マイ・リトル・プリンセス

松丹子

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.9 新婚生活

49 ふわふわうさぎの誘惑

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「見てみて、栄太兄!」

 風呂のドアが開くなり、湯気とともに弾んだ声が出て来た。
 見やれば、もっふもふの白いパーカーに、ふとももが露わになった白いパンツ。
 ご丁寧にもフードには垂れ耳、お尻には丸い尻尾までついてはる。
 バニーさん、ちゅうよりうさぎさん、て感じや。

 こんなん――最高過ぎやろ!!

 膝から崩れ落ちそうになりながら、俺はかろうじて震える脚で踏ん張った。
 もだえる俺の前で、礼奈は楽しげに笑ってはる。

「あははは! ねぇこれ、着てる方もふわふわなんだよ! 栄太兄、栄太兄、ほら見て!」

 いや、うん、そやな、うん、かわいいで。かわっ――

 落ち着け、俺。えーと、鼻血が出んようにせな……白やしな、汚れたらあかん。そう思うのに、

「なんか自分がぬいぐるみになった気分。栄太兄、ぎゅってしてみて?」

 ――お前も煽るなぁ!

 両手を広げて小首を傾げたうさぎさんに、もうあれや、息も絶え絶えや。
 うん、うんとしか言われんで、礼奈が不思議そうに首をかしげる。

「栄太兄……どうかした?」

 あっ、待って、フードつけたまま首かしげんで。耳、垂れてかわいいやん。ちょ、写メ写メ――
 ふっと視線をただよわせた瞬間、胸元に柔らかな塊が飛び込んできた。

「ふふ。ぎゅー」

 冗談めかして俺を見上げるうさぎさん――あかんて――ほんま――うさぎって年中発情期やったなそういえば――ああまた思考が訳分からんようになっとる――半ば無意識にその身体を抱きしめて、ほんまさわり心地ええでふわふわして、頭もなんやふわふわして、フードの中に手入れて頬に触れて、いやでも俺が好きなんはこっちの中身やねんて心の中でそう言うて、目が合って礼奈が照れたように笑うて……ふに、て、唇が重なって。

「へへ。栄太兄……大好きだよ」

 頬に添えた手に擦り寄るみたいな、礼奈のはにかんだ笑顔に――耐えられんで担ぎ上げるようにベッドに連行した。

「ひゃ……んっ……」

 ゆっくりその背中をベッドに下ろすと、頬を包んで唇を重ねて、貪るように口内を侵す。
 息苦しそうにしながら、礼奈も黙って俺を受け入れた。
 ビール一本飲んだだけやのに、ふわふわする世界は礼奈のせいや。
 風呂上がりの肌はますますしっとりと柔らかく、暖かく、俺の手に吸い付いてくる。

「……栄太兄」
「ん……」

 ちゅ、ちゅ、ちゅぅ……小さな水音をたてながら、キスを首筋へ落としていく。ごめんな、礼奈。ちょっと今……余裕ないねん。
 かわいくてかわいくてかわいくて、礼奈でいっぱいになりたい。礼奈をいっぱいにしたい。
 フードの中は、洗い立ての礼奈の香りでいっぱいやった。指で首筋を辿って、ふと、気づく。
 ――あれ? もしかして……
 パーカーのチャックを、ちちち、と下ろしていく。礼奈が一瞬戸惑ったように身じろぎした、その脚を脚で押さえる。なんやジーパンが突っ張って痛い――ああ、そうかもうイキってんか。仕方ないな俺はほんま――頭の端で思いながら、胸の下あたりまでチャックを下げた。

「……Tシャツ着てへんの」
「だ、だって……さすがに暑いかなって……」

 うさぎさんの目が恥ずかしそうに泳ぐ。そうかもしれんな、と言ったつもりが、答えはごくんと鳴った喉の音だけになった。
 初めて間近に見る白い胸。
 藤色のレースがついたブラジャーはやけにカップが浅くて色っぽくて――なんやちょっと、複雑な気分になる。

「……いつも、こんなん着けてるん?」
「こんなんって……?」

 ブラジャーのカップを指先で辿ると、ぴくんと礼奈が震えた。

「なんか……エロくないか」
「そ、そんなことないよ……私、あんまり胸ないから……」

 この形だと、ちょっとは大きく見えるの。と礼奈が恥ずかしそうに言う。
 なんやのそれ、誰に見せるためやの。俺だけ見えてればええのに。俺にだけ見せてればええのに――
 悔しくなって、カップの上からはむっと囓った。

「にゃぅ」

 礼奈が変な声を出すので思わず笑った。「それ猫やん。今はうさぎやろ」と垂れ耳を弾くと、礼奈が両手で口を押さえた。

「だ、だって……栄太兄が、変なことするから」
「変なこと?」

 変なことなんてしてへん、ただおひいさまを愛でてるだけや。笑って背中に手を回す。胸元にキスをしながらホックを外すと、礼奈が慌てた。

「え、栄太兄」

 うわずった声。かわいい。
 ――もっとかわいい声、聞いてみたい。
 こないだは服の上から触れただけやったけど、礼奈が果てるところを見てみたい。
 理性が溶けた顔はどんな風なんやろ。
 意思がはっきり現れるその顔は、どう緩むんやろ。
 ためらいなくブラジャーの下に滑り込んだ俺の手に、礼奈は一瞬怯んだ。逃げんように背中を押さえる。男にしてもデカい俺が抱き寄せると、小柄な身体はもう動けんようになる。唇を重ねて、呼吸を奪う。ささやかな胸をやわやわと撫でる。……片手で両方攻められそうやな。両胸を寄せて片手で揉む。中心は避けて柔らかさを楽しむ。

「……嫌やったら、やめるで」

 唇が離れた瞬間に囁いた。礼奈は顔を真っ赤にして、いっぱいいっぱいとでも言うようにかぶりを振る。

「大丈夫……嫌、じゃない」

 泣きそうな顔がかわいい。かわいい。かわいい……

 なだめるように唇を重ねる。胸のてっぺんをちょんちょんと指でつついてやると、んんっと鼻から吐息が漏れた。かわいい。ほんまかわいい。本気で食べるような気分で口を覆う。背中に回してた手を前に持って来て、両手で胸を撫でさする。気恥ずかしそうだった礼奈の表情が、段々溶けていく。目はとろんとうつろになって、口から漏れるのははぅはぅと浅い吐息ばかりになっていく。

「かわいい……礼奈……好きやで……大好きや……」

 首筋に、胸にキスを落としながら、片手で腹と腰周りを撫でる。指先をときどき、ショーツにひっかける。その先を予告するように。もう片方の手は、ショートパンツの裾から伸びた脚を撫でる。つるつるした肌が、俺の手に弾力を返してくる。
 ……こんな短いズボン、俺以外の前で履いたら許さんで。健人のやつ、ここまで想像して選んだんやろか。けしからん奴やな。妹をなんやと思うてるんや……あーほんまくそかわいい。

「栄太兄ぃ……」

 呼び声に答える代わりにキスをして、ショートパンツの裾を指で割った。ショーツのステッチを辿って上に下にと指で撫でる。礼奈がもぞもぞと腰を動かす。そこで得る快感は知らんはずなのに、本能がそう動かすんやろか――腰つきがエロくて、喉の奥が鳴る。我ながら、獣みたいや。獣ついでに、白い首筋にかぷりと軽く歯を立てた。礼奈が「ひゃ」と小さく声をあげる。かわいい。

「礼奈」
「な、なに?」
「あと……つけてもええかな」

 そうや。就活も終わったんやし、もうつけてもええやろ? この白い肌に、思いっきり――今までしたことないけど、まあやってみればできるはずや。俺のもんや、ちゅう跡を……ふわふわのうさぎさんに、刻みたくてしゃあない。礼奈は揺れる目でまばたきして、軽くうなずいた。

「……見えないとこ、なら」

 ……ちぇ。
 一瞬残念に思うたけど、まあそやな。仕方ないな。それならここはええやろ、と胸に一つ花を咲かせる。「え、そこ!?」て礼奈が声をあげた。なんや、こんなとこ見えへんやろ。むしろ見せるような服着たらあかんで。笑ってキスを腹へ、腿の内側へと降らせる。
 こないだも舌で辿った腿の内側の筋を、今度は指先でなぞってショーツの方へと進んだ。礼奈がびくんと脚を震わせ、膝を合わせようとする。そうはいかんで。ふっと笑って、膝にキスをしながらショーツの上から股の中心を撫でた。「やだやだ」と礼奈がわちゃわちゃする。動揺するその顔がかわいくて笑う。

「嫌か?」
「い、いや、恥ずかしい」
「こんなで恥ずかしいなら、これからもっと恥ずかしくなるで」

 やめるか? と口先で言うてみる。けど俺かてやめるつもりはない。もうちょっと……もうちょっとだけ、先に進みたい。こないだよりも、もう一歩先に。
 礼奈はためらうように目を泳がせて、うう、と両手で顔を覆った。恥ずかしいけど我慢する、の意思表示やろか。ほんまかわいい。
 喉奥で笑って、手の甲に口づけた。礼奈がずらした手を片手で取って、甲から指先へ、段々とキスをずらしていく。王子様、みたいに見えるやろか。どんな顔してるかと横目で見たら、礼奈はほうっとしとる。――たまにはこういうんも悪くないな。礼奈の手を取り直して、丁寧に口づける。俺の大事な大事なおひいさま。
 ふっ、と礼奈の吐息が緩んだ拍子に、その指先を口に含んだ。「ひぇっ」と礼奈が息をのむ。くすりと笑って、その手を味わう。そっちに気の取られた隙に、ショーツの上から股を撫でた。はっと礼奈がまた息をのむ。ほんっまかわいい。
 唇を奪って、やわやわと胸を揉む。片手でショーツの上を前後にこする。ぴくんぴくんと礼奈の反応で目処をつけて、ショーツの一点をこすり始める。礼奈は溺れそうになるのを怖がるように、俺の首に腕を回す。「ん、んんっ、んん……!」身体の震えに余裕がない。思い切り舌を吸い上げてから唇を離すと、「ぁっ」と小さな声が漏れた。口を塞ごうとする手を片手で縫い止める。ショーツの上から刺激を続ける。

「ぁっ、あ、や、ぁ、栄太に、えい、たにぃっ……!」
「かわいいで、礼奈。かわいい……気持ちええねんな?」
「ゃ、恥ずかしっ……」
「せやな。でも……俺だけしか見てへんから。……俺にだけ見せて?」
「ぁ、ぁあっ……!」

 高ぶりと共に、びくびくん、と礼奈が震えた。ショーツをこすっていた手の動きを緩める。ぎゅうっとしがみついてきた手をそのままに、ゆっくりと身体を撫でる。果てたばかりの身体は、なだめるようなその動きにもぴくんぴくんと震える。
 心臓が、全力疾走した後みたいにばくばく言うてる。ガンガン頭を叩くような欲望に目を閉じて、礼奈の震えと、呼吸と、俺を酔わせる甘い匂いを堪能する。

「……礼奈、好きやで」

 囁くと、それだけでまた、礼奈が震えた。答える代わりに、ぎゅうっと抱きしめ返される。

「……わたしも、すき……」

 少しした後、囁くような声がして、その頬に口づけた。
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