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第二夜 台風で濡れネズミになった結果。
03
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夜の間中いたずらと愛撫を受け続けた私は、翌朝、日が昇ってもぐったりしていた。
「……ごめん、やりすぎた?」
「……」
伊能ちゃんは相変わらず私好みの顔で微笑んでいる。
「……」
何か文句を言おうと口を開いて、かすれた音だけしか出ないことに気づき口を閉じた。
そのままぷいっと顔を背ける。
ひどい。ひどい。
流された私も大概のもんだけど、あんなーーあんなに、無茶苦茶にしなくてもいいのに。
無茶苦茶に……気持ち良くされちゃったら、もう恨むことすらできない。
「律。りーつ」
顔を背けたままの私の頬を、伊能ちゃんの指先が撫でる。
男性にしては節の小さな、すらっとした手。
頬に触れられると気持ちがよかった。
猫のように目を細めて撫でられている自分に気づき、我に返る。
違う違う。律子ってばチョロ過ぎるわ。ほだされては駄目。ほだされては……
睨みつけようと上げた目に、穏やかな微笑が飛び込んで来る。
「……律」
ぽつりと呟くような呼び声は、気恥ずかしくなるくらいに優しくて。
私は思わず口をぱくぱく開け閉めした。
「あはは、何してんの。鯉みたい」
「だ……こえ……」
「ああ、そっか。あんまり声、出ないのか」
伊能ちゃんは笑って、また私の頬を撫でた。
それだけで、私はついつい赤くなる。
「律の声、あんまりに可愛かったから……」
伊能ちゃんの指先が、私の唇に触れた。
「ありがと、たくさん聴かせてくれて」
ついその笑顔に見惚れていると、視界の外にあった彼の手が、下腹部の近くをまさぐっているのに気づく。
慌ててそちらを払おうとしたが、指先がぬぷ、と音を立てて蜜口に沈んだ。
「こっちの声もたくさん聴かせてもらったし」
言いながら、伊能ちゃんはわざと音を立ててそこを掻き回す。
ぬぷっ、くちゃ、とたつ水音に、私は真っ赤な顔でばしばし肩をたたいた。
「痛いよ、痛い。ごめんって、ははは」
全然反省している様子もなく笑って、私の手をやんわり掴む。
「あ、汚れちゃうね。待って」
言うと、私の中に入った自分の指先を口にくわえた。
丹念に精液を舐めとる口元の卑猥さに、ついつい唾を飲み込んだとき、伊能ちゃんが挑発するような目で私を見上げて来る。
「律も、舐めてあげるよ」
私の手を取って、指を一本口に含んだ。生温くて温かくて、ざらりとした舌が私の指をくすぐる。
「い、のう、ちゃ」
声はまだ全然出なくて、でもはやくここから逃れなくてはと、懸命に搾り出した。
伊能ちゃんはため息をつく。
「ごめん。あんまりに可愛くて、ちょっと急ぎすぎた」
言って、私の腕を引き寄せ、胸元に抱き寄せる。
「律……俺、大切にしたいと思ってるよ。だから最後までしなかったし……」
私の髪を長い指がゆっくりとすくように撫でた。私は困惑しながら、じっとしている。
「……でも、約束したからね。次は……」
伊能ちゃんは腕の力を緩め、私の顔を覗き込んだ。
「次は、させてね。最後まで」
私の返事を聞かず、唇を重ねる。
伊能ちゃんとのキスはソフトなのに、舌先が器用に口内を這って、すごく気持ちよかった。
「ん、……は……ぁう……」
ときどき私の口から漏れる息が、艶を帯びていく。
「律……可愛い……律……」
ちゅ、と唇を離し、額と額をこつりと合わせた。
視界におさまらないほど近い距離にある伊能ちゃんの左右の目を順に見ていると、ふっと微笑まれる。
「はぁー」
伊能ちゃんは私を抱きしめた。
「たまらん。離したくない。律、俺のものになって。絶対後悔させないから。たくさん可愛がってあげるから」
毎日可愛がられて喉を潰されたらたまらない。彼の言葉から思い浮かべた未来予想図に思わず口元を引き結ぶ。
「ああ、くそ。声、出ないんだもんな。返事も聞けないか。もうちょっと手加減すべきだった……」
ぶつぶつ言いながら伊能ちゃんは私を見て、不安そうな顔で首を傾げた。
「律……ほんとは嫌だった? 俺のこと嫌いになったりしてない?」
私好みのその顔で心配そうに言われては、嫌だなんて言えない。
せめてもの抵抗と縦にも横にも首を振らない私を見て、伊能ちゃんはますます眉尻を下げる。
「律……なんか言ってよ」
声出せなくしたの、誰よ。
ぷく、と頬を膨らませると、伊能ちゃんは一瞬の間の後笑いはじめた。
「あー、そっか。そうだった、ごめん。あはは、ごめんね、あーもう、そういう顔もすげぇ可愛い。食べちゃいたい……」
伊能ちゃんは不意ににやりと悪い顔で笑った。
「食べちゃいたいから、もうちょっと味見しておこうかな」
私は真っ赤な顔でぶんぶん首を横に振った。伊能ちゃんはくつくつ笑う。
「冗談だよ、ジョーダン。律、今日土曜だけど予定あんの?」
疑いの眼差しを向けると、伊能ちゃんが苦笑した。
私の額をこつんと突く。
「今日はもうしないって。約束する。安心しろ」
それならばよし、と頷く。
「で、予定あんの? なければ、映画でも行かない?」
伊能ちゃんはベッドから滑り出て、箪笥からTシャツを出した。
それを身にまとうと好青年スマイルを私に向ける。
