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22.新たな日
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「いやぁーまいった! 四人だよ? まいった!」
武田は朝出勤すると坂上と結衣を見かけるなり肩を回し自分の肩こりをアピールする。家族全員の看病でかなり疲れ切っているようだ。結婚というものの概念が理解できない坂上は武田の苦労話をネイルの傷のチェックをしながら聞き流している。
「斉藤も急に悪かったな」
結衣が「いえ」と返事すると武田が急に真顔になる。
結衣がどうかしたのか尋ねようとすると木下と牧田が出勤してきた。いつもの変わらない無表情の牧田に少しホッとする。
木下はどういう心境の変化だろう……スーツ姿だ。しかもなぜか黒縁メガネを掛けている。いや、会社員だし当たり前と言えば当たり前だが、なぜだろう気味が悪い。他の三人も同じ気持ちなようで極力目を合わさないようにしている。
「……あー、じゃあ今日も頑張ろう」
武田の言葉を皮切りに各々部屋へと入っていく。みんなの様子を見て口に入れていたガムを膨らませると木下は愉快そうに微笑む。
「……あぁ、不穏だねぇ」
◇
「牧田くん」
結衣が開いていた牧田の部屋のドアの隙間から顔を覗かせるとドアをノックする。
「どうぞ」
牧田は結衣が訪ねてくることが分かっていたような素振りで椅子に座るように促し、ファイルを机に置いた。
「お先にどうぞ……話があったんですよね?」
結衣はカバンからハンカチを出す。牧田から借りたあの木の髪飾りが包まれていた。結衣はそれを差し出すと牧田はじっとそれを見つめていた。
「ありがとうございました。とても素敵でうれしかったです。何かお礼を──」
「差し上げます。それは先輩の為に作ったものですから」
牧田の口から出た言葉に結衣が髪飾りから視線を声の主へと移す。牧田の無表情から発せられたとは思えない言葉で結衣は言葉も出ない。まさか牧田の手作りだとは思わなかった。
「……ありがとうございます」
やっとの事でお礼を言うと結衣は髪飾りを手に取るとゆっくりと撫でた。なぜ牧田がこんなことをするのか分からなかった。確かに少し前まではかなり厳しく当たりが強かったのに……結衣の心の中を読むように牧田が静かに口を開く。
「前は、斎藤先輩の笑顔が嫌いだったんです……すみません、随分と嫌な思いさせて。無理に作った笑顔を見てイライラして──」
牧田がテーブルの上で手を組み替える。結衣は牧田にバレていた事に驚いた。そしてそれをまさか指摘されるなんて思っていなかった。
「いいんです。牧田くんには感謝しかないから……。私、また頑張ろうって思えたんで……」
結衣が一礼すると牧田がファイルが開く。それは以前結衣が見せてもらったデザイン画画とは違っていた。以前よりも柔らかくて木の木目に目がいくデザインだ。結衣好みのデザインだ。
「実はこれは──……っ」
牧田が話の続きを話すのを待っていたがそのまま牧田は結衣に聞き取れないほどの声で「クソ神め」と愚痴る。
五年前の先輩のアドバイスが的確でした。
そう言いたいのに言葉が全く出てこなかった。牧田は諦めると結衣に話し掛けた。
「とにかく! デザイナーになってこんな作品を作ってください……俺はそうすべきだと思います」
結衣が頷くと牧田は満足そうに微笑んだ。
武田は朝出勤すると坂上と結衣を見かけるなり肩を回し自分の肩こりをアピールする。家族全員の看病でかなり疲れ切っているようだ。結婚というものの概念が理解できない坂上は武田の苦労話をネイルの傷のチェックをしながら聞き流している。
「斉藤も急に悪かったな」
結衣が「いえ」と返事すると武田が急に真顔になる。
結衣がどうかしたのか尋ねようとすると木下と牧田が出勤してきた。いつもの変わらない無表情の牧田に少しホッとする。
木下はどういう心境の変化だろう……スーツ姿だ。しかもなぜか黒縁メガネを掛けている。いや、会社員だし当たり前と言えば当たり前だが、なぜだろう気味が悪い。他の三人も同じ気持ちなようで極力目を合わさないようにしている。
「……あー、じゃあ今日も頑張ろう」
武田の言葉を皮切りに各々部屋へと入っていく。みんなの様子を見て口に入れていたガムを膨らませると木下は愉快そうに微笑む。
「……あぁ、不穏だねぇ」
◇
「牧田くん」
結衣が開いていた牧田の部屋のドアの隙間から顔を覗かせるとドアをノックする。
「どうぞ」
牧田は結衣が訪ねてくることが分かっていたような素振りで椅子に座るように促し、ファイルを机に置いた。
「お先にどうぞ……話があったんですよね?」
結衣はカバンからハンカチを出す。牧田から借りたあの木の髪飾りが包まれていた。結衣はそれを差し出すと牧田はじっとそれを見つめていた。
「ありがとうございました。とても素敵でうれしかったです。何かお礼を──」
「差し上げます。それは先輩の為に作ったものですから」
牧田の口から出た言葉に結衣が髪飾りから視線を声の主へと移す。牧田の無表情から発せられたとは思えない言葉で結衣は言葉も出ない。まさか牧田の手作りだとは思わなかった。
「……ありがとうございます」
やっとの事でお礼を言うと結衣は髪飾りを手に取るとゆっくりと撫でた。なぜ牧田がこんなことをするのか分からなかった。確かに少し前まではかなり厳しく当たりが強かったのに……結衣の心の中を読むように牧田が静かに口を開く。
「前は、斎藤先輩の笑顔が嫌いだったんです……すみません、随分と嫌な思いさせて。無理に作った笑顔を見てイライラして──」
牧田がテーブルの上で手を組み替える。結衣は牧田にバレていた事に驚いた。そしてそれをまさか指摘されるなんて思っていなかった。
「いいんです。牧田くんには感謝しかないから……。私、また頑張ろうって思えたんで……」
結衣が一礼すると牧田がファイルが開く。それは以前結衣が見せてもらったデザイン画画とは違っていた。以前よりも柔らかくて木の木目に目がいくデザインだ。結衣好みのデザインだ。
「実はこれは──……っ」
牧田が話の続きを話すのを待っていたがそのまま牧田は結衣に聞き取れないほどの声で「クソ神め」と愚痴る。
五年前の先輩のアドバイスが的確でした。
そう言いたいのに言葉が全く出てこなかった。牧田は諦めると結衣に話し掛けた。
「とにかく! デザイナーになってこんな作品を作ってください……俺はそうすべきだと思います」
結衣が頷くと牧田は満足そうに微笑んだ。
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