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.第7章 大学1年、後期
166 理想の夫婦
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週末は予定通り、家族は敬老の日で鎌倉に行った。一方の私は一日バイトで、帰宅は九時を過ぎた。迎えに行こうかと言われたけど断る。土日のバイトはだいたい自転車で行っているから、両親もそれで納得してくれた。
バイトから帰宅した私を出迎えた悠人兄は、「おかえり」と声をかけるなり、「はい、これ」と包みを差し出した。
私はそれを受け取りながら首を傾げる。中身はナッツのキャラメリゼだった。悠人兄は苦笑して、「栄太兄から。先月は悪かったって。気にしなくていいのにね」と自分の部屋へと去って行った。
私は階段を上がっていく兄の背と、渡されたお菓子を見比べる。
複雑な気持ちが胸にこみ上げてきた。
「礼奈、おかえり。お疲れさん」
「ただいま」
リビングから顔を出した父に応えて、リビングへと向けかけた足を止める。
「……先、お風呂入って来るね。足が疲れて」
「ああ、そうしろ。そろそろ彩乃も出る頃だろうから」
「うん」
私は頷いて、一度パジャマを取りに部屋へ戻った。机の上に、もらったお菓子をちょんと置く。
こじゃれた包装のそれを、栄太兄は誰のことを考えながら選んだんだろう。
私だろうか。――それとも。
お菓子一つで、そんなことを考える自分に呆れる。すぐにこうして、頭は栄太兄に引き戻される。
少しは、会えなかったことを残念がってくれただろうか。悠人兄と栄太兄以外に、イトコは参加したんだろうか。翔太くんは――朝子ちゃんは――
私は頭を振って、パジャマを手にした。
考えなくても分かる。行く可能性があるのは朝子ちゃんだ。翔太くんは、たぶん、研究――
栄太兄と朝子ちゃんが、二人で酒を飲み交わしながら笑い合う姿を想像した。朝子ちゃんはもう、お酒が飲める。私より二つ上、21歳なのだから。もう、栄太兄と一緒に、お酒を楽しむことができるのだ。
ぱたぱたと階段を降りながら、モヤモヤする自分の気持ちをなだめようとする。
この感情が、醜いヤキモチだということは分かっている。
――ついこの間、慶次郎の誕生日を祝ったばかりなのに。
あのときの満たされた気持ちは、いったい何だったんだろう。
ああ、嫌だ――こんなの嫌だ――こんな自分なんて――私なんて――
「礼奈?」
声がして、はっと顔を上げた。
お風呂から出てきた母が不思議そうに私を見つめている。
年齢と共に少し下がって来た猫目。よくよく見れば分かる目じりと口元のしわ。すっぴんの顔は化粧しているときよりも無防備で、三十年後の自分を見たような気分になる。
三十年後の自分。――五十になる前の自分。
そのとき私は、誰と一緒にいるんだろう。
「……どうかしたの?」
「あっ、いや」
なんでもない、と言った後、思わずぽつりと本音が漏れる。
「いいなぁ、お母さんは」
「何が?」
「お父さんと出会えて」
横を通り過ぎる私を見ながら、母はまばたきをした。
そして、脱衣所のドアを閉めようとする私に「はぁ」と感心したような呆れたような吐息を漏らす。
何かと思ってその顔を見れば、母はまさに、驚きと呆れの混ざったような、微妙な表情をしていた。
「……何?」
「ううん」
母はぷるぷると首を振ったかと思えば、「そう」と首を傾げる。
いら立った私が「何よ」ともう一度問うと、母は「ううん」と言いながら背中を向けた。
「礼奈と私は違うなぁ、と思っただけ」
「……はぁ?」
「私、初めて彼氏ができたとき、舞い上がっちゃってそんなに冷静じゃなかったわ」
無自覚に痛いところを突かれて、思わず息を止める。少しでも呼吸が漏れれば、私の中途半端な付き合い方を批難されるような気がした。
「この人と結婚しちゃったらどうしよー、みたいな。運命の出会いだったらどうしよー、みたいな。そんな風に思って……ま、結局、半年ももたずに別れちゃったけどね」
言ってすたすた歩いて行く母に、私は「ねぇ」と声をかける。母は立ち止まって振り向いた。
「そ……それで、その後、お父さんと会ったの?」
「あら」
母は口に手を当てて、困った顔で目を泳がせた。
少し迷ってから、「まあ、夢見る年頃でもないか」と苦笑する。
「お父さんとつき合い始めたのは、その後二人とつき合った後よ。それも最後の一人は腐れ縁で、それこそこの人しかいないのかなーとか思ってた。運命感じた! なんていうのもよく聞くけど、私の場合は全然アテにならなかったってことね」
「……お父さんには感じなかったの?」
「感じると思う? 会ったときに」
母は逆に問い返してきた。私は思わずうろたえる。
「でも……かっこいいなって……」
「そうよ、それよ。かっこいいし、モテるだろうなって思うじゃない。そしたら、自分はよくて遊ばれて捨てられるだけだなって――」
「こらこら。こんなとこで何の話をしてるんだ」
がちゃ、とリビングのドアが開いて、父が呆れた顔で言う。母は「あら」と口を押さえて、笑った目のままちらっと舌を出した。
「人の悪口言いやがって」
「悪口じゃなくて、私が抱いた第一印象」
「どーせ、チャラ男とかなんとかだろ。それが悪口じゃなくて何なんだ」
「もー、いいじゃない。今はラブラブなんだから」
「らぶら……ってお前、それ自分で言って恥ずかしくないのか」
「恥ずかしくなーい」
いちゃつき始める前に、私はこそこそと二人の前を離脱する。脱衣所のドアを閉めた向こうで、父が「ったくもー」と母を甘やかしている気配がした。
「はーぁ」
私は思わずため息をつく。まったくもう、見てられないったら。
笑い合う両親の姿が、目に焼き付いている。周囲に流れる甘い空気と一緒に、私を何とも言えない気分にさせる。
「……いいなぁ」
理想の夫婦。自分も、ああいう夫婦になりたい――
旅行に行ったとき、健人兄が言っていたことを思い出した。
――それ、母さんの魅力については考慮しないの?――
素敵な夫婦になるには、パートナーだけのことじゃない。自分のことだって考えなくちゃいけない。
思わず目を閉じる。分かってる。分かってはいた。
たぶん、慶次郎だって父と同じように、私を甘やかしてくれる。私が、甘えようと思えば。私が、もっと近づきたいと思えば。たぶん――喜んで、くれる。
洗面所の鏡に映った自分が、唇をかみしめているのに気づいて、ため息をついた。
バイトから帰宅した私を出迎えた悠人兄は、「おかえり」と声をかけるなり、「はい、これ」と包みを差し出した。
私はそれを受け取りながら首を傾げる。中身はナッツのキャラメリゼだった。悠人兄は苦笑して、「栄太兄から。先月は悪かったって。気にしなくていいのにね」と自分の部屋へと去って行った。
私は階段を上がっていく兄の背と、渡されたお菓子を見比べる。
複雑な気持ちが胸にこみ上げてきた。
「礼奈、おかえり。お疲れさん」
「ただいま」
リビングから顔を出した父に応えて、リビングへと向けかけた足を止める。
「……先、お風呂入って来るね。足が疲れて」
「ああ、そうしろ。そろそろ彩乃も出る頃だろうから」
「うん」
私は頷いて、一度パジャマを取りに部屋へ戻った。机の上に、もらったお菓子をちょんと置く。
こじゃれた包装のそれを、栄太兄は誰のことを考えながら選んだんだろう。
私だろうか。――それとも。
お菓子一つで、そんなことを考える自分に呆れる。すぐにこうして、頭は栄太兄に引き戻される。
少しは、会えなかったことを残念がってくれただろうか。悠人兄と栄太兄以外に、イトコは参加したんだろうか。翔太くんは――朝子ちゃんは――
私は頭を振って、パジャマを手にした。
考えなくても分かる。行く可能性があるのは朝子ちゃんだ。翔太くんは、たぶん、研究――
栄太兄と朝子ちゃんが、二人で酒を飲み交わしながら笑い合う姿を想像した。朝子ちゃんはもう、お酒が飲める。私より二つ上、21歳なのだから。もう、栄太兄と一緒に、お酒を楽しむことができるのだ。
ぱたぱたと階段を降りながら、モヤモヤする自分の気持ちをなだめようとする。
この感情が、醜いヤキモチだということは分かっている。
――ついこの間、慶次郎の誕生日を祝ったばかりなのに。
