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第一章 こちふかば
22 今日のランチは先輩持ちで
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帰宅後シャワーを浴びて着替えて出社すると、ヨーコさんはいつも通りけだるげな挨拶をしてくれた。
【悪かったな、昨日。キャンセルして】
立ち上げたPCに届いた社内メッセージは神崎さんからだ。
【無問題です】
送信してしまってから、いやそうでもないなと首を捻る。これでは心許ないと、追加で送った。
【埋め合わせしてもらえるんなら】
しばらくの間。お?何か考え中?思わずにやりとしていると、
【ランチ一回分?】
ああ、それも捨てがたいけど……
【次回は神崎さんの参加はマストで。神崎さんが来れないなら延期になります】
面倒なので直球勝負である。が、意外と鈍いこの人は到底気づくまいとたかをくくっている。
【何それ。お前どんだけ俺と飲みたいの】
わーたーしーじゃーなぁあい。
【何それ。私が神崎さん大好きな子みたいに言わないでください】
【ならよかった。好きだって言われたらどうしようかと思った】
こいつ。ほんと。むかつく。
ギリギリと奥歯を噛み締めると、目の前にいるヨーコさんがふふと笑う。
「百面相」
私は戸惑いつつその目を見返した。
「アキちゃんがそんな百面相するの、何だかんだ言うてマーシーかあーくんの相手してるときだけやで」
あーくんとは阿久津さんだ。社内ではアークと呼ばれているのだが、神崎さん始め周りは誰もそう呼んでない。
私はヨーコさんの言葉に眉を寄せた。
「……ヨーコさん。私、あの二人と同レベルってこと?」
心底嫌そうな私の顔に、ヨーコさんは楽しげに笑った。
【昼飯行くか。それはそれとして奢ってやるよ】
昼休みに入る直前、神崎さんからメッセージが入った。
【アヤさんも一緒?】
社内結婚の二人は、日頃子どもがいるとゆっくり会話できないからと、ほぼ毎日一緒にランチしている。本当に呆れるほど仲良しだ。
【彩乃は休み】
そういえば、昨日のドタキャンは保育園からの呼び出しがきっかけだったと思い出す。
【お子さん体調不良?】
【発熱。今度は健人】
先日の花見は礼奈ちゃんだったのだが、今度は次男の健人くんらしい。子どもがいると家庭内感染で次々倒れると聞くが、かわいそうに。
【じゃあヨーコさんも誘っていいですか】
わざわざ神崎さんと二人きりで食べに行く必要もない。アラフォーになったとはいえ、何かと高スペックな男はとにかく人目を引く。自然、その連れも。
【了解】
返事が来たが、しばらくして、
【でも今ジョー出張だけど。いいの?】
いいの?って何だろう。思いつつヨーコさんに声をかけた。
「神崎さんとランチ、行きます?」
ヨーコさんは予想通り、ほころぶ笑顔でにっこりする。
「もちろん」
「ええと、安田さん出張らしいですけど」
「そんなん関係ないやろ」
一応、得た情報は伝えてみるが、やはりあっさり流された。神崎さんに返事を返す。
【それは関係ないそうです】
神崎さんからはしばしの間の後、
【了解。一階のロビーで】
端的な返事が来た。
【悪かったな、昨日。キャンセルして】
立ち上げたPCに届いた社内メッセージは神崎さんからだ。
【無問題です】
送信してしまってから、いやそうでもないなと首を捻る。これでは心許ないと、追加で送った。
【埋め合わせしてもらえるんなら】
しばらくの間。お?何か考え中?思わずにやりとしていると、
【ランチ一回分?】
ああ、それも捨てがたいけど……
【次回は神崎さんの参加はマストで。神崎さんが来れないなら延期になります】
面倒なので直球勝負である。が、意外と鈍いこの人は到底気づくまいとたかをくくっている。
【何それ。お前どんだけ俺と飲みたいの】
わーたーしーじゃーなぁあい。
【何それ。私が神崎さん大好きな子みたいに言わないでください】
【ならよかった。好きだって言われたらどうしようかと思った】
こいつ。ほんと。むかつく。
ギリギリと奥歯を噛み締めると、目の前にいるヨーコさんがふふと笑う。
「百面相」
私は戸惑いつつその目を見返した。
「アキちゃんがそんな百面相するの、何だかんだ言うてマーシーかあーくんの相手してるときだけやで」
あーくんとは阿久津さんだ。社内ではアークと呼ばれているのだが、神崎さん始め周りは誰もそう呼んでない。
私はヨーコさんの言葉に眉を寄せた。
「……ヨーコさん。私、あの二人と同レベルってこと?」
心底嫌そうな私の顔に、ヨーコさんは楽しげに笑った。
【昼飯行くか。それはそれとして奢ってやるよ】
昼休みに入る直前、神崎さんからメッセージが入った。
【アヤさんも一緒?】
社内結婚の二人は、日頃子どもがいるとゆっくり会話できないからと、ほぼ毎日一緒にランチしている。本当に呆れるほど仲良しだ。
【彩乃は休み】
そういえば、昨日のドタキャンは保育園からの呼び出しがきっかけだったと思い出す。
【お子さん体調不良?】
【発熱。今度は健人】
先日の花見は礼奈ちゃんだったのだが、今度は次男の健人くんらしい。子どもがいると家庭内感染で次々倒れると聞くが、かわいそうに。
【じゃあヨーコさんも誘っていいですか】
わざわざ神崎さんと二人きりで食べに行く必要もない。アラフォーになったとはいえ、何かと高スペックな男はとにかく人目を引く。自然、その連れも。
【了解】
返事が来たが、しばらくして、
【でも今ジョー出張だけど。いいの?】
いいの?って何だろう。思いつつヨーコさんに声をかけた。
「神崎さんとランチ、行きます?」
ヨーコさんは予想通り、ほころぶ笑顔でにっこりする。
「もちろん」
「ええと、安田さん出張らしいですけど」
「そんなん関係ないやろ」
一応、得た情報は伝えてみるが、やはりあっさり流された。神崎さんに返事を返す。
【それは関係ないそうです】
神崎さんからはしばしの間の後、
【了解。一階のロビーで】
端的な返事が来た。
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