神崎くんは残念なイケメン

松丹子

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3章 神崎くんと私

27 wedding ceremony

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 幸弘と早紀の結婚式まで1ヶ月前に迫った10月。本番を前に、集まれる範囲で集まって歌ってみよう、と相ちゃんが公民館の会議室を予約してくれた。
 暑い時期も過ぎ、いい季節になった。私は左手の薬指にはまった小さな石がついた指輪に触れて、みんなと会う前に外すべきか考える。
 隼人くんはもっと高いものでもいいと言ってくれたのだけど、ずっとつけておかなきゃいけないなら、あまり高価なものや大きい石のものは嫌だ、と主張した。もともとあまりごてごてしたものは好きじゃないので、このまま結婚指輪です、と言ってもおかしくないようなシンプルな指輪を選んだ。
 今日は、みんなで会う前に会いたいと、サリーをランチに誘っていた。忙しいサリーとはなかなか会う機会がなく、隼人くんとのことも言えていない。例年秋に行く女子旅は早紀の結婚式で流れたので、これを逃すとゆっくり話す時間が取れないと思ったのだ。 
 早紀と幸弘には、隼人くんも含めた4人で食事をしたときに話し、二人とも喜んでくれていた。
 待ち合わせ場所に現れたサリーは、すっきりした短めのワンピースに、スキニーパンツを合わせ、ローファーを履いていた。学生時代から変わらないショートボブの髪が揺れ、いつもの笑顔が浮かんだ。
「ひっさしぶりー」
 サリーは手を振って言うとほぼ同時に、私の左手の指輪に気づいた。
「うあ、ざっきー、仕事早っ」
 嬉しそうに言って、ケラケラ笑う。
「つき合うんだ、って話だと思ったら。報告が一つ飛んでるんじゃないの?」
 私は赤面した。
「だって、サリー忙しいし、ちゃんと顔見て言いたかったし」
「や、それはごめんごめん」
 サリーが苦笑するが、顔全体はしっかりにやけている。私は口唇を尖らせた。
「てか、気づくの早すぎだよ」
「だって、何となく左手気にしてるから。香子がわかりやすいんだよ」
 そうだったかな。実はつけはじめて一週間なので、まだ慣れてない。
 サリーがいつかのように生暖かい目で見るので、私はその視線から逃れるようにお店に向かって歩き出した。サリーはくつくつ笑いながら後ろをついて来る。
「思ったよりあっさりくっついたね。大学の3年間は何だったの、っていうくらい」
 席について料理を頼むと、サリーが言った。
「それに近いことを、はや……神崎くんに言われた」
「隼人くん?」
 ニヤリと笑いながら、サリーが言葉尻をとらえる。私は赤面しながら睨みつけた。その視線に迫力がないことを自覚しながら。
「やめてよ、茶化すの」
「ごめんごめん」
 サリーが笑ったとき、店員さんが前菜のサラダを持って来てくれる。サラダをつつきながら、サリーは感慨深げに言った。
「早紀も香子も結婚か。ま、でも知り合いとくっついてくれたから、まだ気楽に会える方かな」
 で、式いつやるの、と聞いてくる。私は苦笑した。
「これからお互いの両親に挨拶したりするんだから、まだわかんないよ」
「そっかー」
 ぱくり、とミニトマトを口にする。
「……そっかぁ」
 サリーがしんみりと呟いた。
 私はいつもと違う感じに、少し慌てる。
「どうかしたの?」
「ううん」
 サリーは明るく笑ったけど、空元気なのが見て取れた。私が追及しようと口を開きかけると、それを察してサリーは微笑んだ。
「いいなぁ、って思っただけ」
 サリーのその表情に、私も途端に切なさがこみあげる。変わらないつもりでも、私たちは変わっていく。少しずつ、時に急激に。そんな切なさ。
「サリーも、そういう人に会えるよ。大丈夫」
「そうかなぁ」
 サリーは深々とため息をつきながら、がっくり肩を落とした。
「もー、仕事の神様と結婚しちゃいそう。あ、それいいな。妄想しよう。ざっきーよりもイケメンで、幸弘よりもポジティブで、相ちゃんよりも面倒見がよくて……」
「それ、結果的に寂しくなると思うけど」
 私が苦笑して言うと、サリーはそうかもね、と笑った。その笑顔にはもう切なさはなくて、私もホッとする。
「おめでと」
 サリーがにこりと笑った。そのまっすぐな笑顔は、私が大好きな笑顔で、同性なのにドキッとする。
「ありがとう」
 言った後で、思わず続けた。
「サリーのそういう笑顔が好きな人がいいな」
 サリーが首を傾げる。私は笑った。
「結婚する人。そうじゃないなら、サリーはあげられない」
「私の親みたいな言い方ね」
 二人で言って笑い合った。

