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(17)転動する運命

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紘孝の家に、高校の友人の高木が来た。
まだ午前中だったが、すでに戸外は暑く、蝉もやかましく鳴いている頃だった。

壁に背をもたせるように胡座をかいた髙木は、ふうっと息をついた。
気だるそうだったが、目は安らかだった。

「宿題はどれだけ進んだ?」

紘孝の問いに、高木は首を振って答えた。

「ダメ、ダメ! いま俺は宿題どころじゃない」
「どうしたと?」

何かあったと感じ、紘孝はさらに訊ねた。
高木は、もったいぶるようにへらへら笑っていたが、少し頷いて言った。

「俺、○○高の娘と付き合っとるんよ」
「へぇ、それは知らんかった」

意外だった。
そしてその高校が鮎美の通う女子校だというのもまた意外だった。

それきり高木は何も話そうとしなかったので、紘孝は続きを促した。

「で、どうなん?」
「エヘヘ・・・お前に真っ先に言おうと思って来たばってんが、実は昨夜、そのコと初エッチしたんよ。九品寺くほんじのホテルで」
「へぇ・・・」

その時、紘孝は一瞬たじろいだ。
鮎美との関係をどう進めるか心の中で悩んでいた時だけに、彼の告白は生々しいものを感じた。

それから髙木は彼女についてののろけ話と、二人とも初めて泊まったラブホテルでの失敗談とかを、自慢げに、そしてあくまで陽気にあっけらかんと話した。
そして好きなだけ気の済むまで言うだけ言うと、帰っていった。

髙木が帰った後、紘孝は部屋にこもって、考えた。

彼は、鮎美とつながりたいと思っていた。
それは自然の欲求に素直に従うと、最終的にそこに行きつく事であった。

けれどそれだけでなく、心の底から鮎美が愛しくてならなくて、そのため彼女の全てを求めたいという想いも強かった。
けれども、果たして彼女がそれを本当に心から欲しているかどうか、自信がなかった。

阿蘇のペンションでの一夜を思い出すと、ただ身体を触れ合って鮎美の生命の証である身体と心の温もりを感じとって、それでとりあえずは満足できた部分もある。
ただ、それだけではまだ彼女の全てを知ったという実感は得られなかった。

どうしても、彼女の中に入って、全てを知りたかった。
午前中、さんざん考え抜いた末に、彼はひとつの結論を出した。

・・・

その日の午後、紘孝は鮎美の部屋にいた。

初めて訪れる鮎美の家は、聞いていた以上に荒れ果てていた。
建物全体が不規則に歪んでいるようで、中にいるとその不自然さに落ち付かなかった。

盆が明けてから、鮎美は彼女の生い立ち、そして現状をポツリポツリと話してくれた。
紘孝には彼女が憐れに思えた。

ますます彼女が愛しく思え、そして、彼がどうしても守ってやらなければならない存在に思えた。

その日の紘孝は、鮎美を愛し慈しむ気持ちと、それとは異質のように見えて実は表裏一体の生命の衝動、そしてそれを止めようとする理性的なものとが絡み合い融け合った、奇妙な心でいた。
彼は、鮎美の部屋で彼女を抱きしめ、口を合わせ、服の上から愛撫し、そして裸にしていった。
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