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(1)いつもの仕出しの発注を初めてLINEでやってみた
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雄次は42歳、独身。
県内では中堅規模の建設会社の企画開発部に勤務している。
と言っても、今の職場は今年の4月からのことだ。
大学を出てから20年ほど、超絶ブラックを含め5つの職場を転々とした末にたどり着いた職場だった。
今の職場に巡り合ったのは、本当の本当に幸運だったと思わざるを得ない。
直前の職場はブラックではなかったし、社会福祉のために活動している企業で働きがいもあったが、ある事情があって居づらくなって自ら逃げるように退職する事になった。
そのタイミングで、ハローワークに求人票が出されたばかりのその会社に飛びついたのだ。
「どうせ、ここでも搾取されるだけだろ」と割り切りながらも、とにかく当時の職場を抜け出したくて応募した次第だ。
彼が経験した5つの職場のうち、最後のひとつを除いて、搾取されているとしか思えない労働環境だった。
しかしどこでも、みんな揃って待遇への不満には口をつぐみ、経営側の言いなりになっていた。
都会はどうだか知らないが、地方では経営側が従業員の生殺与奪権を握っているから仕方がない。
そんな中で彼がたどり着いたその会社は、彼の「割り切り」とは裏腹に、経営側の温情を感じざるを得ない環境だったのは幸運だった。
社長からして「出来た」人で、合理的思考の持ち主だと雄次は見抜いていた。
意味のない長時間の会議、主観に依った理不尽な人事、義理・人情・浪花節で左右される経営方針の決定・・・そんな日本企業が陥っている『沼』から脱却した経営を貫いていた。
しかし周囲を見渡せば、そこから抜け出せない企業は大多数・・・その中でそれを守るには相応の努力があるはずだが。
とにかく、6つ目でたどり着いた、「骨を埋められる、すなわち定年まで働ける」職場だった。
働いたら働いただけ評価される・・・本来ならば当たり前のことが当たり前に評価される、それだけのことだったけれど、彼にはそれだけで貴重だった。
だから仕事のモチベーションも上がり、それまでの彼の20年近い社会人経験の中で最も高いパフォーマンスを上げていた。
それだけ頑張りがいのある職場とも言えた。
特に12月に入ってからは、雄次はますます張り切っていた。
それは、彼にとって生まれて初めての「ボーナス」が支給されるから。
それまで働いてきたところでは、どこでもそんなものは貰えなかったのだ。
ボーナスという制度があっても、恣意的に彼に支給されなかった職場さえあった。
それなのに、彼にとってはすでに「別の世界のおとぎ話の中のもの」という認識になっていた「ボーナス」というものが、本当に支給される!
夏のボーナスは勤続年数の規定に達していなかったから仕方がなかったが、入社半年を過ぎて、ついにそれが自分の手の中に入るのだ!
それだけで彼は、内心で有頂天になっていた。
そしてそれを周りに気づかれないように、押し殺していたのだが。
そんな折、また社長から彼にある「指示」が出された。
毎月、月末が近づくと彼に出されていた「指示」だった。
それは、毎月第4土曜日恒例の社長主催の「勉強会」の出席者に出される仕出し弁当の調達だった。
その指示の内容そのものは、勉強会を陰で取り仕切る企画開発部の業務のひとつに過ぎないのだが。
だからこそ、雄次も事務的に処理を進めていく。
ちなみにその「勉強会」とは、地場の業界のレベルアップを目指して、社長が特に親しくしている同業他社の経営者を集めて事業分野開拓や最新技術についての意見交換をするために設けている会合だ。
ちなみに雄次は、その「勉強会」の実施にも現れている勉強熱心な社長の姿勢に尊敬の念を覚えている。
社長が目先の金儲けや利権確保に走らず、自らと会社のレベルアップのために動いているのが、気持ちよかった。
そのような背景もあって彼にとっては、その「勉強会」で出される仕出し弁当も、どうしても適当には調達できないような気がするのだった。
だから費用対効果を考えつつも、許される範囲で最上のものを準備しようと彼はそれなりに努力してきた。
その結果として9月以降は、ある弁当屋の「上幕の内弁当・お茶付き:1,200円」が最終的に最適解だという結論ににたどり着いた。
だから12月分も、それを注文しようという段になった。
そこで気付いたのは、その弁当屋はLINEでお友達登録するとそこから入れるフォームでも注文できるということだった。
それまでは電話で注文していたが、LINEで注文すると電話での口頭注文よりも内容がきちんと記録される分、安心かなとも思えてきた。
LINEでの注文は100円引きというのも、魅力的に思えた。
どうせ会社の経費で落ちるのだが、それでも経費削減できればいずれ彼の評価につながるのではないかという下心が若干はあった。
いや、そんな努力をきちんと汲み取ってくれる会社だからと信頼していた。
そこで、LINEでその弁当屋をお友達登録し、フォームから注文した。