あのときの満たされた気持ちは、いったい何だったんだろう。
ああ、嫌だ――こんなの嫌だ――こんな自分なんて――私なんて――
「礼奈?」
声がして、はっと顔を上げた。
お風呂から出てきた母が不思議そうに私を見つめている。
年齢と共に少し下がって来た猫目。よくよく見れば分かる目じりと口元のしわ。すっぴんの顔は化粧しているときよりも無防備で、三十年後の自分を見たような気分になる。
三十年後の自分。――五十になる前の自分。
そのとき私は、誰と一緒にいるんだろう。
「……どうかしたの?」
「あっ、いや」
なんでもない、と言った後、思わずぽつりと本音が漏れる。
「いいなぁ、お母さんは」
「何が?」
「お父さんと出会えて」
横を通り過ぎる私を見ながら、母はまばたきをした。
そして、脱衣所のドアを閉めようとする私に「はぁ」と感心したような呆れたような吐息を漏らす。
何かと思ってその顔を見れば、母はまさに、驚きと呆れの混ざったような、微妙な表情をしていた。
「……何?」
「ううん」
母はぷるぷると首を振ったかと思えば、「そう」と首を傾げる。
いら立った私が「何よ」ともう一度問うと、母は「ううん」と言いながら背中を向けた。
「礼奈と私は違うなぁ、と思っただけ」
「……はぁ?」
「私、初めて彼氏ができたとき、舞い上がっちゃってそんなに冷静じゃなかったわ」
無自覚に痛いところを突かれて、思わず息を止める。少しでも呼吸が漏れれば、私の中途半端な付き合い方を批難されるような気がした。
「この人と結婚しちゃったらどうしよー、みたいな。運命の出会いだったらどうしよー、みたいな。そんな風に思って……ま、結局、半年ももたずに別れちゃったけどね」
言ってすたすた歩いて行く母に、私は「ねぇ」と声をかける。母は立ち止まって振り向いた。
「そ……それで、その後、お父さんと会ったの?」
「あら」
母は口に手を当てて、困った顔で目を泳がせた。
少し迷ってから、「まあ、夢見る年頃でもないか」と苦笑する。
「お父さんとつき合い始めたのは、その後二人とつき合った後よ。それも最後の一人は腐れ縁で、それこそこの人しかいないのかなーとか思ってた。運命感じた! なんていうのもよく聞くけど、私の場合は全然アテにならなかったってことね」
「……お父さんには感じなかったの?」
「感じると思う? 会ったときに」
母は逆に問い返してきた。私は思わずうろたえる。
「でも……かっこいいなって……」
「そうよ、それよ。かっこいいし、モテるだろうなって思うじゃない。そしたら、自分はよくて遊ばれて捨てられるだけだなって――」
「こらこら。こんなとこで何の話をしてるんだ」
がちゃ、とリビングのドアが開いて、父が呆れた顔で言う。母は「あら」と口を押さえて、笑った目のままちらっと舌を出した。
「人の悪口言いやがって」
「悪口じゃなくて、私が抱いた第一印象」
「どーせ、チャラ男とかなんとかだろ。それが悪口じゃなくて何なんだ」
「もー、いいじゃない。今はラブラブなんだから」
「らぶら……ってお前、それ自分で言って恥ずかしくないのか」
「恥ずかしくなーい」
いちゃつき始める前に、私はこそこそと二人の前を離脱する。脱衣所のドアを閉めた向こうで、父が「ったくもー」と母を甘やかしている気配がした。
「はーぁ」
私は思わずため息をつく。まったくもう、見てられないったら。
笑い合う両親の姿が、目に焼き付いている。周囲に流れる甘い空気と一緒に、私を何とも言えない気分にさせる。
「……いいなぁ」
理想の夫婦。自分も、ああいう夫婦になりたい――
旅行に行ったとき、健人兄が言っていたことを思い出した。
――それ、母さんの魅力については考慮しないの?――
素敵な夫婦になるには、パートナーだけのことじゃない。自分のことだって考えなくちゃいけない。
思わず目を閉じる。分かってる。分かってはいた。
たぶん、慶次郎だって父と同じように、私を甘やかしてくれる。私が、甘えようと思えば。私が、もっと近づきたいと思えば。たぶん――喜んで、くれる。
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