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本編
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その翌日は休みをもらっていた。珍しく、ちまたの休日と重なる休みだ。普段は平日休みが多いので、暦通りの生活をしている兄や父と休日が重なるのは久々だった。
だからといって、一緒に出かける予定もない。実際、兄は何か用があるのだろう、「行ってきます」という声が先ほど玄関の方から聞こえた。開いて閉じるドアの音も。
ベッドの上でぐだぐだごろごろ過ごしていたら、いじっているスマホに着信があって慌てた。
【しょーくん】
画面に表示された愛称に、ぅえ、と変な声が喉から出る。気持ちを落ち着けてから出ようと思ったのだが、慌てすぎて通話ボタンを押してしまったらしい。紗也加は動揺しながら、腹をくくって耳にスマホを当てた。
「……もしもし」
『おはよ』
耳元で聞こえた声に、紗也加は一瞬、息を止めた。その後、喉の奥に詰まった声をかろうじて吐き出すように、オハヨウ、と応じる。翔は笑った。
『ごめん、まだ寝てた?』
「ううん、起きてた……ごろごろしてた」
『そっか。今日、休みだって聞いたから』
誰から聞いたかは聞かずとも分かる。優一だろう。紗也加は息を吐き出し、平静を装って「なに」と問う。
翔は「うん」と頷き、ため息をついて話し出した。
『俺、来週から名古屋出張になってさ』
「……はぁ」
『二週間。勘弁して欲しいよなぁ』
紗也加はどう答えたものかと迷う。何が勘弁して欲しいのだろう。正直、紗也加からすれば、朝一で翔と電話しているというこの状況の方が勘弁して欲しかった。今まで一度もかけてきたことのない電話をかけてきて、当然のように話す男の声はあまりに心臓に悪い。
『……その間、ラブと寝られないじゃん』
寂しそうな声音に、紗也加は息を吐き出す。
出張の間に愛犬に何かあったらと、心配なのだろう。
そう思い至って、息をつく。
日頃あまりうかがい知れない翔の心情を知れるのが嬉しかった。
そして、そんなことに喜びを感じている自分に呆れもする。
「しょーくん、意外と寂しがり屋さんなんだね」
『なんだよ、悪いかよ』
翔はすねたような声で言った。
『15年、ほとんど毎日じゃれてたんだから、仕方ないだろ。妹みたいなもんだ、俺の』
「彼女じゃなくて?」
『……まあ、彼女でもいいけど』
翔の語調がいつもよりも幼い。もしかしたら、初めて自分からかける電話に、多少は緊張しているのかもしれない。
紗也加は珍しく自分の方が落ち着いているように思えて笑った。
『寂しいなぁ。二週間もあの毛並みに触れないなんて』
「土日、帰って来ればいいじゃない」
『そうだけど……』
翔は言葉を止めた。紗也加は続きを待つ。
『……あ、ごめん。また』
いきなり言って、電話は切れた。
翔の声に代わって、無機質な機械音が聞こえる。
紗也加は戸惑いつつため息をついた。
耳の奥にはまだ翔の声が残っている。
翔の電話一本で、気持ちはほわほわと漂い、頬が熱を帯びた。
ーー頭の中がぐるぐるしている。
ベッドの上に立てた膝に顔をうずめた。
『狛ちゃん』
紗也加をまっすぐに見つめた、譲一の姿を思い出す。
優しさと真剣さを帯びた瞳は、決意した男のものだった。
それまで気づかなかった、男としての譲一。
紗也加がそうであるように、譲一も紗也加のことを異性として認識していないのだろうと、油断しきっていたのだと初めて気づいた。
そんな自分のうかつさに、頬がますます熱を帯びる。
一方、翔からの電話一本で、自分が浮かれているのも事実だ。
紗也加は深々と息を吐き出した。
* * *
健次とまともに会ったのは、合コンから一週間以上過ぎた頃だった。
同居しているとはいえ、それぞれシフトで動く勤務体制なので、あまり休みが重なることがない。
健次は紗也加が帰宅するなり、飼い犬のように玄関に駆け寄ってきた。愛嬌のある目をくるりと見開き笑う。
「姉ちゃん、こないだはありがとー! 先輩たち、すげぇ喜んでてさ」
紗也加に「ただいま」すら言わせず、健次は興奮気味に話しかけてきた。
「で、他の先輩たちが……」
「もうしないよ」
言葉を遮り言うと、健次がえっ、と目をまたたかせた。
紗也加はその顔を見ずに言う。
「もう、しない。……そういう歳でもないし」
健次は意外そうな顔をした。紗也加はやはりその顔を見ないまま、自分の部屋へと向かった。
* * *
「狛江さん、どこでミニ連に入るか決まった?」
「あっ、まだです。みんなの希望見てから決めようと……」
「あらぁ。それでいいの? 誰かとどこか行かないの?」
「いいんです。ご家庭ある方優先してください」
「じゃ、こっちで入れちゃうわよ。いいのね?」
マネージャーに確認され、紗也加は頷いた。早めに希望すれば大体は希望を聞いてもらえるが、特段予定もない紗也加にはどうでもいいことだ。
ふとカレンダーを見る。先週飲んだとき、譲一は再来週に連休に入ると言っていた。となれば来週からか。
来週。
ふと翔の電話を思い出す。
(名古屋に、二週間……)
紗也加の連休と重なるだろうとは、安易に想像がついた。
(なに、考えてんだか。あたしってば)
紗也加は心中で自嘲気味に呟き、気持ちを切り替えてフロアへと向かった。
* * *
譲一から連絡があったのは、彼が旅行に行くというその日だった。
そして、紗也加が連休に入る前日でもある。
【ただいま羽田。3泊4日、行ってきます】
飛行機の絵と共に送られてきたメッセージを目に、紗也加は戸惑う。
【できれば、明後日くらいまでに何か連絡ちょうだい。それによってお土産変えるから】
紗也加は答えに迷い、ただ、「行ってらっしゃい」とメッセージが記載された絵だけを送り返した。
(しょーくんは、もう名古屋行ったのかな)
同じくらいのタイミングだったはずだ、と思い出す。
電話でのやりとりは中途半端に終わったはずだったが、その後翔からの連絡はない。
紗也加はまた、ため息をついた。
譲一のことは、嫌いではない。気安い先輩と思ってはいるが、信頼もしている。何より、紗也加のことをきちんと見てくれているという安心感もある。
それでも、今まで先輩後輩としてしか接してこなかった紗也加にとって、好意を臭わせる彼のふるまいは戸惑うものでしかない。一方で、紗也加が望めば、元通りの先輩後輩に戻れるであろうラインを越えてこない辺りが、譲一の配慮だろう。
少しでも時間があると、翔と譲一のことが頭を巡る。紗也加はそれから解放されたくて、ついつい仕事の後も、あっちこっちとうろうろし、果ては終電を逃して、歩きながら帰宅することも度々だった。
* * *
そして連休の初日になった。五連休だが、紗也加には何も予定はない。
朝、遅めに起き出すと、またしても二人の男の幻想から逃れるためにふらふらとショッピングモールへ向かう。
ぷらぷらと店を冷やかし、観る気もなかった映画を観て、それでもまだ夜半というには早い。
一人遊びはしつくしたかのような錯覚も抱いていた。ショッピングモールは賑やかだったが、休日ほどの喧騒はない。ベンチに腰掛けて眺める人々は、思い思いに着飾り、友人と、恋人と、家族と歩いていた。
学校帰りなのだろう制服姿のカップルも、そこここで見かけた。女子の短いスカートからは、白い太ももがのぞいている。その寒々しさに感心しつつ、もうあの頃には戻れないなと当たり前のことを思っていた。
そのとき、スマホが着信を告げた。ぎくりと身を強張らせて見やる。
翔からだ。
時計を見ると、午後6時を回っていた。そろそろ仕事が終わったころなのだろうかと検討をつけ、数度呼吸して落ち着いてから、画面をタップする。
「……もしもし」
『もしもし? 夜遊び少女』
「……だから、もう少女じゃない」
答えると、翔はははっと笑った。
『少女じゃないって分かってて、終電逃して歩いて帰宅か。家族に心配かけるなよ』
紗也加は眉を寄せた。
『優一から、連休が思いやられるって連絡があったから。……今、外? 賑やかだね』
「うん。……まあ」
『デートでもしてんの?』
冗談混じりの翔の問いかけに、紗也加の返事は喉につかえた。
「……しょーくんには、関係ないじゃない」
ふて腐れた声は、ひどく可愛いげのないものになった。翔は一瞬黙った後、息をつく。
『寂しがり屋に、独り寝はつらい』
翔は唐突に言った。
いつも通り本音の所在の分からない言葉。
紗也加は戸惑う。
そうだ、と翔は笑った。
いたずらを思いついたときのような声音が、紗也加に在りし日の翔の笑顔を思い出させる。
高校の制服に身を包んでいたあの頃のーー
『サヤ、ラブの代わりに来てよ。……名古屋』
それを聞いた瞬間、紗也加の連休の予定は決まってしまった。
だからといって、一緒に出かける予定もない。実際、兄は何か用があるのだろう、「行ってきます」という声が先ほど玄関の方から聞こえた。開いて閉じるドアの音も。
ベッドの上でぐだぐだごろごろ過ごしていたら、いじっているスマホに着信があって慌てた。
【しょーくん】
画面に表示された愛称に、ぅえ、と変な声が喉から出る。気持ちを落ち着けてから出ようと思ったのだが、慌てすぎて通話ボタンを押してしまったらしい。紗也加は動揺しながら、腹をくくって耳にスマホを当てた。
「……もしもし」
『おはよ』
耳元で聞こえた声に、紗也加は一瞬、息を止めた。その後、喉の奥に詰まった声をかろうじて吐き出すように、オハヨウ、と応じる。翔は笑った。
『ごめん、まだ寝てた?』
「ううん、起きてた……ごろごろしてた」
『そっか。今日、休みだって聞いたから』
誰から聞いたかは聞かずとも分かる。優一だろう。紗也加は息を吐き出し、平静を装って「なに」と問う。
翔は「うん」と頷き、ため息をついて話し出した。
『俺、来週から名古屋出張になってさ』
「……はぁ」
『二週間。勘弁して欲しいよなぁ』
紗也加はどう答えたものかと迷う。何が勘弁して欲しいのだろう。正直、紗也加からすれば、朝一で翔と電話しているというこの状況の方が勘弁して欲しかった。今まで一度もかけてきたことのない電話をかけてきて、当然のように話す男の声はあまりに心臓に悪い。
『……その間、ラブと寝られないじゃん』
寂しそうな声音に、紗也加は息を吐き出す。
出張の間に愛犬に何かあったらと、心配なのだろう。
そう思い至って、息をつく。
日頃あまりうかがい知れない翔の心情を知れるのが嬉しかった。
そして、そんなことに喜びを感じている自分に呆れもする。
「しょーくん、意外と寂しがり屋さんなんだね」
『なんだよ、悪いかよ』
翔はすねたような声で言った。
『15年、ほとんど毎日じゃれてたんだから、仕方ないだろ。妹みたいなもんだ、俺の』
「彼女じゃなくて?」
『……まあ、彼女でもいいけど』
翔の語調がいつもよりも幼い。もしかしたら、初めて自分からかける電話に、多少は緊張しているのかもしれない。
紗也加は珍しく自分の方が落ち着いているように思えて笑った。
『寂しいなぁ。二週間もあの毛並みに触れないなんて』
「土日、帰って来ればいいじゃない」
『そうだけど……』
翔は言葉を止めた。紗也加は続きを待つ。
『……あ、ごめん。また』
いきなり言って、電話は切れた。
翔の声に代わって、無機質な機械音が聞こえる。
紗也加は戸惑いつつため息をついた。
耳の奥にはまだ翔の声が残っている。
翔の電話一本で、気持ちはほわほわと漂い、頬が熱を帯びた。
ーー頭の中がぐるぐるしている。
ベッドの上に立てた膝に顔をうずめた。
『狛ちゃん』
紗也加をまっすぐに見つめた、譲一の姿を思い出す。
優しさと真剣さを帯びた瞳は、決意した男のものだった。
それまで気づかなかった、男としての譲一。
紗也加がそうであるように、譲一も紗也加のことを異性として認識していないのだろうと、油断しきっていたのだと初めて気づいた。
そんな自分のうかつさに、頬がますます熱を帯びる。
一方、翔からの電話一本で、自分が浮かれているのも事実だ。
紗也加は深々と息を吐き出した。
* * *
健次とまともに会ったのは、合コンから一週間以上過ぎた頃だった。
同居しているとはいえ、それぞれシフトで動く勤務体制なので、あまり休みが重なることがない。
健次は紗也加が帰宅するなり、飼い犬のように玄関に駆け寄ってきた。愛嬌のある目をくるりと見開き笑う。
「姉ちゃん、こないだはありがとー! 先輩たち、すげぇ喜んでてさ」
紗也加に「ただいま」すら言わせず、健次は興奮気味に話しかけてきた。
「で、他の先輩たちが……」
「もうしないよ」
言葉を遮り言うと、健次がえっ、と目をまたたかせた。
紗也加はその顔を見ずに言う。
「もう、しない。……そういう歳でもないし」
健次は意外そうな顔をした。紗也加はやはりその顔を見ないまま、自分の部屋へと向かった。
* * *
「狛江さん、どこでミニ連に入るか決まった?」
