素直になれない眠り姫

松丹子

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第3章 素直になれない眠り姫

04

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 竜次の手が、私の身体を這っていく。
 優しく。ときに意地悪に。弾力を楽しむように。快感を膨らませるように。
 重なった唇から、飲み込めきれずに唾液が流れる。それを指先で拭って、私の胸の頂きをこすり、つぶす。

「っん」

 私が反応する度に、竜次は優しく目を細めて笑う。恥ずかしいけど、嬉しい。私も、竜次に気持ちよくなってもらおうと、ズボン越しに彼自身を撫でる。
 竜次が座りなおすと、ベッドが軋んだ音を立てた。その音がする度、ちゃんと想いが通じ合ったホテルのベッドを思い出す。
 私たちの行為の揺れも全部飲み込んだスプリング。まるでお姫様みたいな気分だった。

「ぁっ」

 想いを馳せている間に、竜次の手が私の下着の中に入り込んで来る。竜次はまだズボンを履いたままなのに、私は下着姿だ。不公平だと気づいて、竜次のズボンを脱がせにかかる。

「なんだよ、せっかちだな」

 竜次は笑う。

「だって、私だけこんな格好」

 答えると、竜次がまた笑った。

「はやく欲しいんじゃなくて?」
「ば、馬鹿っ……」

 私は顔を赤らめる。彼には散々醜態をさらしているのに、いまだに羞恥心を抱くのだから不思議だ。
 けど、竜次はそんな私のことも肯定的にとらえているらしい。

「仕方ねぇな。はやく挿れてやるよ」

 言いながら脱いだズボンの下から、ボクサーパンツを押し上げる屹立が飛び出した。

「ど、どっちがはやく欲しいんだか」

 その質量から気まずく目を逸らすと、竜次がにやりと笑って私の手を取る。

「触ってみる?」
「い、いいっ……」

 言ったけど、竜次は気にせず私の手をそこに充てた。セフレだったときには、手コキもフェラもしたけれど、つき合ってからは触れてない。
 だって……恥ずかしくて。

「何、今さら恥ずかしがってんの」

 竜次はくつくつ笑う。そう言いながらも、こうやって戸惑う私を見るのが好きらしい。
 まったく趣味が悪い。
 でも、そんなところも嫌いじゃない。
 ここまで来れば、あばたもえくぼ。惚れた弱みだ。

「い、いいからっ、はやくして」
「何をはやく?」
「っ……」

 きっとにらみつけたけど、赤い顔では迫力もないだろう。知ってる。竜次が私をからかって楽しんでいるのも知ってる。
 悔しくなって、竜次の首に抱き着く。唇を重ねる。竜次の首筋から胸へ、手を這わせる。
 弾力のある筋肉質な身体。
 つつつ、と指先で腹筋を辿る。下腹部の手前まで来ると、竜次のモノがピクリと跳ねる。
 ふ、と竜次の吐息が鼻から洩れた。
 竜次が唇を離す。
 私の耳元で「愛里」と囁く。
 私がそれに弱いのを知ってるんだ。

「っ、竜次……」

 目が潤んで来る。竜次が優しく笑う。
 避妊具をつけ、私の中へ。指で解されていないけれど、そこは充分にぬかるんでいる。
 数度抜き挿しを繰り返しながら、奥へ、奥へ、竜次が入って来る。快感と幸福感に、私は竜次の首に抱き着く。

「っ、竜次……」

 ぐりぐり、と奥まで沈んで、私の鼻から「んんっ」と声が漏れる。竜次は頬に、耳にキスをして、「愛里」と囁く。
 膣がきゅうっと収縮すると、竜次のそれもびくりと脈打った。

「……可愛い」

 竜次に囁かれて、また身体が反応する。
 ぴくんと反応する度、竜次は笑う。私は恥ずかしくなって、目を閉じる。その目に竜次が口づける。
 優しく。甘く。

「愛里」

 髪を撫でる大きな手。

「竜次……」

 その手が頬に、首に、耳に触れると、それだけでぴくぴくしてしまう。
 好き、すぎて。

 浮かされたような目で、竜次を見上げる。
 竜次は優しい目で、私を見下ろしている。
 愛されてることを、実感する。

「好きだ」
「わ、たし……も」

 ベッドの上では、素直になれる。

「好き……竜次が、好き」

 竜次は笑った。私の頬に口づけ、身体を手で撫でていく。
 優しい愛撫は、初めてベッドを共にしたときから変わらない。
 再会した、あのときから。

「竜次、竜次っ……好き、大好き」

 突き上げられながら、私はまた、愛を告白する。

「知ってるよ」

 優しい人の腕の中で。

「愛してる、愛里」

 彼の優しい声に、脳は幸せに溶けていくーー

 過去など、もう怖くない。

 FIN.

***
お付き合いくださり、ありがとうございました!

他に小話を二つほど考えているのですが、体調により書けないため、書き上げたら公開しますm(_ _)m
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みんなの感想(1件)

hikaruko
2021.08.09 hikaruko

小川先輩!!
非常識ーーーー!
よくぞ言ってくれた曽根さん!
元カノに 今カノと仲良くしてやって、、とか、あり得ない!

その今カノも どうかと思う!
プロポーズされたことを 電話する?
関係ないだろ!

自分が幸せだからと、人に、しかも学生時代にそんな噂もあったと知っていて。

わざわざ それを言うか?

悪意しか感じられない!

もっとこの二人にギャフン と言わせてやりたかったなぁーー。

なんなら、、あいりちゃんの美しさに 惹かれて、小川先輩が婚約がゆれるぐらいになれば良いのに、、と、、心がドンドン 闇に、、、(笑)

婚約会の時のインタビューも 失礼極まりないし。

曽根さんと あいりさん、
二人に幸せになってほしいと 強く思いました。

この百貨店シリーズ 結構読んでます!!
遠藤さんも、王子のはお話しも。
一番 今回のお話しが憤慨しました(笑)(笑)

幸せは 人に、言い触らすものでは決してなく。お互いが育んでいくものだろうーー!!
と、、ついつい 熱くなってしまった!

また 次も楽しみにしています。

松丹子
2021.08.10 松丹子

hikaruko様

感想ありがとうございます!
百貨店シリーズ、コメントいただく作品がえらく片寄っているので、とても嬉しいです(笑)

小川先輩のアレコレは、自分でもざまぁが書けないなと反省した記憶がありますが、こういう人確かにいるよね…という感じにはなったかなと思っています。

感想いただいて思い出しましたが、関連SS書こうと思っていたのでした…!すっかり忘れてました(笑)折をみて書ければと思います!

本当にありがとうございました!

解除

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