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(1)姉への憧憬、紗絵との出会い
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ゴールデンウィークの後半・・・佐野聡は姉の泉、その彼氏の大曲謙太の3人で九州の空港に降り立った。
聡は高校2年生、泉は地元国立大学教育学部の2年生、そして謙太は泉と同じ大学の医学部3年生だ。
泉と謙太は前年の春、大学外のテニスサークルで知り合った。
新入部員として入ってきた泉に謙太が一目惚れしたらしいが、それ以来の付き合いだった。
謙太は九州から関東に上ってきた地味な地方国立大学医学部生なのに、どこか性格的に軽い印象の男だった。
しかし実際は見た目ほどではなく、どちらかと言えば4代続く医家で育ったお坊ちゃまと言ったほうが正解らしい。
今回の旅行はゴールデンウィークを利用して、謙太が彼の地元に泉を誘ったことが発端だった。
海がきれいなところに、実家が所有する別荘があるとかで。
ふたりの交際に複雑な思いを抱えている父親は、反対こそしなかったが難色を示した。
そして、聡をお供に付けて常時同一行動を取るなら可、という案を示した。
しかし彼氏である謙太はそれを快諾し、聡もタダで九州に行けるんならと了承した。
彼には生まれてこのかた彼女なんていないから、その辺りのフットワークは軽いのだ・・・正直悲しいけれど。
どうせ同一行動取るふりして、ふたりの邪魔にならないように適当にブラブラしていればいいさ・・・そう軽く考えていた。
しかし父親とは逆に母親は謙太のことがとてもお気に入りで、それもあって聡に命じた。
「間違ってもあのふたりが離れてしまわないように・・・できれば今まで以上に親密になれるように、あなたもちゃんと考えて行動しといて」
具体的にどうするのかという指示もなく、それに今以上にふたりを親密にさせるとはどういうことだろうかと迷った。
しかしそれでも、「は~い」などと適当に返事をしておいた。
そのあたりは最低限ふたりの邪魔をしなければいいのだろうと、適当に解釈する。
できれば、常時ふたりの視界外に消えてしまうのがベストなのかもしれなかった。
いやしかし聡自身の問題として、彼の視界内に熱々なふたりを入れておくことは避けたかった。
なぜなら、聡は姉に彼氏ができたという事実に、1年経っても喪失感をどうしようもなく持て余していたからだ。
それは、嫉妬にも似た思いかもしれない。
肉親とは言え泉は彼にとって最も身近で、そして心を寄せる大切な「異性」だったからだ。
・・・
聡と泉は、小さい頃から非常に仲の良い姉弟だった。
その当時から泉は、聡にとって自慢の姉だった。
賢くて、勉強も運動もよくできて、そして周りのみんなから「可愛い」と褒めそやされる姉。
いつだって聡は泉の後を追うようにくっ付いていたし、泉も聡を可愛がってお供に従えたがった。
そんなふたりにとって両親には絶対内緒の秘密があり、それは両親がともに仕事で遅くなった時などに一緒にお風呂に入ること。
泉が「サトルちゃん、一緒にお風呂に入ろ~」と呼びかけるのが、その「合図」だった。
聡も泉と裸の触れ合いをすることにドキドキ混じりのトキメキを感じていたから、直ぐに自分から脱衣室に突進して裸になった。
しかしお風呂に入ると言っても、安全のために子供だけで浴槽に湯を張るのは止められていたから、もっぱらシャワーで洗いっこするだけだったが。
姉のからだは、少女なりに美しかった。
まだ幼かった彼は、それを性的なものとして感じるにはまだ幼く、ただ普通に「きれいだな」と眩しく見ていた。
しかし姉とのそんな入浴に、終わりを告げる日が来た。
聡が小学校の5年生になったばかりの頃だったと思う。
ある日、姉の裸に聡自身が意図せずに彼のからだの一部を反応させてしまった。
自分の意志ではどうにもできない事態に、彼は動揺して泣きそうになった。
泉はというと、「サトルちゃんのスケベ!」と軽蔑したようにぷいと横を向いてしまう。
そして姉はそれ以来二度と、一緒にお風呂に入ろうなどと言わなくなってしまったのだ。
それを除けば、それまで通りの賢くて優しくてきれいな姉であり続けたのだが・・・。
彼にとってそれは、甘美でキラキラした記憶に彩られた子供時代の終わりを象徴する記憶として残った。
それ以後も聡は、泉に対する憧れを持ち続けていた。
姉に対する思い入れは、確かにあったのだ。
その姉に、彼氏ができた・・・。
実は謙太が初めての彼氏ではなかったが、彼に対する思いの深さが日常的に感じられて、聡は正直なところ心が穏やかでなかった。
自分はいわゆるシスコンではないかと、本気で悩んだりもした。
そして悩み考え抜いた末に出てきた結論が、やっぱりシスコンだった、というものだった。
姉に本当の意味での彼氏ができてからの1年間は、聡にとって悩みと苦しみに満ちた1年間でもあった。
彼自身が彼女でも作れれば少しは精神的に救われたのかもしれないが、しかし彼はクラスをはじめとした社会の片隅で目立たずひっそりと棲息する部類の人間で、その道も閉ざされていたのだった。
・・・
空港には、謙太の妹という紗絵が出迎えに来ていた。
いや、出迎えるだけでなくてこれから3日間、3人と行動を共にするのだ。
少し背が低くてぽっちゃりしているように見えて、しかしパッチリと開いた瞳をはじめ目鼻立ちがくっきりとしている。
やんわりとウェーブがかった髪の毛をポニーテールに結っているのも含めて、いかにも九州らしい顔立ちのなかなかの美少女だった。
そして彼女はTシャツと鮮やかな紺色のスキニージーンズという、一足先に夏が来たような服装をしていた。
いや実際に、さすが九州というべきか夏のような暑さだった。
聡は一目彼女を見るなり胸が跳ねるように感じたが、それは一切表に出さずに泉と一緒に軽く挨拶をする。
紗絵もにこやかに「こんにちはぁ~、はじめまして~」と挨拶を返したが、謙太は「さぁ、行こう!」と3人を促して先に進んだ。
別荘までの足には謙太がレンタカーを予約していたということで、すでに車寄せで待っていた業者の送迎ワゴンに足早に乗り込む。
泉と謙太は並んで座り、そして聡のそばに紗絵も座った。
旧式のハイエースだから、座席はやや窮屈で聡と紗絵はからだどうしが接してしまう。
しかも運転手はスピードが命とばかりに乱暴に車を走らせ、車線変更やカーブの度にふたりのからだは強く押し付けられるように密着してしまうのだ。
紗絵のからだの柔らかさと弾力を感じながら、聡は運転手に感謝するしかなかった。
レンタカー業者の店舗まで5分もなかったはずだけれど、聡にとっては心ときめく至福の時間だった。
その途中、路面の凹凸をタイヤが踏んで何度かワゴンはバウンドしたが、紗絵の胸がそれに合わせて軽く跳ねるのを横目で見られたのも良かった。
店舗での手続きも順調に進み、白いAQUAに乗り込みいよいよ別荘へと出発。
運転席に謙太、助手席には泉、後部座席には聡と紗絵。
地元に帰った安心感からか、謙太はいつになく饒舌だった。
観光ガイドのように、車窓に映るものにあれこれと面白おかしく説明を加えていく。
けれどもそれらはもっぱら、助手席の泉に向けられたもの。
後部座席のふたりなど、謙太と泉の眼中にも無いようだった。
しかし聡が退屈することは、なかった。
紗絵は「兄の彼女の弟」に興味津々といったふうに色々と話しかけてきたし、聡もまるで幼なじみのような気安さを彼女に感じてそれに応えたからだ。
紗絵は、聡よりも1学年上の高校3年生だということだった。
聞かれもしないのに「大学生の彼氏と3ヶ月前に別れてそれっきり」などと話し、聡は(これはチャンスあるかも!)と期待をふくらませる。
泉からは聞いたことのなかった、謙太の話も聞いた。
謙太は本当は建築家になりたかったのに、跡取りとして半ば強制的に医学部に進学させられたという背景があるらしい。
そして幼稚園から続けてきたサッカーをやりたかったのだが、大学内のサッカー部は学業と両立できるか不安があり、学外のサッカーサークルも遊びメインの雰囲気が馴染めそうになくてテニスサークルに入ったとも。
しかし謙太と泉がいるテニスサークルこそ、遊びの合間に時々テニスやってるようなものらしいのだが。
「本当に謙太兄ちゃんって、何考えてるのかさっぱり分かんない! ・・・昔からだけどね!」
そう可笑しそうに笑いながら、紗絵は聡の肩を軽く叩く。
座席はワゴンよりもゆったりしていてからだが触れ合わないのは残念だったが、しかし紗絵がなにかと聡にボディタッチしてくるので彼はそれが嬉しい。
ここまで積極的に関わってくるということは、ひょっとして自分に気があるのではないか・・・?
