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.第9章 穏やかな日々
226 初めてのゼミ(2)
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そこに立っていたのは、さっき先生の代わりにあれこれ説明してくれた先輩だった。芦田さん、と言ったっけ。そう思い出しながら頭を下げる。
「あの、順番決まったので、持って来ました」
「ああ、ありがとう」
芦田さんは微笑んで、メモを受け取った。黒い眼鏡はちょっと翔太くんのそれと似ているけれど、穏やかな微笑みはどちらかというと隼人さんに似ている。
すらりと背が高くて、男の人にしては少し華奢な印象だったけど、厭味のない爽やかな好青年、といったところだ。
「――橘さん、だっけ? まっすぐ来れた?」
「あ、ええと。ちょっと迷いました。エレベーター降りてから、ぐるっと」
もう、名前覚えてるんだ。
感心しながら、自分が来た道を指で示すと、「ああ、ごめんね」と苦笑が返って来た。
「緊張してたから、説明不足だったかなと思って。みんなまだキャンパス慣れてないし、もう少し丁寧に説明すべきだったよね。――学部図書館、初めてでしょ。お詫びと言ってはなんだけど、案内しようか」
私は思わずまばたきをした。芦田さんは微笑んで、「時間があれば」と中へ促す。
それなら、と頷いて、一歩中へ踏み込んだ。
学部図書館は、正式には資料室なのだけれど、中の人間は図書館と呼んでいるらしい。まさに資料室と図書館の間くらいの広さで、専門書がずらりと並んでいる。
「こっちが国文学。古代、中世、近世、近代――こっちが海外文学だね。向こうが文法関係」
芦田さんが歩きながら、そう説明してくれる。一度、同級生数人と案内してもらったけれど、ざっと見ただけだから、こうして個別に見回すのは初めてだ。
「僕らのゼミだと、この辺使うことが多いかな。橘さんは、研究テーマ決まってるの?」
「あ、えっと……まだ」
「そっか。まあ、焦らずいろいろ見てみるといいよ。3年次の発表のテーマに絡めて、卒論書く人が多いかな。僕もそのクチだけど――」
ふむふむと頷いていたら、芦田さんが不意に言葉を止めた。本棚に向けていた視線を芦田さんに向けると、こちらをじっと見られていることに気づいてうろたえる。
「あ、あの……」
「いや、ごめんね。つい、話し過ぎちゃった。何か聞きたいことはあるかな?」
「いえ」
的確で分かり易い説明だった。頭のいい人なんだろうな、と何となく思う――まあ、院まで行くんだから、研究が好きなんだろうけれど。
「……さっきも、緊張してるなんて気づきませんでした。芦田さんの説明、分かり易いです」
お世辞じゃなくそう言うと、芦田さんはちょっと照れたように笑った。
「何で僕が橘さんの名前覚えてたか分かる?」
「え?」
私は戸惑ってまばたきした。てっきり、みんなのことをすぐに覚えたのだと思っていたからだ。
「僕、そんなに物覚えのいい方じゃないから――特に人の顔は。名前はね、文字見れば結構覚えられるんだけど」
芦田さんはそう言って、眼鏡の奥の目を細める。
あ、この人、いい人だ。
溝口さんとは違って、眼鏡で隠した腹黒さみたいなものを感じない。
そんなことを思う自分がちょっと嬉しくなった。少しは成長してるじゃん、私。
「橘さん、説明聞いてる間ずっと前向いてたでしょ。目、合わせて、頷いて。――だから橘さんに話しかけてたし、それで、自己紹介のときも名前、ちゃんと聞いてた」
そう言われて、思わず赤面する。
「みんな、そういうもんじゃないんですか……?」
「そんなことないよ。意外と目合わせてくれる人って少ないんだよ。十人いて、一人いるかどうか、ってくらい」
芦田さんはそう微笑んだ。
「何ていうか、いいとこの子なんだろうなって。経済的にとか、社会的にとかじゃなくて、大事に育てられてきた子なんだろうなって思ったよ」
そう言われて、思わず照れる。うつむいた先に、学部誌が見えた。
「……あれって」
「ああ、歴代の論文のテーマが書かれてるやつ。そうだね、ああいうのも参考にするといいかも。見てみる?」
「はい」
頷いて、手を伸ばす。適当に手に取ろうとして、ふと、手を止めた。
今から、11年前のそれを手にする。
ドキドキしながら開いたのは、英文学科の卒論テーマ一覧だった。
「――誰か、知り合いでもいるの?」
「あっ、えと、あの……」
手元を覗き込まれて、どきりとする。取り繕おうと顔を上げたら、すぐそこに芦田さんの横顔があった。
「ああ、ごめん。迷わずそこ開けたみたいに見えたから」
「えっと、あの……」
私が専攻しているのは、同じ言語学でもコミュニケーションに関するもので、しかもあくまで日本語だ。英文学科を参考にする必要なんてない――それは分かっている、けど。
「い、従兄が。昔、ここにいて」
嘘じゃない。むしろ、本当のことだ。
冊子には、修士論文は概要が、卒論は名前と題名だけが記載されているようだった。
私はドキドキしながらページを指で繰って、卒論の一覧で手を止める。
――見つけた。
【金田栄太郎】と書かれたそれを指先で辿ると、芦田さんがちらりと私の横顔を見下ろして、そっと顔を逸らした。
「……ほんとに、従兄?」
「え? あ、はい。えっと、父の姉の子どもなんで、苗字が違――」
いや、考えてみえば、お父さんがそもそも、苗字変えてるんだった。説明が面倒くさくなって途中で切り上げると、何でそんなことを言ったのかと芦田さんを見上げる。
芦田さんは困ったように笑った。
「……なんか、今、すごく嬉しそうだったから。ちょっと、びっくりした」
私は顔に熱が集まるのを感じた。「あの」と言うと、「いや、いいから」と手を振られる。
「十年前か……結構、歳、離れてるけど。がんばってね」
「いや、あの、違うんです――じゃない、違くないんですけど、違って……」
もだもだしながら言っていると、芦田さんはふふっと笑って、「じゃあ、お疲れさま」と手を振って去って行った。私は冊子を手にしたまま、一人、頬を押さえた。
……そんなに、顔に出てたかな。
やっぱりもうちょっと、ポーカーフェイスを身につけなきゃいけない、かも。
「あの、順番決まったので、持って来ました」
「ああ、ありがとう」
芦田さんは微笑んで、メモを受け取った。黒い眼鏡はちょっと翔太くんのそれと似ているけれど、穏やかな微笑みはどちらかというと隼人さんに似ている。
すらりと背が高くて、男の人にしては少し華奢な印象だったけど、厭味のない爽やかな好青年、といったところだ。
「――橘さん、だっけ? まっすぐ来れた?」
「あ、ええと。ちょっと迷いました。エレベーター降りてから、ぐるっと」
もう、名前覚えてるんだ。
感心しながら、自分が来た道を指で示すと、「ああ、ごめんね」と苦笑が返って来た。
「緊張してたから、説明不足だったかなと思って。みんなまだキャンパス慣れてないし、もう少し丁寧に説明すべきだったよね。――学部図書館、初めてでしょ。お詫びと言ってはなんだけど、案内しようか」
私は思わずまばたきをした。芦田さんは微笑んで、「時間があれば」と中へ促す。
それなら、と頷いて、一歩中へ踏み込んだ。
学部図書館は、正式には資料室なのだけれど、中の人間は図書館と呼んでいるらしい。まさに資料室と図書館の間くらいの広さで、専門書がずらりと並んでいる。
「こっちが国文学。古代、中世、近世、近代――こっちが海外文学だね。向こうが文法関係」
芦田さんが歩きながら、そう説明してくれる。一度、同級生数人と案内してもらったけれど、ざっと見ただけだから、こうして個別に見回すのは初めてだ。
「僕らのゼミだと、この辺使うことが多いかな。橘さんは、研究テーマ決まってるの?」
「あ、えっと……まだ」
「そっか。まあ、焦らずいろいろ見てみるといいよ。3年次の発表のテーマに絡めて、卒論書く人が多いかな。僕もそのクチだけど――」
ふむふむと頷いていたら、芦田さんが不意に言葉を止めた。本棚に向けていた視線を芦田さんに向けると、こちらをじっと見られていることに気づいてうろたえる。
「あ、あの……」
「いや、ごめんね。つい、話し過ぎちゃった。何か聞きたいことはあるかな?」
「いえ」
的確で分かり易い説明だった。頭のいい人なんだろうな、と何となく思う――まあ、院まで行くんだから、研究が好きなんだろうけれど。
「……さっきも、緊張してるなんて気づきませんでした。芦田さんの説明、分かり易いです」
お世辞じゃなくそう言うと、芦田さんはちょっと照れたように笑った。
「何で僕が橘さんの名前覚えてたか分かる?」
「え?」
私は戸惑ってまばたきした。てっきり、みんなのことをすぐに覚えたのだと思っていたからだ。
「僕、そんなに物覚えのいい方じゃないから――特に人の顔は。名前はね、文字見れば結構覚えられるんだけど」
芦田さんはそう言って、眼鏡の奥の目を細める。
あ、この人、いい人だ。
溝口さんとは違って、眼鏡で隠した腹黒さみたいなものを感じない。
そんなことを思う自分がちょっと嬉しくなった。少しは成長してるじゃん、私。
「橘さん、説明聞いてる間ずっと前向いてたでしょ。目、合わせて、頷いて。――だから橘さんに話しかけてたし、それで、自己紹介のときも名前、ちゃんと聞いてた」
そう言われて、思わず赤面する。
「みんな、そういうもんじゃないんですか……?」
「そんなことないよ。意外と目合わせてくれる人って少ないんだよ。十人いて、一人いるかどうか、ってくらい」
芦田さんはそう微笑んだ。
「何ていうか、いいとこの子なんだろうなって。経済的にとか、社会的にとかじゃなくて、大事に育てられてきた子なんだろうなって思ったよ」
そう言われて、思わず照れる。うつむいた先に、学部誌が見えた。
「……あれって」
「ああ、歴代の論文のテーマが書かれてるやつ。そうだね、ああいうのも参考にするといいかも。見てみる?」
「はい」
頷いて、手を伸ばす。適当に手に取ろうとして、ふと、手を止めた。
今から、11年前のそれを手にする。
ドキドキしながら開いたのは、英文学科の卒論テーマ一覧だった。
「――誰か、知り合いでもいるの?」
「あっ、えと、あの……」
手元を覗き込まれて、どきりとする。取り繕おうと顔を上げたら、すぐそこに芦田さんの横顔があった。
「ああ、ごめん。迷わずそこ開けたみたいに見えたから」
「えっと、あの……」
私が専攻しているのは、同じ言語学でもコミュニケーションに関するもので、しかもあくまで日本語だ。英文学科を参考にする必要なんてない――それは分かっている、けど。
「い、従兄が。昔、ここにいて」
嘘じゃない。むしろ、本当のことだ。
冊子には、修士論文は概要が、卒論は名前と題名だけが記載されているようだった。
私はドキドキしながらページを指で繰って、卒論の一覧で手を止める。
――見つけた。
【金田栄太郎】と書かれたそれを指先で辿ると、芦田さんがちらりと私の横顔を見下ろして、そっと顔を逸らした。
「……ほんとに、従兄?」
「え? あ、はい。えっと、父の姉の子どもなんで、苗字が違――」
いや、考えてみえば、お父さんがそもそも、苗字変えてるんだった。説明が面倒くさくなって途中で切り上げると、何でそんなことを言ったのかと芦田さんを見上げる。
芦田さんは困ったように笑った。
「……なんか、今、すごく嬉しそうだったから。ちょっと、びっくりした」
私は顔に熱が集まるのを感じた。「あの」と言うと、「いや、いいから」と手を振られる。
「十年前か……結構、歳、離れてるけど。がんばってね」
「いや、あの、違うんです――じゃない、違くないんですけど、違って……」
もだもだしながら言っていると、芦田さんはふふっと笑って、「じゃあ、お疲れさま」と手を振って去って行った。私は冊子を手にしたまま、一人、頬を押さえた。
……そんなに、顔に出てたかな。
やっぱりもうちょっと、ポーカーフェイスを身につけなきゃいけない、かも。
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