 練習場所に着くと、えみりんと幸弘、早紀、たっちゃんがいた。相ちゃんは鍵を取りに行っているらしい。
「もう少しでちゃきとゆいゆいが到着するよ。ざっきーとりんりんは1時間くらい遅れて来て、ケイケイは飲み会だけ参加するって」
「何それ」
 えみりんの言葉に、サリーが苦笑する。
「一応、用事があるらしい」
 フォローするつもりがあるのかないのか、たっちゃんが言ったので、みんなで笑った。
 鍵を取って来た相ちゃんが合流すると、早紀がぺこり、と頭を下げた。
「みんな、忙しいのにありがとう」
 その背を、だいぶお腹が大きくなったえみりんがぽんと叩く。
「結婚式の準備も何かと大変でしょ。疲れてない?」
 えみりんが言うと、早紀は笑った。
「うん、今のところ大丈夫。そろそろドレス決めなきゃいけなくて、たくさんあるから迷ってるんだけど」
「同性のアドバイスもらうといいよ。男のアドバイスは全っ然、参考にならないから」
 と、相ちゃんを見やる。相ちゃんは苦笑して、幸弘に同意を求めるように目をやった。
「だって、わかんないよ。こっちは広がり方がかわいいけどリボンが嫌とか、こっちは色が好きだけど衿元の形が似合わなそうとか言われても」
「2、3着見たらもう十分だよな。男の衣装はそれくらいしかないし」
 二人が話しているところに、ゆいゆいとちゃきがやってきた。
「ごめーん、遅れて」
「久しぶりー!早紀、おめでとー!きゃー、えみりん、お腹おっきくなってるー!」
 ちゃきが相変わらずの明るさでえみりんのお腹に触れた。
「おーい。聞こえてますかー」
「動いたりするの?」
「するする。寝てるときとか、苦しいよ」
 えみりんが答えていると、相ちゃんが言った。
「どうにか式も参加できそうでよかったよ。参加できなかったら、一生言われそうだからな。こいつが」
 と、えみりんのお腹を指しながら言う。
「そりゃ、そのときには言うよ。お母さんはあんたのために、大事な友達の結婚式を諦めたのよ、だから立派に大きくなりなさいって」
 笑いながらえみりんは言った。
「強いママになりそう」
 ゆいゆいが微笑むと、
「今でも十分強いけど」
 と相ちゃんが肩を竦めて、えみりんがじろりと睨みつけた。
 私が思わず手を口元にあてて笑うと、えみりんとゆいゆいがつかみかからん勢いで言った。
「ちょっとコッコ。もしかして」
「それエンゲージリング?」
 私はハッとして、慌てて右手で左手を覆う。ちゃきも遅ればせながら目を丸くした。
「マジー?すごーい!ていうか焦るー!」
 でもおめでとー、と私の肩を叩いた。ゆいゆいも笑っておめでとうと言う。
 相ちゃんがふと複雑な顔をした。
「……誰かさん、落ち込んだりしないかな」
「ざっきーなら、知ってるよ」
 相ちゃんの呟きに、答えたのはたっちゃんだった。
「だって、相手、ざっきーだし」
 相ちゃんとえみりんが目を合わせる。幸弘や早紀、サリーが私の様子を伺うように見た。私は苦笑する。隼人くんがたっちゃんに言ったんだろう。
「部長への報告がないぞ!」
「いつの間にそんなことに!」
「えーっと、割と最近……」
「とりあえず、相川夫婦が大変ご立腹だと言っておこう」
 たっちゃんが静かにスマホを取り出した。
 1時間後には遅れて来た隼人くんが、すぐさま相川夫婦に廊下へ連行され、練習後の飲み会では散々みんなにいじられ、私たちはへとへとになって帰宅したのだった。

 ***

 早紀の結婚式は、秋晴れの中、チャペル付きホテルで行われた。
 ふんわりと裾の広がったドレスは早紀のかわいらしさを引き立て、装飾のシンプルさはその清楚さを来客に印象づけた。幸弘もベーシックな白いタキシードで、義父から早紀を引取り、微笑みかける。その様子は、ひいき目を差し引いても絵になるものだった。
 チャペルで誓いをたてた二人を見守り、少し間をおいて披露宴が始まる。一度控室に通されたとき、幸弘の友人として参列していた高木に声をかけられた。
「もしかして香子?なんか、変わったな。女っぽくなった」
 高木は陸上部。友人の多い幸弘は、友人を陸上部の同学年5人に限ったらしい。
「そこで綺麗になったねと言えないところが、高木のダメなところね」
 サリーがあきれ顔で言うと、高木は顔を赤らめて苦笑した。
「サリーは相変わらずだな」
 言って改めて私と向き合う。
「でも、確かに。……綺麗になった」
 私が思わず顔を赤らめてお礼を言ったとき、聞き慣れた声が私の名前を呼んだ。ーー今は誰よりも安心できる人の声。
「隼人くん」
 振り向くと、スーツ姿の隼人くんが立っていた。白いネクタイ、胸元にも白いハンカチーフ。
「今日の格好、似合ってる。綺麗だよ」
 恥ずかしくなるほど甘い目で言われて、私は更に赤くなり、俯きがちにお礼を言った。
 私はいかにもドレス、というものではないが、艶やかな光沢のある膝丈のワンピースを着ていた。グレーにも見えるアイスブルーを、ダークラメの入った紺色のジャケットでしめて、女性にしては地味な格好だと思う。
 だいたい、私が自分に似合うと思う装いをすると、隼人くんも気に入ってくれる。それも私にとって小さな自信に繋がっている。
「ざっきー、大丈夫だよ。この男は到底ライバルになり得るほどの素養はないから」
 サリーがヒラヒラと手を握りながら言うと、隼人くんは苦笑した。
「香子ちゃんは褒め言葉に弱いから」
 顔を赤らめた様子を見ていて、察したんだろう。私は俯いたまま小さくなった。
 高木が私と隼人くんを何度か見比べて、サリーに言った。
「もしかして……」
「その通り。香子もこのイケメンも予約済みなので、紹介はできませんと陸上部メンバーに伝えておきたまえ」
 サリーが誇らしげに胸を張り、私の左手手首をつかみ上げ、薬指の銀色を見せつけるようにした。
 陸上部メンバーでクラスが一緒になったことがあるのは高木だけだ。マネージャーの女子も含め、他は顔に見覚えがあるという程度。母校はクラスが多いので、全員の顔と名前など、到底覚えられなかった。
「そ、そっかぁ。なんかみんなすげーなあ。俺達もそんな歳かぁ」
「おっさんみたいなこと言ってる」
 サリーが笑った。

 披露宴でのスピーチは、それぞれ高校時代、大学時代から一人ずつ、インタビュー形式で話す形になった。やっぱり一人で引き受けるには荷が重いと言ったところ、そういう形もできると言われたらしい。
 結果、私と隼人くんがそれぞれの大学時代の姿を話すことになった。幸弘については部長だった相ちゃんに頼もうとしたところ、もしえみりんに式の途中で何かあったら自分も付き添うことになるから、と断られたそうだ。
「大学時代のお二人については、共通の友人として、サークルの仲間であるお二人にうかがいたいと思います」
 司会の女性に話を向けられて、私と隼人くんが立ち上がった。
「新婦の早紀さんは、どんな大学生でしたか?」
「すごく、可愛い子でした。男女ともにファンがたくさんいましたし。容姿だけのことじゃなくて、笑顔とか動作とか、心が温かくなる感じがするんです。早紀さんといると」
 早紀が照れ臭そうな顔をしている。
「一方の、幸弘さんはどうでしょう」
「太陽みたいな男だな、というのが最初の印象です。周りをぱっと明るくして、気づくと引き込まれているんです。巻き込む力みたいなものがあって、サークルに入ったのも、幸弘くんの誘いがきっかけでした」
 隼人くんが答えた。司会は頷いて、また私にマイクを向けた。
「お二人は、新郎新婦がお付き合いするにあたって、背中を押してくれたとうかがっていますが」
「二人とも奥手なので、じれったくて。お節介なことを言った記憶があります」
 私は苦笑しながら答えた。でもーー二人?
「でもその時から、二人はいい関係を築いていけるだろうと、不思議と確信していました」
 心に何のわだかまりもなく、こうして答えられるのがありがたい。
「神崎さんはどう見られていましたか」
「そうですね」
 隼人くんも苦笑して答えた。
「幸弘くんが僕のことをあれこれ言ってくるので、そっちこそどうなんだ、と言って二人で一度飲み明かした記憶があります。ーーと言っても彼は下戸なので、すぐ寝てしまいましたけど」
 それは知らなかった。思わず隼人くんに視線を送ると、わずかに目が合い、二人で笑う。
「では、お二人へのメッセージをお願いします」
「私にとって、二人とも大切な友人です。これからも互いに支え合って、幸せな家庭を築いてください」
「今日の二人の笑顔を見られて本当に嬉しく思っています。幸弘くん、歌いたくなったり、のろけ話がしたいときには、いつでも相手になりますよ。ソフトドリンク片手に」
「ありがとうございました」
 私と隼人くんが、拍手の中席に着くと、サリーがニヤニヤしながら私を肘でつついた。
「こらこら。ひとの結婚式でラブラブしてどうする」
 思わぬ言葉に赤面して、否定しようと口を開きかけたが、相ちゃんが笑った。
「いやー、いいもん見た」
「こばやんと早紀にとっては、いいスピーチだったんじゃない。二人も顔を見合わせて笑ってたから」
 えみりんもニヤニヤしながら言う。隼人くんと二人、一度目を合わせてから視線を反らした。
 披露宴が進み、お色直しをした新郎新婦が写真を撮りにテーブルを廻ってきた。新婦の早紀が私にありがとうと言っている横で、新郎の幸弘は隼人くんの背中をうりうりと肘でつついて笑った。
「ざっきーってば、見せつけちゃってー」
「違うよ。そんなつもりは」
「いやー、俺たち的には大満足。なっ」
 幸弘が早紀に振ると、早紀は和やかに微笑んで頷いた。その目がちょっと潤んでいる。
「うん。ーー香子ちゃんも、幸せになってね」
 語尾は涙声に変わった。今にも溢れそうな涙に、私は慌てる。
「違うよ早紀、タイミングが違う。今日は早紀の幸せを祝う日だから。それはまた今度ーー」
「今度、ね。楽しみだわぁ」
「香子、墓穴掘ってる」
 私はあわあわしながら、えみりんとサリーの言葉にますます顔が赤くなるのを感じた。みんなが笑う。
 ぽんと背中に暖かい手が当たる。振り向くと隼人くんもくすくす笑っていた。
 その視線が柔らかく、私は一人でますます赤くなる。
「はいはい、写真写真」
 イオンが澄まし顔で手を叩く。みんなが笑いながら幸弘と早紀を囲んだ。
 その時撮った写真は、みんなとってもいい顔で写っていたけど、目に見えて赤い顔をしている自分がどうしても気になって、残念なことに、二度見る気にはなれなかった。
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