「あ、あ、あんたが仕掛けてどうすんのよ! 馬鹿なの!?」
「ごめん、あまりにも控えめなキスだから、煽った方が本領発揮できるかと……」
貴弘は悪びれもなく笑いながら真っ赤に濡れた唇を指で払った。その動作に風香はより一層顔を赤らめた。
「煽るって……も、もういいでしょ! 出てって!」
「はいはい、言われなくても」
貴弘は部屋を出て行くと風香はドアにクッションを投げつけてベッドに突っ伏した。顔から蒸気が出てきそうなぐらい熱かった。
「何やってんのよ……もう」
貴弘は部屋を出た後トイレに向かった。バレていないはずだが随分と下半身が元気になっていた。どうにか処理をしなくては……。
貴弘はトイレの座椅子に腰掛けると顔を覆い溜め息をついた。必死で赤くなるのを堪えていた。ようやくポーカーフェイスを崩した貴弘は頭を掻き毟った。
「……余計に自分の首を絞めて何やってんだ、俺──」
土曜日の爽やかな朝は過ぎていった。
「いやいや、証明なんてしなくなっていいから。下手なわけないじゃん!」
「キスしたやつに下手とか言う男がいるか? 俺は正直だから言ったんだ。まさか、いい年して恋人以外とキス出来ない、とか言う訳ないよな……」
風香は明らかに動揺したようでぐっと言葉を堪えていた。もちろん、嘘だ。風香のキスは下手ではない。甘くて、心地がいい。貴弘は嘘をついた。覚えてないという風香に腹が立った。自分だけがあの時間を覚えているのが許せなかった。半ばヤケクソで風香に吹っ掛けた。
「わ、分かったわよ! やればいいんでしょう、やれば!」
風香はベッドから出ると立ち上がり手首を振り、首を回し準備運動を開始した。その様子に貴弘は口元が緩んでしまいそうだったが、必死で堪えた。貴弘はキスしやすいようにベッド端に座り風香を見上げていた。風香は貴弘の姿を捉えると再度背伸びをした……随分と用意周到だ。
「……いつまで掛かってんの? 緊張してんのか?」
「馬鹿言わないで、下手じゃないし、緊張もしてないし」
風香は貴弘へ近づくと上から見下ろした。貴弘は黙って風香を見上げたままだ。風香は大きく息を吐き覚悟を決めた……。
「め、目を瞑ってて。やりにくい」
貴弘が目を閉じると昔見た寝顔を思い出した。同時に幼い淡い恋心も……。
風香の小さな手が貴弘の頬に触れる。ゆっくりと近づくと貴弘の淡いピンクの唇に自分のそれを重ねた。互いの唇が重なるとその柔らかさに心臓が跳ねた。頰に貴弘の鼻の先が触れて冷たく感じる。甘い香りとミントの香りがする。風香は何となく薄目を開けて貴弘の唇を見ようとした……薄目のはずが予想外の事が起きて風香は目を大きく開けてしまった。
「ん……?!」
貴弘の大きな瞳が風香を捉えていた。
抗議の声は貴弘の口の中に消えた。
至近距離で目が合うと風香の腕を取り手前に引き寄せた。風香は勢い余って貴弘の太腿の上に座らされ、まるで抱き合うような形になる。離れようともがくのに全く歯が立たなかった。貴弘は顔を横に傾けると風香の頭を固定して深くキスをした。もがく風香の歯列を舌でこじ開けると一気に風香の舌を見つけて逃がさない……。
風香の瞳に混乱の色が見えたが貴弘は自分が何をしているのか分からなかった。止められない、もっと味わいたかった。
腹が立つ、何もかもが──。
風香に刻み付けたかった。記憶に残るじゃダメだ。忘れたくても忘れられないほど、寝られないほど刻み付けたかった。貴弘はあのキスの後眠れなかった。寝返りを打てば風香の艶かしい顔や柔らかい唇や体の感触が脳裏をよぎった……。眠りにつけば風香が夢に出てきて貴弘は睡眠不足だった。
「んー……、んーん! ん」
風香が苦しそうに貴弘の肩を叩くとようやく風香は解放された。風香は飛び跳ねるように貴弘から離れると口元を押さえてその場に崩れ落ちた。その様子に貴弘は満足気に微笑んだ。
「まぁまぁ、だったな」
「あ、あ、あんたが仕掛けてどうすんのよ! 馬鹿なの!?」
「ごめん、あまりにも控えめなキスだから、煽った方が本領発揮できるかと……」
貴弘は悪びれもなく笑いながら真っ赤に濡れた唇を指で払った。その動作に風香はより一層顔を赤らめた。
「煽るって……も、もういいでしょ! 出てって!」
「はいはい、言われなくても」
貴弘は部屋を出て行くと風香はドアにクッションを投げつけてベッドに突っ伏した。顔から蒸気が出てきそうなぐらい熱かった。
「何やってんのよ……もう」
貴弘は部屋を出た後トイレに向かった。バレていないはずだが随分と下半身が元気になっていた。どうにか処理をしなくては……。
貴弘はトイレの座椅子に腰掛けると顔を覆い溜め息をついた。必死で赤くなるのを堪えていた。ようやくポーカーフェイスを崩した貴弘は頭を掻き毟った。
「……余計に自分の首を絞めて何やってんだ、俺──」
土曜日の爽やかな朝は過ぎていった。
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