発注数量を参加者に合わせて「11」とし、そんなものはAmazonとかの日頃の通販で慣れているから流れるような動作で【注文確定】ボタン押下まで一気に進んだ。
県内では中堅規模の建設会社の企画開発部に勤務している。
と言っても、今の職場は今年の4月からのことだ。
大学を出てから20年ほど、超絶ブラックを含め5つの職場を転々とした末にたどり着いた職場だった。
今の職場に巡り合ったのは、本当の本当に幸運だったと思わざるを得ない。
直前の職場はブラックではなかったし、社会福祉のために活動している企業で働きがいもあったが、ある事情があって居づらくなって自ら逃げるように退職する事になった。
そのタイミングで、ハローワークに求人票が出されたばかりのその会社に飛びついたのだ。
「どうせ、ここでも搾取されるだけだろ」と割り切りながらも、とにかく当時の職場を抜け出したくて応募した次第だ。
彼が経験した5つの職場のうち、最後のひとつを除いて、搾取されているとしか思えない労働環境だった。
しかしどこでも、みんな揃って待遇への不満には口をつぐみ、経営側の言いなりになっていた。
都会はどうだか知らないが、地方では経営側が従業員の生殺与奪権を握っているから仕方がない。
そんな中で彼がたどり着いたその会社は、彼の「割り切り」とは裏腹に、経営側の温情を感じざるを得ない環境だったのは幸運だった。
社長からして「出来た」人で、合理的思考の持ち主だと雄次は見抜いていた。
意味のない長時間の会議、主観に依った理不尽な人事、義理・人情・浪花節で左右される経営方針の決定・・・そんな日本企業が陥っている『沼』から脱却した経営を貫いていた。
しかし周囲を見渡せば、そこから抜け出せない企業は大多数・・・その中でそれを守るには相応の努力があるはずだが。
とにかく、6つ目でたどり着いた、「骨を埋められる、すなわち定年まで働ける」職場だった。
働いたら働いただけ評価される・・・本来ならば当たり前のことが当たり前に評価される、それだけのことだったけれど、彼にはそれだけで貴重だった。
だから仕事のモチベーションも上がり、それまでの彼の20年近い社会人経験の中で最も高いパフォーマンスを上げていた。
それだけ頑張りがいのある職場とも言えた。
特に12月に入ってからは、雄次はますます張り切っていた。
それは、彼にとって生まれて初めての「ボーナス」が支給されるから。
それまで働いてきたところでは、どこでもそんなものは貰えなかったのだ。
ボーナスという制度があっても、恣意的に彼に支給されなかった職場さえあった。
それなのに、彼にとってはすでに「別の世界のおとぎ話の中のもの」という認識になっていた「ボーナス」というものが、本当に支給される!
夏のボーナスは勤続年数の規定に達していなかったから仕方がなかったが、入社半年を過ぎて、ついにそれが自分の手の中に入るのだ!
それだけで彼は、内心で有頂天になっていた。
そしてそれを周りに気づかれないように、押し殺していたのだが。
そんな折、また社長から彼にある「指示」が出された。
毎月、月末が近づくと彼に出されていた「指示」だった。
それは、毎月第4土曜日恒例の社長主催の「勉強会」の出席者に出される仕出し弁当の調達だった。
その指示の内容そのものは、勉強会を陰で取り仕切る企画開発部の業務のひとつに過ぎないのだが。
だからこそ、雄次も事務的に処理を進めていく。
ちなみにその「勉強会」とは、地場の業界のレベルアップを目指して、社長が特に親しくしている同業他社の経営者を集めて事業分野開拓や最新技術についての意見交換をするために設けている会合だ。
ちなみに雄次は、その「勉強会」の実施にも現れている勉強熱心な社長の姿勢に尊敬の念を覚えている。
社長が目先の金儲けや利権確保に走らず、自らと会社のレベルアップのために動いているのが、気持ちよかった。
そのような背景もあって彼にとっては、その「勉強会」で出される仕出し弁当も、どうしても適当には調達できないような気がするのだった。
だから費用対効果を考えつつも、許される範囲で最上のものを準備しようと彼はそれなりに努力してきた。
その結果として9月以降は、ある弁当屋の「上幕の内弁当・お茶付き:1,200円」が最終的に最適解だという結論ににたどり着いた。
だから12月分も、それを注文しようという段になった。
そこで気付いたのは、その弁当屋はLINEでお友達登録するとそこから入れるフォームでも注文できるということだった。
それまでは電話で注文していたが、LINEで注文すると電話での口頭注文よりも内容がきちんと記録される分、安心かなとも思えてきた。
LINEでの注文は100円引きというのも、魅力的に思えた。
どうせ会社の経費で落ちるのだが、それでも経費削減できればいずれ彼の評価につながるのではないかという下心が若干はあった。
いや、そんな努力をきちんと汲み取ってくれる会社だからと信頼していた。
そこで、LINEでその弁当屋をお友達登録し、フォームから注文した。
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