35 / 100
.7 年の差カップル
35 変化
しおりを挟む
俺と礼奈には、二十年にわたる元々の関係がある。俺が礼奈を愛でるのも元々のことやし、恋人になったからってそう急に変わることは何もない――と思うてた俺けど、それは読みが甘かったと、気づかされるまでにそう時間はかからんかった。
一番の誤算は――礼奈のかわいさや。
ってなに言うてんねん、今までもさんざんかわいいかわいい言うてたやろ、今さらやんか! と、思うやろ? 思うやろ? 思うやんか! 俺もそう思うで、ほんまなに言うてんやろって感じなんやけどな……従兄妹だったときの礼奈に感じるかわいさが、胸がきゅんとした後ほわんと和む感じやとしたら、恋人になった礼奈には、心臓直接殴られて呼吸困難なる感じのかわいさやねん!
分かるかな? 分かるやろ? えっ、分からへん? とにかくしんどいかわいさってことや、察してや!
そんなわけでな……予想外ちゅうたら、もうこれ以上になることはないやろ、思うてた礼奈への想いが、もう青天井ちゅうか、底抜けになってもうたことで……え、こういうのノロケて言うん? マジか? 俺、結構真剣に悩ましいねんけど。
いや、だってな。電話しても会うても、あの丸い印象の猫目をくるんと見開いて、「栄太兄」ってねだるねんで。なにをねだるかって、モノやない、「好きって言って?」て……またその語ー尾ー! ちょっとだけ上げる感じ、かわいすぎやーん!
それまでも、かわいいとか天使とか、心の中では何度も叫んでたしまあ口に出すのもそう抵抗ないねんけど(たぶん)、好き、言うんはなんちゅうかかんちゅうかその……こっぱずかしいにも程があるで、いやほんま勘弁して、て言うんやけど「私はいっぱい言ったもん、栄太兄も言って?」て言われるともう、はい、としか言えんっちゅうか……もう、はい、かわいいです、礼奈が優勝、てなるやん。
果ては、「愛してる、は好き五回分」なんて言い出して、はぁぁぁあなに言うてんの!? あほやん! ほんまに! あほやん!! かわいすぎてしんどい! 好きやし!!!! ――て爆発しそうになんねん。
俺かて好きや、好きすぎてしんどいくらいやで、言葉にしたら爆発しそうやん。いん石とか落ちてきそうやん。まだ星にもチリにもなりたくないねん、せっかく礼奈と一緒におれんねんから!
礼奈と会うたび、そんな風に、ぐらっぐら揺さぶられとるわけやけど、それもこれも、幼い頃からの付き合い、ちゅうのが、かなり効いてる感はある。甘えてくるときは小さい頃の面影がよぎるし、不意に見せる色気には抗体がないでどぎまぎするし。元々表情が豊かな礼奈やけど、思春期の頃からは子どもっぽく見られたくなくて抑えてたんやろうな。俺の前だけではまた奔放さを見せるようになったその表情がもう、いちいち、俺のツボに刺さって痛いねん。
そのうち心臓がひきつけ起こすんやないかて正直心配なくらいやけど、幼妻を残して逝くわけにはいかんからな。……まだ妻やないけど。妻やないけど、まだな。まだ……
……まだってなんやの、浮かれすぎやん俺!
まず、とにかく、落ち着け。俺はそりゃ、結婚を前提に、て言うた。言うたで。もう三十やし、ほら、政人たちとの関係もあるしな。けど、礼奈は違う。まだ二十歳になったばっかで……将来有望っちゅうか、これからの人やん。もう低空飛行になりつつある俺とは違うっちゅうか、あんまり縛り付けるのもどうかと思うねん。
思うねん……けどな。けど、もう、ここまで気持ち持ってかれて、手放せるかっちゅうたら無理やろって思うねん。たぶん俺、死ぬわ。心臓は動いてても、礼奈おらんようになったらたぶん抜け殻になって、中身ないまま木に張り付いたセミの抜け殻みたいに、そのうち風にあおられてどっか行ってまうんやろな、て思うねん。ふらふら、へらへら……そんで誰かに踏まれるか、猫に食べられるかするんやろ。くしゃって。
せやから、礼奈から聞く大学の様子は懐かしいし、応援してるつもりなのに、応援したいと思うてるのに、同時にえらい焦りも感じる。
年上なんやし、穏やかに見守ってやりたいのに、毎日のように顔を合わせてるキャンパスの仲間がうらやましい。悠人や政人ら、家族もうらやましい。
――一緒に住めればええのに。
いつだか礼奈が言った言葉が、俺の胸にもよぎっては、無理矢理打ち消す。そんなん言うてたらあかん。そんなん言うてる暇があったら――まずちゃんと、俺がやってけるところを、政人と彩乃さんに見せんといかん。
それには、礼奈にばかり気を取られてたらいかん。転職した先でしっかり信頼を得て、柔軟に働けるように仕事に慣れておくべきや。大学卒業後、礼奈がどんな進路を選ぶかも知れん。もしかしたら院に進みたくなるかもしれんし、もしかしたら――もしかしたら、俺の元から離れてくかもしれん。
それでも――大丈夫なようにならな、あかん。
礼奈に支えてもらうような、そんな気持ちでおったらあかんねん。
ぐいぐい引き寄せられる、底なし沼のような想いの一方で、俺は必死で心理的な一線を――ともすれば手綱を離れそうになる自分のこころを、守ろうとしていた。
一番の誤算は――礼奈のかわいさや。
ってなに言うてんねん、今までもさんざんかわいいかわいい言うてたやろ、今さらやんか! と、思うやろ? 思うやろ? 思うやんか! 俺もそう思うで、ほんまなに言うてんやろって感じなんやけどな……従兄妹だったときの礼奈に感じるかわいさが、胸がきゅんとした後ほわんと和む感じやとしたら、恋人になった礼奈には、心臓直接殴られて呼吸困難なる感じのかわいさやねん!
分かるかな? 分かるやろ? えっ、分からへん? とにかくしんどいかわいさってことや、察してや!
そんなわけでな……予想外ちゅうたら、もうこれ以上になることはないやろ、思うてた礼奈への想いが、もう青天井ちゅうか、底抜けになってもうたことで……え、こういうのノロケて言うん? マジか? 俺、結構真剣に悩ましいねんけど。
いや、だってな。電話しても会うても、あの丸い印象の猫目をくるんと見開いて、「栄太兄」ってねだるねんで。なにをねだるかって、モノやない、「好きって言って?」て……またその語ー尾ー! ちょっとだけ上げる感じ、かわいすぎやーん!
それまでも、かわいいとか天使とか、心の中では何度も叫んでたしまあ口に出すのもそう抵抗ないねんけど(たぶん)、好き、言うんはなんちゅうかかんちゅうかその……こっぱずかしいにも程があるで、いやほんま勘弁して、て言うんやけど「私はいっぱい言ったもん、栄太兄も言って?」て言われるともう、はい、としか言えんっちゅうか……もう、はい、かわいいです、礼奈が優勝、てなるやん。
果ては、「愛してる、は好き五回分」なんて言い出して、はぁぁぁあなに言うてんの!? あほやん! ほんまに! あほやん!! かわいすぎてしんどい! 好きやし!!!! ――て爆発しそうになんねん。
俺かて好きや、好きすぎてしんどいくらいやで、言葉にしたら爆発しそうやん。いん石とか落ちてきそうやん。まだ星にもチリにもなりたくないねん、せっかく礼奈と一緒におれんねんから!
礼奈と会うたび、そんな風に、ぐらっぐら揺さぶられとるわけやけど、それもこれも、幼い頃からの付き合い、ちゅうのが、かなり効いてる感はある。甘えてくるときは小さい頃の面影がよぎるし、不意に見せる色気には抗体がないでどぎまぎするし。元々表情が豊かな礼奈やけど、思春期の頃からは子どもっぽく見られたくなくて抑えてたんやろうな。俺の前だけではまた奔放さを見せるようになったその表情がもう、いちいち、俺のツボに刺さって痛いねん。
そのうち心臓がひきつけ起こすんやないかて正直心配なくらいやけど、幼妻を残して逝くわけにはいかんからな。……まだ妻やないけど。妻やないけど、まだな。まだ……
……まだってなんやの、浮かれすぎやん俺!
まず、とにかく、落ち着け。俺はそりゃ、結婚を前提に、て言うた。言うたで。もう三十やし、ほら、政人たちとの関係もあるしな。けど、礼奈は違う。まだ二十歳になったばっかで……将来有望っちゅうか、これからの人やん。もう低空飛行になりつつある俺とは違うっちゅうか、あんまり縛り付けるのもどうかと思うねん。
思うねん……けどな。けど、もう、ここまで気持ち持ってかれて、手放せるかっちゅうたら無理やろって思うねん。たぶん俺、死ぬわ。心臓は動いてても、礼奈おらんようになったらたぶん抜け殻になって、中身ないまま木に張り付いたセミの抜け殻みたいに、そのうち風にあおられてどっか行ってまうんやろな、て思うねん。ふらふら、へらへら……そんで誰かに踏まれるか、猫に食べられるかするんやろ。くしゃって。
せやから、礼奈から聞く大学の様子は懐かしいし、応援してるつもりなのに、応援したいと思うてるのに、同時にえらい焦りも感じる。
年上なんやし、穏やかに見守ってやりたいのに、毎日のように顔を合わせてるキャンパスの仲間がうらやましい。悠人や政人ら、家族もうらやましい。
――一緒に住めればええのに。
いつだか礼奈が言った言葉が、俺の胸にもよぎっては、無理矢理打ち消す。そんなん言うてたらあかん。そんなん言うてる暇があったら――まずちゃんと、俺がやってけるところを、政人と彩乃さんに見せんといかん。
それには、礼奈にばかり気を取られてたらいかん。転職した先でしっかり信頼を得て、柔軟に働けるように仕事に慣れておくべきや。大学卒業後、礼奈がどんな進路を選ぶかも知れん。もしかしたら院に進みたくなるかもしれんし、もしかしたら――もしかしたら、俺の元から離れてくかもしれん。
それでも――大丈夫なようにならな、あかん。
礼奈に支えてもらうような、そんな気持ちでおったらあかんねん。
ぐいぐい引き寄せられる、底なし沼のような想いの一方で、俺は必死で心理的な一線を――ともすれば手綱を離れそうになる自分のこころを、守ろうとしていた。
0
お気に入りに追加
62
あなたにおすすめの小説
どなたか私の旦那様、貰って下さいませんか?
秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
私の旦那様は毎夜、私の部屋の前で見知らぬ女性と情事に勤しんでいる、だらしなく恥ずかしい人です。わざとしているのは分かってます。私への嫌がらせです……。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
政略結婚で、離縁出来ないけど離縁したい。
無類の女好きの従兄の侯爵令息フェルナンドと伯爵令嬢のロゼッタは、結婚をした。毎晩の様に違う女性を屋敷に連れ込む彼。政略結婚故、愛妾を作るなとは思わないが、せめて本邸に連れ込むのはやめて欲しい……気分が悪い。
彼は所謂美青年で、若くして騎士団副長であり兎に角モテる。結婚してもそれは変わらず……。
ロゼッタが夜会に出れば見知らぬ女から「今直ぐフェルナンド様と別れて‼︎」とワインをかけられ、ただ立っているだけなのに女性達からは終始凄い形相で睨まれる。
居た堪れなくなり、広間の外へ逃げれば元凶の彼が見知らぬ女とお楽しみ中……。
こんな旦那様、いりません!
誰か、私の旦那様を貰って下さい……。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
皇太子夫妻の歪んだ結婚
夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。
その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。
本編完結してます。
番外編を更新中です。
悪役令嬢は王太子の妻~毎日溺愛と狂愛の狭間で~
一ノ瀬 彩音
恋愛
悪役令嬢は王太子の妻になると毎日溺愛と狂愛を捧げられ、
快楽漬けの日々を過ごすことになる!
そしてその快感が忘れられなくなった彼女は自ら夫を求めるようになり……!?
※この物語はフィクションです。
R18作品ですので性描写など苦手なお方や未成年のお方はご遠慮下さい。
皇帝陛下は皇妃を可愛がる~俺の可愛いお嫁さん、今日もいっぱい乱れてね?~
一ノ瀬 彩音
恋愛
ある国の皇帝である主人公は、とある理由から妻となったヒロインに毎日のように夜伽を命じる。
だが、彼女は恥ずかしいのか、いつも顔を真っ赤にして拒むのだ。
そんなある日、彼女はついに自分から求めるようになるのだが……。
※この物語はフィクションです。
R18作品ですので性描写など苦手なお方や未成年のお方はご遠慮下さい。
五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。
【R18】もう一度セックスに溺れて
ちゅー
恋愛
--------------------------------------
「んっ…くっ…♡前よりずっと…ふか、い…」
過分な潤滑液にヌラヌラと光る間口に亀頭が抵抗なく吸い込まれていく。久しぶりに男を受け入れる肉道は最初こそ僅かな狭さを示したものの、愛液にコーティングされ膨張した陰茎を容易く受け入れ、すぐに柔らかな圧力で応えた。
--------------------------------------
結婚して五年目。互いにまだ若い夫婦は、愛情も、情熱も、熱欲も多分に持ち合わせているはずだった。仕事と家事に忙殺され、いつの間にかお互いが生活要員に成り果ててしまった二人の元へ”夫婦性活を豹変させる”と銘打たれた宝石が届く。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる