31 / 32
番外編 えみりんの子育て奮闘記
一ヶ月検診
しおりを挟む
「ごめん、明日仕事休めなくなった……」
明日は母子の1ヶ月検診。帰宅した夫が開口一番謝った。私はがっくり肩を落とす。娘は夕方のうちに沐浴を済ませ、寝かしつけたところだ。夫の帰りを待って自分も入浴をと思っていたのだが。
「土曜日はだめなんだっけ」
「だから、小児科の先生が来る日が火、木、金なのよ」
「あー、そっか」
そういえばそんなことを聞いた気がする、と夫は肩をすくめた。私は深々と嘆息する。
「……仕方ない。一人で連れて行くかぁ」
娘を連れての外出は初めてだ。1ヶ月検診で問題なければ少しずつ外出もできると聞くが、季節は冬。あまり外に出る気にはなれなそうだ。
「タクシー使っていいから」
「当前使います」
唇を尖らせた私に夫が苦笑している。最初からそのつもりだったならともかく、直前に迫っての変更は謝罪があっても素直には頷けない。
「シャワー浴びてくる」
「行ってらっしゃい」
1ヶ月検診を過ぎるまで入浴は不可、と言われても、冬のことであり辛い。せめて張った湯に足をつけて足浴を楽しむも、疲れが取れない感はある。
シャワーで身体を洗い湯船へ足先をつけたとき、ドアの向こうから小さい泣き声が聞こえた。はっとして湯船から出ようか迷うが、夫があやす声が聞こえ任せようとまた湯船に向き直る。
しかし泣き声はなかなか止まず、最初は寝ぼけたようなふにゃふにゃ泣きが段々と本格化してくる。もう少し……もう少し……と様子をうかがっていたが、泣き止みそうにないと検討がつき諦めた。
休みの日しか接していないのだから、まだまだ赤ん坊を抱きなれないのは仕方のないことだ。
多少温まった足を湯船から出し、泣く娘に声をかけがら身支度を整える。夫が娘を抱いて揺らしている姿を見て、娘が泣き止まない理由を察する。
ちょっと形が違うのよね。多分もうちょっと横向きがお好みなの、おねむのときは。
赤ん坊なりに居心地のいい形に導こうとしているはずなのだが、父親というのはそれを察知できないのかもしれない。ハイハイと応じて夫と代わり、子どもの求めるポジションをとるとピタリと泣き止んだ。夫が目を丸くする。
「ママがいいのかなぁ」
「そうじゃなくて、抱き方が」
説明しようと思ったが、あんまり意味がないように感じてやめる。
「お好みのポジションがあるのよ」
と言うに留めて、また目をしょぼつかせ始めた娘をそろりと夫に託す。まだ髪を乾かしていないので、このままでは風邪を引いてしまう。
髪を乾かしている間に、また娘がふにゃふにゃ言い始めた。生乾きのままドライヤーを止め娘を受け取る。
「なんか……うまくあやせないね。ごめん」
あまり動じない夫がしゅんとしていた。赤ん坊ならとりあえず抱っこしておけばいいんだろうと思っても、その子その子で性格も好みも違う。母などを見ていると、赤ん坊と言外コミュニケーションを取って、ちょうどいい形に落ち着く。なるほど、経験のなせる技かと尊敬してしまう。母が最も身近な先輩ママだと今さらながらに気づいた――ブランクはあるが。
「まあ、慣れだよ。慣れ」
夫をフォローするつもりで言うと、そっかー、と娘の顔を覗き込んだ。
「パパ見知りしないなら、いいんじゃないの」
「何、パパ見知りって」
子どもと接する時間が取れず子どもがパパを人見知りすることだと説明すると、夫は途端に眉を寄せた。
「なにそれ悲しい」
「うん」
そうならないように頑張って、と言うと、夫はこくこくと頷いた。
子どもの検診を終えて、助産師さんに子どもを任せ、診察をする。
妊娠中散々お世話になったが、内診台に乗るのはいまだに慣れない。エコーで確認した先生は、
「子宮の戻りがあともう一息かな。結構動いちゃってた?一応お薬出しておきましょうね」
結構動いちゃったって、動かないと家事も子育ても回らなくないですか?
問いは心中にしまいつつも、心中あれこれ考える。
みんなどうしてるんだろう。やっぱり家事手伝いお願いしてるのかなぁ。今時、里帰りもないだろうと思ってたけど、それでも買い物は夫や母にお願いしてたし、母がときどきご飯を作りにも来てくれる。
まあとりあえずお出しする薬を飲み切れば大丈夫でしょう、一ヶ月しても悪露が落ち着かなかったら来てねと言われて頷いた。
「授乳していきます?」
ふにゃふにゃ泣きはじめた娘を渡されながら問われ、頷く。母乳だとミルクと違い量が可視化されない。どれくらいの量を飲めているか計る機会はなかなかないので、わかるならありがたい。
「混合でしたっけ。ミルク、用意しておきますね」
助産師さんが言って奥へ消えていく。
おむつを変えて、授乳の前後で計ってみるが、やっぱり大した量ではなかった。がっかりしながら哺乳瓶を娘にくわえさせていると、肩を落としているのが見えたらしい。
「二、三か月してから軌道に乗るママも多いから、あんまり気にしちゃだめよ。完母だからいいとか悪いとか、そういうことじゃないし」
助産師さんの励ましに苦笑を返した。
確かに、母親たるものーーという意識も多少はある。けれども、どっちかというと、今まで胸があったが故にしてきた苦労は、ただそれだけだったのかというのがショックだ。かわいいブラジャー探しや、気持ちの悪い男の目やーーそういうもの。
見かけ倒しめ。役立たずめ。と内心我が胸を罵る。
ぷはー、と小さな吐息が聞こえた。満足げな娘が哺乳瓶の乳首から口を離して、それでもちゅくちゅくと唇を吸い寄せる。肩に引き寄せて背をさすると、小さなけぽりというげっぷの音がした。
「あら、寝そう。おむつは?」
「先に変えました」
「それなら大丈夫ね」
幸せそうな寝顔を見ながら、そろりそろりとロビーに向かう。会計のとき、タクシー呼んでもらわなきゃ。ああでも寝ちゃってるからコート着せられないや。とりあえずくるんでいけばいいかな……
思っていたらスマホが鳴った。夫からのメッセージだ。時計を見ると十二時を回っていて、昼休みに入ったのだろうと気づく。
【検診、無事終わった?】
ほう、っと息を吐き出した。電話ができるところを探し、ロビー横のスペースに腰を下ろす。
電話をかけると、すぐに夫が出てくれた。
「今終わったよ」
『ほんと。何ともないって?』
「うん。私は少し子宮の戻りが悪いって、お薬出たけど」
『そっか。お疲れさま。一緒に行けなくてごめんね』
ううん、と答えた。気にかけてくれてありがとう。声が聞けて安心した。そう言おうか迷って、気恥ずかしさにやめる。
「会計終わったら、タクシー呼んで帰る」
『そっか、気をつけてね』
「うん。ーー今日、何時ごろ帰ってくる?」
夫はうーんと考えてから、
『目標、八時』
「よし。八時ね」
『目標だよ。目標』
「妻子への愛を証明シテクダサイ」
『えええ』
夫の悲鳴のような声に笑うと、受付から名前を呼ぶ声が聞こえた。
「あ、ごめん。会計してくる」
『うん。じゃあ切るね』
「お仕事がんばって」
『はーい。……妻子への愛、ね』
夫は思い出したように笑った。
『ーー恵美、側にいてくれてありがとう』
想定外の言葉に戸惑いつつ、
「そういうのは、帰ってきてから言って」
顔が赤くなるのを感じながら答えた。
そんな一言で、ちょっとハッピーな気分になっちゃう私って、結構単純かもしれない。
思いながらも、ついつい夫の好物を用意してしまう私なのだった。
明日は母子の1ヶ月検診。帰宅した夫が開口一番謝った。私はがっくり肩を落とす。娘は夕方のうちに沐浴を済ませ、寝かしつけたところだ。夫の帰りを待って自分も入浴をと思っていたのだが。
