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第十一章 織姫は彦星にどうしても抱かれたい(ヒメ視点)

12 ハジメテノ夜 その弐

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 口づけを交わしながら、光彦さんは私の手に引き寄せられるままそこに手を這わせる。
 充分に潤っていることを確認して、私の中に指を入れた。
「……きっつ」
 光彦さんは眉を寄せる。
「ホントに経験あんの?」
「あ、ありますっ」
 私は唇を尖らせて言った。
「そ、そんなに多くはないですけど……」
 言いながら、頭の端で今まで寝た男の数を数える。光彦さんは不満げにふんと鼻を鳴らした。
「多くないって、何人だよ」
 そう来ると思わなかった私は、え、と目をさ迷わせる。
「ええと……五人くらい」
 実際は七人だけど、それくらいサバ読んでも罰は当たらないよね。聞くなり光彦さんは微妙な顔をした。
「え、な、何ですか、その顔」
「いや……何でもない」
 光彦さんは全然なんでもなくなさそうに言うと、私の目にキスを落とし、鼻と鼻を合わせた。
「とにかく黙って感じてろ」
 言うと、光彦さんは私の唇に唇を重ねた。舌先が歯列をなぞり、舌と舌が絡み合う。ゆっくりと舌先だけ絡めていたかと思えば、時々深く吸い上げる。息継ぎをする間に唇を舐められ、また唇が重なる。
 舌の動きに合わせるように、蜜壺を探る指先も動いた。入口の周りで浅く撫でたかと思えば、深く奥を掻き回される。そして時々、入口の上にある蕾を撫でられた。
 とにかく光彦さんのキスと愛撫についていくのに必死で、とてもじゃないけど何も考えられない。経験値の違いを見せ付けるかのように、光彦さんは私の身体を溶かしていく。
「は、ん……み、つひこ、さぁん」
 呼ぶ声は日頃にも増して高く甘くなり、光彦さんは微笑んだ。その微笑みを見て、また自分の中がきゅうと締まる。
「気持ちよさそうだな」
「はぁ、だっ、て」
 ーー好きだから。
 想いはまた身体を巡って、光彦さんの指を締め付ける。光彦さんはまた笑うと、キスを唇から首へと滑らせ、片手を胸の頂きへと這わせた。
 その間にも、指での愛撫は続いている。くちゃくちゃと水音が部屋に響くのが嫌らしく、それが自分の身体から出たものだということが恥ずかしくて、無駄な抵抗とわかっていながら、ついつい足をよじる。
 その度に光彦さんは楽しそうに笑い、吐き出された息が私の身体を熱くするーー
 首から胸へと下りた唇が、もう一つの頂きをくわえた。ちろりと舐めたり、吸ったり、わずかに歯を立ててみたりーー片方の手の平が全体を揉み込む一方、突起に集中して加わる愛撫に、私は自分の手で口を覆った。
「ん、ふ……あ」
「聞かせろよ」
 光彦さんは口を押さえていた私の手を押さえ付け、私の中心を暴いていた手のぬめりを蕾に撫で付けた。ぞくぞくぞく、と身体中を電流のような痺れが走り、一層甲高い声が出る。
 光彦さんは満足げに笑って、私の唇に唇を落とした。
「あ、光彦さん。もう……」
「何言ってんだ。一回イッとけ」
「え、や、だーー」
 また始まる愛撫に、私は力無く首を振る。解放された手を光彦さんの首に回して、できる限りしがみついた。
「やだーー一緒が、いい」
「ーーて、め」
 光彦さんが舌打ちする。潤んだ目で見上げると、光彦さんは無理矢理顔をしかめていた。
「そういう風にーー可愛いこと言うな」
「可愛い?ーーあっ」
「黙って集中してろ!」
 小さい声を聞き咎めた私の中に入っていた指を、光彦さんは二本に増やした。ぐちゃぐちゃと音がして、指先が奥にぶつかる度、上の蕾をこすられる。
「あっ、あ、あ、あっーー!」
 光彦さんが胸を思い切り吸い上げたとき、私の身体がぎゅぅっと収縮して、絶頂を迎えた。
 一度達した私の頬にキスを落として、光彦さんは手早くゴムをつける。
「そのまま」
「馬鹿言うな」
 光彦さんはあきれた顔で言った。
 だって。
 子どもできたら、結婚してくれるでしょ?
 思ったけど、言わない。きっと私がそう思っていることは、光彦さんも分かってるだろう。
「行くぞ」
 蜜口に添えられた熱い塊に、身体がふるりと震えた。ゆっくりと挿入されていく光彦さん自身が、私の中を満たしていく。
「みっ、ひこさん、おおきっーー」
「そういうこと、言うなって」
 光彦さんも苦しそうに、眉を寄せて私を見る。
 快感のためか、少しだけ、目が潤んで見える。
 抜いたり挿したりを繰り返しながら、だんだんと深く繋がっていく。
「はぅ、気持ちぃ……」
「しゃべんな、黙ってろ」
 光彦さんの声に、余裕がなくなっている。
 それがまた、私をきゅんとさせた。
「入っ、た?」
「あと……もうちょい」
 ぐぐ、と光彦さんの身体が近づいた。
「入った、ぅ」
 私の中がきゅっと締まると、光彦さんが呻いて私を睨みつける。
 でもその目に迫力はない。
「締め付けんなって言ってんだろ。ただでさえ、狭いんだから」
「だって、嬉しいんだも、ん」
 言葉の最後は、キスで塞がれた。舌を絡め、唇を舐め取り、音を立てて吸って、口の端からまた口の中へと快感は移る。
 口も身体もびりびり痺れたみたいになって、頭もぼんやりして、光彦さんに委ねている心地よさに、目を閉じる。
 光彦さんが前後にゆっくりと、腰を動かしはじめた。
「は、んーー」
 一段と甘い声が、私の口から漏れる。
 控えめだった出し入れの動きで、光彦さん自身が緩急をつけて私の内側を愛撫する。
 与えられる愛情に、私自身の気持ちも溢れそうになる。
 ぎゅう、と締め付けると、光彦さんがまた苦笑した。
「若い奴と一緒にするなよ。2度も3度もできないぞ」
 ああ、だからたっぷり時間をかけて愛してくれているのか、とようやく気づく。
 でも、ーーでも、もっと激しいのが、欲しい。
「みつ、ひこさん」
「く、っそ」
 きゅうと締め付ける動きに、光彦さんの方が耐えかねたらしい。
 噛み付くようなキスをして、苦々しげに呟いた。
「何度かイカせときゃよかった」
 私は笑った。満足させてくれようとしてくれているのが、嬉しくてくすぐったかった。
 キスを求めると、光彦さんはびっくりするくらい優しいキスをしてくれた。
 じわりと込み上げる思いと共に、ますます自分が濡れたのが分かる。
「いいか?」
 言う光彦さんの目に欲情を見て、私は微笑んで頷く。
 とたん、ぎりぎりまで引き抜かれた熱の塊が、私の奥を叩いた。
 ゆっくりと繰り返された力強いストロークは、だんだん早く、乱暴になっていく。
 身体がうち合わさる音と、互いの息遣いと、ときどき漏れる私の嬌声が、部屋を満たした。
「ふ、う、あっーー」
 光彦さんが腰を打ち付ける度、絶妙なタイミングでぐりぐりと奥を刺激する。
 刺激するのは、私のイイところなのだろう。その快感に、思考も何も絡め取られた。
「み、つひっ、さっーー」
「姫」
 光彦さんの熱を帯びた視線と共に、耳に届いた低い声。
 ぞくり、と腰に痺れが走る。
 それが自分の名前と気づくのに、一瞬遅れた。
 初めて気づいた。
 ーーこの名前、最高かも。
 心中、親に感謝しながら、私もその首に腕を伸ばす。
「み、つ、ひこさん」
 光彦さんの身体が打ち付けられる度、胸が揺れる。光彦さんはそこにも口づけ、吸い上げた。
「は、ぁーー」
 水音と共に、ぱん、ぱん、ぱん、と身体の合わさる音が続きーー
 しばらくの後、光彦さんが私の中で果てた。
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