「律が好きそうなのやってるでしょ、今。まだ見てなければ一緒に行こうよ」
私ははっとして目を輝かせ、こくこく頷いた。
「……ごめん、やりすぎた?」
「……」
伊能ちゃんは相変わらず私好みの顔で微笑んでいる。
「……」
何か文句を言おうと口を開いて、かすれた音だけしか出ないことに気づき口を閉じた。
そのままぷいっと顔を背ける。
ひどい。ひどい。
流された私も大概のもんだけど、あんなーーあんなに、無茶苦茶にしなくてもいいのに。
無茶苦茶に……気持ち良くされちゃったら、もう恨むことすらできない。
「律。りーつ」
顔を背けたままの私の頬を、伊能ちゃんの指先が撫でる。
男性にしては節の小さな、すらっとした手。
頬に触れられると気持ちがよかった。
猫のように目を細めて撫でられている自分に気づき、我に返る。
違う違う。律子ってばチョロ過ぎるわ。ほだされては駄目。ほだされては……
睨みつけようと上げた目に、穏やかな微笑が飛び込んで来る。
「……律」
ぽつりと呟くような呼び声は、気恥ずかしくなるくらいに優しくて。
私は思わず口をぱくぱく開け閉めした。
「あはは、何してんの。鯉みたい」
「だ……こえ……」
「ああ、そっか。あんまり声、出ないのか」
伊能ちゃんは笑って、また私の頬を撫でた。
それだけで、私はついつい赤くなる。
「律の声、あんまりに可愛かったから……」
伊能ちゃんの指先が、私の唇に触れた。
「ありがと、たくさん聴かせてくれて」
ついその笑顔に見惚れていると、視界の外にあった彼の手が、下腹部の近くをまさぐっているのに気づく。
慌ててそちらを払おうとしたが、指先がぬぷ、と音を立てて蜜口に沈んだ。
「こっちの声もたくさん聴かせてもらったし」
言いながら、伊能ちゃんはわざと音を立ててそこを掻き回す。
ぬぷっ、くちゃ、とたつ水音に、私は真っ赤な顔でばしばし肩をたたいた。
「痛いよ、痛い。ごめんって、ははは」
全然反省している様子もなく笑って、私の手をやんわり掴む。
「あ、汚れちゃうね。待って」
言うと、私の中に入った自分の指先を口にくわえた。
丹念に精液を舐めとる口元の卑猥さに、ついつい唾を飲み込んだとき、伊能ちゃんが挑発するような目で私を見上げて来る。
「律も、舐めてあげるよ」
私の手を取って、指を一本口に含んだ。生温くて温かくて、ざらりとした舌が私の指をくすぐる。
「い、のう、ちゃ」
声はまだ全然出なくて、でもはやくここから逃れなくてはと、懸命に搾り出した。
伊能ちゃんはため息をつく。
「ごめん。あんまりに可愛くて、ちょっと急ぎすぎた」
言って、私の腕を引き寄せ、胸元に抱き寄せる。
「律……俺、大切にしたいと思ってるよ。だから最後までしなかったし……」
私の髪を長い指がゆっくりとすくように撫でた。私は困惑しながら、じっとしている。
「……でも、約束したからね。次は……」
伊能ちゃんは腕の力を緩め、私の顔を覗き込んだ。
「次は、させてね。最後まで」
私の返事を聞かず、唇を重ねる。
伊能ちゃんとのキスはソフトなのに、舌先が器用に口内を這って、すごく気持ちよかった。
「ん、……は……ぁう……」
ときどき私の口から漏れる息が、艶を帯びていく。
「律……可愛い……律……」
ちゅ、と唇を離し、額と額をこつりと合わせた。
視界におさまらないほど近い距離にある伊能ちゃんの左右の目を順に見ていると、ふっと微笑まれる。
「はぁー」
伊能ちゃんは私を抱きしめた。
「たまらん。離したくない。律、俺のものになって。絶対後悔させないから。たくさん可愛がってあげるから」
毎日可愛がられて喉を潰されたらたまらない。彼の言葉から思い浮かべた未来予想図に思わず口元を引き結ぶ。
「ああ、くそ。声、出ないんだもんな。返事も聞けないか。もうちょっと手加減すべきだった……」
ぶつぶつ言いながら伊能ちゃんは私を見て、不安そうな顔で首を傾げた。
「律……ほんとは嫌だった? 俺のこと嫌いになったりしてない?」
私好みのその顔で心配そうに言われては、嫌だなんて言えない。
せめてもの抵抗と縦にも横にも首を振らない私を見て、伊能ちゃんはますます眉尻を下げる。
「律……なんか言ってよ」
声出せなくしたの、誰よ。
ぷく、と頬を膨らませると、伊能ちゃんは一瞬の間の後笑いはじめた。
「あー、そっか。そうだった、ごめん。あはは、ごめんね、あーもう、そういう顔もすげぇ可愛い。食べちゃいたい……」
伊能ちゃんは不意ににやりと悪い顔で笑った。
「食べちゃいたいから、もうちょっと味見しておこうかな」
私は真っ赤な顔でぶんぶん首を横に振った。伊能ちゃんはくつくつ笑う。
「冗談だよ、ジョーダン。律、今日土曜だけど予定あんの?」
疑いの眼差しを向けると、伊能ちゃんが苦笑した。
私の額をこつんと突く。
「今日はもうしないって。約束する。安心しろ」
それならばよし、と頷く。
「で、予定あんの? なければ、映画でも行かない?」
伊能ちゃんはベッドから滑り出て、箪笥からTシャツを出した。
それを身にまとうと好青年スマイルを私に向ける。
「律が好きそうなのやってるでしょ、今。まだ見てなければ一緒に行こうよ」
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