「土曜日はだめなんだっけ」
「だから、小児科の先生が来る日が火、木、金なのよ」
「あー、そっか」
そういえばそんなことを聞いた気がする、と夫は肩をすくめた。私は深々と嘆息する。
「……仕方ない。一人で連れて行くかぁ」
娘を連れての外出は初めてだ。1ヶ月検診で問題なければ少しずつ外出もできると聞くが、季節は冬。あまり外に出る気にはなれなそうだ。
「タクシー使っていいから」
「当前使います」
唇を尖らせた私に夫が苦笑している。最初からそのつもりだったならともかく、直前に迫っての変更は謝罪があっても素直には頷けない。
「シャワー浴びてくる」
「行ってらっしゃい」
1ヶ月検診を過ぎるまで入浴は不可、と言われても、冬のことであり辛い。せめて張った湯に足をつけて足浴を楽しむも、疲れが取れない感はある。
シャワーで身体を洗い湯船へ足先をつけたとき、ドアの向こうから小さい泣き声が聞こえた。はっとして湯船から出ようか迷うが、夫があやす声が聞こえ任せようとまた湯船に向き直る。
しかし泣き声はなかなか止まず、最初は寝ぼけたようなふにゃふにゃ泣きが段々と本格化してくる。もう少し……もう少し……と様子をうかがっていたが、泣き止みそうにないと検討がつき諦めた。
休みの日しか接していないのだから、まだまだ赤ん坊を抱きなれないのは仕方のないことだ。
多少温まった足を湯船から出し、泣く娘に声をかけがら身支度を整える。夫が娘を抱いて揺らしている姿を見て、娘が泣き止まない理由を察する。
ちょっと形が違うのよね。多分もうちょっと横向きがお好みなの、おねむのときは。
赤ん坊なりに居心地のいい形に導こうとしているはずなのだが、父親というのはそれを察知できないのかもしれない。ハイハイと応じて夫と代わり、子どもの求めるポジションをとるとピタリと泣き止んだ。夫が目を丸くする。
「ママがいいのかなぁ」
「そうじゃなくて、抱き方が」
説明しようと思ったが、あんまり意味がないように感じてやめる。
「お好みのポジションがあるのよ」
と言うに留めて、また目をしょぼつかせ始めた娘をそろりと夫に託す。まだ髪を乾かしていないので、このままでは風邪を引いてしまう。
髪を乾かしている間に、また娘がふにゃふにゃ言い始めた。生乾きのままドライヤーを止め娘を受け取る。
「なんか……うまくあやせないね。ごめん」
あまり動じない夫がしゅんとしていた。赤ん坊ならとりあえず抱っこしておけばいいんだろうと思っても、その子その子で性格も好みも違う。母などを見ていると、赤ん坊と言外コミュニケーションを取って、ちょうどいい形に落ち着く。なるほど、経験のなせる技かと尊敬してしまう。母が最も身近な先輩ママだと今さらながらに気づいた――ブランクはあるが。
「まあ、慣れだよ。慣れ」
夫をフォローするつもりで言うと、そっかー、と娘の顔を覗き込んだ。
「パパ見知りしないなら、いいんじゃないの」
「何、パパ見知りって」
子どもと接する時間が取れず子どもがパパを人見知りすることだと説明すると、夫は途端に眉を寄せた。
「なにそれ悲しい」
「うん」
そうならないように頑張って、と言うと、夫はこくこくと頷いた。
子どもの検診を終えて、助産師さんに子どもを任せ、診察をする。
妊娠中散々お世話になったが、内診台に乗るのはいまだに慣れない。エコーで確認した先生は、
「子宮の戻りがあともう一息かな。結構動いちゃってた?一応お薬出しておきましょうね」
結構動いちゃったって、動かないと家事も子育ても回らなくないですか?
問いは心中にしまいつつも、心中あれこれ考える。
みんなどうしてるんだろう。やっぱり家事手伝いお願いしてるのかなぁ。今時、里帰りもないだろうと思ってたけど、それでも買い物は夫や母にお願いしてたし、母がときどきご飯を作りにも来てくれる。
まあとりあえずお出しする薬を飲み切れば大丈夫でしょう、一ヶ月しても悪露が落ち着かなかったら来てねと言われて頷いた。
「授乳していきます?」
ふにゃふにゃ泣きはじめた娘を渡されながら問われ、頷く。母乳だとミルクと違い量が可視化されない。どれくらいの量を飲めているか計る機会はなかなかないので、わかるならありがたい。
「混合でしたっけ。ミルク、用意しておきますね」
助産師さんが言って奥へ消えていく。
おむつを変えて、授乳の前後で計ってみるが、やっぱり大した量ではなかった。がっかりしながら哺乳瓶を娘にくわえさせていると、肩を落としているのが見えたらしい。
「二、三か月してから軌道に乗るママも多いから、あんまり気にしちゃだめよ。完母だからいいとか悪いとか、そういうことじゃないし」
助産師さんの励ましに苦笑を返した。
確かに、母親たるものーーという意識も多少はある。けれども、どっちかというと、今まで胸があったが故にしてきた苦労は、ただそれだけだったのかというのがショックだ。かわいいブラジャー探しや、気持ちの悪い男の目やーーそういうもの。
見かけ倒しめ。役立たずめ。と内心我が胸を罵る。
ぷはー、と小さな吐息が聞こえた。満足げな娘が哺乳瓶の乳首から口を離して、それでもちゅくちゅくと唇を吸い寄せる。肩に引き寄せて背をさすると、小さなけぽりというげっぷの音がした。
「あら、寝そう。おむつは?」
「先に変えました」
「それなら大丈夫ね」
幸せそうな寝顔を見ながら、そろりそろりとロビーに向かう。会計のとき、タクシー呼んでもらわなきゃ。ああでも寝ちゃってるからコート着せられないや。とりあえずくるんでいけばいいかな……
思っていたらスマホが鳴った。夫からのメッセージだ。時計を見ると十二時を回っていて、昼休みに入ったのだろうと気づく。
【検診、無事終わった?】
ほう、っと息を吐き出した。電話ができるところを探し、ロビー横のスペースに腰を下ろす。
電話をかけると、すぐに夫が出てくれた。
「今終わったよ」
『ほんと。何ともないって?』
「うん。私は少し子宮の戻りが悪いって、お薬出たけど」
『そっか。お疲れさま。一緒に行けなくてごめんね』
ううん、と答えた。気にかけてくれてありがとう。声が聞けて安心した。そう言おうか迷って、気恥ずかしさにやめる。
「会計終わったら、タクシー呼んで帰る」
『そっか、気をつけてね』
「うん。ーー今日、何時ごろ帰ってくる?」
夫はうーんと考えてから、
『目標、八時』
「よし。八時ね」
『目標だよ。目標』
「妻子への愛を証明シテクダサイ」
『えええ』
夫の悲鳴のような声に笑うと、受付から名前を呼ぶ声が聞こえた。
「あ、ごめん。会計してくる」
『うん。じゃあ切るね』
「お仕事がんばって」
『はーい。……妻子への愛、ね』
夫は思い出したように笑った。
『ーー恵美、側にいてくれてありがとう』
想定外の言葉に戸惑いつつ、
「そういうのは、帰ってきてから言って」
顔が赤くなるのを感じながら答えた。
そんな一言で、ちょっとハッピーな気分になっちゃう私って、結構単純かもしれない。
思いながらも、ついつい夫の好物を用意してしまう私なのだった。
0
お気に入りに追加
219
あなたにおすすめの小説

【完結】新皇帝の後宮に献上された姫は、皇帝の寵愛を望まない
ユユ
恋愛
周辺諸国19国を統べるエテルネル帝国の皇帝が崩御し、若い皇子が即位した2年前から従属国が次々と姫や公女、もしくは美女を献上している。
既に帝国の令嬢数人と従属国から18人が後宮で住んでいる。
未だ献上していなかったプロプル王国では、王女である私が仕方なく献上されることになった。
後宮の余った人気のない部屋に押し込まれ、選択を迫られた。
欲の無い王女と、女達の醜い争いに辟易した新皇帝の噛み合わない新生活が始まった。
* 作り話です
* そんなに長くしない予定です
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
思い出さなければ良かったのに
田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。
大事なことを忘れたまま。
*本編完結済。不定期で番外編を更新中です。

【完結済】姿を偽った黒髪令嬢は、女嫌いな公爵様のお世話係をしているうちに溺愛されていたみたいです
鳴宮野々花@軍神騎士団長1月15日発売
恋愛
王国の片田舎にある小さな町から、八歳の時に母方の縁戚であるエヴェリー伯爵家に引き取られたミシェル。彼女は伯爵一家に疎まれ、美しい髪を黒く染めて使用人として生活するよう強いられた。以来エヴェリー一家に虐げられて育つ。
十年後。ミシェルは同い年でエヴェリー伯爵家の一人娘であるパドマの婚約者に嵌められ、伯爵家を身一つで追い出されることに。ボロボロの格好で人気のない場所を彷徨っていたミシェルは、空腹のあまりふらつき倒れそうになる。
そこへ馬で通りがかった男性と、危うくぶつかりそうになり──────
※いつもの独自の世界のゆる設定なお話です。何もかもファンタジーです。よろしくお願いします。
※この作品はカクヨム、小説家になろう、ベリーズカフェにも投稿しています。
今宵、薔薇の園で
天海月
恋愛
早世した母の代わりに妹たちの世話に励み、婚期を逃しかけていた伯爵家の長女・シャーロットは、これが最後のチャンスだと思い、唐突に持ち込まれた気の進まない婚約話を承諾する。
しかし、一か月も経たないうちに、その話は先方からの一方的な申し出によって破談になってしまう。
彼女は藁にもすがる思いで、幼馴染の公爵アルバート・グレアムに相談を持ち掛けるが、新たな婚約者候補として紹介されたのは彼の弟のキースだった。
キースは長年、シャーロットに思いを寄せていたが、遠慮して距離を縮めることが出来ないでいた。
そんな弟を見かねた兄が一計を図ったのだった。
彼女はキースのことを弟のようにしか思っていなかったが、次第に彼の情熱に絆されていく・・・。
踏み台令嬢はへこたれない
IchikoMiyagi
恋愛
「婚約破棄してくれ!」
公爵令嬢のメルティアーラは婚約者からの何度目かの申し出を受けていたーー。
春、学院に入学しいつしかついたあだ名は踏み台令嬢。……幸せを運んでいますのに、その名付けはあんまりでは……。
そう思いつつも学院生活を満喫していたら、噂を聞きつけた第三王子がチラチラこっちを見ている。しかもうっかり婚約者になってしまったわ……?!?
これは無自覚に他人の踏み台になって引っ張り上げる主人公が、たまにしょげては踏ん張りながらやっぱり周りを幸せにしたりやっと自分も幸せになったりするかもしれない物語。
「わたくし、甘い砂を吐くのには慣れておりますの」
ーー踏み台令嬢は今日も誰かを幸せにする。
なろうでも投稿しています。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる