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.第7章 大学1年、後期
172 二日遅れのクリスマス
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冬と言えばカップルイベントが目白押しの時期だ。とはいえ、クリスマス前後は私のバイトが繁忙期なので、慶次郎とは、年末が近づいた27日に出かることにした。
それでも、私が昼過ぎまでバイトだったこともあって、遠出はできない。
出かけたのはいつも通り、駅前の映画館だった。
クリスマス前後に合わせて公開される映画はカップルで楽しめるものが多いからと、その一つを観た。
「冬ってなんでカップルイベント多いんだろ」
「さー。ただの商業戦略としか思えない」
「夢がないなぁ」
「常識だろ」
経済学部の慶次郎と話していると、万事が万事この調子だ。思わず呆れて、「そうと分かっててこうやって出かけるのはどうなの?」と意地の悪いことを言ってみるけれど、「それはそれ、一つの機会として楽しめばいいんじゃない」とドライな回答。
まあ、慶次郎らしいといえば慶次郎らしいけど。
一緒に映画を観てご飯を食べたら、もう外は暗くなっていた。駅前にはあちこちにクリスマスの名残のイルミネーションが点いている。
一昔前はクリスマスが終わるとすぐさま取り払われていたその電飾も、最近は正月が過ぎるまで点けっぱなしだ。賑やかしにちょうどいいということなのだろうか。
「少し歩くか」
「うん、いいよ」
イルミネーションがきらめく夜道を、二人でぶらぶらと歩いて行く。駅前のベンチに座っているのはカップルばかりで、どことなく気まずい。
でも、向こうから見たら私たちだって一組のカップルなんだろう。そう思うと何だか不思議な気がして――同時に、私はまだ慶次郎と恋人だっていうことを自覚しきれてないんだな、なんて思う。
夏休みが過ぎてから3か月。慶次郎と過ごした時間はそんなに長くないけれど、でも、ちょこちょこ会っていたのは確かだ。軽いボディタッチも手に触れることも、ぎこちなさはなくなった。と、思うのに、何が足りないんだろう。
電飾は赤、白、青、黄――と色鮮やかにまたたいている。葉が落ちて枝だけになった木は、日中はひっそりとして見えるのに、日が落ちた途端こうして主役に変わる。
暗い中でちかちかと点滅を繰り返す電飾を眺めながら歩いていたら、慶次郎が不意に呟いた。
「さっき言ってたやつさ」
「さっき?」
私が顔を上げると、慶次郎はうんと頷いて前を向いている。その目の中に小さく小さく電飾が映りこんで輝いている。
「カップルイベントがどうのってやつ」
「ああ」
そういえば、そんなこと話してたっけ。
そう思っていたら、慶次郎がにやりと笑った。
「冬、ってのはポイントかもな」
「うん?」
私が首を傾げると同時に、ぱっと手を掴まれる。
かと思えば、恋人繋ぎにされた。
「――寒いから、ぬくもりが欲しくなるだろ」
冷え始めた指先に、じわりと慶次郎の体温が伝わって来る。
――ぬくもり。
その言葉が不意に生々しく感じて、私は眉を寄せた。
「……なんか、やらしく聞こえる」
「はぁ? やらしいことなんか言ってねぇぞ」
「そうかなぁ」
気恥ずかしくてうつむくと、慶次郎は笑った。
「でも、そういうこと言うってことは、ちょっとは進歩したかな」
「え?」
戸惑う私に、慶次郎は笑って手を引く。電飾の合間に、駅前の時計塔が見えた。時刻は八時前を示している。
「こっち」と言われて大人しく従えば、煌々とした街明かりからは通りを一本隔てたところに、街灯が一本ぽつりと立っている。それが映し出しているのは、この近辺に住んでいる人しか知らないだろう、小さな児童公園だ。
私はふっと微笑む。
「あ、懐かしい。ここ、何度か一緒に遊んだね――」
言いかけた私を、暖かいものが包み込んだ。
それが何か、考えずとも分かった。動揺に目が泳ぐ。
「ちょ、ちょっ……と、慶次郎」
「嫌なら離れる」
静かな声が、耳元で言う。
反射的に腕を振りほどこうとしていた私は、その声を聞いて動きを止めた。
――そんなこと言われたら、暴れることもできなくなる。
大人しくなった私の様子に、慶次郎は喉の奥で笑った。
くつくつと、猫が喉を鳴らすような笑い声。
その腕も、笑い声に合わせて小さく震える。
「――あったけぇな」
「……うん」
私はこくりと頷いた。
心臓はどきどきと脈打っている。
目を閉じる。
一本向こうの道を走る車のエンジン音が、かすかに鼓膜を震わせた。
静かに呼吸を繰り返す。
あったかい。……確かに。
でも、あんまり、落ち着かない。
――栄太兄の腕の中ほどは、落ち着けない。
はっとして目を開き、私は小さく唇をかみしめた。黙ったまま、慶次郎の肩に額を預ける。
モッズコートから、慶次郎の家の匂いがした。うちとは違う匂い。それは――柔軟剤の匂いだろうか。それとも、他のものだろうか。
その匂いで、忘れようとする。上書きしようとする。
あの日、抱き着いた栄太兄の腕の中の感触。匂い。胸の高鳴り――
忘れようとしているのに、だいぶ上手に忘れられるようになってきたはずなのに、それでもやっぱり、栄太兄は不意に私の頭の中に現れる。
一緒にいるのは慶次郎なのに。今の私が望んだ時、傍にいてくれるのは、慶次郎なのに――
私は慶次郎のコートを指先でつまむ。慶次郎は何も言わずに、私の頭をぽんぽんと叩く。
けど、それ以上のことはしない。嫌がるようなことはしない――つき合い始めるときに宣言した通り、慶次郎はちゃんと、私の気持ちを待っていてくれる。
黙って、急かすこともなく、待ってくれている。
私はまた、ぎゅっと目を閉じた。
慶次郎の手が、私の頭をぽんと叩く。
「……帰るか。送るよ」
「うん」
私は頷く。一歩、後ろに離れる。
慶次郎の顔が、頭一つ分離れた。
微笑みを浮かべたその表情からは、慶次郎が今、どんな気持ちなのか分からない。
どれくらい無理しているのか、無理させているのか、分からない。
こんなに、傍にいるのに。慶次郎は私の気持ちを分かってくれるのに。私は、慶次郎の気持ちが分からない。
あまりの息苦しさにうつむいて、その先に見つけた手に、そっと手を伸ばした。
「……慶次郎」
私はぽつりと声をかけた。
うん? と慶次郎が返す。
「つらく、ない?」
言いながら、慶次郎の手指をつまむ。
なんてずるい女だろう。自分へのいら立ちに、泣きそうになった。
慶次郎がつらいなら、もうこんな関係は――
そう思う一方で、誰かに、傍にいて欲しいと願っているのも確かで。
慶次郎から、戸惑った気配を察して、私は顔を上げる。
「何が? ――楽しくなかった? 映画」
少し心配したように、慶次郎はそう言った。
私はその言葉に慌てて首を振り、「ううん、楽しかったよ」と笑う。慶次郎は不思議そうに私を見下ろしながら「そっか、よかった」とほっとしたようだった。
慶次郎は、一番に、私のことを考えていてくれる。
また、胸がぎゅうと締め付けられた。
それでも、私が昼過ぎまでバイトだったこともあって、遠出はできない。
出かけたのはいつも通り、駅前の映画館だった。
クリスマス前後に合わせて公開される映画はカップルで楽しめるものが多いからと、その一つを観た。
「冬ってなんでカップルイベント多いんだろ」
「さー。ただの商業戦略としか思えない」
「夢がないなぁ」
「常識だろ」
経済学部の慶次郎と話していると、万事が万事この調子だ。思わず呆れて、「そうと分かっててこうやって出かけるのはどうなの?」と意地の悪いことを言ってみるけれど、「それはそれ、一つの機会として楽しめばいいんじゃない」とドライな回答。
まあ、慶次郎らしいといえば慶次郎らしいけど。
一緒に映画を観てご飯を食べたら、もう外は暗くなっていた。駅前にはあちこちにクリスマスの名残のイルミネーションが点いている。
一昔前はクリスマスが終わるとすぐさま取り払われていたその電飾も、最近は正月が過ぎるまで点けっぱなしだ。賑やかしにちょうどいいということなのだろうか。
「少し歩くか」
「うん、いいよ」
イルミネーションがきらめく夜道を、二人でぶらぶらと歩いて行く。駅前のベンチに座っているのはカップルばかりで、どことなく気まずい。
でも、向こうから見たら私たちだって一組のカップルなんだろう。そう思うと何だか不思議な気がして――同時に、私はまだ慶次郎と恋人だっていうことを自覚しきれてないんだな、なんて思う。
夏休みが過ぎてから3か月。慶次郎と過ごした時間はそんなに長くないけれど、でも、ちょこちょこ会っていたのは確かだ。軽いボディタッチも手に触れることも、ぎこちなさはなくなった。と、思うのに、何が足りないんだろう。
電飾は赤、白、青、黄――と色鮮やかにまたたいている。葉が落ちて枝だけになった木は、日中はひっそりとして見えるのに、日が落ちた途端こうして主役に変わる。
暗い中でちかちかと点滅を繰り返す電飾を眺めながら歩いていたら、慶次郎が不意に呟いた。
「さっき言ってたやつさ」
「さっき?」
私が顔を上げると、慶次郎はうんと頷いて前を向いている。その目の中に小さく小さく電飾が映りこんで輝いている。
「カップルイベントがどうのってやつ」
「ああ」
そういえば、そんなこと話してたっけ。
そう思っていたら、慶次郎がにやりと笑った。
「冬、ってのはポイントかもな」
「うん?」
私が首を傾げると同時に、ぱっと手を掴まれる。
かと思えば、恋人繋ぎにされた。
「――寒いから、ぬくもりが欲しくなるだろ」
冷え始めた指先に、じわりと慶次郎の体温が伝わって来る。
――ぬくもり。
その言葉が不意に生々しく感じて、私は眉を寄せた。
「……なんか、やらしく聞こえる」
「はぁ? やらしいことなんか言ってねぇぞ」
「そうかなぁ」
気恥ずかしくてうつむくと、慶次郎は笑った。
「でも、そういうこと言うってことは、ちょっとは進歩したかな」
「え?」
戸惑う私に、慶次郎は笑って手を引く。電飾の合間に、駅前の時計塔が見えた。時刻は八時前を示している。
「こっち」と言われて大人しく従えば、煌々とした街明かりからは通りを一本隔てたところに、街灯が一本ぽつりと立っている。それが映し出しているのは、この近辺に住んでいる人しか知らないだろう、小さな児童公園だ。
私はふっと微笑む。
「あ、懐かしい。ここ、何度か一緒に遊んだね――」
言いかけた私を、暖かいものが包み込んだ。
それが何か、考えずとも分かった。動揺に目が泳ぐ。
「ちょ、ちょっ……と、慶次郎」
「嫌なら離れる」
静かな声が、耳元で言う。
反射的に腕を振りほどこうとしていた私は、その声を聞いて動きを止めた。
――そんなこと言われたら、暴れることもできなくなる。
大人しくなった私の様子に、慶次郎は喉の奥で笑った。
くつくつと、猫が喉を鳴らすような笑い声。
その腕も、笑い声に合わせて小さく震える。
「――あったけぇな」
「……うん」
私はこくりと頷いた。
心臓はどきどきと脈打っている。
目を閉じる。
一本向こうの道を走る車のエンジン音が、かすかに鼓膜を震わせた。
静かに呼吸を繰り返す。
あったかい。……確かに。
でも、あんまり、落ち着かない。
――栄太兄の腕の中ほどは、落ち着けない。
はっとして目を開き、私は小さく唇をかみしめた。黙ったまま、慶次郎の肩に額を預ける。
モッズコートから、慶次郎の家の匂いがした。うちとは違う匂い。それは――柔軟剤の匂いだろうか。それとも、他のものだろうか。
その匂いで、忘れようとする。上書きしようとする。
あの日、抱き着いた栄太兄の腕の中の感触。匂い。胸の高鳴り――
忘れようとしているのに、だいぶ上手に忘れられるようになってきたはずなのに、それでもやっぱり、栄太兄は不意に私の頭の中に現れる。
一緒にいるのは慶次郎なのに。今の私が望んだ時、傍にいてくれるのは、慶次郎なのに――
私は慶次郎のコートを指先でつまむ。慶次郎は何も言わずに、私の頭をぽんぽんと叩く。
けど、それ以上のことはしない。嫌がるようなことはしない――つき合い始めるときに宣言した通り、慶次郎はちゃんと、私の気持ちを待っていてくれる。
黙って、急かすこともなく、待ってくれている。
私はまた、ぎゅっと目を閉じた。
慶次郎の手が、私の頭をぽんと叩く。
「……帰るか。送るよ」
「うん」
私は頷く。一歩、後ろに離れる。
慶次郎の顔が、頭一つ分離れた。
微笑みを浮かべたその表情からは、慶次郎が今、どんな気持ちなのか分からない。
どれくらい無理しているのか、無理させているのか、分からない。
こんなに、傍にいるのに。慶次郎は私の気持ちを分かってくれるのに。私は、慶次郎の気持ちが分からない。
あまりの息苦しさにうつむいて、その先に見つけた手に、そっと手を伸ばした。
「……慶次郎」
私はぽつりと声をかけた。
うん? と慶次郎が返す。
「つらく、ない?」
言いながら、慶次郎の手指をつまむ。
なんてずるい女だろう。自分へのいら立ちに、泣きそうになった。
慶次郎がつらいなら、もうこんな関係は――
そう思う一方で、誰かに、傍にいて欲しいと願っているのも確かで。
慶次郎から、戸惑った気配を察して、私は顔を上げる。
「何が? ――楽しくなかった? 映画」
少し心配したように、慶次郎はそう言った。
私はその言葉に慌てて首を振り、「ううん、楽しかったよ」と笑う。慶次郎は不思議そうに私を見下ろしながら「そっか、よかった」とほっとしたようだった。
慶次郎は、一番に、私のことを考えていてくれる。
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