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2章 神崎くんは残念なイケメン
17 大学3年、夏
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もう少しで夏休みに差しかかろうという7月の午前中。
女子大内のキャンパスにある購買で、ばったり会った香奈ちゃんが声をかけてきた。
「コッコ先輩は、インターンするんですか?」
「うん、そのつもり」
「そっかぁ、いろいろ話聞かせてくださいね!」
元気よく言ってから、物憂げに嘆息する。
「でも、なんかせっかくの大学生活なのに、せわしないですね。この前受験が終わったばっかりみたいな気がするのに、来年はもう就活かー」
香奈ちゃんはやれやれとうなだれる。その気持ちはよく分かるので、そうだねと苦笑した。
「でも、ざっきー先輩、交換留学するって、すごいですよねー。夏に帰国するらしいですけど、就活自信あるんだろうなぁ」
思わぬ話に、私はえ?と聞き返す。あれ、知らなかったですか、と香奈ちゃんは言った。
「5月のミニコンの打ち上げで聞きましたよ。交換留学決まったから、9月からアメリカの大学に通うって」
ーーアメリカ。
文化祭のとき、図書館で神崎くんが見ていた本の背表紙を思い出す。アメリカの大学で過ごす1年。
ファントムを、いい思い出、と言っていたことも思い出す。
あのときには、もう決まってたのかもしれない。
「えー、知らない」
私はぶんぶん首を振った。ちょこちょこ会ってるのに、全然知らなかった。
自分の代のことなのに、知らなくてショックを受けている私を見て、香奈ちゃんが慌てた。
「うわっ、言っちゃまずかったかなぁ。ざっきー先輩に謝っとこう……」
「そんなことないでしょ、きっと私にわざわざ言う必要もないと思ったんじゃないかな」
「えー、違いますよ。きっと違います。だってざっきー先輩のことだもん、きっと……」
「何話してるの?」
「あっ、サリー先輩!」
ひょっこり現れたサリーを見て、香奈ちゃんはすがるような目をした。
「サリー先輩は聞いてます?ざっきー先輩の話」
「ああ、留学するってやつ?あんまりおおごとにしてほしくないって言ってたから、私たちの学年だけで8月頭に送別会やろうってーー」
「そ、そうなんだ」
私が気まずく頷くと、サリーの動きが止まった。
「……聞いて、ない?」
サリーの表情が固まっている。こんなに動揺しているのも珍しいなと、私はちょっとおもしろく思う。
「うん、聞いてないよ。聞かなかったことにした方がいいのかな」
私それ呼ばれてないし、と苦笑する。さすがにちくちくと胸が痛む。
「あんの、おバカ……!内気な奥手にも程があるわ!サリーちゃんが喝入れてやる、喝!」
拳を握って激し始めたサリーについていけず、私は様子を見ていたが、急に振り返ったサリーは私の手を握って言った。
「8月最初の金曜夜!開けといてね!サークルもあるし!」
「え、でも私聞いてないから行かない方が……」
「そんなわけない!絶対ない!いいから言うこと聞きなさい!」
はあ、と曖昧に頷いて、私はようやくサリーから解放されたが、何らかの使命感のようなものに駆られたと見えるサリーが颯爽と去って行くのを、唖然として見守るのだった。
「……サリー先輩って、時々武士みたいに見えません?」
「うん、その気持ちは分かる……」
やはり唖然としてサリーを見送っていた香奈ちゃんの呟きに、私は思わず同意したのだった。
そして、神崎くんから初めての電話があったのは、早紀と昼食を食べ終えて話しているときだった。
「もしもし?」
『あ、もしもし?ごめんね、急に』
機械越しの神崎くんの声は、ちょっといつもと違う感じがする。
「ううん。どうしたの?」
『鈴木さんたちの女子大に来たんだけど』
「……はい?」
私は驚きの言葉に眉を寄せた。
『鈴木さん、今、どこにいる?』
思わず時計を見る。次の講義まで20分。
でも、講義が始まる前にトイレにも行きたい。
「えぇーと、何のご用でしょうか」
『いや、一応会って話した方がよさそうだなって思ってーー午後一の講義ないから、来てみたんだけど』
再度時計を見ながら、脳内で時間を計算する。
「次の講義あるから、5分なら。今どこにいるの?」
『正門入ったとこ。講堂の前あたり』
「分かった。今から行くから動かないで」
『え、いいよ俺そっち行くよ』
「いいから動かないで」
ぴしりと言って電話を切る。
こじんまりしているとはいえ、狭い敷地内に増築を重ねたわが大学のキャンパスは、不慣れだと道に迷う。進んでみたら行き止まり、なんてこともあるくらいなので、文化祭などで不慣れな人が出入りする日は、必ずと言っていいほど道に迷った人を見かける。
この時間ですぐ行きあたらなければ、私はトイレを諦めざるを得ない。次の講義はゼミなので、遅れて悪目立ちするのは避けたい。もぞもぞしながらゼミの時間を過ごすことになるのはもっと勘弁してほしい。
「早紀、ごめんちょっと行ってくる」
「行ってらっしゃい」
不思議そうに首を傾げながらも、鬼気迫る様子に早紀は手を振って見送ってくれた。
私は鞄をつかむと、神崎くんがいると思われる講堂近くまで走る。
神崎くんが所在なさげに周りの木を眺めているのが見えた。
「もー」
神崎くんの前まで来ると、乱れた息を整えながら、先に出たのは文句だった。
「向こうの大学を出るときに言ってもらえば、心づもりしたのに」
「……ごめん」
言ってから、しまった、と思う。こういうところが可愛いげがないんだろうな。
「いや、こっちこそごめん。で、要件は?」
時間がないので態度がそっけなくなるのは大目に見てほしい。神崎くんは苦笑した。
「午前中、サリーちゃんから怒りの電話があって」
サリー?ああ、もしかして。
「交換留学の話?」
「うん、そう」
神崎くんは私の顔をじぃっと見た。
「鈴木さんが、傷ついてた、って」
私は嘆息しながら神崎くんの顔を見返した。最近、ようやくお互いの顔を見ていられるようになった気がする。
「それで?次の講義あるから、手早くお願い」
そんな言い方も、可愛いげがない。そんなの私が一番よく分かってる。
でも、神崎くんはうろたえたりせず、なぜか笑った。
「よかった。そんなに落ち込んでないみたいで」
私は思わずがくりと膝の力が抜けそうになるのを堪えた。なんというか、効かない。私のひと睨みも、彼の前では効果を発揮しない。それは今、とてもよくわかったのだが。
「それを確認しに来ただけなら、私は講義に行きます」
トイレにも行きたいし。とは心中で付け足す。
「うん、それもあったけど」
全然気にせず、神崎くんが言う。割とマイペースなのかもしれない。ちょっと発見した気分だが、今、それを楽しむ余裕は私にない。
「理由によってはちょっと嬉しいかなと思って、確認したかったんだけど」
私は首を傾げる。余裕がないので、かけらも笑顔を浮かべていない自覚はある。神崎くんは逆に、穏やかな笑顔だった。
「少しは、寂しいなって思ってくれた?」
私は咄嗟に喉の奥でうっ、と言った。
香奈ちゃんたちから話を聞いた時、私が感じたのは、仲間外れにされたことへの寂しさだったけれど、神崎くんが今言っているのは、それとは別のことを示している。そう分かった。
でも、何か言わなきゃいけないように思えて、一瞬の間の後、応えた。
「どうかな。……思ったかも」
私の小さな声を聞き取って、神崎くんは嬉しそうに笑った。
なんだか照れくさくなって、私はふいと顔を背ける。
「で、もう用は済んだ?私、行かなきゃ」
「うん、ごめんね。ーー走ってきてくれて、ありがとう」
神崎くんの言葉が、すとんと心に落ちてくる。
丁寧な、お礼の言葉。
私たちが交わしたわずかな会話の中で、一体何度聞いただろう。
「私」
考えるより先に、言葉が先に出た。
「神崎くんの、ありがとう、って言い方、好きだよ」
神崎くんは驚いたように目を見開いた。
私ははっと口を押さえて、ろくに顔も見ずに、じゃあね、と背中を向ける。走り出すと、神崎くんが呼び止めようとしたが、気付かない振りで走り去る。
走るリズムに合わせて揺れる、後ろ頭でくくったポニーテールが、妙にくすぐったかった。
神崎くんを送る会兼暑気払いは、予定通り8月頭の金曜、サークル後に行われた。
とはいえ、サークル活動自体が20時まであるので、早紀などは1時間そこそこしかいられない。
私は何故か首の後ろを集中的に蚊に刺され、みっともないので珍しくハーフアップにしていた。
夏にあっては髪が首周りに張り付き鬱陶しいのだが、スカーフを巻くのもなんだし、我慢我慢。
「おや。コッコが女子に見える」
ケイケイが目を丸くして言う。こいつ懲りてないな。
というか、追いコンで私に何が起こったのか、ケイケイもよく分かってはいないのだろう。別にいいけど。
「一応、女子ですから」
私は半眼で応えた。
「たまにはいいじゃん。可愛いよ」
相ちゃんが言ってくれたので、ありがとうと返す。ハーフアップが男子受けのいい髪型だとは何となく知っている。
が、神崎くんが微妙な顔をしていた。
「……何か?」
私が問うと、
「うん……なんか、違う」
どこか不満げに、神崎くんは呟いた。
「鈴木さんのその髪型は、何か違う」
私はムッとして返した。
「どーせ私はハーフアップが似合うようなおしとやかな女子じゃありませんよ」
べたついて首筋に纏わり付く髪を、雑に払いのけて言う。
「あ、今のは鈴木さんぽい」
神崎くんは一人で頷いた。何故か少し嬉しげに。
訳の分からない否定と肯定に振り回されるのもバカバカしいので、私は嘆息を返しただけで黙っている。サリーが笑った。
「ざっきー、やっぱり面白いわ」
私たちは連れ立って、大学近くの居酒屋に入った。
「向こうで金髪美人と恋に落ちちゃったりしないでよ。ちゃんと帰って来るのよー。私たちを忘れないで!」
「そうそう。戻ってきて、向こうの子たち俺らに紹介して。女の子とお近づきになれるなら、英会話もがんばれそう」
乾杯して早々、イオンとケイケイが神崎くんに絡んでいるが、くだらない話はいつものことなので、適当に相づちを打っている。
「そういえば、香子」
サリーが私に小さく声をかけてきた。
「ちゃんとざっきーに謝ってもらったの?」
私は思わずきょとんとする。
「謝るって?何かあったっけ」
「今日のことだよー」
呆れたようなサリーの視線に、ああ、と苦笑する。そういえばそんなこともあった。
「うちの大学にわざわざ来てくれたけど」
「うん、それは知ってる」
私は思い返しながら首を傾げた。
「謝るとかは特に無かった気がするよ。私も講義始まりそうだったし、トイレ行きたかったし」
「トイレって……そんなバタバタだったの」
それじゃ意味ないじゃない、とサリーがまた嘆息する。
今日の送別会は6月頃に相ちゃんと幸弘が言い出したことだそうだ。私には神崎くんが直接伝える予定だったらしい。結局、伝わらないまま1ヶ月切ってしまっていたようだが。
どうしてみんながそんなややこしいことにしたのか、どうして神崎くんがなかなか伝えてくれなかったのかは、分からないままだ。
でも、神崎くんはもうすぐにアメリカに行く。帰ってくるのは4年の6月で、そのまま慌ただしく就活が始まるのだろう。
私もその頃には就活、そうでなければ卒論でバタバタして、きっと気づいたら4年も終わって、卒業までに互いの就職先が分かるかどうか。
「ざっきー、もう行く準備したの?」
「今月で揃えようと思って。パスポートはもう取ったけど」
「月末には向こうに行くんだっけ。じゃ、サークルも今日までか」
「もう一回くらいは、顔出せたらいいなと思ってるけどね」
相ちゃんと神崎くんが話しているのが聞こえる。
時間的にも精神的にも余裕もあった今までですら、ろくに連絡を取り合っていなかったのだ。サークルで会わなくなれば、きっと互いに連絡することもないだろう。
「年末年始くらいは帰ってくんの?」
「うーん、よほどのことがなければ途中で帰ることはないかな。1年だけだから、思いきり浸ろうかなと思ってる」
幸弘の問いに、神崎くんが答える。
「じゃ、初詣もできないね」
サリーが口を出した。神崎くんの肩にぽんと手を置き、満足げに言う。
「無事就職できますように、って祈っといてあげる。香子が」
「……は?」
話をぼんやりとしか聞いていなかった私は、急に出てきた自分の名前に、口にしかけたビールをこぼしそうになり、慌てて傾きを戻した。
「何ならお守りも送ってあげる。香子が」
「こらこら。何の話よ」
サリーが気持ち良く暴走し始める前に、私が横から釘を刺す。早紀が笑った。
「香子ちゃん、神社とかお寺とか、歴史のある場所好きだよね。神前で手合わせてるとき、巫女さんみたいで素敵なんだよ」
早紀の何の前フリもない言葉に、私は思わず赤面する。
「何の話してるの、早紀まで」
「前に、神崎くんから、聞かれたから。香子ちゃん、どういうところに行ったりするのが好きなのかなって」
神崎くんの頬が赤らんだように見えた。
「それ、ってえらい前じゃーー」
「あれ?」
早紀が首を傾げた。うーん、と考えて、あっ、と思いついたような顔で言う。いちいち表情が可愛い。
「そっかぁ。もう一年以上前なんだ。会った頃の追いコンだもんね」
「さ、早紀ちゃ……」
神崎くんが思いきりうろたえているが、私は早紀の様子に眉を寄せた。
「ちょっと、幸弘。早紀、酔ってるんじゃないの。間違ってウーロンハイ渡してるんじゃ」
「ふふ、まさか、そんなことないよー」
早紀はいつもに増してふわふわご機嫌である。絶対おかしいと思ったとき、今まで黙っていたたっちゃんが、急に口をきいた。
「俺、ウーロンハイ頼んだけど、これ、アルコール入ってない気がしてたんだよね」
私とサリーと幸弘が、何もいわず顔を見合わせた。次の瞬間、サリーが素早い動きで早紀の前のグラスを取り上げる。
「えっ、私確認したよね。店員さん、こっちがウーロン茶って言ったよね」
「うん、言った。悪くない。ちゃきは悪くないよ」
入り口近くの席でドリンクを受けとったちゃきをフォローし、私は店員さんに声をかけた。
「すみません、至急、お冷や一つお願いします。あとアイスウーロン茶を追加でもう一つ」
大丈夫だよぅと赤くなった顔で笑う早紀は無視してバタバタし始めたおかげで、さきほどの会話は忘れ去られ、私と神崎くんは内心ホッとしたのだった。
お開きの前に済ませておこうと、お手洗いに向かった私は、同じくお手洗いから戻って来る神崎くんとすれ違った。
「早紀ちゃん、大丈夫そうでよかったね」
神崎くんが言う。
終バスの早い早紀は、一足早めに帰るのが通例だったが、今日は念のため、自宅の最寄駅まで幸弘が送って行った。二人が去った後、イオンが深々とついたため息はずっと忘れられないだろう。憧れの早紀ちゃん、だったもんね。
私はようやくまともに神崎くんと会話できる機会だと気づいて言った。
「アメリカかー。時差どれくらいなんだろう。広いから、場所にもよるよね」
「東部の方だから、日本の時間から14時間引いてもらえれば」
14時間。ほとんど昼夜逆だ。
「遠いねぇ」
私が言うと、神崎くんは、みんなのいる席を見ながら、呟くように言った。
「ーー鈴木さんも、アメリカに来ない?」
私は思わず噴き出した。
「なにそれ、なんかプロポーズみたい」
笑いながら神崎くんの肩を叩くと、お手洗い行ってくるね、とその場を後にした。
そして、神崎くんは予定通り、9月からの授業に備え、8月末にアメリカへ向かった。
女子大内のキャンパスにある購買で、ばったり会った香奈ちゃんが声をかけてきた。
「コッコ先輩は、インターンするんですか?」
「うん、そのつもり」
「そっかぁ、いろいろ話聞かせてくださいね!」
元気よく言ってから、物憂げに嘆息する。
「でも、なんかせっかくの大学生活なのに、せわしないですね。この前受験が終わったばっかりみたいな気がするのに、来年はもう就活かー」
香奈ちゃんはやれやれとうなだれる。その気持ちはよく分かるので、そうだねと苦笑した。
「でも、ざっきー先輩、交換留学するって、すごいですよねー。夏に帰国するらしいですけど、就活自信あるんだろうなぁ」
思わぬ話に、私はえ?と聞き返す。あれ、知らなかったですか、と香奈ちゃんは言った。
「5月のミニコンの打ち上げで聞きましたよ。交換留学決まったから、9月からアメリカの大学に通うって」
ーーアメリカ。
文化祭のとき、図書館で神崎くんが見ていた本の背表紙を思い出す。アメリカの大学で過ごす1年。
ファントムを、いい思い出、と言っていたことも思い出す。
あのときには、もう決まってたのかもしれない。
「えー、知らない」
私はぶんぶん首を振った。ちょこちょこ会ってるのに、全然知らなかった。
自分の代のことなのに、知らなくてショックを受けている私を見て、香奈ちゃんが慌てた。
「うわっ、言っちゃまずかったかなぁ。ざっきー先輩に謝っとこう……」
「そんなことないでしょ、きっと私にわざわざ言う必要もないと思ったんじゃないかな」
「えー、違いますよ。きっと違います。だってざっきー先輩のことだもん、きっと……」
「何話してるの?」
「あっ、サリー先輩!」
ひょっこり現れたサリーを見て、香奈ちゃんはすがるような目をした。
「サリー先輩は聞いてます?ざっきー先輩の話」
「ああ、留学するってやつ?あんまりおおごとにしてほしくないって言ってたから、私たちの学年だけで8月頭に送別会やろうってーー」
「そ、そうなんだ」
私が気まずく頷くと、サリーの動きが止まった。
「……聞いて、ない?」
サリーの表情が固まっている。こんなに動揺しているのも珍しいなと、私はちょっとおもしろく思う。
「うん、聞いてないよ。聞かなかったことにした方がいいのかな」
私それ呼ばれてないし、と苦笑する。さすがにちくちくと胸が痛む。
「あんの、おバカ……!内気な奥手にも程があるわ!サリーちゃんが喝入れてやる、喝!」
拳を握って激し始めたサリーについていけず、私は様子を見ていたが、急に振り返ったサリーは私の手を握って言った。
「8月最初の金曜夜!開けといてね!サークルもあるし!」
「え、でも私聞いてないから行かない方が……」
「そんなわけない!絶対ない!いいから言うこと聞きなさい!」
はあ、と曖昧に頷いて、私はようやくサリーから解放されたが、何らかの使命感のようなものに駆られたと見えるサリーが颯爽と去って行くのを、唖然として見守るのだった。
「……サリー先輩って、時々武士みたいに見えません?」
「うん、その気持ちは分かる……」
やはり唖然としてサリーを見送っていた香奈ちゃんの呟きに、私は思わず同意したのだった。
そして、神崎くんから初めての電話があったのは、早紀と昼食を食べ終えて話しているときだった。
「もしもし?」
『あ、もしもし?ごめんね、急に』
機械越しの神崎くんの声は、ちょっといつもと違う感じがする。
「ううん。どうしたの?」
『鈴木さんたちの女子大に来たんだけど』
「……はい?」
私は驚きの言葉に眉を寄せた。
『鈴木さん、今、どこにいる?』
思わず時計を見る。次の講義まで20分。
でも、講義が始まる前にトイレにも行きたい。
「えぇーと、何のご用でしょうか」
『いや、一応会って話した方がよさそうだなって思ってーー午後一の講義ないから、来てみたんだけど』
再度時計を見ながら、脳内で時間を計算する。
「次の講義あるから、5分なら。今どこにいるの?」
『正門入ったとこ。講堂の前あたり』
「分かった。今から行くから動かないで」
『え、いいよ俺そっち行くよ』
「いいから動かないで」
ぴしりと言って電話を切る。
こじんまりしているとはいえ、狭い敷地内に増築を重ねたわが大学のキャンパスは、不慣れだと道に迷う。進んでみたら行き止まり、なんてこともあるくらいなので、文化祭などで不慣れな人が出入りする日は、必ずと言っていいほど道に迷った人を見かける。
この時間ですぐ行きあたらなければ、私はトイレを諦めざるを得ない。次の講義はゼミなので、遅れて悪目立ちするのは避けたい。もぞもぞしながらゼミの時間を過ごすことになるのはもっと勘弁してほしい。
「早紀、ごめんちょっと行ってくる」
「行ってらっしゃい」
不思議そうに首を傾げながらも、鬼気迫る様子に早紀は手を振って見送ってくれた。
私は鞄をつかむと、神崎くんがいると思われる講堂近くまで走る。
神崎くんが所在なさげに周りの木を眺めているのが見えた。
「もー」
神崎くんの前まで来ると、乱れた息を整えながら、先に出たのは文句だった。
「向こうの大学を出るときに言ってもらえば、心づもりしたのに」
「……ごめん」
言ってから、しまった、と思う。こういうところが可愛いげがないんだろうな。
「いや、こっちこそごめん。で、要件は?」
時間がないので態度がそっけなくなるのは大目に見てほしい。神崎くんは苦笑した。
「午前中、サリーちゃんから怒りの電話があって」
サリー?ああ、もしかして。
「交換留学の話?」
「うん、そう」
神崎くんは私の顔をじぃっと見た。
「鈴木さんが、傷ついてた、って」
私は嘆息しながら神崎くんの顔を見返した。最近、ようやくお互いの顔を見ていられるようになった気がする。
「それで?次の講義あるから、手早くお願い」
そんな言い方も、可愛いげがない。そんなの私が一番よく分かってる。
でも、神崎くんはうろたえたりせず、なぜか笑った。
「よかった。そんなに落ち込んでないみたいで」
私は思わずがくりと膝の力が抜けそうになるのを堪えた。なんというか、効かない。私のひと睨みも、彼の前では効果を発揮しない。それは今、とてもよくわかったのだが。
「それを確認しに来ただけなら、私は講義に行きます」
トイレにも行きたいし。とは心中で付け足す。
「うん、それもあったけど」
全然気にせず、神崎くんが言う。割とマイペースなのかもしれない。ちょっと発見した気分だが、今、それを楽しむ余裕は私にない。
「理由によってはちょっと嬉しいかなと思って、確認したかったんだけど」
私は首を傾げる。余裕がないので、かけらも笑顔を浮かべていない自覚はある。神崎くんは逆に、穏やかな笑顔だった。
「少しは、寂しいなって思ってくれた?」
私は咄嗟に喉の奥でうっ、と言った。
香奈ちゃんたちから話を聞いた時、私が感じたのは、仲間外れにされたことへの寂しさだったけれど、神崎くんが今言っているのは、それとは別のことを示している。そう分かった。
でも、何か言わなきゃいけないように思えて、一瞬の間の後、応えた。
「どうかな。……思ったかも」
私の小さな声を聞き取って、神崎くんは嬉しそうに笑った。
なんだか照れくさくなって、私はふいと顔を背ける。
「で、もう用は済んだ?私、行かなきゃ」
「うん、ごめんね。ーー走ってきてくれて、ありがとう」
神崎くんの言葉が、すとんと心に落ちてくる。
丁寧な、お礼の言葉。
私たちが交わしたわずかな会話の中で、一体何度聞いただろう。
「私」
考えるより先に、言葉が先に出た。
「神崎くんの、ありがとう、って言い方、好きだよ」
神崎くんは驚いたように目を見開いた。
私ははっと口を押さえて、ろくに顔も見ずに、じゃあね、と背中を向ける。走り出すと、神崎くんが呼び止めようとしたが、気付かない振りで走り去る。
走るリズムに合わせて揺れる、後ろ頭でくくったポニーテールが、妙にくすぐったかった。
神崎くんを送る会兼暑気払いは、予定通り8月頭の金曜、サークル後に行われた。
とはいえ、サークル活動自体が20時まであるので、早紀などは1時間そこそこしかいられない。
私は何故か首の後ろを集中的に蚊に刺され、みっともないので珍しくハーフアップにしていた。
夏にあっては髪が首周りに張り付き鬱陶しいのだが、スカーフを巻くのもなんだし、我慢我慢。
「おや。コッコが女子に見える」
ケイケイが目を丸くして言う。こいつ懲りてないな。
というか、追いコンで私に何が起こったのか、ケイケイもよく分かってはいないのだろう。別にいいけど。
「一応、女子ですから」
私は半眼で応えた。
「たまにはいいじゃん。可愛いよ」
相ちゃんが言ってくれたので、ありがとうと返す。ハーフアップが男子受けのいい髪型だとは何となく知っている。
が、神崎くんが微妙な顔をしていた。
「……何か?」
私が問うと、
「うん……なんか、違う」
どこか不満げに、神崎くんは呟いた。
「鈴木さんのその髪型は、何か違う」
私はムッとして返した。
「どーせ私はハーフアップが似合うようなおしとやかな女子じゃありませんよ」
べたついて首筋に纏わり付く髪を、雑に払いのけて言う。
「あ、今のは鈴木さんぽい」
神崎くんは一人で頷いた。何故か少し嬉しげに。
訳の分からない否定と肯定に振り回されるのもバカバカしいので、私は嘆息を返しただけで黙っている。サリーが笑った。
「ざっきー、やっぱり面白いわ」
私たちは連れ立って、大学近くの居酒屋に入った。
「向こうで金髪美人と恋に落ちちゃったりしないでよ。ちゃんと帰って来るのよー。私たちを忘れないで!」
「そうそう。戻ってきて、向こうの子たち俺らに紹介して。女の子とお近づきになれるなら、英会話もがんばれそう」
乾杯して早々、イオンとケイケイが神崎くんに絡んでいるが、くだらない話はいつものことなので、適当に相づちを打っている。
「そういえば、香子」
サリーが私に小さく声をかけてきた。
「ちゃんとざっきーに謝ってもらったの?」
私は思わずきょとんとする。
「謝るって?何かあったっけ」
「今日のことだよー」
呆れたようなサリーの視線に、ああ、と苦笑する。そういえばそんなこともあった。
「うちの大学にわざわざ来てくれたけど」
「うん、それは知ってる」
私は思い返しながら首を傾げた。
「謝るとかは特に無かった気がするよ。私も講義始まりそうだったし、トイレ行きたかったし」
「トイレって……そんなバタバタだったの」
それじゃ意味ないじゃない、とサリーがまた嘆息する。
今日の送別会は6月頃に相ちゃんと幸弘が言い出したことだそうだ。私には神崎くんが直接伝える予定だったらしい。結局、伝わらないまま1ヶ月切ってしまっていたようだが。
どうしてみんながそんなややこしいことにしたのか、どうして神崎くんがなかなか伝えてくれなかったのかは、分からないままだ。
でも、神崎くんはもうすぐにアメリカに行く。帰ってくるのは4年の6月で、そのまま慌ただしく就活が始まるのだろう。
私もその頃には就活、そうでなければ卒論でバタバタして、きっと気づいたら4年も終わって、卒業までに互いの就職先が分かるかどうか。
「ざっきー、もう行く準備したの?」
「今月で揃えようと思って。パスポートはもう取ったけど」
「月末には向こうに行くんだっけ。じゃ、サークルも今日までか」
「もう一回くらいは、顔出せたらいいなと思ってるけどね」
相ちゃんと神崎くんが話しているのが聞こえる。
時間的にも精神的にも余裕もあった今までですら、ろくに連絡を取り合っていなかったのだ。サークルで会わなくなれば、きっと互いに連絡することもないだろう。
「年末年始くらいは帰ってくんの?」
「うーん、よほどのことがなければ途中で帰ることはないかな。1年だけだから、思いきり浸ろうかなと思ってる」
幸弘の問いに、神崎くんが答える。
「じゃ、初詣もできないね」
サリーが口を出した。神崎くんの肩にぽんと手を置き、満足げに言う。
「無事就職できますように、って祈っといてあげる。香子が」
「……は?」
話をぼんやりとしか聞いていなかった私は、急に出てきた自分の名前に、口にしかけたビールをこぼしそうになり、慌てて傾きを戻した。
「何ならお守りも送ってあげる。香子が」
「こらこら。何の話よ」
サリーが気持ち良く暴走し始める前に、私が横から釘を刺す。早紀が笑った。
「香子ちゃん、神社とかお寺とか、歴史のある場所好きだよね。神前で手合わせてるとき、巫女さんみたいで素敵なんだよ」
早紀の何の前フリもない言葉に、私は思わず赤面する。
「何の話してるの、早紀まで」
「前に、神崎くんから、聞かれたから。香子ちゃん、どういうところに行ったりするのが好きなのかなって」
神崎くんの頬が赤らんだように見えた。
「それ、ってえらい前じゃーー」
「あれ?」
早紀が首を傾げた。うーん、と考えて、あっ、と思いついたような顔で言う。いちいち表情が可愛い。
「そっかぁ。もう一年以上前なんだ。会った頃の追いコンだもんね」
「さ、早紀ちゃ……」
神崎くんが思いきりうろたえているが、私は早紀の様子に眉を寄せた。
「ちょっと、幸弘。早紀、酔ってるんじゃないの。間違ってウーロンハイ渡してるんじゃ」
「ふふ、まさか、そんなことないよー」
早紀はいつもに増してふわふわご機嫌である。絶対おかしいと思ったとき、今まで黙っていたたっちゃんが、急に口をきいた。
「俺、ウーロンハイ頼んだけど、これ、アルコール入ってない気がしてたんだよね」
私とサリーと幸弘が、何もいわず顔を見合わせた。次の瞬間、サリーが素早い動きで早紀の前のグラスを取り上げる。
「えっ、私確認したよね。店員さん、こっちがウーロン茶って言ったよね」
「うん、言った。悪くない。ちゃきは悪くないよ」
入り口近くの席でドリンクを受けとったちゃきをフォローし、私は店員さんに声をかけた。
「すみません、至急、お冷や一つお願いします。あとアイスウーロン茶を追加でもう一つ」
大丈夫だよぅと赤くなった顔で笑う早紀は無視してバタバタし始めたおかげで、さきほどの会話は忘れ去られ、私と神崎くんは内心ホッとしたのだった。
お開きの前に済ませておこうと、お手洗いに向かった私は、同じくお手洗いから戻って来る神崎くんとすれ違った。
「早紀ちゃん、大丈夫そうでよかったね」
神崎くんが言う。
終バスの早い早紀は、一足早めに帰るのが通例だったが、今日は念のため、自宅の最寄駅まで幸弘が送って行った。二人が去った後、イオンが深々とついたため息はずっと忘れられないだろう。憧れの早紀ちゃん、だったもんね。
私はようやくまともに神崎くんと会話できる機会だと気づいて言った。
「アメリカかー。時差どれくらいなんだろう。広いから、場所にもよるよね」
「東部の方だから、日本の時間から14時間引いてもらえれば」
14時間。ほとんど昼夜逆だ。
「遠いねぇ」
私が言うと、神崎くんは、みんなのいる席を見ながら、呟くように言った。
「ーー鈴木さんも、アメリカに来ない?」
私は思わず噴き出した。
「なにそれ、なんかプロポーズみたい」
笑いながら神崎くんの肩を叩くと、お手洗い行ってくるね、とその場を後にした。
そして、神崎くんは予定通り、9月からの授業に備え、8月末にアメリカへ向かった。
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