「あっ、まだです。みんなの希望見てから決めようと……」
「あらぁ。それでいいの? 誰かとどこか行かないの?」
「いいんです。ご家庭ある方優先してください」
「じゃ、こっちで入れちゃうわよ。いいのね?」
マネージャーに確認され、紗也加は頷いた。早めに希望すれば大体は希望を聞いてもらえるが、特段予定もない紗也加にはどうでもいいことだ。
ふとカレンダーを見る。先週飲んだとき、譲一は再来週に連休に入ると言っていた。となれば来週からか。
来週。
ふと翔の電話を思い出す。
(名古屋に、二週間……)
紗也加の連休と重なるだろうとは、安易に想像がついた。
(なに、考えてんだか。あたしってば)
紗也加は心中で自嘲気味に呟き、気持ちを切り替えてフロアへと向かった。
* * *
譲一から連絡があったのは、彼が旅行に行くというその日だった。
そして、紗也加が連休に入る前日でもある。
【ただいま羽田。3泊4日、行ってきます】
飛行機の絵と共に送られてきたメッセージを目に、紗也加は戸惑う。
【できれば、明後日くらいまでに何か連絡ちょうだい。それによってお土産変えるから】
紗也加は答えに迷い、ただ、「行ってらっしゃい」とメッセージが記載された絵だけを送り返した。
(しょーくんは、もう名古屋行ったのかな)
同じくらいのタイミングだったはずだ、と思い出す。
電話でのやりとりは中途半端に終わったはずだったが、その後翔からの連絡はない。
紗也加はまた、ため息をついた。
譲一のことは、嫌いではない。気安い先輩と思ってはいるが、信頼もしている。何より、紗也加のことをきちんと見てくれているという安心感もある。
それでも、今まで先輩後輩としてしか接してこなかった紗也加にとって、好意を臭わせる彼のふるまいは戸惑うものでしかない。一方で、紗也加が望めば、元通りの先輩後輩に戻れるであろうラインを越えてこない辺りが、譲一の配慮だろう。
少しでも時間があると、翔と譲一のことが頭を巡る。紗也加はそれから解放されたくて、ついつい仕事の後も、あっちこっちとうろうろし、果ては終電を逃して、歩きながら帰宅することも度々だった。
* * *
そして連休の初日になった。五連休だが、紗也加には何も予定はない。
朝、遅めに起き出すと、またしても二人の男の幻想から逃れるためにふらふらとショッピングモールへ向かう。
ぷらぷらと店を冷やかし、観る気もなかった映画を観て、それでもまだ夜半というには早い。
一人遊びはしつくしたかのような錯覚も抱いていた。ショッピングモールは賑やかだったが、休日ほどの喧騒はない。ベンチに腰掛けて眺める人々は、思い思いに着飾り、友人と、恋人と、家族と歩いていた。
学校帰りなのだろう制服姿のカップルも、そこここで見かけた。女子の短いスカートからは、白い太ももがのぞいている。その寒々しさに感心しつつ、もうあの頃には戻れないなと当たり前のことを思っていた。
そのとき、スマホが着信を告げた。ぎくりと身を強張らせて見やる。
翔からだ。
時計を見ると、午後6時を回っていた。そろそろ仕事が終わったころなのだろうかと検討をつけ、数度呼吸して落ち着いてから、画面をタップする。
「……もしもし」
『もしもし? 夜遊び少女』
「……だから、もう少女じゃない」
答えると、翔はははっと笑った。
『少女じゃないって分かってて、終電逃して歩いて帰宅か。家族に心配かけるなよ』
紗也加は眉を寄せた。
『優一から、連休が思いやられるって連絡があったから。……今、外? 賑やかだね』
「うん。……まあ」
『デートでもしてんの?』
冗談混じりの翔の問いかけに、紗也加の返事は喉につかえた。
「……しょーくんには、関係ないじゃない」
ふて腐れた声は、ひどく可愛いげのないものになった。翔は一瞬黙った後、息をつく。
『寂しがり屋に、独り寝はつらい』
翔は唐突に言った。
いつも通り本音の所在の分からない言葉。
紗也加は戸惑う。
そうだ、と翔は笑った。
いたずらを思いついたときのような声音が、紗也加に在りし日の翔の笑顔を思い出させる。
高校の制服に身を包んでいたあの頃のーー
『サヤ、ラブの代わりに来てよ。……名古屋』
それを聞いた瞬間、紗也加の連休の予定は決まってしまった。
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