そんな気さえしてくるが、しかしそれは思い込みかもしれないと考え直して表向きは冷静に紗絵と会話を続ける。
途中、海鮮料理が自慢という道の駅のレストランで遅めの昼食を取り、JAの物産館で夕食のバーベキューの材料を買い揃えた。
それ以外にも景勝地に立ち寄ったりなどしたから、別荘に着く頃には夕方近くなっていた。
「わぁ・・・きれい・・・」
思わず泉が嘆声を漏らすほど、別荘は眺めのいい場所にあった。
県道から釣人以外は地元の車もめったに入らないという脇道に入ってしばらく進んだところの広い海に面した崖の上にあった。
別荘は変わった作りになっていて、1階がガレージと玄関、そしてその向こうには海に面して屋外キッチン付きのテラス。
地下1階がアイランドキッチン付きのだだっ広いリビングダイニングで、部屋の隅にはグランドピアノが据え付けられ、海側の壁は一面のガラス張り。
「日が沈む時は、本当にきれいな景色がいっぱいに広がるんだ」
謙太は、少々自慢げに言う。
しかも続けて、多分に自慢して言った。
「この下、地下2階に寝室が2つと、バスとトイレだ。バスは源泉かけ流しの温泉で、そしてやっぱりオーシャンビューの大パノラマだよ」
更にその下に、浜辺へと続く階段もあると言う。
海岸沿いの土地はもともと謙太の実家の所有で、その一部に別荘は建てられている・・・つまり、完全なプライベートビーチだということだった。
そんなことなら、夏にでも誘ってくれたら良かったのにな・・・それが聡の率直な感想だった。
夏だったら、紗絵の水着姿もひょっとしたら見られたかもしれないのに・・・。
聡は高校2年生、泉は地元国立大学教育学部の2年生、そして謙太は泉と同じ大学の医学部3年生だ。
泉と謙太は前年の春、大学外のテニスサークルで知り合った。
新入部員として入ってきた泉に謙太が一目惚れしたらしいが、それ以来の付き合いだった。
謙太は九州から関東に上ってきた地味な地方国立大学医学部生なのに、どこか性格的に軽い印象の男だった。
しかし実際は見た目ほどではなく、どちらかと言えば4代続く医家で育ったお坊ちゃまと言ったほうが正解らしい。
今回の旅行はゴールデンウィークを利用して、謙太が彼の地元に泉を誘ったことが発端だった。
海がきれいなところに、実家が所有する別荘があるとかで。
ふたりの交際に複雑な思いを抱えている父親は、反対こそしなかったが難色を示した。
そして、聡をお供に付けて常時同一行動を取るなら可、という案を示した。
しかし彼氏である謙太はそれを快諾し、聡もタダで九州に行けるんならと了承した。
彼には生まれてこのかた彼女なんていないから、その辺りのフットワークは軽いのだ・・・正直悲しいけれど。
どうせ同一行動取るふりして、ふたりの邪魔にならないように適当にブラブラしていればいいさ・・・そう軽く考えていた。
しかし父親とは逆に母親は謙太のことがとてもお気に入りで、それもあって聡に命じた。
「間違ってもあのふたりが離れてしまわないように・・・できれば今まで以上に親密になれるように、あなたもちゃんと考えて行動しといて」
具体的にどうするのかという指示もなく、それに今以上にふたりを親密にさせるとはどういうことだろうかと迷った。
しかしそれでも、「は~い」などと適当に返事をしておいた。
そのあたりは最低限ふたりの邪魔をしなければいいのだろうと、適当に解釈する。
できれば、常時ふたりの視界外に消えてしまうのがベストなのかもしれなかった。
いやしかし聡自身の問題として、彼の視界内に熱々なふたりを入れておくことは避けたかった。
なぜなら、聡は姉に彼氏ができたという事実に、1年経っても喪失感をどうしようもなく持て余していたからだ。
それは、嫉妬にも似た思いかもしれない。
肉親とは言え泉は彼にとって最も身近で、そして心を寄せる大切な「異性」だったからだ。
・・・
聡と泉は、小さい頃から非常に仲の良い姉弟だった。
その当時から泉は、聡にとって自慢の姉だった。
賢くて、勉強も運動もよくできて、そして周りのみんなから「可愛い」と褒めそやされる姉。
いつだって聡は泉の後を追うようにくっ付いていたし、泉も聡を可愛がってお供に従えたがった。
そんなふたりにとって両親には絶対内緒の秘密があり、それは両親がともに仕事で遅くなった時などに一緒にお風呂に入ること。
泉が「サトルちゃん、一緒にお風呂に入ろ~」と呼びかけるのが、その「合図」だった。
聡も泉と裸の触れ合いをすることにドキドキ混じりのトキメキを感じていたから、直ぐに自分から脱衣室に突進して裸になった。
しかしお風呂に入ると言っても、安全のために子供だけで浴槽に湯を張るのは止められていたから、もっぱらシャワーで洗いっこするだけだったが。
姉のからだは、少女なりに美しかった。
まだ幼かった彼は、それを性的なものとして感じるにはまだ幼く、ただ普通に「きれいだな」と眩しく見ていた。
しかし姉とのそんな入浴に、終わりを告げる日が来た。
聡が小学校の5年生になったばかりの頃だったと思う。
ある日、姉の裸に聡自身が意図せずに彼のからだの一部を反応させてしまった。
自分の意志ではどうにもできない事態に、彼は動揺して泣きそうになった。
泉はというと、「サトルちゃんのスケベ!」と軽蔑したようにぷいと横を向いてしまう。
そして姉はそれ以来二度と、一緒にお風呂に入ろうなどと言わなくなってしまったのだ。
それを除けば、それまで通りの賢くて優しくてきれいな姉であり続けたのだが・・・。
彼にとってそれは、甘美でキラキラした記憶に彩られた子供時代の終わりを象徴する記憶として残った。
それ以後も聡は、泉に対する憧れを持ち続けていた。
姉に対する思い入れは、確かにあったのだ。
その姉に、彼氏ができた・・・。
実は謙太が初めての彼氏ではなかったが、彼に対する思いの深さが日常的に感じられて、聡は正直なところ心が穏やかでなかった。
自分はいわゆるシスコンではないかと、本気で悩んだりもした。
そして悩み考え抜いた末に出てきた結論が、やっぱりシスコンだった、というものだった。
姉に本当の意味での彼氏ができてからの1年間は、聡にとって悩みと苦しみに満ちた1年間でもあった。
彼自身が彼女でも作れれば少しは精神的に救われたのかもしれないが、しかし彼はクラスをはじめとした社会の片隅で目立たずひっそりと棲息する部類の人間で、その道も閉ざされていたのだった。
・・・
空港には、謙太の妹という紗絵が出迎えに来ていた。
いや、出迎えるだけでなくてこれから3日間、3人と行動を共にするのだ。
少し背が低くてぽっちゃりしているように見えて、しかしパッチリと開いた瞳をはじめ目鼻立ちがくっきりとしている。
やんわりとウェーブがかった髪の毛をポニーテールに結っているのも含めて、いかにも九州らしい顔立ちのなかなかの美少女だった。
そして彼女はTシャツと鮮やかな紺色のスキニージーンズという、一足先に夏が来たような服装をしていた。
いや実際に、さすが九州というべきか夏のような暑さだった。
聡は一目彼女を見るなり胸が跳ねるように感じたが、それは一切表に出さずに泉と一緒に軽く挨拶をする。
紗絵もにこやかに「こんにちはぁ~、はじめまして~」と挨拶を返したが、謙太は「さぁ、行こう!」と3人を促して先に進んだ。
別荘までの足には謙太がレンタカーを予約していたということで、すでに車寄せで待っていた業者の送迎ワゴンに足早に乗り込む。
泉と謙太は並んで座り、そして聡のそばに紗絵も座った。
旧式のハイエースだから、座席はやや窮屈で聡と紗絵はからだどうしが接してしまう。
しかも運転手はスピードが命とばかりに乱暴に車を走らせ、車線変更やカーブの度にふたりのからだは強く押し付けられるように密着してしまうのだ。
