153 / 368
.第6章 大学1年、前期
150 バスケ(2)
しおりを挟む
中学時代バレー部だったというハルちゃんは、最初、ボールの大きさと質感に慣れないと笑っていたけれど、しばらくするうちコツをつかんできたらしい。シュートはなかなか様になってきた。
「うまいね、ハルちゃん」
「でも、ドリブルがあかんな」
「最初からそれだけできれば充分だよ」
集中していれば二時間なんてあっという間で、気づけばもう四時半だ。勝巳くんが「おーい」と呼ぶ声がして、小夏が「なにー?」と答える。
「最後、2on2やろーぜ。俺と小夏っちゃんバーサス慶ちゃんカポー」
「あ、リア充爆発しろ的な? いいねやるやる」
「でしょでしょ」
勝巳くんと小夏が大乗り気になっている横で、私は思わず半眼になる。
「何それ……別にリア充じゃないよ」
「あっ、礼奈ちゃんそういうこと言うー。いいですか、カレピカノジョがいる人はそういうこと言っちゃいけないんです、特に独り身の前では」
そういうもん……?
私が呆れていると、慶次郎もふんと鼻を鳴らした。
「負けた方が勝った方に飯おごる」
「マージ!? 慶ちゃんおっとこまえー!」
「ごちになりまーす!」
「まだお前らが勝ったって決まってねーだろ!」
慶次郎が苛立たし気に言う。私は慌てた。
「ちょっと慶次郎……私久々で勘も鈍ってるのに」
「あぁ? 大丈夫だろ。身体が覚えてるって」
そういう問題!?
「ハルちゃん、得点見ててくれる? 先に5点取った方が勝ち。フツーのシュートは2点、スリーポイントが3点だよ」
「わ、分かった」
ハルちゃんがこくこく頷く。勝巳くんが首をかしげた。
「でも、ちょっと礼奈ちゃんにハンデつけてあげようよ。礼奈ちゃんだけ、スリーポイントあり。他はどんなシュートでも2点」
「あ、それいいかも」
勝巳くんの発案に、小夏が手を打つ。私もため息混じりに頷いた。
「分かったよ……」
そうは言っても、とてもじゃないけどスリーポイントなんて打つ気にはなれない。
だって、さっきのシュート練、ただでさえ五分五分だったシュート率が二割切ってた気がするもん。
「よし、行くぞー」
勝巳くんがボール片手に半袖を引き上げ、肩をむき出しにして円の中心に立った。
「えっ、勝巳が前?」
「だってゴール下、小夏っちゃんの方が得意だもん」
「身長あんま変わんないしー」
小夏がゴール下で言う。私はため息をついて、その前に立った。
「先、俺らがオフェンスね」
勝巳くんが私にボールを放って、私も投げ返した。
……と、勝巳くんがへらっと笑う。
「礼奈ちゃんとプレイできるなんて嬉しいなー」
「勝巳、お前セクハラ発言したらぶん殴るぞ」
慶次郎が低い声で唸って、「言わないよ!」と勝巳くんが慌てた。
***
数本やるうち、勝巳・小夏チームがシュートを2本、私たちが1本決めて、勝巳くんたちが攻めるターンになった。
少し勘は戻って来たけど、なにぶん足がついていかない。
「橘、膝伸びてんぞ」
「わ、分かってるけどぉ」
「馬場先生キビシー」
小夏が笑っている。私はもう、結構へとへとだ。
だって、勝巳くんてばドリブル速いし、よく動くんだもん。かき回しまくって小夏にボールをつないでいく。
今まで数度止められたのだって、勝巳くんがミスってくれたからだ。
勝巳くんは、小夏と慶次郎がゴール下で競っているときだって、またボールを受けられるように走る。ギリギリまで走ってる。それにつき合っていたのだから、体力も限界だ。
「じゃ、これで最後にしてあげよう」
「させるか」
勝巳くんの勝ち誇ったような声に、慶次郎が舌打ちする。私も覚悟を決めて腰を落とした。
これで勝巳くんか小夏がシュートを決めたら、私たちの負けだ。
勝巳くんがボールを放る。私がそれを投げ返す。
受け取った勝巳くんが、左から右へとボールを回してーー
ドリブルは左。
私もそちらについていく。
やや斜めに走り込んだところで、くるりと右ドリブルに切り替えーーと見せかけて、背中で私を押さえて回ると、中へ切り込む。
背中に押さえられた私は動けない。慶次郎が前に出る。フリーになった小夏に、バウンドさせたボールが行く。
慶次郎に代わって私が走る。
ーー間に合え!
走って来る私が見えたんだろう、小夏が若干後ろに跳びながらシュートをする。私は思いっきりジャンプして手を伸ばす。
指がボールを掠った。床に着地して、ゴールを見上げながら小夏を背中に押さえる。ボールがゴールにぶつかった。
ーー落ちろ!
慶次郎も勝巳くんを押さえているのが見える。
跳ね返ったボールが、ちょうど私たちの真ん中を通って外へと跳んでいく。私は慌てて足を踏み出し、手を伸ばす。向こうからも手が伸びてきた。
--慶次郎。
「ぅわ!」
「おわっ」
ボールを掴んだのはいいけれど、踏ん張りが効かずに止まれなかった。思いっきりバランスを崩した私を、慶次郎が身体で止める。
「大丈夫か?」
「だ、大丈夫……」
ぜはー、ぜはー、と互いの荒い息が聞こえる。見上げると、慶次郎が笑った。
「ナイスリバウンド」
「そっちも、ナイスディフェンス」
私も笑い返すと、後ろから「ちっ」と舌打ちが聞こえる。
振り向けば、勝巳くんが不服そうに唇を尖らせ、小夏はニヤニヤしていた。
「くっそー。もうちょっとだったのに」
「見せつけるねぇ。動画撮れなくて残念だわぁ」
慶次郎は私から手を離して、「見せもんじゃねぇ」とむくれる。
私は苦笑しながら、コートに描かれた丸の中心、ラインの前に向かった。
今度は私たちがオフェンスだ。
向かう途中、慶次郎が囁いた。
「橘。チャンスがあったら遠慮せず放れ」
「え?」
目を上げると、慶次郎がにやりと笑っている。
「リバウンドは俺が取る。外から放れ」
--それって。
「もう体力限界だろ。はやく終わらせるにはそれしかないぞ」
そう言われれば、そうなんだけど。
私は思わず顔が引きつるのが分かった。
「うまいね、ハルちゃん」
「でも、ドリブルがあかんな」
「最初からそれだけできれば充分だよ」
集中していれば二時間なんてあっという間で、気づけばもう四時半だ。勝巳くんが「おーい」と呼ぶ声がして、小夏が「なにー?」と答える。
「最後、2on2やろーぜ。俺と小夏っちゃんバーサス慶ちゃんカポー」
「あ、リア充爆発しろ的な? いいねやるやる」
「でしょでしょ」
勝巳くんと小夏が大乗り気になっている横で、私は思わず半眼になる。
「何それ……別にリア充じゃないよ」
「あっ、礼奈ちゃんそういうこと言うー。いいですか、カレピカノジョがいる人はそういうこと言っちゃいけないんです、特に独り身の前では」
そういうもん……?
私が呆れていると、慶次郎もふんと鼻を鳴らした。
「負けた方が勝った方に飯おごる」
「マージ!? 慶ちゃんおっとこまえー!」
「ごちになりまーす!」
「まだお前らが勝ったって決まってねーだろ!」
慶次郎が苛立たし気に言う。私は慌てた。
「ちょっと慶次郎……私久々で勘も鈍ってるのに」
「あぁ? 大丈夫だろ。身体が覚えてるって」
そういう問題!?
「ハルちゃん、得点見ててくれる? 先に5点取った方が勝ち。フツーのシュートは2点、スリーポイントが3点だよ」
「わ、分かった」
ハルちゃんがこくこく頷く。勝巳くんが首をかしげた。
「でも、ちょっと礼奈ちゃんにハンデつけてあげようよ。礼奈ちゃんだけ、スリーポイントあり。他はどんなシュートでも2点」
「あ、それいいかも」
勝巳くんの発案に、小夏が手を打つ。私もため息混じりに頷いた。
「分かったよ……」
そうは言っても、とてもじゃないけどスリーポイントなんて打つ気にはなれない。
だって、さっきのシュート練、ただでさえ五分五分だったシュート率が二割切ってた気がするもん。
「よし、行くぞー」
勝巳くんがボール片手に半袖を引き上げ、肩をむき出しにして円の中心に立った。
「えっ、勝巳が前?」
「だってゴール下、小夏っちゃんの方が得意だもん」
「身長あんま変わんないしー」
小夏がゴール下で言う。私はため息をついて、その前に立った。
「先、俺らがオフェンスね」
勝巳くんが私にボールを放って、私も投げ返した。
……と、勝巳くんがへらっと笑う。
「礼奈ちゃんとプレイできるなんて嬉しいなー」
「勝巳、お前セクハラ発言したらぶん殴るぞ」
慶次郎が低い声で唸って、「言わないよ!」と勝巳くんが慌てた。
***
数本やるうち、勝巳・小夏チームがシュートを2本、私たちが1本決めて、勝巳くんたちが攻めるターンになった。
少し勘は戻って来たけど、なにぶん足がついていかない。
「橘、膝伸びてんぞ」
「わ、分かってるけどぉ」
「馬場先生キビシー」
小夏が笑っている。私はもう、結構へとへとだ。
だって、勝巳くんてばドリブル速いし、よく動くんだもん。かき回しまくって小夏にボールをつないでいく。
今まで数度止められたのだって、勝巳くんがミスってくれたからだ。
勝巳くんは、小夏と慶次郎がゴール下で競っているときだって、またボールを受けられるように走る。ギリギリまで走ってる。それにつき合っていたのだから、体力も限界だ。
「じゃ、これで最後にしてあげよう」
「させるか」
勝巳くんの勝ち誇ったような声に、慶次郎が舌打ちする。私も覚悟を決めて腰を落とした。
これで勝巳くんか小夏がシュートを決めたら、私たちの負けだ。
勝巳くんがボールを放る。私がそれを投げ返す。
受け取った勝巳くんが、左から右へとボールを回してーー
ドリブルは左。
私もそちらについていく。
やや斜めに走り込んだところで、くるりと右ドリブルに切り替えーーと見せかけて、背中で私を押さえて回ると、中へ切り込む。
背中に押さえられた私は動けない。慶次郎が前に出る。フリーになった小夏に、バウンドさせたボールが行く。
慶次郎に代わって私が走る。
ーー間に合え!
走って来る私が見えたんだろう、小夏が若干後ろに跳びながらシュートをする。私は思いっきりジャンプして手を伸ばす。
指がボールを掠った。床に着地して、ゴールを見上げながら小夏を背中に押さえる。ボールがゴールにぶつかった。
ーー落ちろ!
