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後日談5 ウェディングドレスの選び方(交互視点)

05

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 かたかたと、音が聞こえる。すごく幸せな夢を見ていたはずなのに、頭に残っているのはパステルカラーの温もりだけで、何を見たのか覚えていない。
 誰かが近づいてくる気配がする。枕元が沈む。顔の前に、何かが近づく。――唇に、温もり――

「……おはよう」

 ゆっくり目を開いたそこに、優しい垂れ目が私を見下ろしている。私はほぅ、っと慎重に息を吐き出して、気恥ずかしさに布団の中にもぐりこんだ。

「あれ? ちょっと、梢ちゃん?」

 笑いを含んだ勝くんの声が、お腹の底をくすぐる。
 そんなに優しい声出さないで。ただでさえ、

「――どうしたの? 顔、真っ赤」

 容赦なく顔にかけた布団を剥ぎ取った勝くんが、楽し気な笑顔で私を見下ろす。朝日が、窓から差し込んで勝くんの顔を輝かせている。シャツのボタンやネクタイピンに、光がきらきら反射している。

 ――やっぱり、王子様、だ。

「ふ、ふとん……かえして」
「だってまた隠れるつもりでしょう?」

 勝くんが笑う。「せっかく、姫の眠りを覚ますキスをしたつもりだったのに」と言われて、私の顔はますます熱を持つ。

「ひ、姫じゃない」
「違うの? ――じゃあ、何?」
「えっ……」

 姫なんて言うには、年が行き過ぎている。ご隠居。それは行き過ぎか。ええと、ええと――

「時間切れ」

 目を泳がせていた私の唇に、勝くんの唇が重なる。しっとりしていて、柔らかくて、あたたかい。眠りから覚めるときに触れたのと同じ、優しいキス。

「おはよう、梢ちゃん」

 細めた垂れ目に甘く見つめられて、私はこくりと頷いた。

「おはよう……勝くん」

 かっこよくて、まぶしくて、まっすぐに見るのは勇気がいる。けど、でも、勝くんは、私の――王子様なんだ。

 ぶわっと恥ずかしさがこみ上げて、慌ててごろんと転がった。勝くんに背を向けて顔を覆うと、勝くんが一瞬の間の後でくすりと笑う。

「――そういう恰好すると、昨日の続きしたいのかなぁ、なんて思っちゃうけど――」

 私の肩に置かれた手が、つつ、と背中を伝っていく。肩甲骨の間から、腰の上まで――甘い痺れを思い出して、私はぎくりとして身体を起こす。

「し、しない。起きる、起きます」
「えぇ、そう? 残念だな」

 勝くんはくすくす笑っている。相変わらず、私よりも年下だなんて思えないくらい、余裕のある笑顔――
 それが近づいてきたと思ったら、耳元で囁いた。

「今日も可愛いよ、梢ちゃん。――愛してる」

 「ひぇっ」と変な声を出した私に、勝くんはくつくつ笑った。
 まるでいたずらが成功したような満足げな笑いに、私は思うのだった。

 きっと、ずっと、この人には敵わないんだろう――って。

 FIN.

***

今後もSSを投下することはあるかもしれませんが、ひとまずこれにて後日談も完結です。
感想やコメント、とても励みになりましたし、後日談もそのお陰で執筆できました。
ご愛顧ありがとうございました!

 松丹子 拝
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みんなの感想(10件)

ちーぼ
2021.12.14 ちーぼ

梢ちゃんと勝くんが結婚した後の話を読みたいです。またお子ちゃまができた後の生活も。
梢ちゃん、勝くんのために、ワイシャツのアイロンがけや靴磨きもやってあげて、さらに勝くんが惚れそう。

松丹子
2021.12.14 松丹子

ちーぼ様

コメントありがとうございます!
アイロンがけと言われて、瞬時にご期待の流れとは全く違う二人の様子が思い浮かびました…笑
面白そうなのでSSが書けたら載せますね!

ありがとうございました!

解除
yutasugu
2020.11.19 yutasugu

梢ちゃんの過去の知り合い(?)の瀬戸さんは別のお話で出てきますか?

松丹子
2020.11.20 松丹子

yutasugu様

特に出すつもりはなかったのですが、飲み会ネタとか美味しいですね……(*´∀`)
ちょっと考えてみます。ありがとうございます!

解除
きぃち
2020.11.12 きぃち

あぁ…もう好き🥰🥰🥰🥰🥰

松丹子
2020.11.13 松丹子

きぃち様
ありがとうございますー😊😊😊
みなさまのお声あってこその後日談でした!ありがとうございました✨

解除

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