紗絵のからだの柔らかさと弾力を感じながら、聡は運転手に感謝するしかなかった。
レンタカー業者の店舗まで5分もなかったはずだけれど、聡にとっては心ときめく至福の時間だった。
その途中、路面の凹凸をタイヤが踏んで何度かワゴンはバウンドしたが、紗絵の胸がそれに合わせて軽く跳ねるのを横目で見られたのも良かった。
店舗での手続きも順調に進み、白いAQUAに乗り込みいよいよ別荘へと出発。
運転席に謙太、助手席には泉、後部座席には聡と紗絵。
地元に帰った安心感からか、謙太はいつになく饒舌だった。
観光ガイドのように、車窓に映るものにあれこれと面白おかしく説明を加えていく。
けれどもそれらはもっぱら、助手席の泉に向けられたもの。
後部座席のふたりなど、謙太と泉の眼中にも無いようだった。
しかし聡が退屈することは、なかった。
紗絵は「兄の彼女の弟」に興味津々といったふうに色々と話しかけてきたし、聡もまるで幼なじみのような気安さを彼女に感じてそれに応えたからだ。
紗絵は、聡よりも1学年上の高校3年生だということだった。
聞かれもしないのに「大学生の彼氏と3ヶ月前に別れてそれっきり」などと話し、聡は(これはチャンスあるかも!)と期待をふくらませる。
泉からは聞いたことのなかった、謙太の話も聞いた。
謙太は本当は建築家になりたかったのに、跡取りとして半ば強制的に医学部に進学させられたという背景があるらしい。
そして幼稚園から続けてきたサッカーをやりたかったのだが、大学内のサッカー部は学業と両立できるか不安があり、学外のサッカーサークルも遊びメインの雰囲気が馴染めそうになくてテニスサークルに入ったとも。
しかし謙太と泉がいるテニスサークルこそ、遊びの合間に時々テニスやってるようなものらしいのだが。
「本当に謙太兄ちゃんって、何考えてるのかさっぱり分かんない! ・・・昔からだけどね!」
そう可笑しそうに笑いながら、紗絵は聡の肩を軽く叩く。
座席はワゴンよりもゆったりしていてからだが触れ合わないのは残念だったが、しかし紗絵がなにかと聡にボディタッチしてくるので彼はそれが嬉しい。
ここまで積極的に関わってくるということは、ひょっとして自分に気があるのではないか・・・?
そんな気さえしてくるが、しかしそれは思い込みかもしれないと考え直して表向きは冷静に紗絵と会話を続ける。
途中、海鮮料理が自慢という道の駅のレストランで遅めの昼食を取り、JAの物産館で夕食のバーベキューの材料を買い揃えた。
それ以外にも景勝地に立ち寄ったりなどしたから、別荘に着く頃には夕方近くなっていた。
「わぁ・・・きれい・・・」
思わず泉が嘆声を漏らすほど、別荘は眺めのいい場所にあった。
県道から釣人以外は地元の車もめったに入らないという脇道に入ってしばらく進んだところの広い海に面した崖の上にあった。
別荘は変わった作りになっていて、1階がガレージと玄関、そしてその向こうには海に面して屋外キッチン付きのテラス。
地下1階がアイランドキッチン付きのだだっ広いリビングダイニングで、部屋の隅にはグランドピアノが据え付けられ、海側の壁は一面のガラス張り。
「日が沈む時は、本当にきれいな景色がいっぱいに広がるんだ」
謙太は、少々自慢げに言う。
しかも続けて、多分に自慢して言った。
「この下、地下2階に寝室が2つと、バスとトイレだ。バスは源泉かけ流しの温泉で、そしてやっぱりオーシャンビューの大パノラマだよ」
更にその下に、浜辺へと続く階段もあると言う。
海岸沿いの土地はもともと謙太の実家の所有で、その一部に別荘は建てられている・・・つまり、完全なプライベートビーチだということだった。
そんなことなら、夏にでも誘ってくれたら良かったのにな・・・それが聡の率直な感想だった。
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