慶次郎も勝巳くんを押さえているのが見える。
跳ね返ったボールが、ちょうど私たちの真ん中を通って外へと跳んでいく。私は慌てて足を踏み出し、手を伸ばす。向こうからも手が伸びてきた。
--慶次郎。
「ぅわ!」
「おわっ」
ボールを掴んだのはいいけれど、踏ん張りが効かずに止まれなかった。思いっきりバランスを崩した私を、慶次郎が身体で止める。
「大丈夫か?」
「だ、大丈夫……」
ぜはー、ぜはー、と互いの荒い息が聞こえる。見上げると、慶次郎が笑った。
「ナイスリバウンド」
「そっちも、ナイスディフェンス」
私も笑い返すと、後ろから「ちっ」と舌打ちが聞こえる。
振り向けば、勝巳くんが不服そうに唇を尖らせ、小夏はニヤニヤしていた。
「くっそー。もうちょっとだったのに」
「見せつけるねぇ。動画撮れなくて残念だわぁ」
慶次郎は私から手を離して、「見せもんじゃねぇ」とむくれる。
私は苦笑しながら、コートに描かれた丸の中心、ラインの前に向かった。
今度は私たちがオフェンスだ。
向かう途中、慶次郎が囁いた。
「橘。チャンスがあったら遠慮せず放れ」
「え?」
目を上げると、慶次郎がにやりと笑っている。
「リバウンドは俺が取る。外から放れ」
--それって。
「もう体力限界だろ。はやく終わらせるにはそれしかないぞ」
そう言われれば、そうなんだけど。
私は思わず顔が引きつるのが分かった。
0
お気に入りに追加
129
あなたにおすすめの小説
私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない
文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。
使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。
優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。
婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。
「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。
優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。
父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。
嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの?
優月は父親をも信頼できなくなる。
婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます
結城芙由奈@12/27電子書籍配信
恋愛
本日、私は大切な人達を2人同時に失います
<子供の頃から大好きだった幼馴染が恋する女性は私の5歳年上の姉でした。>
両親を亡くし、私を養ってくれた大切な姉に幸せになって貰いたい・・・そう願っていたのに姉は結婚を約束していた彼を事故で失ってしまった。悲しみに打ちひしがれる姉に寄り添う私の大好きな幼馴染。彼は決して私に振り向いてくれる事は無い。だから私は彼と姉が結ばれる事を願い、ついに2人は恋人同士になり、本日姉と幼馴染は結婚する。そしてそれは私が大切な2人を同時に失う日でもあった―。
※ 本編完結済。他視点での話、継続中。
※ 「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています
※ 河口直人偏から少し大人向けの内容になります
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
〖完結〗幼馴染みの王女様の方が大切な婚約者は要らない。愛してる? もう興味ありません。
藍川みいな
恋愛
婚約者のカイン様は、婚約者の私よりも幼馴染みのクリスティ王女殿下ばかりを優先する。
何度も約束を破られ、彼と過ごせる時間は全くなかった。約束を破る理由はいつだって、「クリスティが……」だ。
同じ学園に通っているのに、私はまるで他人のよう。毎日毎日、二人の仲のいい姿を見せられ、苦しんでいることさえ彼は気付かない。
もうやめる。
カイン様との婚約は解消する。
でもなぜか、別れを告げたのに彼が付きまとってくる。
愛してる? 私はもう、あなたに興味はありません!
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
沢山の感想ありがとうございます。返信出来ず、申し訳ありません。
人違いラブレターに慣れていたので今回の手紙もスルーしたら、片思いしていた男の子に告白されました。この手紙が、間違いじゃないって本当ですか?
石河 翠
恋愛
クラス内に「ワタナベ」がふたりいるため、「可愛いほうのワタナベさん」宛のラブレターをしょっちゅう受け取ってしまう「そうじゃないほうのワタナベさん」こと主人公の「わたし」。
ある日「わたし」は下駄箱で、万年筆で丁寧に宛名を書いたラブレターを見つける。またかとがっかりした「わたし」は、その手紙をもうひとりの「ワタナベ」の下駄箱へ入れる。
ところが、その話を聞いた隣のクラスのサイトウくんは、「わたし」が驚くほど動揺してしまう。 実はその手紙は本当に彼女宛だったことが判明する。そしてその手紙を書いた「地味なほうのサイトウくん」にも大きな秘密があって……。
「真面目」以外にとりえがないと思っている「わたし」と、そんな彼女を見守るサイトウくんの少女マンガのような恋のおはなし。
小説家になろう及びエブリスタにも投稿しています。
扉絵は汐の音さまに描いていただきました。
アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる