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5.思春期 貴弘side
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「わわわ……二度寝した! 行ってくるね」
「足元見ろって、捻挫するぞ」
「そんな鈍臭くないわよ、失礼ね」
相変わらず風香は二度寝をする。現に俺が仕掛けていたヘビメタロックのアラームがなければ何度も遅刻しているはずだ。風香と俺は幼馴染だ。風香のことはなんでも知っているはずだった……思春期を迎えるまでは。
俺を突如襲った思春期という波は思いのほか大きかった。周りの揶揄うような声もそれを助長した。突然俺の中で風香という存在が恥ずかしく感じた。今考えればおかしな思考をしているがその当時はそうとしか思えなかった。風香を遠ざけようと違う友達と遊んでみたり、用事があるからと風香を避けるそぶりを見せた。純粋な風香は俺を信じ笑顔でそれを受け入れた。
それでも俺に近づこうとする風香に俺は心ない一言を言った。それ以来風香は学校で俺に話しかけることはしなくなった。俺はホッとしたが、内心寂しかった。でも、何も出来なかった……。周りの環境が、変わりゆく俺の心と体がそれを許さなかった。
中学生になると俺は身長も伸びて声変わりもした。違うクラスの風香とすれ違う度に変わってしまった自分を感じた。変わらない風香が羨ましかった。
中学三年生になり告白してきたクラスの女子と付き合うことになった。キスをしたが何か違う気がした。その女子とは上手くいかず、すぐに別れてしまった。
高校生になり遊びの延長のような軽い気持ちでのバスケ部に入り、空いた時間に駅前のファストフード店でバイトを始めた。風香と会うことはほぼ無くなっていた。その頃になると風香と話したい気持ちが出てきたが今更どう声を掛ければいいか分からなくなっていた。風香との溝は広がっていた。その溝のきっかけを作ったのは俺だ。その溝の間に長い時間をかけて雨風が侵食したように溝が少しずつ広がった。気づけば容易に近づけないほど……離れていた。
ある日、バスケ部の試合の帰りに近所のコンビニに仲間と立ち寄った時に偶然風香の姿を見た。地元で有名な女子校の制服を着た風香は清楚で可愛い女になっていた。いつのまにか薄く化粧をするようになっている。衝撃的だった……思わず呆然と見つめていた。俺の知らない風香がそこにいた。俺の視線の先にいる存在に気がついた仲間が俺を揶揄った。
『お、萩女の制服じゃん……可愛い子だな、知り合いか?』
『いや、知らない』
俺は知らないふりをした。風香はレジで会計を済ませて慌てて出て行こうとしたが足元のマットに躓いて転倒した。俺は駆け寄ろうとしたがそばに居た俺の仲間が駆け寄り風香に手を貸した。風香は恥ずかしそうにその手を取ると真っ赤な顔をして瞳を潤ませた。仲間は嬉しそうに頭を掻いていた。よく分からない感情が俺の胸に下りてきた……二人を見ていて面白くない。嫌な感情だった。風香はそのまま俺に気付くこともなく店を出て行った。
風香と同棲するようになって忘れかけていた事を思い出すことが多くなった。今まで思い出すこともなかったのに不思議だ。
「昔から慌てると足元が危ないんだよな……」
もう風香とこんなふうに会話することなんてないと思っていたのに、人生どうなるか分からない。母さんたちの気まぐれだったけど……風香と一緒にいるのは、何というか、居心地がいい。喧嘩ばかりしているけれどなんだか嬉しい気持ちになる。
ただ、同棲して気になることがある……それは風香がまさかの経験豊富だということだ。
奥手な風香のことだからまだ男性経験もないだろうと思っていたが俺の予想は大きく裏切られた。いつのまにか風香が女になっていた。恥ずかしがる素振りを見せずに俺の下半身を見ていた。
俺もそれなりに経験を積んでいるがそれと同じだけ風香も大人の女になった……当たり前のことなのに何故か俺はショックを受けていた。意味の分からない感情だ。
「無垢でいられる人間なんているわけないか。あ、やべ」
貴弘は時計を見ると慌てて出掛ける準備をした。
「足元見ろって、捻挫するぞ」
「そんな鈍臭くないわよ、失礼ね」
相変わらず風香は二度寝をする。現に俺が仕掛けていたヘビメタロックのアラームがなければ何度も遅刻しているはずだ。風香と俺は幼馴染だ。風香のことはなんでも知っているはずだった……思春期を迎えるまでは。
俺を突如襲った思春期という波は思いのほか大きかった。周りの揶揄うような声もそれを助長した。突然俺の中で風香という存在が恥ずかしく感じた。今考えればおかしな思考をしているがその当時はそうとしか思えなかった。風香を遠ざけようと違う友達と遊んでみたり、用事があるからと風香を避けるそぶりを見せた。純粋な風香は俺を信じ笑顔でそれを受け入れた。
それでも俺に近づこうとする風香に俺は心ない一言を言った。それ以来風香は学校で俺に話しかけることはしなくなった。俺はホッとしたが、内心寂しかった。でも、何も出来なかった……。周りの環境が、変わりゆく俺の心と体がそれを許さなかった。
中学生になると俺は身長も伸びて声変わりもした。違うクラスの風香とすれ違う度に変わってしまった自分を感じた。変わらない風香が羨ましかった。
中学三年生になり告白してきたクラスの女子と付き合うことになった。キスをしたが何か違う気がした。その女子とは上手くいかず、すぐに別れてしまった。
高校生になり遊びの延長のような軽い気持ちでのバスケ部に入り、空いた時間に駅前のファストフード店でバイトを始めた。風香と会うことはほぼ無くなっていた。その頃になると風香と話したい気持ちが出てきたが今更どう声を掛ければいいか分からなくなっていた。風香との溝は広がっていた。その溝のきっかけを作ったのは俺だ。その溝の間に長い時間をかけて雨風が侵食したように溝が少しずつ広がった。気づけば容易に近づけないほど……離れていた。
ある日、バスケ部の試合の帰りに近所のコンビニに仲間と立ち寄った時に偶然風香の姿を見た。地元で有名な女子校の制服を着た風香は清楚で可愛い女になっていた。いつのまにか薄く化粧をするようになっている。衝撃的だった……思わず呆然と見つめていた。俺の知らない風香がそこにいた。俺の視線の先にいる存在に気がついた仲間が俺を揶揄った。
『お、萩女の制服じゃん……可愛い子だな、知り合いか?』
『いや、知らない』
俺は知らないふりをした。風香はレジで会計を済ませて慌てて出て行こうとしたが足元のマットに躓いて転倒した。俺は駆け寄ろうとしたがそばに居た俺の仲間が駆け寄り風香に手を貸した。風香は恥ずかしそうにその手を取ると真っ赤な顔をして瞳を潤ませた。仲間は嬉しそうに頭を掻いていた。よく分からない感情が俺の胸に下りてきた……二人を見ていて面白くない。嫌な感情だった。風香はそのまま俺に気付くこともなく店を出て行った。
風香と同棲するようになって忘れかけていた事を思い出すことが多くなった。今まで思い出すこともなかったのに不思議だ。
「昔から慌てると足元が危ないんだよな……」
もう風香とこんなふうに会話することなんてないと思っていたのに、人生どうなるか分からない。母さんたちの気まぐれだったけど……風香と一緒にいるのは、何というか、居心地がいい。喧嘩ばかりしているけれどなんだか嬉しい気持ちになる。
ただ、同棲して気になることがある……それは風香がまさかの経験豊富だということだ。
奥手な風香のことだからまだ男性経験もないだろうと思っていたが俺の予想は大きく裏切られた。いつのまにか風香が女になっていた。恥ずかしがる素振りを見せずに俺の下半身を見ていた。
俺もそれなりに経験を積んでいるがそれと同じだけ風香も大人の女になった……当たり前のことなのに何故か俺はショックを受けていた。意味の分からない感情だ。
「無垢でいられる人間なんているわけないか。あ、やべ」
貴弘は時計を見ると慌てて出掛ける準備をした。
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