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17.君の過去を
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「出来たの! ようやく出来たの! 見て!」
嬉しそうに完成した【影花】を見せる結衣の笑顔に素直に喜べない牧田だったが、それを見て結衣が不満そうに口を尖らせる。
「そりゃ牧田くんは未来人だから完成を見たことあるでしょうけど、少しは喜んでくれても……」
いつもより細かい木屑だらけの結衣は髪の毛も真っ白だ。最後の仕上げのサンドペーパーを素手で行なっていたのだろう、手も傷だらけだ。未来を知らなければ、こんなに努力した結衣を誇らしく思えただろうが、牧田はキラキラと輝く結衣を見るのがつらかった。
「……すごいですよ、こんな作品は二度と出ないですよ」
「本当に!? この【影花】は愛されているのね」
「◇@&〓∞◉×✳︎☆!~\$……」
この言葉は結衣には届かないだろう。どうすれば白川に近づくなと言えるのか……。前回の時にはダイレクトに会うな、近づくなと言ったら変換されてしまった。前々回の時には【影花】を早く発表しろと嗾けて、賞の審査員に選ばれる先生の電話番号を紙に書いてみたが、まさかの言葉も変換し、全身をモザイクだらけにするという暴挙を神さまはした。どんな変質者でも全身はないだろう全身は……。クソ神め。
「白川龍樹を知っていますよね?」
一瞬結衣の瞳が揺らいだ。この質問なら大丈夫だったようだ。
「同じ部だし、先輩よ。牧田くんが知り合いならまだ私も白川先輩もアンティーク部に一緒にいるのね」
嫌な予感がする。なぜ頬を赤らめる? なぜ赤い唇を噛んだ? なぜそんな顔をしているんだ? 大事なものを奪われる男だぞ。まさか、先輩は──。
「あれ? お二人は……ただの知り合いですか?」
自分でも驚くほど軽く言えた。
神さまはなぜ俺たちを繋げたんだろうか、今から起こることを止めさせたいんだろうか。それとも今から起こることを黙って見ていろと言うのか……?
「あ、やっぱりそうなんだ。私ね、白川先輩と付き合っているの、秘密だけどね。バレてるってことはもしかして結婚──」
結衣が何かを言っていたが牧田の頭は棒で殴られたように揺れている。
──神さま、やはりあなたは残酷だ。
◇
「お疲れ様でした」
「お疲れ、気を付けて帰るんだぞ」
結衣は武田と別れてそのまま直帰した。帰宅すると湯を溜め風呂に入ると体に纏わりついていた何かがぬるりと溶けて剥がされていく感覚がする。しばらくは白川の出ている雑誌を見ても発作は起きなかったのに今日はなぜか我慢ができなかった。
それはきっと久し振りに他人の優しさに甘えてしまったからだろう。甘えることはもうしないとあんなに誓ったのに……いとも簡単に覆されまた弱くなった自分を苦々しく思う。
それなのに、結衣はまたドアの前にこうして座っている。
時空の狭間に挟まれたくないから……牧田と自分の為……だけではない何かが自分の中で生まれ始めていると感じていた。
腕を伸ばしゆっくりとドアを叩く──。
トントントントントントントン……
嬉しそうに完成した【影花】を見せる結衣の笑顔に素直に喜べない牧田だったが、それを見て結衣が不満そうに口を尖らせる。
「そりゃ牧田くんは未来人だから完成を見たことあるでしょうけど、少しは喜んでくれても……」
いつもより細かい木屑だらけの結衣は髪の毛も真っ白だ。最後の仕上げのサンドペーパーを素手で行なっていたのだろう、手も傷だらけだ。未来を知らなければ、こんなに努力した結衣を誇らしく思えただろうが、牧田はキラキラと輝く結衣を見るのがつらかった。
「……すごいですよ、こんな作品は二度と出ないですよ」
「本当に!? この【影花】は愛されているのね」
「◇@&〓∞◉×✳︎☆!~\$……」
この言葉は結衣には届かないだろう。どうすれば白川に近づくなと言えるのか……。前回の時にはダイレクトに会うな、近づくなと言ったら変換されてしまった。前々回の時には【影花】を早く発表しろと嗾けて、賞の審査員に選ばれる先生の電話番号を紙に書いてみたが、まさかの言葉も変換し、全身をモザイクだらけにするという暴挙を神さまはした。どんな変質者でも全身はないだろう全身は……。クソ神め。
「白川龍樹を知っていますよね?」
一瞬結衣の瞳が揺らいだ。この質問なら大丈夫だったようだ。
「同じ部だし、先輩よ。牧田くんが知り合いならまだ私も白川先輩もアンティーク部に一緒にいるのね」
嫌な予感がする。なぜ頬を赤らめる? なぜ赤い唇を噛んだ? なぜそんな顔をしているんだ? 大事なものを奪われる男だぞ。まさか、先輩は──。
「あれ? お二人は……ただの知り合いですか?」
自分でも驚くほど軽く言えた。
神さまはなぜ俺たちを繋げたんだろうか、今から起こることを止めさせたいんだろうか。それとも今から起こることを黙って見ていろと言うのか……?
「あ、やっぱりそうなんだ。私ね、白川先輩と付き合っているの、秘密だけどね。バレてるってことはもしかして結婚──」
結衣が何かを言っていたが牧田の頭は棒で殴られたように揺れている。
──神さま、やはりあなたは残酷だ。
◇
「お疲れ様でした」
「お疲れ、気を付けて帰るんだぞ」
結衣は武田と別れてそのまま直帰した。帰宅すると湯を溜め風呂に入ると体に纏わりついていた何かがぬるりと溶けて剥がされていく感覚がする。しばらくは白川の出ている雑誌を見ても発作は起きなかったのに今日はなぜか我慢ができなかった。
それはきっと久し振りに他人の優しさに甘えてしまったからだろう。甘えることはもうしないとあんなに誓ったのに……いとも簡単に覆されまた弱くなった自分を苦々しく思う。
それなのに、結衣はまたドアの前にこうして座っている。
時空の狭間に挟まれたくないから……牧田と自分の為……だけではない何かが自分の中で生まれ始めていると感じていた。
腕を伸ばしゆっくりとドアを叩く──。
トントントントントントントン……
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